前提

求人を出せば一定数の応募が来た時代から、求職者の居場所が分散した現在地

採用媒体に求人を掲載しても、以前のようには職人が集まらなくなっています。

以前は主要な求人媒体が限られており、求職者が集まる場所もある程度決まっていました。大手企業は多額の予算を投じ、中小企業も求人を掲載しておけば、一定の応募を期待できました。

ところが現在は、求人検索サービス、業界特化型媒体、地域の求人サイト、学校経由の採用など、候補者との接点が細かく分かれています。採用サービスを提供する会社も増え、「求人を探す池」がいくつもある状態です。

ある専門工事会社からも、次のような声が出ていました。

「定期的に採用はしているのですが、新しい人がなかなか入ってきません」

この状況では、従来と同じ媒体へ同じ求人を掲載し続けても、求める人材に届いているとは限りません。いま見直すべきなのは掲載回数ではなく、『どこにいる、どのような人へ、何を伝えるか』という採用設計です。

課題

媒体への掲載が先行し、自社を選ぶ理由が求人票から伝わっていない状態

職人採用が難しい会社では、「どの媒体に出すか」から検討を始めがちです。しかし、媒体を変えるだけでは結果が大きく変わらないこともあります。

その理由は、求人票に書くべき自社の魅力が整理されていないからです。

給与、休日、勤務地、資格支援といった条件はもちろん必要です。ただし、似た条件の求人が並ぶなかでは、それだけで候補者に選んでもらうのは簡単ではありません。とくに専門工事の仕事は、未経験者から見ると業務の違いが分かりにくく、仕事内容を一般的な表現に整えすぎるほど印象に残らなくなります。

東北地方にある十数名規模の点検工事会社でも、経営者は「汚れる仕事ですし、においもつきます。うちの何を魅力として伝えればよいのか分かりません」と、採用を半ば諦めかけていました。

しかし、仕事の特徴を隠して万人受けを狙うと、その会社ならではの面白さまで消えてしまいます。採用で必要なのは、100人全員に好かれる求人ではなく、自社の仕事に興味を持つ少数の候補者へ強く届く求人です。

背景

経営者には当たり前になった仕事の魅力と、候補者が知りたい情報とのずれ

自社の魅力を経営者だけで言語化するのは、意外に難しいものです。長く仕事をしているほど、日々の業務や社内の良さが当たり前になっているからです。

そこで手掛かりになるのが、現在働いている社員の言葉です。社員へのヒアリングでは、きれいな採用メッセージを作ろうとするより、次のような事実を拾っていきます。

  • なぜこの会社へ入ったのか
  • 入社前に不安だったことは何か
  • 実際に働いてみて印象が変わったことは何か
  • どの仕事に面白さや達成感を感じるか
  • どのような人なら現場になじみやすいか
  • 前職や他社との違いをどこに感じるか

経営者が弱みだと思っていた点を、社員は仕事の希少性や面白さとして捉えている場合もあります。

先ほどの点検工事会社では、無料の求人掲載枠を使い、求人を出しては表現を直す検証を20回ほど繰り返しました。最終的に反応が得られたのは、「マンホールの中に入れる仕事です」という、仕事内容をそのまま前面に出したキャッチコピーでした。その後は、毎年数名を採用できる状態につながっています。

「マンホールの中がどうなっているのか、少し気になる」と感じる人は多くないかもしれません。しかし、その好奇心を持つ人には強く届きます。

採用上の魅力は、立派な理念から作るものとは限りません。社員が入社を決めた理由や、現場で感じている仕事の面白さのなかに、候補者へ届く言葉があります。

解決

社員の言葉を起点に、媒体・地域・キャッチコピーを小さく検証する進め方

採用を立て直す際は、最初から有料媒体へ大きな予算を投じるのではなく、順番を決めて小さく検証する方法が現実的です。

1.欲しい人材を一つの人物像まで絞る

「若い職人が欲しい」だけでは、媒体も訴求も決まりません。まずは、経験の有無、年齢層、居住地域、前職、将来任せたい仕事まで整理します。

たとえば、即戦力の中堅職人を求める場合と、高校卒業後の未経験者を育てる場合では、接点を持つべき場所も伝える内容も異なります。採用対象を広げるほど応募が増えるとは限らず、人物像を絞ったほうが求人の言葉は具体的になります。

2.社員へのヒアリングで自社の魅力を言語化する

次に、対象となる人材に近い社員へ話を聞きます。経営者の理想だけではなく、社員が実際に感じている魅力を集めることが大切です。

ここでは、良い面だけを探す必要はありません。「体力は必要だが、毎日同じ作業ではない」「汚れることはあるが、普段は見られない場所に入れる」など、仕事の大変さと面白さをセットで整理すると、入社後の実態が伝わりやすくなります。

3.欲しい人材がいる媒体と地域を選ぶ

媒体は知名度だけで選ばず、欲しい人材が利用しているかどうかで判断します。地域によって求人への反応や人材の動き方も異なるため、掲載エリアも一律には決められません。

高校との接点がある会社であれば、学校への求人提出や説明会も候補になります。一方、経験者を採りたい場合は、職種や地域との相性がよい求人サービスを探す必要があります。

「有名な媒体だから出す」のではなく、「欲しい人材がいる場所だから出す」という順番に変えることが重要です。

4.無料掲載枠でキャッチコピーを反復検証する

媒体と訴求の仮説ができたら、無料掲載枠を活用して反応を確かめます。一度出して終わりではなく、キャッチコピーや仕事内容の見せ方を変えながら、応募につながる表現を探します。

検証時は、少なくとも次の内容を残しておくと判断しやすくなります。

  • どの媒体・地域へ掲載したか
  • どのキャッチコピーを使ったか
  • どのような候補者から反応があったか
  • 面接や採用まで進んだか

反応がよかった媒体と表現が見えてから、必要に応じて費用をかけます。予算は仮説を探すために広く使うのではなく、反応が確認できた採用経路を強めるために使うほうが無理がありません。

まとめ

採用媒体に求人を出しても職人が集まらないとき、単純に掲載先を増やすだけでは状況が変わらないことがあります。求職者の居場所が分散した現在は、採用の組み立て方そのものを見直す必要があります。

整理する順番は次のとおりです。

  1. 欲しい人材を具体化する
  2. 社員へのヒアリングで自社の魅力を見つける
  3. その人材がいる媒体と地域を選ぶ
  4. 無料掲載枠でキャッチコピーを繰り返し検証する
  5. 反応が確認できた方法へ予算をかける

職人採用の改善は、魅力的に見せることより、自社の仕事を正直かつ具体的に伝え、合う人へ届けることから始まります。

自社に合う職人採用の進め方を整理したい方へ

「自社の魅力をうまく言葉にできない」「どの媒体や地域から試せばよいか分からない」という段階でも、採用設計は整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。職人採用では、社員へのヒアリング、訴求の言語化、媒体選定、掲載後の検証など、自社の状況に合わせて次の一手を一緒に組み立てます。

まだ課題が明確になっていなくても問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、「うちの場合は何から整理すべきか」を確認する場として気軽にご活用ください。

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