社員6名ほどで小口工事を回し、5年後の売上10億円を目指す専門工事会社の現在地
ある専門工事会社では、造成工事と道路関連の金物工事を主力とし、社員6名ほどに加えて協力会社と現場を動かしています。現在の売上は3億円弱。今後は社員を12名ほどまで増やし、5年後に売上10億円を目指す構想です。
受注しているのは、一戸建ての造成や事故で損傷したガードレール・フェンスの補修など、小口工事が中心です。大きい案件でも、1件あたり数千万円ほど。現場では職人が施工をしながら、必要な写真も管理しています。
「今の仕事は小口が多く、職人が作業と写真管理を兼ねれば回せています。1件で1億円を超えるようになれば、管理者が必要かなと思っています」
公共工事の入札にも参加していますが、元請としての受注はこれからです。大型案件や公共工事を増やす方針はあるものの、現時点では作業員の採用も優先したい状況にあります。
現在の案件を回すだけなら職人兼務で足りていても、今後取りたい案件に合わせると、施工管理体制を先に考え始める必要があります。
職人採用を優先する段階と施工管理者を増やす段階の見極め
悩ましいのは、限られた採用枠を職人と施工管理者のどちらに振り向けるかです。
今の小口工事をさらに受けるには、現場で手を動かす職人が必要です。一方、大型案件や公共工事を元請として受注するには、施工だけでなく、写真・書類・工程などの管理を担う人も必要になってきます。
施工管理者を早く増やしすぎれば、現在の案件構成では管理業務が十分に発生せず、人件費とのバランスを取りにくくなります。反対に、受注が決まってから探し始めると、職人が管理業務に追われ、施工力を十分に発揮できない可能性があります。
施工管理者を置く時期は、現在の売上規模ではなく、これから受注する案件の規模と管理負担から逆算することが大切です。
今回の会社であれば、「1億円を超える案件」が一つの目安として挙がっています。ただし、金額だけで判断するのでは足りません。同じ金額でも、一つの現場に集中できる場合と、小口工事を並行しながら大型現場を管理する場合とでは、必要な体制が変わるためです。
写真管理だけで済む現場から元請責任を負う大型・公共工事への転換
現在の体制が成り立っているのは、現場ごとの管理範囲が比較的限られているからです。建築工事が始まる前の造成など、自社の作業員を中心に進められる現場では、職人が写真管理を兼ねても大きな支障は出ていません。
しかし、目指している売上10億円を現在の社員数に近い体制で実現するには、協力会社の力も借りながら、より規模の大きい案件を受注する必要があります。公共工事を元請として受注できるようになれば、自社の施工だけでなく、現場全体を見渡す役割も重くなります。
そこで確認したいのが、次の4点です。
- 1件あたりの受注金額と工期がどこまで大きくなるか
- 小口工事を含め、何現場を同時に動かすか
- 写真や書類の管理にどの程度の時間がかかるか
- 元請として協力会社を含む現場全体をどこまで管理するか
大型案件の受注額そのものより、「施工する人」と「現場全体を管理する人」を兼務できる範囲を超えるかどうかが、体制変更の分かれ目です。
この会社には、10年、20年の経験を持つ社員や協力会社の職人がおり、置き場で練習してから現場に入る教育も行っています。施工を教えられる人材はすでにいます。次に整理すべきなのは、その中に管理を任せられる人がいるのか、施工の中核を担う人を管理側へ移しても現場が回るのかという点です。
受注計画から管理業務を洗い出し、社内登用・外部採用・協力会社活用を選ぶ進め方
施工管理者の配置は、「大型案件を取ってから考える」のではなく、受注を目指す段階で準備を始めるのが現実的です。ただし、すぐに管理者を1名採用するとは限りません。まずは、今後増やしたい工事と管理業務を対応させます。
1.今後取りたい案件を具体化する
「大型案件を増やす」だけでは、必要な人材像を決められません。公共工事を元請で受けたいのか、ゼネコンから規模の大きいフェンス・金物工事を受けたいのかによって、求める管理範囲は変わります。
候補案件について、少なくとも次の項目を整理します。
- 想定する1件あたりの金額と工期
- 同時に動かす現場数
- 自社施工と協力会社施工の割合
- 写真・書類・工程管理にかかる負担
- 社長が現場管理に使える時間
採用する人の肩書きを先に決めるのではなく、案件を受けたときに誰の仕事が増えるのかを先に見える化します。
2.現在の職人兼務で回せる上限を決める
小口工事では、職人による施工と写真管理の兼務が合理的です。その体制をすぐに変える必要はありません。一方で、どこまでなら兼務できるかを曖昧にしたまま受注を増やすと、管理負担が徐々に現場へ積み上がります。
たとえば、「大型案件が1件加わる」「公共工事を元請で受注する」「複数の協力会社を同時に管理する」といった変化が生じたときに、現場の誰が何を担うかを確認します。兼務では回らない業務が見えた段階が、管理者配置を具体化する時期です。
3.三つの方法から体制を選ぶ
管理体制のつくり方は、大きく三つあります。
社内人材の登用は、施工内容や取引先を理解していることが強みです。ただし、ベテラン職人を管理側へ移すことで、施工力が不足しないかを確認する必要があります。
外部からの採用は、大型案件や公共工事に対応できる経験を取り込みやすい方法です。一方、経験年数だけでは、自社の現場や職人と合うかは判断できません。「現場で戦力になれるか」を重視してきた会社であれば、管理経験に加えて現場との連携力を見る必要があります。
協力会社の活用は、案件の増減に合わせて体制を調整しやすい方法です。すでに継続的に動いている協力会社がある場合は、その中に管理を補完できる人材がいるかを確認できます。ただし、元請として自社が担う責任まで外部に委ねないよう、役割を分けておくことが欠かせません。
社内登用・外部採用・協力会社活用のどれを選ぶかは、管理経験だけでなく、施工力を落とさずに体制を組めるかで判断します。
4.受注の少し前に移行期間をつくる
管理者は、採用や登用を決めた日からすぐに機能するとは限りません。現在の小口工事で写真管理や現場調整を担い、自社の進め方を理解してから大型案件へ移るほうが、役割を定着させやすくなります。
公共工事の入札や大型案件の開拓状況を見ながら、受注が具体化する少し前に準備を始めるのがよいでしょう。案件獲得と管理者配置を別々に考えず、受注計画と人員計画を同じ表で動かすことが重要です。
まとめ
小口工事が中心の段階では、職人が施工と写真管理を兼務する体制にも合理性があります。ただし、大型案件や公共工事を増やすなら、現在のやり方をそのまま拡大するのではなく、管理業務を切り出す時期を決めておく必要があります。
判断軸となるのは、次の4点です。
- 案件規模がどこまで大きくなるか
- 同時稼働する現場がいくつになるか
- 写真・書類・工程管理の負担がどこまで増えるか
- 元請として担う責任範囲がどこまで広がるか
施工管理者を置くタイミングは、売上目標だけでなく、職人兼務で回せる上限と次に取りたい案件の間から決めます。
職人採用を優先しながら社内の管理候補を育てる方法もあれば、大型案件の見込みに合わせて外部採用や協力会社活用を進める方法もあります。自社の施工力を落とさず、次の受注に対応できる組み合わせを選ぶことが、無理のない成長につながります。
大型案件に向けた施工管理体制を整理したい方へ
「職人を増やすべきか、管理者を置くべきか」「今の社員から管理者を育てられるか」など、判断がつきにくい段階でも整理は始められます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。大型案件の受注計画と、それに必要な採用・施工管理体制を一緒に考えることも可能です。
無理にサービスを勧めることはありません。「うちの場合は何から整理すべきか」という段階でも、気軽にお声がけください。