約2,400店舗の設備保守を支える、Excel中心の点検・修理記録
店舗ごとの機器情報と、機器ごとの点検・修理履歴を、Excel中心で管理している設備保守会社の相談です。 対象は、空調機や冷蔵設備など。管理対象の店舗は約2,400店です。規模感は匿名化のため一部調整しています。
1店舗にある対象機器は25台前後。機器情報だけでも約6万件になります。そのうえに、簡易点検や修理の記録が積み重なります。
目指している仕組みは、顧客を選ぶと店舗一覧が出て、店舗を選ぶと機器一覧が見えるものです。各機器には、点検や修理の履歴をひもづけます。
ただし、現状は「Excelで力任せにやっている」という状態でした。
「社内にあることはありますけど、正直まともに管理できていないので」
記録がないわけではありません。けれど、必要なときに取り出して使える状態には整っていません。新しいシステムを考えるうえで、この過去記録をどこまで移すかが、一つの大きな論点になっていました。
過去のExcelをすべて移す前提では、新しい記録管理を始めにくい状況
過去記録の全件移行を導入条件にすると、これからの記録を整える取り組みまで止まりかねません。 今回も、担当者はその点をはっきり捉えていました。
「そこは区切ろう。区切らないと無理だな、と」
大量のExcelが十分に管理されていない状態では、移したい記録がどれだけあるか、その内容をそのまま使えるかを確かめる必要があります。これをすべて終えてから運用開始とすると、システムの準備とは別に、過去記録の整理が大きな前提になります。
そこで考えていたのが、年度の切り替わりを区切りにする方法です。
「4月1日の修繕分からは、きっちり入れていきたいです」
これは、過去の情報を不要とする話ではありません。「過去をどう残すか」と「いつから新しい履歴を確実に蓄積するか」を、分けて決める考え方です。
新しい記録をため始めるために、過去のすべてを同じ形式へそろえる必要があるのか。まずは、そこから整理できます。
現在の機器一覧と、積み重なった点検・修理履歴の混在
機器の現在地を示す情報と、過去に行った作業の記録では、整え方が異なります。 この違いが、移行範囲を決める手がかりになります。
相談では、店舗ごとの機器一覧は現地調査で集める方針でした。
「機器一覧は調査します」
つまり、いま設置されている機器を確認し、新システムの土台となる機器マスターを整える計画です。一方、点検・修理履歴は、その機器に対して後から積み重ねる情報です。
修理の場合は、完了報告書に作業内容や冷媒の充塡量などが記載されます。そこから必要な情報を拾い、機器ごとの記録へ入力する想定でした。ただし、保守会社側が入れるのか、顧客側の管理担当者が入れるのかは、まだ決まっていませんでした。
また、過去記録には、残しておきたい理由もあります。顧客からは、古い機器を条件付きで抽出し、入れ替えを検討したいという要望が想定されていました。
「機械を入れ替えたいとなると、過去の分も追えなきゃいけないので」
システム移行の負担を減らすことと、将来必要な履歴を残すことは、両立させて考える必要があります。 法令上の保存要件だけでなく、設備更新の検討など、業務上の参照目的も確認したいところです。
機器マスターを先に整え、基準日以降の履歴から蓄積する進め方
初期段階は「機器情報をそろえること」と「冷媒の漏えい量を把握できる記録を残すこと」に絞ると、移行の範囲を決めやすくなります。 相談でも、この二つが出発点として挙がっていました。
「まずは漏えい量を確実に押さえるところじゃないですか」
その方針を実際の準備につなげるには、次の順で整理すると見通しが立ちます。
現地調査で整える機器情報を、履歴とは別に扱う
最初にそろえるのは、どの店舗に、どの機器があるかという情報です。過去の修理記録を全部移す作業とは、切り分けて進めます。
顧客・店舗情報は、既存の保守管理システムを基準にする想定でした。初期段階では、自動連携にこだわらず、CSVを読み込んで更新する方法も検討されています。
機器のひもづけ方にも注意が必要です。店舗のブランドが変わっても、空調機や冷蔵設備はそのまま残ることがあります。相談では、店舗IDだけでなく、建物を識別するIDを持たせる考えが示されていました。
店舗名やブランドが変わっても、同じ機器の履歴を追えることが、機器マスターを整える際の判断軸です。 最初の登録だけでなく、その後も履歴が途切れない持ち方を確認します。
記録開始の基準日と、入力を担う人を決める
次に、いつの作業分から新しい仕組みに記録するかを決めます。この会社では、4月1日の修繕分を区切りにする案がありました。
運用開始が多少遅れても、その日以降の記録は後から入力できると考えていました。ここでは、システムが使えるようになる日と、記録対象にする作業の開始日を分けています。
ただし、基準日だけ決めても記録は蓄積しません。完了報告書から必要な情報を拾う担当も、一緒に決める必要があります。
- どの日付の作業から新システムの記録対象にするか
- 完了報告書から、誰が点検・修理情報を入力するか
- 運用開始までに発生した対象記録を、誰が後追いで入力するか
「いつから残すか」と「誰が残すか」を一組で決めることが、新しいExcelを増やすだけで終わらせないための準備です。
過去のExcelは、保存と参照の要件を確認して扱いを決める
過去記録は、全件移行か削除かの二択にしないことが大切です。まず、何を残す必要があり、何を見返せる必要があるかを確認します。
法令上の保存対象や保存期間は、対象機器や記録の種類、廃棄との関係も含めて、適用される要件を確かめます。そのうえで、顧客が設備更新の検討に使いたい情報も整理します。
確認するのは、たとえば「旧Excelを参照できれば足りるのか」「新システムで機器ごとに検索する必要があるのか」という違いです。
保存が必要な記録と、新システムへの取り込みが必要な記録は、同じとは限りません。 旧データをどのように保管・参照するかも含めて、移行対象を判断します。必要な保存・参照要件が確認できるまでは、安易に処分しない方針が前提です。
帳票や添付書類の管理は、初期機能と切り分ける
冷媒の再生・破壊に関する書類や引渡し書類については、管理方法が未確定でした。これらを新システムでどこまで扱うかは、機器情報や履歴の登録とは別に整理する必要があります。
漏えい量の集計も、最初からすべてをシステム内で完結させる案だけではありませんでした。必要なデータをCSVで出力できれば、外で集計する方法も考えられていました。
初期機能から外すことは、必要な書類管理や対応を省くことではありません。 当面どこで管理するかを確認し、システムに載せる範囲と時期を分けて決めます。
まとめ
設備の点検・修理記録のシステム移行は、過去のExcelをすべて整理し終えることだけが出発点ではありません。 現地調査で現在の機器情報を整え、基準日以降の履歴を確実に蓄積する進め方もあります。
その際は、機器マスター、これからの履歴、過去記録の扱いを分けて考えます。初期段階では、機器情報と冷媒の漏えい量の把握を優先します。帳票や添付書類の機能は、必要な管理を続けながら、追加範囲として整理できます。
大切なのは、過去を切り捨てることではありません。必要な記録を残しつつ、これからの記録管理を始められる区切りをつくることです。
Excelからの移行範囲を、自社の設備保守業務に合わせて整理するために
「どの過去データを移すべきか」「機器情報と修理履歴のどちらから手をつけるか」という段階から整理できます。 システムの仕様が決まっていなくても構いません。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場業務から組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。設備記録の管理でも、現在のExcelの使い方や報告書の流れを踏まえ、移行範囲と運用開始までの優先順位を一緒に考えます。
「うちの場合はどう区切ればよいか」というご相談でも大丈夫です。無理に導入や契約をお勧めすることはありません。次に何を決めるかを整理する場としてご活用ください。