建設業の働き方改革は無理って本当?実現のために最初にするべきことは〇〇
建設業界で最近耳にする機会が多い「2024年問題」とは、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることによって、現場の工期の遅れや人手不足がさらに深刻化していくことです。
これまで36協定によって時間外労働が許されていた建設業でも、今後は規定の時間内で業務に取り組むことが求められています。
「そんなの絶対無理!」と思っていても、上限規制に違反すると罰則が課せられることもあるので要注意です。
そこで本記事では、建設業において今早急に取り組むべき働き方改革の実態について解説していきます。
最新の改正ポイントを踏まえたうえで、具体的に何から始めていけば良いのかを一つひとつご説明していくので、ぜひ最後までご覧ください。
建設業の働き方改革の改正ポイントを理解しておこう!違反すると罰則も!?
止まらない少子化・働き手の減少に向けた対策として国内全体で課題視されている「働き方改革」。
もちろん建設業界でも、労働環境を改善するための取り組みが進んでいます。
今各企業の経営陣に求められているのは、最新の法律の改正ポイントをしっかりと把握し、現場に適用させていくことです。
新しい規制や法律にしっかり対応できていないと、罰則を受けるリスクもあります。
現場に負担をかけないためにも、建設業における働き方改革のポイントを正しく理解しておきましょう。
最新情報として、特に知っておきたいポイントは以下の3つです。
- 時間外労働に上限が設定される
- 残業割増賃金が引き上げられる
- 年5日の有給消化が義務化される
厚生労働省の「働き方改革関連法等について〜時間外労働の上限規制、「しわ寄せ」防止対策〜」を参照しながら、それぞれ詳しくチェックしていきます。
時間外労働に上限が設定される
建設業界ではこれまで、「36協定」に基づいて無制限に時間外労働を行っても罰則が課されないことになっていました。
しかし、令和6年4月から建設業も「一般則を適用」、すなわち建設業も例外ではなく時間外労働の上限が設けられることが発表されています。
これを超えて従業員を働かせる場合、所轄労働基準監督署長への届出が必要になります。
これを破ると法律違反とみなされ、罰則が課されることになってしまいます。
時間外労働が当たり前になっている現場では特に注意しましょう。
残業割増賃金が引き上げられる
これまでは1か月の時間外労働が60時間を超える場合、割増賃金率は大企業で50%、中小企業では25%でした。
しかし、2023年4月から中小企業にも同様の基準が適用され、60時間を超える時間外労働には50%の割増賃金を支払うことが義務化されました。
この改正は企業規模を問わず、すべての建設業者が対象となります。
割増賃金を引き上げる最大の目的は、長時間労働の現状を是正し、労働者の健康を守ることです。
それに反しないためにも、これまで以上に効率的な労働環境の整備が求められます。
年5日の有給消化が義務化される
年5日の有給休暇の取得義務化も、働き方改革における大きな改正ポイントの一つです。
従業員全員が有給休暇を最低でも5日は必ず取得できるよう、企業で管理していく必要があります。
工期厳守の現場では有給を取得するタイミングが限られがちですが、この義務も怠ると罰則の対象となるため注意しましょう。
繁忙期と閑散期を見極めて、従業員が休暇を取得しやすい時期を設定するなど、計画的に有給を取れる仕組みを作る必要があります。
建設業の働き方改革が”無理”だと言われる理由とは?
長時間労働が常態化している建設業界では、「働き方改革なんて当面できない」「そんな余裕はない」という厳しい声が挙がっているのも実情です。
主な理由としては、大きく分けて以下の4つが挙げられます。
- 単純に人手不足だから
- 週休2日制の導入が難しいから
- 業務を効率化できるITツールの導入ハードルが高いから
- 残業時間の減少により給料が減るから
さまざまな要因が重なり、業界全体で働き方改革に対する抵抗感が生じているのです。
まずは現状を知ることで、クリアできそうな課題から一つひとつ取り組んでいきましょう。
単純に人手不足だから
建設業界で働き方改革が進みにくい最大の理由は、慢性的な人手不足です。
特に若手離れが著しく、現場では熟練技術者の高齢化や後継者不足による倒産が続いています。
「新卒社員なんてもう何年も入ってきていない」「現場監督者がいつ倒れてもおかしくない」なんて現場も当たり前です。
その結果、深刻な人手不足を補うために一人当たりの作業量が増え、長時間労働が避けられない状況に陥っています。
しかも、人手不足はITツールや自動化技術を導入すれば即座に解決できるという問題でもありません。現場を引き継げる後任が育たないと意味がないからです。
とにかく人が足りていない建設現場で働き方改革を実現するためには、長期スパンで人材確保と効率化に取り組んでいく必要があります。
週休2日制の導入が難しいから
建設業では、長年にわたって週休2日制の導入が課題視されています。
というのも、前述の人手不足によって進捗が滞りがちな建設現場では、工期に間に合わせるために休日出勤せざるを得ない状況になるからです。
現場に慣れている作業員ほど「何が何でも工期優先」という考えが染みついているものです。
土日も作業をするのが当たり前になっている方も多いのではないでしょうか。
また、雨天や台風などによってどうしても作業を中断しなければならず、スケジュールの遅れを取り戻すために休日を返上することになるケースもあります。
週休2日制を本気で導入するなら、作業人数を踏まえた人員配置や天候を考慮したスケジュール設定など、根本的な部分から見直していく必要があるのです。
業務を効率化できるITツールの導入ハードルが高いから
業務効率化を目指すためにはITツールの導入が欠かせませんが、建設業界ではその導入に高いハードルがあります。
インターネット環境が整備されていない現場では、クラウドシステムやオンラインツールを導入しても効果を発揮しづらいケースがあるからです。
また、従来の手作業をベースにした業務フローに慣れきっている現場スタッフにとって、新しいツールの導入にはあまり良いイメージを持たれないことも多いようです。
これは建設業に限った話ではありませんが、「デジタル」「IT」という言葉そのものに抵抗を感じる人も一定数います。
ITツールの導入にあたっては、初期費用とランニングコストを踏まえた資金の準備と、現場で作業に当たっている従業員の理解の両方が求められるのです。
残業時間の減少により給料が減るから
建設業における働き方改革が、従業員にとって必ずしも良い話ではない可能性があることも考慮に入れておきましょう。
というのも、冒頭にもお伝えした「時間外労働の上限」が適用されると、今長時間労働をしている現場の作業員たちの残業時間が減ることになります。
当然ながら、労働時間が減ればその分給料も減ります。残業をすることで収入アップを図っていた従業員の方の減給は免れません。
実はこれが働き方改革が進展しない大きな原因。
今まで給料をモチベーションに残業をしていた従業員の方々が一気に働きにくくなり、生活が苦しくなる可能性もゼロではありません。
働き方改革をすればするほど従業員が楽になる訳ではない、という点が難しいところです。
働き方改革を実現するなら「効率化」から始めよう
働き方改革といえば、週休2日制の導入や社内の仕事観を変えるといったことを連想しがちですが、実際はもっと身近なところから始めていくべきです。
ここまでチェックしてきた改正ポイントと現状の課題を踏まえると、建設業界で働き方改革を成功させるためにはまず、業務の効率化に取り組むことが効果的と言えるでしょう。
効率化を図ることで限られた時間内に多くの作業をこなせるようになり、業務全体の進みが早くなるからです。
たとえば、手動による工事台帳の作成や書類管理の時間を短縮できれば、余った時間で工期スケジュールを再度確認したり、工事の進捗を冷静に分析したりする余裕が生まれます。
他にも、時間を取られている事務作業は以下のように数えきれないほどあるはずです。
- 工事台帳の作成
- 原価管理
- 工事進捗管理
- 勤怠管理・労務管理
- 書類の管理・共有
- 発注書・請求書の作成
- 安全管理
このような事務作業は自動化ツールを導入することで大幅に効率化できます。
自社内で今いちばん時間がかかっている業務を洗い出して、負担を減らしていくところから始めていきましょう。
効率化をコツコツ続けていくことで、結果的に社内全体の働き方が変わっていきます。
「何から始めればいいか分からない」という人は、建設DXを支援している企業に相談してみるのもおすすめです。
専門家として的確なアドバイスをしてくれるだけでなく、実際に効率化ツールの導入を手伝ってくれる企業もあります。
▶参考:【2024年更新】建設業界のDXを支援する企業一覧!どの会社に相談するのが最適?
工事台帳の作成→専用のソフトで効率化
建設業における要ともいえる工事台帳ですが、手書きやエクセル・スプレッドシートなどでの管理ではミスが起きやすく、時間もかかります。
工事台帳専用のソフトを使えば、受領した書類を自動でデータ化し、工事ごとの原価や進捗を一目で確認できるようになります。
工事台帳ソフトにもさまざまな種類がありますが、建設現場で使うならクラウド型のソフトがおすすめです。
どこからでもデータの入力・閲覧ができ、リモートワークにも対応できます。
費用の相場やソフトの選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:【最新ツールあり】おすすめ工事台帳ソフト10選!自社に合ったサービスが見つかる!
原価管理→クラウドシステムで効率化
企業の利益を左右するといっても過言ではない原価管理ですが、材料費や人件費など複数の要素をリアルタイムで正確に把握できなければ上手くいきません。
複雑な費用構造を手作業で管理していると、ミスや見落としが生じやすくなるのもリスキーです。
原価管理を効率化させるためには、クラウドベースの原価管理システムを導入することで、経営者と現場の責任者が正確にコスト管理できる仕組みを作る必要があります。
発注や仕入れ、支払といったデータをクラウドシステム上で自動集計し、現場とオフィス間でデータを即時共有しながら作業を進めていきます。
原価の見える化を通じて、企業全体の経営戦略を最適化し、利益率の向上にむけて着実にステップを踏んでいきましょう。
原価管理ソフトの種類や正しい選び方については、以下の記事で詳細にご説明しています。
▶参考:建設業向けの原価管理ソフト10選!自社に最適なシステムを選ぶポイントも解説!
工事進捗管理→デジタルツールで効率化
工事進捗を紙ベースで報告するのは時間がかかり、情報が正確に伝わらずにトラブルが生じるリスクもあります。
現場の最新の情報を正確に共有するためには、リアルタイムで進捗を確認できる専用のアプリやデジタルツールを活用しましょう。
一例として、株式会社アルダグラムが提供している「KANNA」はPC・スマホ・タブレットいずれからでも最新情報にアクセスできる施工管理アプリです。
工事状況をリアルタイムで共有して、チャットでやりとりができます。
こういったツールを導入するだけで、メールや電話による情報の行き違いがなくなり、グッと働きやすくなります。
勤怠管理・労務管理→勤怠管理システムで効率化
効率化の必要性が低いと思われがちな勤怠管理も、実はシステムの導入によって大幅に改善していける業務の一つです。
勤怠管理システムを導入することで、勤務時間の自動集計や労働時間の可視化ができ、労働法を遵守した労務管理が簡単に行えます。
エクセルでの管理していると入力ミスがあったり、使い慣れるまで時間がかかったりしますが、専用ツールを導入すれば即解決できます。
書類の管理・共有→クラウドストレージで効率化
図面や契約書、報告書などの書類を紙で管理していると、保管するためのスペースが必要だったり、紛失する可能性があったりと手間がかかります。
また、過去の資料が必要になった際に手早く探し出すことができず、時間がかかって不便です。
書類はデータ化してクラウドストレージにアップロードしておくことで、どこからでもアクセスでき、共有や検索も一瞬で行えるようになります。
一例として、NTT東日本が提供しているコワークストレージなら、万全のセキュリティ機能を搭載したクラウドストレージをリーズナブルな価格で利用できます。
PCに保存したファイルを現場から社用スマホやタブレットで閲覧でき、大幅な効率化に繋がるとして数々の企業で導入されています。
紙の書類をデジタル化することで必要な資料を探す手間が減り、オフィスのスペースを広々と使えるようになるので日常業務のストレスも軽減できるでしょう。
発注書・請求書の作成→請求書作成ソフトで効率化
発注書や請求書を一つひとつ手書きで作成していると、時間がかかるうえにケアレスミスも起こりやすくなります。
記入ミスが後から発覚したときの手間にうんざりしたことがある人も多いはずです。
しかし請求書作成に対応した専用のソフトを使えば、作成時間を大幅に短縮しつつミスの削減・防止を図れます。
弊社ネクスゲートが運営している工事台帳ソフト「工事台帳アシストAI」なら、AIによる自動データ化と仕分け機能により、書類の整理から請求書作成まで自動化できます。
煩わしいデータ入力や手動の仕分け作業を省略できだけでなく、事務処理のミスも減少し、より正確な原価管理が可能になります。
請求処理にかかっていた時間を減らして、余ったリソースをより有効な業務に活用していきましょう。
安全管理→IoTデバイスやセンサーで効率化
建設現場の安全管理は、従業員の命を守るためにも働き方改革の一環として特に重視すべきポイントです。
IoTデバイスやセンサーを活用することで、リアルタイムで現場の状況を監視でき、現場の安全性を飛躍的に向上させることができます。
建設業の働き方改革は無理?よくある質問をまとめました
最後に、建設業の働き方改革についてよくある質問とその回答をまとめて紹介します。
働き方改革の実現に向けてどのような取り組みが必要か、実際の現場での課題を見つめながら考えていきましょう。
Q.建設業2024年問題の抜け道はありますか?
完全な抜け道を見つけるというよりは、規制を逆手にとって、適切な対応策を講じることが大切です。
例えば、施工管理ソフトや勤怠管理システムを導入して時間外労働を減らす努力をしたり、作業の効率化を進めることで同じ時間内でも業務のスピードを上げたりといった対応が求められます。
現場では人手不足の深刻化や生産性の低下を懸念する声も多いようですが、2024年問題を働き方改革のきっかけとして捉えていきましょう。
Q.一人親方なのですが、働き方改革の影響はありますか?
一人親方は雇用されているわけではなく、独立して仕事を請け負う立場のため、時間外労働の規制対象には含まれません。
しかし、以下のように働き方改革をした元請け企業から間接的に影響を受けるリスクはあります。
- 時間外労働が制限されて受注が変動する。
- 作業時間の見直しを求められる
- 業務フローが変わったので今までのやり方を変えてほしいと言われる
また、一人親方でも労働保険に加入したり、労務管理における知識を調べたりすることも有効です。
まとめ:建設業の働き方改革は無理ではない!まずは効率化から始めよう!
建設業界での働き方改革は、多くの課題がある一方で、効率化を図る良いきっかけにもなります。
時間外労働の上限や有給取得の義務化といった新たなルールに対応するためには、業務をデジタル化することで効率を高め、業務負担を軽減していくところから始めるのが有効です。
専用ソフトやクラウドシステムを導入することで、原価管理や勤怠管理の制度を高め、働き方改革の実現に向けて一歩ずつ改善を進めていきましょう。
弊社ネクスゲートでは、工事台帳ソフト「工事台帳アシストAI」の導入を通じて、業務時間の短縮・効率化をお手伝いしています。
企業の担当者様とのヒアリングを行いながら、働き方改革に向けて徹底的にサポートいたします。
工事台帳ソフトの導入が初めての企業様でも安心してお使いいただける仕様です。
書類整理や請求処理の効率化など、身近なところから効率化を図るために最適なツールとなっておりますので、ぜひご検討ください。