営業一人で改修工事とリース品を案内しながら、職人・監督・営業も採用したい少人数企業の現在地
三重県で改修工事と関連商品のリースを手がける、10名未満の建設会社がホームページのリニューアルを検討していました。営業担当は一人。現場は自社社員だけでは回しきれず、協力会社にも施工を依頼しています。
ホームページで実現したいことは、大きく二つありました。
- 改修工事に使える商品やリース品を、顧客にわかりやすく伝えたい
- 職人、現場監督、営業の採用につなげたい
「名刺のQRコードからホームページへ飛んでもらい、うちの商品がすぐわかるようにしたい。一方で、求人も盛り込みたい」という希望です。
営業面では、人手が足りず、すべての顧客へ十分に訪問できていません。紙のカタログを渡した後に、あらためてPDFの送付を求められることもあります。そのため、顧客自身が必要なときに商品情報を確認できる状態をつくりたいと考えていました。
採用面では、求職者が求人情報を見た後に会社名を検索し、ホームページを確認することを想定しています。ところが、現在のホームページだけでは、仕事内容や働く人の姿を十分に伝えられません。
この会社に必要なのは、営業用か採用用のどちらか一方に絞ったホームページではなく、顧客と求職者を迷わせず、それぞれが必要な情報へ進めるホームページです。
商品カタログと求人情報を同じ入口に詰め込むと、誰に何を伝えるページなのかが曖昧になる構成
営業にも採用にも使いたいと考えること自体に問題はありません。難しいのは、二つの目的を同じページ、同じ順番、同じ言葉で伝えようとすることです。
商品や工事を探している顧客が知りたいのは、主に次のような情報です。
- どのような工事に対応しているのか
- どのような商品やリース品を扱っているのか
- 自社の現場や案件に使えるのか
- 詳しい情報をどこで確認できるのか
- 相談や問い合わせをどう行えばよいのか
一方、求職者が確認したいのは、商品情報だけではありません。
- どのような仕事をするのか
- どのような人が働いているのか
- 社員がなぜ入社したのか
- 入社後にどのような段階を踏むのか
- 会社がどのような人を求めているのか
- どこから応募できるのか
同じ会社を見ていても、顧客と求職者では知りたいことも、次に取りたい行動も異なります。
一つのホームページに営業情報と採用情報を置くことはできますが、一つの導線に混ぜることは避けたほうがよいでしょう。
たとえば、名刺にQRコードを載せるだけでは十分ではありません。QRコードは簡単につくれますが、大切なのは読み取った後にどこへ案内するかです。商品に関心を持った顧客を採用情報の目立つトップページへ送ってしまうと、必要な資料を探す手間が生まれます。
反対に、求人媒体から訪れた求職者が商品カタログばかりのページを見ると、「どんな会社で、誰と、どのように働くのか」がわからず、そのまま離れてしまう可能性があります。
QRコードや求人媒体は入口にすぎません。ホームページ設計の中心になるのは、入口の先にある情報と行動までをつなぐことです。
「作る会社」と「内容を考える会社」の違いが見えにくく、リニューアルの比較軸を持てない状況
ホームページの構成を決めにくい背景には、制作の目的がまだ整理されていないことに加え、依頼先ごとの支援範囲がわかりにくいという事情があります。
相談企業も制作会社を探し始めていましたが、「作るだけの会社もあれば、公開後の保守まで対応する会社もある。何を基準に比較すればよいかわからない」と感じていました。AIを使い、自社で制作する方法も候補に挙がっていました。
現在は、AIやホームページ作成サービスを使えば、ページの形をつくること自体は以前より身近になっています。ただし、画面をつくれることと、営業や採用につながる内容を設計できることは別です。
実際に時間がかかるのは、次のような工程です。
- ホームページの主目的と優先順位を決める
- 顧客と求職者が必要とする情報を分ける
- 各ページで伝えるメッセージを決める
- 社員から入社理由や仕事の実情を聞く
- 掲載する文章と画像を用意する
- QRコードや求人情報からの移動先を決める
- 公開後に誰が情報を更新するか決める
採用ページでは、特に一つひとつの言葉が重要です。「人を募集しています」と載せるだけでは、求職者は自分に合う会社なのか判断できません。
ある少人数の専門工事会社では、現場で働く人の姿、社員紹介、入社したきっかけ、入社後のステップ、求める人物像まで整理して掲載していました。その内容は、制作会社が最初から用意したものではありません。社員への聞き取りを行い、会社側で伝えたい内容を設計したうえで、制作会社が画面に落とし込んでいました。
ホームページの成果を左右するのは、デザインの前にある企画、取材、原稿づくりです。制作会社へ依頼しても、この部分が自動的についてくるとは限りません。
営業用のページも同様です。紙のカタログをそのまま並べるだけでは、顧客が目的の商品へたどり着けるとは限りません。「何の工事に使える商品か」「どの情報を見れば判断できるか」という順番で整理する必要があります。
主目的を決めたうえで営業と採用の入口を分け、企画・原稿・更新まで含めて制作方法を選ぶ進め方
最初に行いたいのは、営業か採用のどちらかを切り捨てることではなく、ホームページ全体の主目的を決めることです。
相談企業の場合、営業担当が一人で顧客を回りきれないことと、職人・監督・営業を増やしたいことの両方がありました。どちらも必要ですが、制作時には「最初にどちらを強く整えるか」を決めたほうが、ページ構成と原稿作成が進みやすくなります。
判断するときは、次の三点を確認します。
- 今後1〜3年で、売上拡大と人員確保のどちらが事業上の制約になっているか
- 現在、ホームページへ来る可能性が高いのは顧客と求職者のどちらか
- 社内で情報を集めやすく、公開後も更新できるのはどちらか
主目的を決めても、もう一方を載せないわけではありません。トップページで会社の事業を簡潔に示し、「工事・商品を探している方」と「採用情報を見たい方」の入口を明確に分けます。
ホームページは一つでも、営業導線と採用導線は二つに分ける。この設計が、両方の目的を成立させる基本です。
営業向けには「何を扱っているか」から目的の情報へ進める構成にする
営業向けのページでは、工事と商品・リース品を混同させないことが大切です。顧客が最初に「工事を依頼したいのか」「商品を確認したいのか」を選べる構成にします。
名刺のQRコードは、必ずしもトップページへ送る必要はありません。商品案内を目的に名刺を渡すのであれば、商品一覧や対象商品のページへ直接案内する方法があります。紙一枚の資料からQRコードを読み取ってもらい、詳しい情報をホームページで確認してもらう形でもよいでしょう。
これにより、営業担当が毎回同じ資料を送り直す負担を減らしながら、顧客が必要なときに情報を確認できます。
採用向けには「会社の実像」と「入社後」を判断できる情報を載せる
採用ページは、募集要項だけで完結させないことが重要です。求人情報を見た求職者は、応募前や面接前に会社名を検索します。そのときに必要なのは、会社案内の文章だけではなく、働く場面を想像できる情報です。
相談内容を踏まえると、少なくとも次の情報を整理したいところです。
- 募集する職種と具体的な仕事内容
- 現場で働く社員や監督の紹介
- 社員が入社したきっかけ
- 入社後に経験する仕事の段階
- 会社が求める人物像
- 募集条件
- 応募フォームなどの連絡手段
これらは、社長一人で考えるよりも、現在働いている社員への聞き取りから言葉を集めるほうが具体的になります。「なぜこの会社に入ったのか」「入社前に気になったことは何か」「仕事を覚えるまでにどのような段階があったか」を確認すれば、求職者が知りたい内容を見つけやすくなります。
採用ページは会社が言いたいことを並べる場所ではなく、求職者が入社を判断するための材料を渡す場所です。
自社制作・AI活用・制作会社への依頼は、作業範囲で比較する
制作方法は、見た目や初期費用だけで決めず、誰がどこまで担当するかで比較すると整理しやすくなります。
自社制作やAI活用が向いているのは、社内で目的と構成を決められ、文章や画像を用意でき、公開後も自分たちで更新できる場合です。制作そのものは進めやすくなっていますが、顧客向けと求職者向けの情報設計までAI任せにすると、自社らしさや現場の具体性が薄くなることがあります。
制作会社へ依頼する場合は、デザインだけでなく、以下の範囲を確認します。
- 目的整理やページ構成の提案が含まれるか
- 社長や社員への取材に対応するか
- 原稿を誰が作成するか
- 画像を誰が準備するか
- QRコードや求人媒体からの導線まで設計するか
- 公開後の修正や保守に対応するか
- 社内でも更新できる仕組みになっているか
制作会社によっては、会社側が用意した文章や画像をページに反映することが中心になります。それ自体が悪いわけではありません。ただし、その場合は社内または別の支援者が、企画と原稿作成を担う必要があります。
制作方法を選ぶ基準は「きれいにつくれるか」だけではなく、「企画・取材・原稿・実装・更新の空白を誰が埋めるか」です。
最後に、公開後の担当も決めておきます。商品情報、募集職種、社員紹介は変化します。修正のたびに外部へ依頼するのか、簡単な部分は社内で直すのかによって、必要な保守内容も変わります。
最初からすべてのページを充実させることにこだわる必要はありません。主目的に関わるページを優先して公開し、その後に不足する情報を追加する進め方でも十分です。ただし、営業用と採用用の入口だけは、最初から分けておくことが大切です。
まとめ
営業にも採用にも使えるホームページはつくれます。ただし、顧客と求職者に同じ情報を同じ順番で見せる設計では、どちらにとっても使いにくくなります。
今回のように、商品・リース品を顧客へ案内したい一方で、職人や監督、営業も採用したい会社では、次の順番で整理すると進めやすくなります。
- 事業上の優先順位からホームページの主目的を決める
- 顧客向けと求職者向けの入口を分ける
- 営業ページでは工事と商品を探しやすくする
- 採用ページでは社員、入社理由、入社後のステップを伝える
- QRコードや求人情報から、目的に合うページへ直接つなぐ
- 企画、原稿、制作、公開後の更新を誰が担うか決める
営業と採用を一つのホームページで実現する鍵は、情報量を増やすことではなく、相手ごとに入口・情報・次の行動を分けることです。
営業と採用のどちらから整理するか迷っている方へ
ホームページをつくり直そうとしても、「営業と採用のどちらを優先するか」「必要なページは何か」「自社制作と制作会社への依頼のどちらが合うか」が決まらず、制作会社を比較できないことがあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。ホームページについても、制作だけを先に進めるのではなく、事業上の目的、営業と採用の導線、掲載する内容、公開後の更新体制から一緒に整理できます。
「うちの場合はどちらを主目的にすべきか」「まだ載せたい内容がまとまっていない」という段階でも問題ありません。無理に制作や契約を勧めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。