工事管理システムとExcelの色分けで報告業務を回す建設会社
工事管理システムを導入していても、依頼の受付から報告完了までを一つの一覧で追えているとは限りません。 ある建設会社では、システムに加えて、Excel、チャット、共有フォルダを使い分けながら日々の工事情報を管理していました。
依頼は取引先のプラットフォームやメールから届きます。プラットフォームからダウンロードしたExcelを工事管理システムに取り込む流れがある一方で、メールで届いた依頼は別の業務管理ツールで扱っており、すべてが同じ経路を通るわけではありませんでした。
写真や報告書の確認にはExcelを使い、必要な項目が入るとオレンジになるなど、色分けで次の作業に進める状態を示していました。報告書を送った日付を入れ、処理の状況を見分ける工夫もあります。写真のアップロードや確認事項はチャットで連絡し、共有フォルダやサーバーに置いたファイルを使って後続の作業を進めていました。
つまり、何も管理されていない会社ではありません。現場に必要な工夫は積み重なっているものの、その工夫をつなぐ転記と個別連絡が、人の仕事として残っている状態です。
提出済みのファイルを追うだけでは未提出の案件が見えない構造
中心にある課題は、ファイルが上がったことは確認できても、上がるはずのファイルがまだないことを捉えにくい点です。
担当者からは、「上がったものをベースにしか見ていない」という説明がありました。後続の担当者は、フォルダに置かれたファイルを確認し、必要な情報を取り出して処理を進めます。この方法なら、届いたものは順に処理できます。ただし、フォルダにない案件については、作業中なのか、報告書ができていないのか、単にアップロードを忘れているのかが分かりません。
「担当者が登録を忘れたら」という確認に対しては、「気づかないです」という返答もありました。登録された情報だけを見ている限り、登録されなかった案件は確認の対象に入らないのです。
漏れの確認自体をしていないわけではありません。グループごとのExcelを見たり、複数のファイルを開いたりして、個別に確かめていました。しかし、この確認方法では、確認先を知っている人が、それぞれの場所を見に行く必要があります。
「提出されたものを処理する一覧」と「依頼を受けた全案件から未処理を探す一覧」は、役割が異なります。 前者を丁寧に運用していても、後者がなければ、提出されていない案件の把握は人による照合に頼ることになります。
依頼経路と保存先が分かれシステムの更新が後回しになる事情
情報の分散は、ツールの数だけでなく、案件ごとに情報の通り道が違うことから生まれていました。
取引先のプラットフォームから来る依頼には、Excelを介して工事管理システムへ取り込む経路があります。一方、メールで来る依頼は別の場所で進捗を追っており、そこから作った情報が工事管理システムにも登録されているかどうかは、担当者同士でも確認が必要でした。
また、写真や報告書をフォルダに入れれば、後続の担当者は作業を進められます。そのため、実務は進んでいるのに、工事管理システム側の情報は追いつかないことがありました。「システムが置いてきぼりになってしまう」という言葉は、この状態をよく表しています。
ここでは、担当者がシステムを使う気がないと捉えるより、目の前の仕事を終える条件と、システムの情報を更新する条件がそろっていないと考えるほうが、改善につながります。Excelを作って所定の場所に置けば次の人に渡せるなら、別の画面への登録は、その作業とは切り離されやすくなります。
チャットも、その隙間を埋めていました。写真を上げたことや確認してほしい内容を送り、受け取った側が該当するファイルを探します。「ずっとそんな感じになってしまう」という説明のとおり、通知と確認が連続する運用です。
さらに、依頼後に管理に関する情報が変わり、別の場所も直す必要があるという話もありました。保存先を一つにするだけでは、こうした更新の食い違いまでは解消できません。どの情報を基準にし、変更時にどこへ反映するかまで決める必要があります。
受付時の案件一覧を基準に登録と報告完了の条件をそろえる進め方
最初に取り組みたいのは、新しいシステムの選定ではなく、依頼受付から報告完了までの情報の流れを一本につないで確認することです。 今あるExcelの色分けや通知を残しながらでも、管理の基準は整理できます。
依頼経路ごとに、どこで情報が途切れるかを確認する
まず、取引先のプラットフォーム経由とメール経由を分け、それぞれについて、受付情報がどこに入り、写真や報告書がどこに置かれ、誰が何を見て次の作業を始めるのかを並べます。
ここで確認したいのは、ツールの名称よりも、情報の受け渡しです。Excelの取り込みで登録される情報と、その後に手入力する情報を分け、フォルダへの保存やチャット連絡のあとに、工事管理システムの更新が残っていないかを見ます。
「次の担当者が仕事を始められる地点」と「案件一覧が更新される地点」のずれを見つけることが、棚卸しの目的です。 この会社のように依頼経路が複数ある場合は、システムに取り込める経路だけを確認して終えないことが大切です。
案件の管理元と、資料をひもづける識別情報を決める
未提出を把握するには、報告書ができる前から案件が一覧に載っている必要があります。そこで、依頼を受けた案件を確認する管理元を定め、どの経路から受けた依頼も、その一覧で追える状態を検討します。
管理元を既存の工事管理システムにするか、まずはExcelでそろえるかは、依頼の全件を載せられるか、未処理を一覧で確認できるか、更新を続けられるかで判断します。すべての写真や報告書まで同じ場所へ移すことを、最初の条件にする必要はありません。
資料を別の場所に残すなら、一覧の案件と、Excel・写真・報告書を同じ案件としてたどれる識別情報をそろえます。既存の案件IDなど、すでに使っている情報をどこまで共通して利用できるかを確認し、一覧から保存先へ進めるように整理します。
依頼後に変わる情報についても、管理元を直したあと、どこへ反映する必要があるかを明らかにします。識別情報と更新の基準があいまいなままでは、一覧を作っても照合作業が残るためです。
登録担当・タイミング・完了条件を一組で決める
「忘れずに登録する」という呼びかけだけでは、今の作業との関係が変わりません。受付、写真の登録、報告書の作成・確認、提出について、誰が、いつ、何を更新したらその段階を終えたと扱うかをそろえます。
確認する項目は、次のように整理できます。
- 依頼を受けた時点で、誰が案件一覧へ登録するか
- 写真や報告書を保存した時点で、誰が一覧の状態と保存先を更新するか
- 報告完了を何で確認し、誰が提出日などを記録するか
- 未更新の案件を、誰が一覧から確認するか
ファイルを置いたことと、案件情報を更新したことを別々のままにせず、どこまで済めば次へ渡せるかを共有することが要点です。 報告書を作った段階と提出した段階も分けておくと、作成済みだが未提出という状態を見分けやすくなります。
色分けと通知を、未処理一覧につながる形で生かす
既存のExcelには、必要な項目が入ると色が変わる仕組みがあります。この工夫を捨てるより、色が何を意味し、その時点で何が残っているかをそろえるほうが、現在の運用を生かせます。
チャットも同様です。個別の通知だけで案件の状態を判断するのではなく、通知を受けたら共通の一覧で状況を確認できる関係にします。確認の中心をチャットの履歴から案件一覧へ移し、連絡はその補助として使います。
移行を判断する際は、「提出されたファイルを探せるか」ではなく、「受付済みで、まだ報告が完了していない案件を一覧から取り出せるか」を確かめます。この確認ができてから転記や通知の連携を検討すれば、何を省力化するべきかも絞りやすくなります。
まとめ
Excelやチャットを追い続ける状態を変えるには、ツールを減らすことより、受付済みの全案件と報告完了の状態を照合できるようにすることが先です。
この会社では、色分け、フォルダへの保存、個別連絡によって日々の業務をつないでいました。その一方で、上がってきたファイルを起点に処理するため、登録されなかった案件には気づきにくい構造がありました。
まずは依頼経路ごとの情報の流れを確かめ、案件情報の管理元、資料をひもづける識別情報、登録担当とタイミング、報告完了の条件をそろえます。今のExcelを使う場合も、既存システムへ寄せる場合も、この整理が共通の土台になります。
「誰かが見に行けば分かる」状態から、「一覧を見れば、次に確認する案件が分かる」状態へ移すことが、登録漏れと確認の負担を一緒に減らすための一歩です。
Excelと工事管理システムの役割を整理したい方へ
どのツールを残すかを決める前に、どこで転記が発生し、どの案件が一覧から抜けるのかを整理するところから始められます。 「うちの場合は何を管理元にすればよいか」「今の色分けを生かせるか」という段階でも、ご相談いただけます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場の業務と組織の役割分担、デジタル活用をまたいで整理し、実行まで支援しています。情報管理についても、システムの入れ替えを前提にせず、現在の受付・登録・確認の流れから一緒に考えます。
無理にサービスの導入をおすすめすることはありません。何から整理すべきか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。