建設資材の高騰はいつまで続く?原因は?対策を専門家が解説!
新型コロナの拡大が引き金となり、建設資材の価格高騰が世界規模で課題視されています。
需要過多・供給不足の状態が2024年現在でも続いており、悲鳴を上げている建設企業の方も少なくないはずです。
2021年頃から右肩上がりで価格が高騰しているのが下のグラフからも見て取れます。
建設資材の高騰を受けて業界全体が危機に瀕しており、国土交通省も労務費にしわ寄せが行かないよう対策を施しているほどです。
・資材高騰など請負額に影響を及ぼす事象(リスク)の情報は、受注者から注文者に提供するよう義務化
・資材が高騰した際の請負代金等の「変更方法」を契約書記載事項として明確化
・資材高騰が顕在化した場合に、受注者が「変更方法」に従って契約変更協議を申し出たときは、注文者は、誠実に協議に応じる努力義務
引用:国土交通省『最近の建設業を巡る状況について【報告】』
世界情勢や日本の人口減少が建設コストを押し上げている状況は、今後も続くと予想されており、建設業界にとって優先的に取り組むべき課題と言えるでしょう。
そこで本記事では、建設資材が高騰した具体的な理由とともに、2024年以降の価格動向について解説していきます。
また、弊社では資材の高騰への対策の一つとして、最新ツール「工事台帳アシストAI」の導入をご提案しています。
原価管理を大幅に改善させるサポートツールとして、ぜひご活用ください。
受領書類をアップロードするだけ!面倒な手入力の業務はなくなります。
導入前と比較すると、工事台帳の作成業務を約80%も削減可能です。
資料請求はこちらからできます。
結論、建設資材が高騰している理由は8つある
現在、建設資材の価格が上昇している要因としては主に8つ挙げられます。
「〇〇が決定打」という訳ではなく、複数の要因が重なることで事態が深刻化しているのが実情です。
原材料の供給不足に加えて、円安や世界情勢も大きく影響しています。
輸入品価格の高騰を加速させている要因の一つひとつを詳しく見ていきましょう。
①ウッドショック
ウッドショックは、新型コロナ禍の影響でロックダウン解除後にアメリカやヨーロッパでの住宅需要が急増し、2021年頃に発生しました。
木材の需要が世界的に急増したことで日本市場での供給が間に合わなくなり、価格が急騰したのです。
詳細が気になる方は、経済産業省で当時連載されていたウッドショックについての記事などもチェックしてみてください。
▶参考:新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響
②アイアンショック
アイアンショックもウッドショックと同様、2021年頃に発生した鉄鋼材料の価格高騰です。
鉄鋼の主要生産国である中国が、国内需要の増加や環境規制強化により輸出量を減らしたことが発端とされています。
H形鋼(200×100)を例に取ると、コロナ禍で需要減となり、20年夏以降は1トン当たり7万4000円に張り付いていたが、21年に入って6カ月連続で高騰した。同年10月には43%増の10万6000円となり、今なお上昇基調で推移している。
引用:日経クロステック『「アイアンショック」が建築界を直撃 建築コストへの影響は?』
また、資源価格の上昇と輸送費の増加も重なり、鉄鋼の調達コストが急上昇。鉄骨構造の建物が多い日本において、この価格変動は工事全体のコストに直接影響を及ぼしているのが現状です。
③半導体不足
建設業でも半導体は重要な役割を果たしており、工事作業に使う大型機械や制御装置には不可欠な資材です。
しかし、ここでもコロナ禍の影響があり、自動車や電子機器の需要が急増したことでさまざまな業界での半導体不足が深刻化しています。
コロナが来てから家電を新しくしたり、PCをリモートワーク仕様にしたりした人も多いはず。
一見すると建設業界と関係が無いように思われることでも、実は資材高騰の一因になっているのです。
④ガソリンや電気代の高騰
月々の光熱費が高くなっているのは誰もが痛感していることですが、建設業界ももちろん例外ではありません。
ガソリン価格が上がると、工事に使う建設機械や資材の輸送費用がかさみ、プロジェクト全体のコストが膨らむことになります。
また、夜間に工事をしていたり、資材の加工に電力が必要になったりすると電力費も馬鹿になりません。
⑤コンテナ料金の高騰
新型コロナの影響で物流が停滞し、コンテナ運賃が急上昇していることも、建設資材の輸入コストを押し上げる原因となっています。
特に日本は多くの建設資材を海外から輸入しているため、国際輸送費が急増したことで資材コストももろに影響を受けることになりました。
今後も物流の混乱が解消されない限り、輸入資材の価格は安定しないと見られています。
⑥労務費の高騰
ここまでは主に新型コロナ関連の影響を見てきましたが、そもそも近年の日本において人手不足が深刻化しているという点も忘れてはいけません。
日本全体で若年層の建設業従事者が減る中、特に技能労働者の確保が難しくなっており、労務費を上げないと人手を確保できない状況に陥っています。
当然ながら、満足のいく給料が貰えないと職人さんは離れてしまいます。労務費は工事全体の質にも影響を与えるからこそ、簡単には削れないのです。
⑦ロシアとウクライナの戦争
コロナ禍が落ち着いてやっと経済が回り出すかと思われた矢先に始まった、ロシアとウクライナの戦争。
これによりエネルギーや資材の供給が不安定になり、建設資材のコストが大打撃を受けることになりました。
ロシアはエネルギー資源の供給国として重要な役割を担っているため、戦争に伴う制裁や供給制限、燃料価格の押し上げなどの影響が世界各国に波及しています。
しかも、ウクライナは金属の生産地としても知られており、供給不足によって鉄鋼価格の変動も招いているのです。
経済的に見ても良いことが一つもありませんね…
⑧低金利政策が起因の円安
これは建設業界に限った話ではありませんが、日本の低金利政策によって円安が進行し、すべての輸入品の価格が高騰しているのも原因の一つです。
先ほどもお伝えしたように、国内の建設資材の多くが海外から調達されているため、円安によって輸入コストが大幅に増加することになっています。
このように、世界情勢・円安・国内の人口動態など、さまざまな要素が絡み合って資材の高騰に歯止めがかからなくなっているのです。
建設資材の値上がり率を資材別に調査!【想像よりも高騰している】
上図は一般社団法人日本建築業連合会が2023年3月に発表した『建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に対するお願い』の資料の一部です。
資材別に見ると、異形棒鋼やコンクリート型枠用合板は2021年と比べて70%以上、鋼板やステンレス鋼板に至っては80%以上も高騰しています。
相対値で見ると板ガラスや生コンクリートは影響を受けていないようにも見えますが、それでも約20%以上の値上がりはかなりの痛手です。
建設資材の値上がりが想像以上に進んでいるのが見て取れますね…
自社でお使いの資材が今どれくらいの値になっているのか、定期的にチェックして今後の予算見積もりや発注計画を立てていく必要があります。
【専門家が考察】建設資材の高騰はいつまで続く?2024年以降も上がる?
結論からお伝えすると、建設資材の高騰は2024年以降も続く可能性が高いと予測されます。
ウッドショック・アイアンショック・半導体不足などの供給不足は依然として続いており、ウクライナ情勢や国内の低金利政策による円安もすぐに改善が見込める問題ではありません。
いずれも一時的なものではなく、解決には長期間を要する可能性が高いため、資材価格が安定するのはまだ先と言えるでしょう。
さらに、建設業界には「2024年問題」も控えています。
2024年4月から建設業における時間外労働の上限規制が適用されることで、労働環境の改善が求められ、人件費の増加や熟練労働者の不足がさらに深刻化する見込みです。
ただでさえ日本全体で団塊世代の退職と若年労働者の減少が加速している中、技術のある職人がどんどん不足すれば人件費の高騰は避けられません。
資材の高騰に加えて労務費の上昇も加わり、建設コスト全体の引き上げにつながる可能性があります。
加えて、物流業界の「2024年問題」もあります。
トラックドライバーに時間外労働の上限が設けられることで、物流コストもどんどん高騰するでしょう。
必要な資材を調達するだけで予算がとんでもないことになりそうですね…
このように、いくつもの構造的な問題が複雑に絡み合うことで、資材価格の高騰は2024年以降も続くと考えられます。
業界全体として、長期的な対応が求められているのです。
建設資材が高騰している時にするべき対策とは?
お伝えしてきたように、建設資材の高騰は収束する見込みがなく、何も対策をせずにいると経営が成り立たなくなります。
状況が変わるのをただ待つのではなく、自社内で改善できるところを一つひとつ見直して、着実にコストカットを図っていくことが大切です。
各企業に向けて発表されているガイドラインをチェックしたり、原価管理のやり方を変えてみたりするなど、日常的な業務から変えていきましょう。
弊社が提供する「工事台帳アシストAI」では、原価管理に関わるデータをスピーディに整理できる機能を搭載しています。
2024年の最新ツールですので、ぜひお試しください。
受領書類をアップロードするだけ!面倒な手入力の業務はなくなります。
導入前と比較すると、工事台帳の作成業務を約80%も削減可能です。
資料請求はこちらからできます。
業務を効率化する
建設資材の高騰とは無関係のように思われるかもしれませんが、業務効率化は最も手軽に始められる対策の一つです。
一つの業務にかかる時間を短縮できれば、従業員一人当たりの業務の幅が増え、結果的に人件費削減といったことに繋がります。
特に原価管理は経営に直結するため、最優先で取り組むべきタスクと言えるでしょう。
業務効率化の具体的な方法についてはさまざまなテーマに分けて解説しています。
ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
原価管理を効率化できるシステムについて知りたい方はこちら
▶:建設業向けの原価管理ソフト10選!自社に最適なシステムを選ぶポイントも解説!
建設DXについてまず知りたい方はこちら
▶:建設業界のDX進まない理由とは?最初にやるべきことも解説。
日建連の要請に従った動きをする
止まらない資材高騰の流れを受けて、一般社団法人・日本建設業連合会(日建連)は2022年4月、発注者や元請負人に対して要請を出しました。
内容は簡単にまとめると、工事を進める上での負担を軽減し、建設会社が安定してプロジェクトを遂行できるようにするための配慮です。
1.直近の資材価格や調達状況を反映した価格・工期での契約締結
2.民間建設工事標準請負契約約款を活用した契約締結
3.既に締結された契約における資材高騰に伴う個別協議
引用:一般社団法人日本建設業連合会『建設資材高騰・品不足に係るご協力のお願い』
このように資材高騰のしわ寄せが一か所に集中しないよう、業界全体での協力を呼びかけています。
まずは上記の3点をしっかり守るところから始めていくことで、不安定な情勢の中でも着実に工事を進められるでしょう。
まとめ:建設資材が高騰している時こそ「原価管理」を見直そう!
以上、今回は建設資材の高騰が止まらない現状について、その原因と対策の方法をご紹介しました。
改めて今後の見通しについてまとめると、以下の通り改善の見込みはしばらくありません。
- ウッドショック&アイアンショック⇒依然として継続
- ウクライナ戦争&政府の低金利政策⇒今すぐの変化は見込めない
- 2024年問題⇒業務時間が短くなり、物流コストも上昇
さまざまな要因が複雑に絡み合っているため、これらの問題が一つずつ解消されたとしても、建設業界全体に影響するまでには時間がかかると考えられます。
情勢が変わるのを待つのではなく、自社内で資材調達やコスト管理の工夫を図り、長期的な視点で経営戦略を立てていくことが求められるでしょう。
弊社ネクスゲートでは、原価管理を改善していくデジタルツールとして「工事台帳アシストAI」を開発・運用し、建設業の働き方改革をお手伝いしています。
工事のコストを見直すためには、まず工事台帳を正確に記録し、そのうえでデータ分析に基づく経営改善を図っていく必要があります。
時間のかかる管理業務を「工事台帳アシストAI」に丸投げして、データ化した数字を今後の計画に役立てられるのが最大のメリットです。
ネクスゲートによる運用サポートも行っておりますので、「コストカットに向けてどのように活用していけば良いのか」といったお悩みがある場合でもご安心ください。