採用サイトまで用意しながら、中途の現場作業員を採れずに活動が止まった中国地方の通信工事会社
中国地方で屋内の通信設備工事を手がける、創業20年前後の専門工事会社があります。オフィスや店舗などの現場を中心に、地域に根差して仕事を続けてきました。
かつては10名弱の体制でしたが、現在は社長を含む数名で現場を回しています。取引先との付き合いは長く、仕事の相談がなくなったわけではありません。ただし、一定の人数がいることを協力会社の選定条件とする取引先もあるため、今後の受注を考えても人員体制を整える必要がありました。
そこで以前は、年間2〜3名の中途採用を目標に、現場作業員の募集を継続していました。経験者だけに限定せず、社会人経験があれば未経験者も対象とし、採用サイトも制作しています。
それでも応募はほとんど集まりませんでした。一定の費用と時間を使ってきた社長から出たのは、「結果が出ていないので、続けても無駄なのだろう」という言葉です。
この会社の課題は、採用に取り組んでいないことではありません。採用サイトを作った後、応募につなげる運用と検証が止まっていたことです。
応募母数がほぼないまま、採用施策全体を「無駄」と判断しかけている状態
応募が集まらないと、「市場が厳しい」「会社の知名度が足りない」「地方では採れない」と考えたくなります。実際、この会社でも市場環境の厳しさを気にしていました。
ただ、応募母数がほぼゼロの場合、採用市場だけを理由に施策を止めるのはまだ早いかもしれません。求職者に求人が表示されていないのか、見られていてもクリックされないのか、内容を読んだ後に応募を見送られているのかで、見直す場所が異なるからです。
採用活動は、少なくとも次の段階に分けて考える必要があります。
- 求人が求職者に表示される
- 求人や採用サイトが閲覧される
- 応募される
- 面接につながる
- 内定を出す
- 入社に至る
今回のように「母数が来ない」状態では、面接方法や内定条件より前に、求人の露出、採用ターゲット、応募前の訴求内容を確認する必要があります。
応募ゼロという結果だけでは、採用市場が原因なのか、求人が届いていないのか、内容が選ばれていないのかを判別できません。
採用サイトの制作後に、ターゲットと訴求内容を見直す運用が残らなかったこと
この会社の採用サイトでは、「礼儀・マナー」「気配り」「対応力」「知識」「挑戦心」といった価値観が示されていました。会社として大切にしている姿勢を伝えるうえでは、意味のある内容です。
一方、中途の現場作業員が応募先を比較する際には、価値観だけでなく「自分でも働けそうか」を判断できる情報も必要です。たとえば、経験者と未経験者では、確認したい内容が異なります。
経験者は、自分の経験をどの仕事で生かせるのか、現在の技術や役割がどう扱われるのかを見ます。未経験者は、どのような現場に入り、何を覚え、どの段階から仕事を任されるのかを確認します。
ところが、対象が「中途で、経験者でも未経験者でもよい」という状態のままだと、求人の文章が広くなり、どちらにも具体的に届かないことがあります。
採用サイトは作った時点で完成するものではありません。求人媒体や検索、紹介などから人を呼び込み、求職者の反応を見ながら内容を直すための受け皿です。制作後の支援や社内運用がなければ、公開当初の内容がそのまま残りやすくなります。
さらに、少人数の専門工事会社では、社長自身が現場と面接を担うことも珍しくありません。この会社も同様でした。採用状況を毎週確認し、求人原稿を修正する時間を確保しにくかったことも、活動が放置される一因になっています。
採用サイトの良し悪しだけではなく、「誰に、何を伝え、公開後に誰が改善するか」まで決めていなかったことが、応募母数を増やせない背景にあります。
中途の現場作業員の人物像を絞り、応募から入社までを経路別に検証する採用運用
最初に整理したいのは、採用サイトを作り直すかどうかではありません。採りたい人と、採用活動のどこで止まっているかを明らかにすることです。
1.「経験不問」の中身を具体化する
経験者でも未経験者でも採用できる場合は、対象を一つにまとめるのではなく、それぞれの採用条件と訴求を分けて整理します。
- 経験者に任せたい現場や役割
- 未経験者に最初から求めること
- 入社時点で必須となる条件
- 入社後に身につけてもらえる知識や技術
- 社会人経験を求める理由
採用条件を増やすことが目的ではありません。譲れない条件と、入社後に補える条件を分けるための整理です。
今回の会社であれば、屋内の通信設備工事を中心にしていることや、オフィス・店舗などの現場が多いことは、仕事内容を具体化する材料になります。実際の仕事に即して説明すれば、求職者も自分との相性を判断しやすくなります。
「経験者でも未経験者でもよい」は間口の広さであり、採用ターゲットが決まっている状態ではありません。両者への伝え方を分けることが必要です。
2.会社の価値観を、働く姿が分かる情報につなげる
「礼儀・マナー」や「挑戦心」といった言葉は、そのままでは受け取り方に幅があります。採用サイトでは、実際の仕事と結びつけて伝えると理解されやすくなります。
たとえば、気配りや対応力を重視するのであれば、なぜ通信設備の現場でそれが必要なのかを説明します。知識や挑戦心を求めるのであれば、入社後にどのような技術を身につけてほしいのかまでつなげます。
そのうえで、求職者が応募前に確認したい仕事内容、現場エリア、育成の考え方などを、実態に合わせて補います。良く見せることより、入社後の働き方を想像できる内容にすることが大切です。
抽象的な魅力を増やすより、「この会社で自分がどう働くか」を判断できる情報をそろえるほうが、応募につながりやすくなります。
3.応募経路ごとに数字を分ける
求人を公開した後は、採用活動全体を一括りにせず、求人媒体、採用サイト、紹介などの経路ごとに数字を確認します。
最低限、次の項目を毎月同じ形式で記録すると、改善点が見えやすくなります。
- 求人の表示数・閲覧数
- 採用サイトへの流入数
- 応募数
- 応募後に連絡が取れた人数
- 面接数
- 内定数
- 入社数
- 応募・採用にかかった費用
表示数が少なければ、媒体や求人の公開方法を見直します。閲覧されても応募がなければ、ターゲットや訴求内容を確認します。応募はあるのに面接につながらなければ、連絡方法や対応までの時間を点検します。
採用施策は「応募が来たか」だけで評価せず、応募前から入社までのどこで人数が減っているかを見て判断します。
4.一度に全部変えず、仮説を決めて改善する
応募がないと、採用サイト、求人媒体、条件、文章を一度に変えたくなります。しかし、それでは何が結果に影響したのか分かりません。
まずは「求人が十分に見られていない」「未経験者に仕事内容が伝わっていない」など、数字から仮説を一つ決めます。その仮説に対応する箇所だけを修正し、一定期間の反応を確認します。
少人数の会社では、社長が毎日数字を見る必要はありません。週に一度、表示・閲覧・応募の数字を確認し、月に一度、求人内容と経路を見直すだけでも、公開したままの状態は避けられます。
採用サイトを作り直す前に、小さく修正して反応を比べる運用をつくることが、採用活動を立て直す第一歩です。
まとめ
採用サイトを作っても応募が来ないと、採用そのものを止めたくなるのは自然なことです。ただし、応募母数がほぼない段階では、採用市場の厳しさだけが原因とは限りません。
見直したいのは、次の4点です。
- 中途の現場作業員のうち、誰を採りたいのか
- 経験者と未経験者に何を伝えるのか
- 求人公開後に誰が数字を確認するのか
- どの応募経路の、どの段階で止まっているのか
採用サイトは採用活動のゴールではなく、応募・面接・入社の数字を見ながら改善するための土台です。
過去の施策を無駄と判断する前に、残っている採用サイトや求人原稿を材料として使い、まずは応募までの流れを分解してみると、次に直すべき場所が見えやすくなります。
採用を再開する前に、自社の詰まりどころを整理したい方へ
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用ターゲット、求人の訴求内容、応募経路、面接・入社までの数値を整理し、実行と改善まで支援しています。
「採用サイトを作り直すべきか分からない」「うちの場合は何から確認すればよいか」といった段階でも構いません。建設業の経営課題を横断して整理し、ものづくりに集中できる体制づくりを一緒に考えます。無理に特定の施策を勧めることはありませんので、現在の状況を整理する場として気軽にご活用ください。