工事台帳の労務費の計算方法や適切な割合は?見落としがちな注意点も解説!
建設現場ではさまざまな業務が発生しますが、その中でも労務費の計算は正確性と効率性を求められる重要な作業の一つです。
作業員の勤務時間や残業時間、休日出勤、深夜労働の有無などを正確に把握し、適切な労務費を算出する必要があります。
しかし、多忙な現場で正確な労務費を計算するのに苦労している方も少なくないはず。
ミスを防ぎ、スムーズに労務費計算を進めるにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
この記事では、工事台帳と労務費計算の基礎知識をはじめ、現場で役立つポイントやミスを防ぐための注意点などをまとめています。
ぜひ最後まで読んで、現場での労務費計算をスムーズに進めるためのヒントを見つけてください。
また、弊社では労務費管理をラクにする専用ツールとして、最新ツール「工事台帳アシストAI」の導入をご提案しています。
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工事台帳の労務費の計算方法
まずは、工事台帳における労務費の計算方法の基本について解説します。
労務費は、工事現場で働く人にかかる費用を指し、大きく「直接労務費」と「間接労務費」に分けられます。
直接労務費の場合
直接労務費とは、特定の工事や作業に直接従事する作業員にかかる費用です。
例えば、建物の基礎工事や内装工事を行う作業員の人件費などがこれに該当します。
工事に「直接」関わっている職人への給料なら、正規雇用・アルバイト問わず直接労務費に該当します。
逆に、現場監督者や資材の運搬係への給料であれば、工事そのものには関わっていないので直接労務費には該当しません。
また、残業・休日出勤手当、通勤費、賞与などの手当も直接労務費に含まれます。
よって直接労務費の計算式をまとめると以下のようになります。
ただし、現場によっては日給月給制であったり、請負契約に基づいた労務費の支払いになっていたりする場合もあるため、現場の状況に応じて適切な計算方法を見極める必要があります。
間接労務費の場合
間接労務費とは、特定の工事や作業に直接従事しない作業員にかかる費用です。
例えば、現場の監督員や事務員、警備員の人件費などが間接労務費に該当します。
有給手当や社会保険料、退職金などは工事中に発生した費用ではないので間接労務費に該当します。
少し紛らわしいですが、「直接労務費以外の労務費」と覚えてしまった方がスムーズです。
よって間接労務費の計算式をまとめると以下のようになります。
間接労務費は直接労務費と比べて、判別方法が難しく管理が複雑になる場合があります。
現場ごとにしっかりと区別しておきましょう。
工事台帳の労務費計算に関するよくある質問
次に、工事台帳の労務費計算に関してよくある質問をまとめました。
どの現場においても共通してつまづきやすいポイントになりますので、疑問に思うことがあれば必ずチェックしておきましょう。
Q.建設業における労務費と人件費は同じ扱いですか?
建設業において「労務費」と「人件費」はほぼ同じ意味合いで使われることが多いですが、厳密には以下のように定義が少し異なります。
- 人件費:従業員に支払われる給与・賞与・諸手当などの費用
- 労務費:人件費に加えて福利厚生費・社会保険料・退職金など。従業員にかかる費用全体を指す場合が多い
例えば、現場作業員に支払われる給与・残業手当・通勤費などは人件費であり、同時に労務費にも含まれます。
また、工事中の事故に伴う労災保険料や社会保険料も労務費に属しています。
Q.適切な労務比率はどこで分かりますか?
適切な労務比率は工事の種類や規模、地域、時期などによって異なります。そのため、一概に「〇〇%が適切」と断言することはできません。
この他にも、建設業協会や建設コンサルタント会社などが発行している積算資料、自社の過去データ、堂々他社の類似工事のデータなどを参考にしてみるのも良いでしょう。
Q.公共工事設計労務費の単価はいくらですか?
公共工事設計労務費の単価も、国土交通省が公表している「公共工事設計労務単価」で確認することができます。
単価は職種や地域、時期などによって異なり毎年改定されているので、国土交通省のウェブサイトで最新情報を確認しましょう。
工事台帳の労務費計算でよくあるミス
工事台帳の労務費を計算するときによくある代表的なミスは以下の6つです。
- 作業時間入力ミスとデータ入力の二重チェック
- 単価設定ミスと単価表の最新版確認
- 労働基準法の遵守と残業時間の管理
- 休日出勤や深夜労働の計算
- 源泉徴収税の計算と精算
- 労務費の不正請求の防止
以下、それぞれの原因と具体的な対策方法について解説していきます。
「こんな初歩的なミスはしない」と思っていても、人間ですから毎回計算していれば必ずどこかでミスは生じるものです。
事前に事例を確認して、頭の片隅に置いておきましょう。
作業時間入力ミスとデータ入力の二重チェック
労務費の計算ミスで最も多いのは、ごく単純な誤入力や入力漏れです。
中でも作業員が複数いたり、作業内容が複雑だったりする現場ではミスが発生しやすくなります。
どれだけ慣れていても、うっかりミスや確認漏れは誰にだって起こるもの。個人の意識に頼るのではなく、入力ミスが起こらないような仕組みを作ることが大切です。
具体的な対策としては以下のような例が挙げられます。
- タイムカードや勤怠管理システムの活用:作業時間を正確に記録
- 作業日報との突き合わせ:作業日報に記載されている作業時間と工事台帳に記載されている作業時間を突き合わせる入力ミスを発見
- データ入力後のダブルチェック:入力したデータを別の担当者が確認し、ミスを早期発見
単価設定ミスと単価表の最新版確認
労務費を計算する際には、作業員の種類や職種に応じて適切な単価を設定する必要があります。
工事内容に見合わない単価設定をすると、労務費の計算結果に誤差が生じるので注意しましょう。
特に多いのは、更新された最新版の単価表を確認せずに、今まで通りの単価設定をしてしまうミスです。
以下のように、常日頃から適切な単価を把握するクセをつけておきましょう。
- 単価表の作成と保管:作業員の種類や職種ごと分けて単価表を作成・保管する
- 単価表の最新版確認:単価は定期的に見直しが行われるため、国土交通省のサイトを定期的にチェック
- システム連携:工事台帳ソフトと給与計算システムを連携させることで単価設定ミスを自動的にチェックしたり、単価の変更を反映
労働基準法の遵守と残業時間の管理
労働基準法では労働時間や休憩時間、休日、賃金などについてさまざまな規定が設けられています。
知らないまま労務費を計算することはまずありませんが、基礎知識として改めて確認しておきましょう。
特にミスが生まれやすいのは残業時間の記録です。誰がいつ、何時から何時まで残業したのか日頃からきちんと入力しておきましょう。
日が経ってから「この日どれくらい残業した?」と聞いても、現場の作業員が正確に答えられる保証はありません。
労働基準法の規定に違反すると罰則が科せられる可能性もあり、ミスでは済まされません。
以下のようにしっかりと対策しておきましょう。
- 残業時間の記録:タイムカードや勤怠管理システムなどを活用し、残業時間を正確に把握
- 残業時間の制限:労働基準法では原則として1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間。
- 36協定の締結:残業時間を36協定で定められた時間内に収めるようにする
休日出勤や深夜労働の計算
休日出勤や深夜労働をした場合は、通常の労働時間とは異なる計算方法をしなければいけません。
割増賃金を支払うことが労働基準法で義務づけられています。
- 休日出勤の割増賃金の計算:通常の賃金の25%以上を割増賃金として支払う
- 深夜労働の割増賃金の計算:通常の賃金の25%以上を割増賃金として支払う
- 休日出勤&深夜労働の計算:休日出勤と深夜労働が重複する場合は、それぞれの割増賃金を合算して支払う
関わる人数が多い大規模な工事現場では労務費の管理も複雑になるため、割増賃金について見落とさないよう注意が必要です。
源泉徴収税の計算と精算
源泉徴収税は、従業員が支払う所得税を事前に差し引いて納付する制度です。
正しい額を差し引かないと、確定申告の際にミスが出て大変なことになります。
特に従業員数が多い中企業以上の会社の場合は、一人ひとりの正しい源泉徴収税額を算出しなければならないので注意しましょう。
経理・労務費管理を担当されている方なら必ず知っておかなければならない基礎知識です。絶対に確認しておきましょう。
- 源泉徴収税率の確認:源泉徴収税率は給与額や扶養家族の人数によって異なるため一人ひとりの事情を把握する必要がある
- 源泉徴収票の作成:支払った賃金と税金の金額を記載した源泉徴収票を作成し、従業員全員に交付(義務)
- 税務署への納付:毎月または毎期、税務署に納付すること
労務費の不正請求の防止
労務費の計算に誤りがあるのはミスによるものではなく、意図的に操作されている可能性もゼロではありません。
労務費や材料費、その他さまざまな費用が絡む建設業界において不正請求は深刻な問題です。
不正請求のリスクをしっかりと想定したうえで、対策を講じていく必要があります。
具体的な対策としては以下のような例が挙げられます。
- 工事台帳の記録の徹底:作業時間・賃金・諸手当などを正確に記録し、不正請求の証拠となるような情報を残しておく
- 定期的な監査:工事台帳の記録内容を定期的に監査し、不正請求がないかを確認
- 内部通報制度の導入:不正請求を発見した場合に通報できる体制を整えておく
工事台帳の作成は専用のソフトを推奨!労務費の計算も簡単!
労務費をはじめとする諸々の経費を工事台帳に記録する場合、Excelなどの表計算ソフトでも作成できますが、専用のソフトを利用することを強く推奨します。
専用のソフトを利用することでミスがなくなり、圧倒的に早く作成できるからです。
▶参考:工事台帳とは?なんのために作成するの?専門家が詳しく解説!
今回は具体例として、おすすめの工事台帳ソフトを3つご紹介します。
工事台帳アシストAI
弊社ネクスゲートが提供している「工事台帳アシストAI」では、従来手動で行っていた工事台帳業務をAIで一元管理することで、正確な労務費理をサポートしています。
フォーマットが異なる書類データの収集もまとめて管理し、原価管理に関わる課題をデジタル技術で解決していくことで、計算ミスやヒューマンエラーを防いでいるのです。
工事台帳アシストAIを導入したことで、作業時間が従来から約80%短縮されたという調査データも出ています。
AIが99.9%の精度でデータを読み取り、自動的に仕訳処理まで行うため、労務費の計算も安心して任せられる強力なツールです。
ネクスゲートによる見積り相談や導入時のサポートも行っておりますので、まずは資料請求で詳細をお確かめください。
サクミル
株式会社プレックスが提供している「サクミル」は、大人数の現場での労務費もクラウド上で一元管理できる現場管理アプリです。
手元のスマホやタブレットから、現場の担当者や進捗状況を即座に確認できるため、日報管理の正確性が大幅にアップします。
わざわざ事務所に戻らなくても、現場に残ったまま案件情報の確認や経営レポートの作成もできるので、日々の業務がかなりラクになるはずです。
使えるくらうど工事台帳V3
アサクラソフト 株式会社が提供している「使えるくらうど工事台帳V3」は労務費計算をはじめ、原価管理や売上・請求、仕入先管理など、多岐にわたる業務を一括管理できる業務支援システムです。
クラウドベースのため現場からでも日報の入力ができ、出面表や出勤表などの帳票も自動集計で出力できる状態にしてくれます。
計算ミスを防ぎつつ、業務効率化を根本的に進めていきたい方におすすめです。
他の工事台帳ソフトが気になる方はこちらの記事もチェックしてみてください。
▶参考:【最新ツールあり】おすすめ工事台帳ソフト10選!自社に合ったサービスが見つかる!小規模でも◎
【補足】工事台帳をエクセルで作成するのは非推奨
無料で手軽に工事台帳を作成する手段として、エクセルを使うという方法もありますが、あまりおすすめはできないのが正直なところです。
費用をかけずに済むのはメリットですが、それに対して以下のようにかなりのデメリットが伴います。
Excelのデメリット | 詳細 |
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入力ミス | 人為的な入力ミスが発生しやすく、労務費計算の誤りにつながる |
データの整合性の確保が難しい | 複数のシートでデータを管理する場合、データの整合性を確保しづらい |
集計や分析が困難 | 関数やマクロに知識が必要になり、担当者のスキルが求められることも |
セキュリティリスク | ウイルス感染やデータ漏洩のリスクがある |
バージョン管理が難しい | 複数人でExcelファイルを共有する場合、バージョン管理が難しくデータが混在しやすい |
クラウド型の工事台帳ソフトなら労務費計算機能が搭載されているものも多く、作業時間や賃金などのデータを入力するだけで、自動的に労務費を計算してくれるものもあります。
データの共有や連携もしやすく、セキュリティ面でも対策ができるので安心です。
現場での労務費計算を効率化し、ミスを減らしたいとお考えであれば、クラウド型の工事台帳ソフトの導入を検討することをお勧めします。
ちなみに、エクセルで工事台帳を作成してみたいという方に向けて弊社で作成したエクセルテンプレートもあります。
一度試してみたい方は下記のスプレッドシートのリンクから開いて、「ファイル」>「ダウンロード」からExcel形式を選んで保存してください。
▶2024年最新版:工事台帳の無料テンプレートはこちら
エクセルを活用した作成方法を知りたい方は、下記の記事をご覧になってください!
▶︎工事台帳のエクセルテンプレートを無料配布!ページから無料でダウンロード◎
まとめ:工事台帳の作成は専用のソフトが安心!労務費の計算も楽々!
以上、本記事では工事台帳の労務費計算を簡単にするためのポイントと注意点について解説しました。
現場でスムーズに労務費管理を行うには、工事台帳と労務費に関する法律の基礎知識を把握し、ミスを防ぐための対策を講じることが重要です。
クラウド型の工事台帳ソフトを活用しながら、現場の状況に合わせて適切な方法で労務費計算を行い、正確なデータに基づいた管理体制を構築していきましょう。
また、労務費の計算ミスが不安な方は下記の動画もおすすめです。
全3回にわたって丁寧に解説されているので、ぜひチェックしてみてください。
▶第1回動画
▶第2回動画
▶第3回動画