前提

大学ノートから社長が入力する、長年使い慣れた工事台帳

工事台帳を新しくしたい理由と、今の操作を残したい理由は、どちらも日々の仕事の中にあります。

ある内装系の専門工事会社では、長年使ってきたAccessベースの工事台帳を見直そうとしていました。以前の開発担当者が変わり、現在は電話で操作を教わりながら対応しています。どうしても解決できないときは、来てもらう状況です。

ただ、入力そのものには慣れています。

「こういうのは本当にやりやすいので、そのままで。そこに必要なものが加わればいい」

新しい現場が始まったら、得意先と現場をマスターに登録します。日々の材料や職人の動きを台帳に入力し、品名や単価は商品マスターから選びます。数量などを入れれば、現場ごとの明細を確認できます。

入力の元になるのは、大学ノートです。倉庫から材料を持ち出した人が、どの現場に何を持っていったかを書きます。直送分は、担当者が納入日を把握した段階で記帳します。それを社長が台帳に入力しています。

「それをしないと、みんな忘れるんだね」

ノートは単なる転記元ではありません。本人が書いたかを確認する役割もあります。社長も、システムが変わっても入力と確認には関わりたいと考えていました。刷新の前提は、この確認の仕方まで一度に変えないことです。

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課題

入力はしやすい一方、担当者の端末では台帳を見られない不便

残したいのは入力のしやすさであり、閲覧できる端末の制限や、探しにくさまで残したいわけではありません。

担当者からは、こんな声がありました。

「私の端末にはこれがないので、もうノートで。その現場が始まったときから、ずっとめくって探すことになってしまう」

現場で使った材料を確認したくても、自分のパソコンでは台帳を開けません。別の発注ソフトで集計できる分もありますが、会社の在庫から持ち出した分はノートを探す必要がありました。

商品マスターにも不便があります。一般単価と現場ごとの特価が増え続け、検索やグループ分けができません。

「全部の中から探すより、その現場のグループの中から探せると、間違いもないし楽です」

確認のタイミングも論点です。原価などは印刷用の画面を開いたときに確認する形で、入力中には見えていない項目がありました。そのため、印刷する段階で単価の直し忘れに気づくことがあります。

必要なのは、多機能なシステムへの全面移行とは限りません。慣れた記帳を続けながら、必要な人が見られ、探せて、入力時に確認できる状態です。

背景

ノートと印刷が担う確認を、台帳だけでは引き継げていない状態

今の運用は、工事台帳だけでなく、ノートによる記録と紙の保管を組み合わせて成り立っています。

完了した現場の台帳は印刷し、ファイルで保管していました。一方、システム上の現場データは、完了からしばらくすると削除する運用です。

「本当は、それをしないで、データ上で全部見られるようになればいいんでしょうね」

この状態では、新しいシステムを用意するだけで、過去の現場まで検索できるようになるとは限りません。既存システムに残る情報と、紙でしか残っていない情報を分けて考える必要があります。

共有についても、全社員が自由に操作できればよいわけではありません。

「みんなじゃなくていいけど、一部の人間がやりやすい形で」

「誰が修正したかもわかるようにしたい」

社長が入力を続けたいのは、操作に慣れているからだけではありません。漏れを確認し、数字を自分でも押さえたいからです。担当者への信頼とは別に、人が入力する以上、間違いを確認できる形を望んでいました。

また、請求は別の販売管理システムで処理しています。工事台帳は、何がどの現場へ行き、どの程度の金額になっているかをつかむためのものです。台帳の刷新と、販売管理を含む全システムの入れ替えは、切り分けて考えられます。

解決

残す入力操作と追加機能を分け、改修か作り直しかをデモで比較

先に決めたいのは製品ではなく、「何を残し、誰が何を確認できるようにするか」です。 その整理をもとに、既存改修と作り直しを比べると、話が進めやすくなります。

まずは、記帳から印刷までを現在の画面で確認

最初に、普段の仕事を現在の画面に沿ってたどります。この会社なら、現場登録、ノートからの入力、商品と単価の選択、明細の確認、印刷、完了後の保管です。

そのうえで、要望を二つに分けます。

  • 残すもの:マスターから品名と単価を選ぶ操作、日付や数量の入力、社長による確認、見慣れた印刷帳票
  • 追加・改善するもの:商品検索、現場別の単価の絞り込み、入力画面での原価確認、必要な担当者への共有、修正者がわかる履歴

「操作を変えたくない」を、そのまま画面全体の再現と捉えないことが大切です。選び方や入力順は残しつつ、確認したい項目だけを足す方法もあります。

ノートについても、最初から廃止を前提にしません。材料を持ち出した本人の記録と、それを確かめる役割があります。まずは、その役割を残した状態で台帳側の不便を減らせるかを考えます。

改修と作り直しは、四つの判断軸で比較

既存の改修が可能かどうかは、実際にシステムの中身を確認しないと判断できません。古いから作り直す、使い慣れているから改修する、と先に決めず、次の四点をそろえます。

  • 保守の継続性:今後、誰が内容を把握し、修正や不具合への対応を続けられるか
  • 今後の利用期間:当面の不便を直したいのか、長く使う土台まで見直したいのか
  • 必要な共有範囲:どの担当者が、どの端末で、何を見られればよいか
  • データ移行の可否:現場・商品・単価のマスターや、残っている明細を取り出して移せるか

既存環境のまま必要な改善と保守を続けられるなら、改修は選択肢です。一方、長く使うことや複数端末からの閲覧まで求めるなら、見慣れた画面の構成を残しつつ、クラウド上に作り直す案も比較できます。

費用も、初期の改修・開発だけでなく、サーバー利用や保守を含めて見ます。判断したいのは導入時の金額だけでなく、使いたい期間にわたって運用を続けられるかです。

データ移行と共有権限は、画面と一緒に検討

移行では、既存マスターと稼働中の現場データをどう持ってくるかを確認します。印刷しかできない状態なのか、CSVなどで取り出せるのかも、確認したい点です。

紙だけで残る完了現場は、既存データの移行とは別の検討になります。どこまで新しい台帳で見返したいかを整理し、移せる情報と紙で保管を続ける情報を分けます。すべて移せる前提で進めないほうが、必要な範囲を決めやすくなります。

共有は、「見られる人」と「直せる人」を分けて考えます。社長が日々入力し、担当者が現場特価を登録・修正するなら、その分担に沿った権限が必要です。誰が修正したかを確認できる履歴も、ダブルチェックと合わせて検討します。

デモでは、日々の入力と印刷までを確かめる

デモ画面は、見た目を評価するだけでなく、いつもの操作を続けられるかを確かめるために使います。

「今の工事台帳をベースに、もっとやりやすく、簡潔にできるように」

この希望を確かめるなら、現場を選び、商品を探し、数量を入れ、単価と原価を確認し、印刷するところまでを見ます。一般単価と現場特価の選び分けも、画面があると話しやすくなります。

印刷帳票は、実際の社名や金額を伏せた見本でも構いません。必要な項目と配置がわかれば、残したい形を共有できます。

デモで操作と必要機能をすり合わせ、その範囲に対する費用を見て判断する。 この順番なら、不要な機能まで広げずに比較できます。請求など既存システムでできている仕事は、無理に置き換えない方針も保ちやすくなります。

まとめ

工事台帳の刷新は、慣れた仕事の進め方を全部変えることではありません。残す操作と、解消したい不便を分けるところから始められます。

大学ノートで持ち出しを記録する。社長が入力して漏れを確かめる。担当者が単価を確認する。台帳を印刷して保管する。それぞれの役割を押さえると、新しいシステムに求める範囲が見えてきます。

改修か作り直しかは、保守の継続性、今後の利用期間、共有範囲、データ移行で比較します。そのうえでデモを見ながら、今の入力のしやすさが残るかを確かめます。

まず用意したいのは、現在の入力画面、内容を伏せた印刷見本、困っている操作の整理です。使い慣れた台帳を出発点にすれば、必要な刷新の範囲を具体的に話せます。

今の工事台帳を、どこまで残せるかの整理から

「うちの場合は改修で足りるのか」「操作は残したいが、何から整理すればよいかわからない」という段階でも、ご相談いただけます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場の業務や組織での役割分担、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。工事台帳の見直しでも、現在の記帳・確認・印刷の流れを伺い、残したい操作と必要な共有範囲を一緒に整理します。

システムの入れ替えを前提に、無理にお勧めすることはありません。今の使い方をどう引き継ぐか。その整理先として、お気軽にご相談ください。

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