前提

見積もり・手配・工程管理をまとめて変えようとしているリフォーム会社の現在地

リフォームや原状回復工事を手がける、ある中小建設会社では、売上拡大に向けて営業人員の採用を進めていました。同時に、工程管理や見積もり、職人の手配、社内の売上管理なども見直そうとしていました。

社内にはすでに、施工管理システム、取引先指定の案件管理システム、Excel、社内向けの売上管理システムなどが混在しています。クラウドカレンダーへの移行も検討中です。

ただ、対象業務が広く、全体像がまだ見えていません。

「現状、どこをどう変えたらいいのかが分からない。今は全方位になっている」

そんな状態でした。

建設会社のDXでは、システム選定より先に、誰がどの業務で何を使い、どこに時間がかかっているかを把握する必要があります。

ツールを入れること自体が目的ではありません。営業が案件を取ったあとも、施工品質を落とさず、社内が無理なく回る状態をつくることが目的です。

課題

すべてを一括導入しようとすると、本当に詰まっている業務が見えにくくなる状態

この会社では、当初、施工管理システムに複数の業務をまとめて載せようとしていました。しかし、話を整理していくと、短期的に使える領域と、中長期では別の方法を考えたほうがよい領域が混ざっていました。

たとえば、工程や予定の共有には新しいシステムが使えるかもしれません。一方、見積もりは取引先ごとに形式が異なります。ある取引先の案件では指定システムを使えても、別の管理会社の案件ではExcelが中心です。

営業先が増えれば、取引先ごとに別のシステムへデータを登録する可能性もあります。特定の取引先に合わせて作り込みすぎると、新規案件への対応力を狭めかねません。

「全部を一度に入れるのではなく、範囲を絞って、ここだけ短期的に切り替える形がよさそうだ」

この整理が重要です。

一括導入を前提にすると、現場に合わない機能まで移行対象になり、判断項目と調整作業だけが増えてしまいます。

DXの対象が広い会社ほど、最初からきれいな完成形をつくろうとしないほうが進みやすくなります。全体を把握する作業と、目の前の詰まりを解消する作業を分ける必要があります。

背景

粗い見積もりを職人向けの手配書へ直す工程に、経験者の判断が集中している構造

業務を具体的に確認すると、負荷が大きかったのは業者との連絡やスケジュール調整そのものではありませんでした。営業が作成した見積もりを、職人が動ける手配書に変換する工程でした。

営業側の見積もりは「一式」で記載されることがあります。手配担当者は、現場写真を見直し、寸法を測り、必要な材料と数量を拾います。さらに、施工漏れが起きないように作業項目を細かく分解し、職人への指示書に落とし込みます。

「ざっくり作った見積もりを、職人には細かく指示しないと、『これはやっていない』となってしまう。そこを網羅して手配書にするのに時間がかかっています」

見積もりと手配が切れているため、手配側で再確認と再計算が発生しています。この作業には現場知識が必要です。単純に事務員を増やせば、そのまま解決する仕事でもありません。

実際、経験の浅い担当者が一人で手配できるまでには、約1年かけて人力で教えていました。

ボトルネックは「人が足りないこと」だけではなく、営業が持つ情報を、施工に必要な粒度へ変換する工程が標準化されていないことでした。

このまま営業採用だけを進めて受注が増えると、手配業務に案件が集中します。売上は伸びても、施工品質を保つ側が追いつかない可能性があります。

「人を採って仕事を増やしたい。でも、今の体制では品質を保てなくなるのではないか」

この不安が、DXを検討する本当の背景にありました。

解決

現場ヒアリングから業務を残す・仕組み化する・外へ切り出す順番

最初に行いたいのは、導入するシステムを決めることではありません。経理、営業事務、手配担当など、実際に各ツールを触っている人へのヒアリングです。

確認したい内容は、次の通りです。

  • 誰が、どの業務を担当しているか
  • どのシステムやExcelを使っているか
  • 同じ情報を何回入力しているか
  • どこで写真や図面を見直しているか
  • どの作業に現場経験が必要か
  • どこで待ち時間、手戻り、確認漏れが起きるか
  • 受注が増えたとき、最初に処理しきれなくなる業務は何か

課題を「ツール単位」ではなく、「案件が営業から施工へ流れる順番」で確認することがポイントです。

そのうえで、業務を三つに分けます。

1.短期的に既存ツールを残す領域

問題なく回っている業務まで、無理に変える必要はありません。

たとえば、見積もり形式が取引先ごとに異なり、統一条件がまだ見えていないなら、短期的にはExcelや既存システムを残す選択肢があります。先に工程共有やカレンダーなど、比較的ルールを揃えやすい領域から切り替える方法もあります。

判断軸は、次の三つです。

  • 変更による効果を見込みやすいか
  • 現場の混乱が小さいか
  • 後から別の仕組みに移行できるか

残すことは先送りではありません。全体像が見えるまで、変更範囲を限定する経営判断です。

2.システム化する領域

システム化の優先候補は、繰り返し発生し、入力項目を一定の型にできる業務です。

今回であれば、営業見積もりから手配書への変換が該当します。見積もり段階で、施工箇所、寸法、材料、数量、作業内容を選択式で入力できれば、手配側の拾い直しを減らせる可能性があります。

見積もり情報を、そのまま材料発注や職人への指示につなげられれば、粗利管理にも活用できます。ただし、いきなり全工種へ広げるのは避けたいところです。

まずは、件数が多く、作業内容を定型化しやすい工事に絞ります。小さな範囲で試し、次の点を確認します。

  • 手配書の作成時間が減ったか
  • 確認の往復が減ったか
  • 材料や作業の拾い漏れが減ったか
  • 経験の浅い担当者でも扱えるか
  • 現場で指示内容が伝わりやすくなったか

優先順位は「システム化しやすい業務」ではなく、「改善したときに施工品質と処理能力へ大きく効く業務」から付けます。

3.外注やリモート人材へ切り出す領域

すべてを社内システムで解決する必要もありません。

写真整理など、判断基準を決めやすい業務は外部へ切り出せます。手配業務の一部も、リフォームや建設事務の経験がある人材であれば、リモートで対応できる可能性があります。

この会社でも、建設関連の事務経験があるパート社員が手配業務に入っていました。その延長で、経験者が担える作業をさらに細かく分ける考え方です。

ただし、現場写真から追加工事を判断する仕事や、施工条件に応じて材料を選ぶ仕事まで、最初から外へ出すのは難しいでしょう。まずは、社内でしかできない判断と、ルールがあれば処理できる作業を分けます。

DX、人材採用、外注は別々の施策ではなく、限られた社内人材をどの判断業務へ集中させるかという一つの設計です。

また、メールやカレンダーなどの環境移行では、データ移行やセキュリティ設定が発生します。なりすましメールやWebサイトの安全性に関する懸念も出ていました。この領域は、社内だけで無理に進めず、信頼できる外部事業者へ任せるほうが進めやすい場合があります。

投資判断では、採用と業務改善を対立させないことも大切です。営業人員を増やして受注を伸ばすなら、手配と施工管理の処理能力も同時に引き上げる必要があります。

売上拡大と施工品質の維持を両立するには、採用と業務改善を同時進行で考える必要があります。

いきなり大規模開発へ進むのではなく、ボトルネックの特定、小規模な検証、効果測定、対象範囲の拡大という順番にすれば、投資判断もしやすくなります。

まとめ

建設会社のDXが進まないとき、原因が現場の抵抗にあるとは限りません。工程管理、見積もり、手配、売上管理などを一度に変えようとして、優先順位が見えなくなっていることがあります。

今回の会社では、営業見積もりを職人向けの手配書へ直す工程に、経験者の時間が集中していました。ここを放置したまま受注だけを増やせば、手配の負荷が上がり、施工品質にも影響します。

進め方はシンプルです。

  1. 現場担当者へヒアリングする
  2. 既存のシステムとExcelを棚卸しする
  3. 案件の流れに沿ってボトルネックを特定する
  4. 既存ツールを残す領域を決める
  5. システム化する領域を小さく試す
  6. 外注・リモート人材へ切り出せる作業を分ける
  7. 採用と業務改善を並行して進める

最初に決めるべきなのは「どのシステムを入れるか」ではなく、「受注が増えたとき、どの業務が最初に詰まり、品質へ影響するか」です。

その一点が見えれば、DXの優先順位も、必要な投資額も、人を配置する場所も整理しやすくなります。

自社のDXで最初に整理する業務を見つけたい方へ

「複数のシステムが混在していて、どこから見直せばよいか分からない」「採用を進めたいが、今の業務体制で案件を増やしてよいか迷う」という段階でも、課題を整理することはできます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の業務を、現場、採用、組織、原価管理、デジタル活用まで横断して整理しています。既存ツールを残す領域、仕組み化する領域、外部人材へ切り出す領域を分け、実行まで支援します。

「うちの場合は何がボトルネックなのか」を確認するところからでも問題ありません。無理にシステム導入を勧めることはありませんので、社内だけでは整理しにくいときは気軽にお声がけください。

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