前提

採用サイトの制作と社内改革が同時に進む首都圏の専門工事会社

首都圏にある30人弱の専門工事会社では、若手職人や施工管理を採用するため、新しい採用サイトの制作を進めていました。

サイトの方向性として掲げたのは、大手住宅メーカーの品質基準を守る現場力と、チームで人を育てる温かさです。創業の歩み、仕事や技術、職種別の採用情報、社員インタビューなどを掲載し、若手から中堅・ベテランまで幅広く魅力を伝える構想でした。

一方、社内では大きな改革が進んでいました。複数の部門がそれぞれ異なる事情を抱え、社員も変化による負担を感じながら仕事をしている状況です。

担当者からは、こんな率直な言葉が出ています。

「会社が大きく変わっている途中なので、みんな少しずつ負担を感じています。そんな状態で社員インタビューをうまく撮れるのか、心配です」

採用サイトを作り始めると、どうしても会社の長所を中心に整理したくなります。しかし、採用と社内改革が同時に進む会社ほど、見せ方だけを先に整えるのは避けたいところです。

採用サイトの制作時点で社員が負担や不満を抱えているなら、その声を隠すのではなく、採用と組織改善の両方に生かす必要があります。

課題

良いことだけを並べた採用サイトが入社後のギャップを生む構造

採用サイトがきれいでも、そこで表現された会社と実際の職場に差があれば、人は定着しにくくなります。

たとえば、サイトでは「チームワーク」「安心して腕を磨ける環境」「人を大切に育てる会社」と伝えていても、現場では部門間の認識がそろわず、社員が改革の負担を抱えているかもしれません。応募者がその実態を知らずに入社すれば、働き始めてから違和感が生まれます。

「当たり障りのない人に頼んで、当たり障りのないことを聞いて、当たり障りのないホームページを作っても、入った人が現実を知れば辞めてしまいます」

これは、会社の魅力を伝えてはいけないという話ではありません。問題は、長所だけを切り取り、いま会社が向き合っている課題や変化まで見えなくしてしまうことです。

採用サイトは、応募者を集める入口です。ただし、採用の目的は応募数を増やすことではなく、自社に合う人が入り、働き続けられる状態をつくることにあります。

そのため、採用サイトと組織の中身は切り離せません。

採用の入口だけを磨いても、組織の中身との間に差があれば、応募は増えても早期離職が起こりやすくなります。

背景

改革の負担を抱える社員ほど経営者には本音を話しにくい状況

社員の本音を採用に生かしにくい背景には、経営者と社員の間に話し合いの場が少ないことがあります。

この会社でも、社員との個別面談を十分に行えておらず、経営側から見えない部分が残っていました。社員が何に負担を感じているのか。仕事が回りにくい原因はどこにあるのか。会社の良さをどう捉えているのか。経営側が「だいたい分かっている」と思っていても、本人の言葉で確かめる機会は限られていました。

改革期には、役割や仕事の進め方が変わります。職人にとっては、自分の仕事がうまく回るかどうかが大きな関心事です。経営側が前向きな改革だと考えていても、現場では日々の負荷として受け止められる場合があります。

さらに、経営者が直接「不満はないか」と聞いても、社員は答えを選びます。会社への批判だと思われたくない。誰が話したか分かるのが心配。言っても変わらないと思っている。こうした状態では、本音を聞く場を設けても、無難な話だけで終わりかねません。

だからこそ、採用サイトの制作担当者が会社の良いところだけを聞くのではなく、第三者が一対一で話を聞く意味があります。

社員の本音が見えないのは、社員に意見がないからではなく、安心して話せる場と質問が用意されていないことが一因です。

解決

第三者面談で集めた声を公開情報と社内改善に分けて扱う進め方

社員インタビューは、採用サイトに載せるコメントを集めるだけの時間にしないことが大切です。採用のための取材と、組織の状態を知る面談を兼ねて設計すると、同じ社員の声を二つの目的に生かせます。

1.まず全社員に同じ説明をする

面談を始める前に、会社が目指す方向と面談の目的を全員へ伝えます。

伝え方は難しく考えなくても構いません。

「会社改革と人材採用を進めるため、いま働いている皆さんの本音を外部の人に聞いてもらいたいです。手伝ってもらえる人はいますか」

この程度の率直な説明で十分です。

一部の社員だけに先に声をかけると、「会社に都合の良い人が選ばれた」と受け取られる可能性があります。まず全員に目的を伝え、そのうえで協力できる人を募る方が進めやすくなります。

会社にとって話しやすい社員を選ぶのではなく、全員へ目的を説明し、協力者を募るところから始めます。

2.全員参加を無理に求めない

面談は、最初から全社員を対象にしなくても構いません。まずは「話してもよい」と手を挙げた社員から始めます。

この会社でも、全員へ投げかけたうえで、協力してくれる社員を数人選び、一人あたり約1時間の個別面談を行う案が出ました。対面が難しい場合はオンラインも選択肢になりますが、話しやすさを優先して方法を決めます。

協力者が集まらない場合は、社員の姿勢だけを問題にしないことも大切です。目的の説明が足りないのか、誰に何が共有されるのか分からないのか、勤務中に時間を確保できないのかを改めて整理します。

3.魅力と課題を同じ面談で聞く

質問は、採用サイト向けの前向きな内容だけに寄せません。次のように、入社理由、仕事の実態、会社の長所、現在の負担、改善案まで一続きで聞きます。

  • なぜこの会社に入ったのか
  • 入社前に想像していた仕事と、実際の仕事に違いはあったか
  • 現在、どのような仕事を担当しているか
  • 技術が身についたと感じた経験は何か
  • この会社だからできる仕事は何か
  • 仕事がうまく回らないと感じるのはどのような場面か
  • 会社の変化によって負担が増えた部分はあるか
  • これから入る人に、事前に知っておいてほしいことは何か
  • 会社が変わるとしたら、何が変わると働きやすくなるか

大事なのは、「会社の良いところは何ですか」とだけ聞かないことです。事実や経験を聞き、その社員が使った言葉を拾います。

若手職人、中堅職人、施工管理では、仕事の見え方が違います。複数の立場から話を聞くことで、一つのきれいな物語ではなく、会社の実像に近い採用情報になります。

本音を引き出す質問は、会社への評価を求めるのではなく、入社前後の違い、仕事の実態、負担、改善案を具体的に聞く形にします。

4.公開する内容と社内で改善する内容を分ける

面談で出た話を、すべて採用サイトに載せる必要はありません。聞いた内容は、少なくとも次の二つに分けます。

  • 応募者へ伝える採用情報
  • 経営側が向き合う社内改善事項

採用情報として使いやすいのは、入社理由、仕事の面白さ、技術習得の実感、チームの関わり方、入社前に知っておきたい仕事の厳しさなどです。

一方、特定の人間関係、部門間の問題、個人が推測できる不満などは、そのまま公開するものではありません。論点を整理し、社内の改善課題として扱います。

また、面談内容を誰まで共有するのか、本人の言葉を公開するときに確認を取るのかも、面談前に決めておきたいところです。公開範囲が曖昧なままでは、第三者が聞いても本音は出にくくなります。

社員の声は、応募者に伝える情報と、経営側が改善する情報に切り分け、公開範囲を事前に明確にします。

5.課題だけでなく「変わろうとしている事実」も伝える

採用サイトに課題をそのまま並べる必要はありません。伝えるべきなのは、会社が完璧であることではなく、現在地を認識し、変えようとしていることです。

たとえば、社員から教育や部門間連携への課題が出た場合、「教育体制は万全です」と表現するのではなく、現状とこれからの取り組みが分かる形にします。

会社の魅力に加えて、仕事の難しさ、求められる姿勢、整備途中の部分を適切に伝えれば、応募者も自分に合う会社かどうかを判断できます。結果として、応募数だけでなく入社後の納得感を高めやすくなります。

採用サイトでは弱みを隠すのではなく、現在地と改善の方向をセットで示すことが、入社後のギャップを減らします。

6.面談後は改善担当と期限を決める

社員の話を聞くだけで終わると、「話したけれど何も変わらなかった」という受け止めにつながります。面談後は、出てきた課題を次の軸で整理します。

  • すぐに変えられること
  • 部門間の調整が必要なこと
  • 経営判断が必要なこと
  • 採用サイトへ反映すること
  • 今回は対応しないこと

すべてを一度に解決する必要はありません。優先順位を決め、誰がいつまでに確認するかを明確にします。そして社員には、何を受け止め、何から着手するのかを返します。

この返答があることで、社員インタビューは単なる採用素材集めではなく、会社を一歩前へ進める機会になります。

社員面談は、話を聞いて終わりではなく、採用サイトへの反映と社内改善の担当・優先順位まで決めて完了します。

まとめ

採用サイトの見た目を整えることは大切です。ただし、人の定着まで考えるなら、入口と組織の中身を一緒に見ていく必要があります。

改革期には、社員が変化の負担を抱えることもあります。その声を避けて会社の長所だけを掲載すると、入社後のギャップが広がりかねません。

第三者による社員面談を活用し、全員への説明、協力者の募集、一対一の面談、質問設計、公開情報と改善事項の切り分けまで行えば、社員の声は採用にも組織改善にも生かせます。

採用サイトと組織改善は両輪です。社員の本音を起点に、伝える内容と変える内容を整理することが、採用後の定着につながります。

社員の本音を採用と組織改善につなげるための整理

「社員へどう説明すればよいか分からない」「経営側が直接聞くと本音が出ない」「採用サイトにどこまで載せるべきか判断できない」という段階でも、論点を一つずつ整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の人材課題を、採用だけでなく、現場や教育体制、組織づくりまで横断して整理し、実行まで支援しています。社員面談の設計や採用コンテンツへの反映など、自社だけでは進めにくい部分から一緒に考えることも可能です。

無理に施策や契約を勧めることはありません。まずは「うちの場合、何から整理すればよいか」を確認する場としてご活用ください。

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