施工管理の人手不足を解消する方法とは?なぜ不人気?
建設業界では近年、深刻な施工管理の人手不足が課題となっています。
このままではプロジェクトの遅延や品質低下を招いてしまい、会社の損失にも繋がりかねません。
人員確保に奔走する企業担当者様や、現場で負担が増えている施工管理の担当者様も不安を抱えているのではないでしょうか。
この記事では施工管理の人手不足の現状と原因、そして企業が取り組むべき対策について詳しく解説します。
人を増やすための採用戦略や働き方改革の進め方など、具体的な対策を知ることで人材確保の糸口を見つけられるはずです。
後ほど詳しく解説しますが、施工管理業の人手不足は思っている以上に深刻です。
全国各地の現場から悲鳴が上がっています…
施工管理が人手不足の理由とは?
建設業界における施工管理の深刻な人手不足は、単一の原因によるものではなく、いくつもの問題が積み重なって現在の事態を招いています。
以下の図のように、人手不足が現場に負担をかけ、今いる人材に過剰にしわ寄せが行くことで人が辞め、また人手不足に陥る…
という状況が慢性的に続いてしまった結果、悪循環を招いているのです。
この最悪のループを断ち切らない限り、施工管理における人手不足を解消することはできません。
ではどうすればいいのか…それを知るためにも、まずはこの悪循環を招いている要因についてもう少し詳しく見ていきましょう。
人手不足を招いている大きな理由としては、主に以下のような事項が挙げられます。
- 若手の人材が不足しているため
- 激務のため離職率が高いため
- 高齢化が進んでいるため
- 求められるスキルに対して賃金が低いため
- 怪我や事故のリスクが高いため
- 女性が働きづらいイメージがあるため
- 建設業界自体がブラックなイメージがあるため
- キャリアアップしづらいため
自社の現場は当てはまっているかどうか、一つずつ照らし合わせながらご覧ください。
若手の人材が不足しているため
ご存じのように、近年の建設業界は若手の人材確保に苦戦しています。
魅力的な職業として認識されていないことや長時間労働のイメージ、厳しい労働環境などが、若い世代の就職意欲を削いでいるのです。
大学や専門学校で建設系の学科を卒業する学生の減少も、人手不足に拍車をかけています。
以下は国土交通省の資料から引用した、建設業の就業者数の推移グラフです。
上図を見ると、建設業の就業者数は年々緩やかに減少しており、令和に入ってからは500万人を下回っている状況です。
日本全体で少子高齢化が進む中、建設業に就く人が減ってきていることは、人手不足の大きな要因となっているでしょう。
激務で離職率が高いため
これは建設業に限った話ではありませんが、激務が慢性的に続く職場は人員の入れ替わりが激しく、なかなか正社員が定着しません。
特に工期が厳しく設定されている現場の施工管理は、天候や突発的なトラブルで遅れが生じた場合、休日出勤や長時間の残業をせざるを得なくなることもよくあります。
身体的・精神的なストレスが増えれば、働き手の離職を加速させるだけでなく、建設業界全体のイメージダウンにもなりかねません。
労働環境を早急に見直し、働きやすい環境を整えていく必要がありますね。
技術職に対して、施工管理の仕事は抽象的で「とにかく大変そう」というイメージに留まっているのも事実です。
「きつい」とい言われている原因そのものを調べるところから始めてみるのも良いかもしれませんね。
高齢化が進んでいるため
ベテランの施工管理技士の高齢化も、人手不足の大きな要因です。
長年の経験と知識を持つ熟練工が引退していく一方で、それを補う若手人材が不足しているため、経験の浅い人材に負担が偏ってしまいます。
以下は令和4年の「労働力調査」をもとに国土交通省で作成された、年齢階層別の建設技能者数を示すグラフです。
上図を見ると、60歳以上の技能者が全体の約25%を占めているのが分かります。
技能者のうち4人に1人は60歳以上ということです。
さらに、10代・20代の技能者は全体の約12%しかおらず、今後の建設業界の担い手がいかに少ないのかが見て取れます。
当然、技能者が足りなければ現場も回らないので、このままでは施工管理技士の負担も年々大きくなっていくでしょう。
求められるスキルに対して賃金が低いため
施工管理は高度な専門知識とスキルが求められるにも関わらず、給与水準が他の業界と比較して低いと感じる人が多く、これも人材の流出につながっています。
責任の重さと仕事の大変さに比べて、賃金が低いので仕事が続かないのです。
以下は国土交通省が「毎月勤労統計調査」の結果をもとに作成した、建設業とその他の産業との賃金の差をを示すグラフです。
上図をみると、建設業界全体の給与水準は全産業(パート等除く)と比較して低い傾向があります。
また、日本建設情報センターCICによると、建築施工管理技士の年収は平均520~570万円といわれています。
数字だけを見ると高給にも見えますが、実際の労働時間や仕事量を加味すると見合わない金額とも言えます。
怪我や事故のリスクが高いため
建設現場は高所作業や重機操作など、危険が伴う作業が多い傾向にあります。
実際、重症を負うケースはいつの時代にもあり、中には死亡事故もゼロではありません。
以下は東京労働局管内の事業場で令和3年に発生した死亡災害の事例です。
・ビルの新築工事現場において、クライミングクレーンで荷(鉄筋馬を束ねたもの)を吊り上げていたところ、9階付近で荷崩れ、落下し、当該現場内を移動し公道上に出た被災者に接触した。
・外壁改修工事において、防水作業をしていた被災者が、足場と躯体との間から約3.5m墜落した。
・マンションの機械式駐車場地下ピットの天井ボードの張り替えを施工していたところ、同所に設置されていた自動式二酸化炭素消火設備から消火用の二酸化炭素が噴出し、二酸化炭素中毒により、社長及び労働者3人が死亡、1名が負傷した。
引用:『令和3年 建設業死亡災害事例』より
怪我や事故のリスクが高いことは、働く上での大きな不安要素となりやすく、特に若い世代にとっては就職をためらう理由の一つにもなっています。
女性が働きづらいイメージがあるため
建設業界は男性社会のイメージが強く、女性が働きづらい環境であるという認識が根強く残っています。
いくら女性の社会進出が進んでいるとはいえ、技術職や施工管理で女性が働いている現場はまだまだ少ないのが現状です。
建設業界自体がブラックなイメージがあるため
「3K(きつい、汚い、危険)」というイメージが根強く残っており、建設業界全体にネガティブな印象をもっている人も少なくありません。
休憩中にトラックで仮眠をとったり、夜にも懸命に作業していたりする姿を見たことがある人も多いはず。
長時間労働や休日出勤、パワハラなどの問題が、業界全体のイメージを悪くしている側面もあります。
しかし、近年では残業規制をするなどして、国が建設業界の労働環境を積極的に変えようとしているのも事実です。
建設業には、2024年4月以降、以下の上限規制が適用されます。
・原則、月45時間以内、年360時間以内
臨時的にこれを超える必要がある場合でも、
・1か月45時間を超える残業は年間6回まで
・残業の時間の上限は1年720時間まで
・休日労働と合わせても1か月100時間未満、2~6か月間で平均して80時間以内
となります。
引用:厚生労働省 建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制 特設サイト
また、厚生労働省は建設業やドライバー業などの長時間労働が課題となっている業界について、働き方改革を求める特設サイトなども公開しています。
2024年4月以降の労働基準法の改正についても分かりやすくまとめられているので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
キャリアアップしづらいため
たとえばオフィスワークが基本の一般企業なら、「○年後には昇格」「10年後には管理職」といった感じで先々のキャリアをイメージできるのが普通です。
一方で建設業界ではキャリアパスが明確でなく、スキルアップやキャリアアップの機会が少ないと感じる人も少なくありません。
建築施工管理技士の資格を取っても、そこからしっかりと実績を身に着けなければモチベーションの低下や離職につながります。
近年では「キャリアプラン」という言葉を大学生でも意識するほど、人生設計についてシビアに向き合っている若者が増えているので、施工管理の人気が無くなっているのかもしれません。
逆に、技術と実績があれば若くして施工管理として現場に立てるのもポイントです。
これ以上人手不足に陥らないためにも、各々の現場で施工管理の魅力を積極的にアピールしていきましょう。
人手不足の施工管理会社がするべき対策
深刻な人手不足に悩む施工管理会社は、抜本的な対策が必要です。
募集を強化するだけでなく、働きやすい環境づくりやキャリアパス設計を視野に入れた施策が求められます。
しっかりと成果を出していくために、ここではおすすめの対策を4つご紹介します。
①SNSを活用して採用する
従来の求人広告に加えて、昨今ではSNSを活用した採用活動が活発化しています。
特に、InstagramやX、Tik Tokなどのビジュアル重視のプラットフォームなら、実際に入社してみないと分からない現場の雰囲気を具体的に伝える効果があります。
「施工管理=ブラック」というイメージを払拭するためにも、写真や動画を使ってよりリアルに発信していくのが有効です。
こちらのアカウントように、社員の日常風景や現場の様子、企業理念などを動画や写真で発信することで、企業の魅力をアピールしてみましょう。
会社名で発信活動をすることで、若者に応募を呼びかけるのはもちろん、自社をアピールする機会にもつながります。
②未経験人材を採用する
人員を増やして人材不足を補うために、未経験者を採用していくのも手段の一つです。
「未経験でも大丈夫」という文言があるだけで、採用への応募率もグンと変わります。
未経験者向けの研修制度を整備する必要があり、育成コストはかかりますが、将来的な戦力育成という観点から時間をかけて育てていきましょう。
ただし、注意点もしっかり踏まえておかないと現場でのトラブルの原因にもなりかねません。
どのように募集をかけていくのか、事前にきちんと確認しておきましょう。
③DXで働きやすい環境を整える
「建設業は体力仕事で前時代的」「デジタルとは縁遠いもの」というイメージも、若者を遠ざけている要因の一つです。
余裕を持った工期を設定するためにも、DX化に役立つツールを使って積極的に効率化し、時間に余裕を持たせる必要があります。
特に施工管理においては、ICT技術を積極的に導入し、図面代わりにダブレット端末を持ち歩いたり、資料を保存できるクラウドサービスなどを活用したりして、作業を効率化していきましょう。
DX導入による効果 | 具体的な施策 |
---|---|
業務効率化 | BIM導入 CADシステムの更新 クラウドサービスの活用 |
残業時間削減 | 工事台帳自動化ツールの導入 図面や請求書のペーパーレス化 |
働き方改革 | リモートワークの導入 フレックスタイム制の導入 |
DXによって業務時間が短縮されれば、残業時間も減り、より働きやすい職場環境を作れます。
④適切な評価制度を設定しキャリアアップをサポートする
先程もお伝えしたように、施工管理の仕事は責任が大きく労働時間も長いため、モチベーションを保てずに離職してしまうケースが多いのが課題です。
自社内で適切な評価制度を設け、頑張りをきちんと評価することで、離職率の抑制を図る必要があります。
以下のように、資格取得の利点や昇進制度を明確化することで、キャリアアップをサポートしていきましょう。
- 資格取得支援を設ける…受験費用補助、資格取得のための研修提供
- 昇進制度の明確化…明確な昇進基準、キャリアパスを示す
- スキルアップ研修…専門性の高い研修、マネジメント研修などを行う
片っ端から一気に取り組むのではなく、状況に応じて優先順位を付けながら、段階的に取り組むことが重要です。
施工管理の人手不足にお悩みの方は「ネクスゲート」にご相談ください!
ここまで施工管理の人手不足の現状と対策について解説してきましたが、具体的な施策を実行に移すには専門的な知識やノウハウ、そして時間が必要となります。
人材確保に動いたは良いものの、本来の業務に集中できない…なんて事態に陥っては元も子もありません。
深刻な人手不足にお悩みの会社様やDXについてよくわからないという方は、ぜひ建設業界に精通した企業にコンサルを依頼してみましょう。
施工管理界に特化したDXツール「工事台帳アシストAI」を提供している弊社ネクスゲートも、施工管理の採用支援を行っているコンサル会社です。
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また、「そもそもDXが何なのかよく分かっていない…」という方は、以下の記事も併せてご覧ください。
▶参考:【今日からできる】施工管理がするべきDXとは?事例も交えて解説!
まとめ:施工管理の人手不足は採用のプロに相談がおすすめ!早めの相談を推奨◎
本記事では、深刻化する施工管理の人手不足の現状、その背景にある原因、そして効果的な対策について解説しました。
若手不足や高齢化といった社会問題はもちろん、低賃金や事故リスク、キャリアアップの難しさなど、業界全体の課題が施工管理部門にも影響していると言えるでしょう。
今回ご紹介した対策を参考にしながら、自社に最適な戦略を立てていきましょう。
また、人手不足の対策に割けるリソースがないという会社様は、建設業向けのコンサルティング依頼もご検討ください。
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