前提

現場別原価をExcelで把握している年商2億円台半ばの専門工事会社

現場ごとにいくらかかっているかは分かっていても、その数字をそろえる手入力に時間がかかっている会社があります。 内装仕上げなどを手がける、年商2億円台半ばのある専門工事会社も、その一社です。

同社では、お金に関わる管理を担当者がまとめて担い、材料費などを工事台帳に入力しています。現場別の原価は、自分で作ったExcelで日常的に確認できています。

「この現場にこのぐらいかかっている、というのは、もう常に出しています」

原価が見えないことが悩みなのではありません。今の集計方法で必要な数字は出せている一方、その手前にある納品書の転記が負担になっています。

「うちは全部、台帳に打っているから。その時間がもったいない」

この前提に立つと、検討したいのは原価管理の全面的な作り直しではなく、今の台帳に必要な情報を入れる作業を、どこまで減らせるかです。

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課題

仕入先ごとに異なる納品書を工事台帳へ打ち直す手間

台帳の見せ方を変えても、納品書を見ながら入力する作業が残れば、減らしたい負担は解消しません。 同社が求めていたのも、新しい集計画面より、書類から台帳までの入力を省く仕組みでした。

「全部読み込ませたら、台帳に出てくれるものはないか、という話から始まっています」

ただし、納品書は仕入先によって書式が異なります。手書きが含まれる場合もあり、文字自体を読み取りにくいこともあります。書類を取り込めることと、必要な情報が正しく台帳に入ることは、分けて考える必要があります。

たとえば、文字や金額を読み取れても、それがどの現場の原価なのか、台帳のどこに入れる情報なのかが決まらなければ、担当者の手作業は残ります。読み取りだけを自動化するのか、現場とのひも付けや転記までつなぐのかによって、必要な仕組みも変わります。

また、読み取り結果が常に正しいとは限りません。完全自動化を目標にするより、確認と修正を含めても、今より入力の手間が減るかを確かめることが重要です。

背景

毎日の原価確認と並行作業の中に埋もれる転記時間

担当者が日常業務の中で転記をこなしているため、負担はあっても、削減できる時間を説明しにくい状況でした。 同社では、現場の状況を知るために毎日数字を確認していますが、入力だけに時間を区切っているわけではありません。

「これをやりつつ、他のことをして、調べながら同時進行。見積もりをしたり、ずっとやっているから」

そのため、「入力に毎日何時間かかっていますか」と聞かれても、すぐには答えにくくなります。普段から処理できている仕事ほど、どのくらいの手間なのかを切り出しにくいものです。

一方で、必要な数字がすでにExcelで出せていることも、判断の大切な背景です。新しいシステムにも同じ材料費を手入力するのであれば、画面は変わっても仕事はあまり変わりません。

書類の読み取りと台帳への連携を広く組み込むほど、開発や調整の範囲も大きくなります。だからこそ、「台帳を置き換える話」と「台帳への入力を減らす話」を切り分けることで、必要な投資の範囲を絞れます。 既存の集計方法で困っていないなら、その方法を残すことから検討してよいのです。

解決

既存のExcelへの転記を対象に、読み取りと確認の手間を比較する進め方

最初に決めたいのは導入する機能ではなく、どの書類から何を取り出し、どの現場の台帳へ入れたいかです。 同社のように集計方法がすでにある場合は、現行の台帳を起点に整理すると、必要以上に仕組みを大きくせずに検討できます。

以下は、納品書の書式差や手書き、確認作業が残ることを前提とした進め方です。自動化による効果が確認できたという話ではなく、導入前に確かめたい事項として整理します。

1.対象書類と、今の台帳に必要な抽出項目をそろえます。

まず、読み取りたい納品書を仕入先ごとに確認し、書式の違いや手書きの有無を整理します。そのうえで、現在の台帳に転記している情報のうち、読み取りたい項目を明確にします。

書類に載っている情報をすべて取り出すのではなく、今の原価集計に使っている項目に絞るのが出発点です。金額についても、書類のどの金額を台帳に入れているのかまで確認しておくと、読み取り結果を評価しやすくなります。

整理する内容は、次の四つです。

  • 対象書類:どの仕入先の、どの書式の納品書を扱うか
  • 抽出項目:今の台帳に入力している、どの情報を取り出すか
  • 現場とのひも付け:取り出した情報を、どの現場の原価として扱うか
  • 転記先:既存のExcelの、どの欄に反映させるか

特に現場とのひも付けは、文字の読み取りとは別に確認したい点です。書類上の情報だけで判断できるのか、人が現場を指定する必要があるのかを分けておきます。

2.代表的な納品書で、項目ごとの読み取り結果を確かめます。

仕入先によって書式が異なる以上、一つの書類を読めただけでは、日常業務で使えるかは判断できません。普段扱う書式をそろえ、手書きが含まれるものも対象にして、必要な項目を正しく取り出せるか確認します。

ここで見るのは、「文字が読めたか」だけではありません。台帳に必要な金額を取り出せているか、現場を正しくひも付けられるか、修正が必要な箇所はどこかまで確かめます。読み取りにくい書類を無理に自動処理へ含めず、手入力を残す対象として分ける判断もできます。

3.人が確認する箇所と、台帳へ反映するタイミングを決めます。

読み取り誤りがあり得る以上、確認作業は運用の一部として設計します。誰が原本と読み取り結果を照合し、どこで修正し、確認済みの情報をいつExcelへ反映するかを決めておきます。

最初から確認なしで台帳へ入れることを目指す必要はありません。まずは「入力する仕事」を「読み取り結果を確認する仕事」に変えることで、負担が減るかを見る方が、日々の業務に合うかを判断しやすくなります。

4.読み取り率ではなく、確認を含めた総作業時間で判断します。

導入前の手入力と、導入後に想定する取り込み・確認・修正・台帳への反映を、同じ書類で比べます。並行作業が多く時間を把握しにくい場合も、まずは納品書を処理している時間だけを区切って記録すると、比較の材料になります。

判断軸は、「手入力の時間」から「取り込み・確認・修正・反映の時間」を引いて、実際にどれだけ手間が減るかです。そこに導入費用や維持費用を合わせて考えます。

確認や修正に時間がかかる書類まで一度に対象にせず、効果が見込める書式や項目から始めることも選択肢です。今のExcelを残しながら進めるなら、読み取り結果を既存の台帳へ渡す部分まで含めて、無理なく扱える範囲を見極めます。

まとめ

現場別原価をすでにExcelで把握できているなら、台帳を作り直す前に、納品書からの転記を減らす方法を検討できます。 必要なのは、新しい画面を増やすことではなく、今の集計に必要な情報を少ない手間でそろえることです。

そのためには、対象書類、抽出項目、現場とのひも付け、転記先を先に整理し、仕入先ごとの書式や手書きを含む書類で精度を確かめます。人の確認が残ることも、初めから織り込んでおきます。

自動化の成否は、確認が不要になったかではなく、確認を含めても日々の手作業が減ったかで判断できます。 まずは現在の台帳と普段扱う納品書を照らし合わせ、残す仕組みと減らしたい作業を分けるところから始めてみてください。

納品書の転記を、今の台帳を生かして見直すために

「Excelはこのままでよいので、入力だけ減らしたい」という段階から整理できます。 自社の場合はどの書類を対象にするのか、読み取り後の確認をどう残すのか、どこまでつなげれば手間が減るのかを、一緒に考えることが出発点です。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。納品書の転記についても、台帳全体の置き換えを前提にせず、現在の管理方法と負担のある作業を確認するところからご相談いただけます。

「うちの場合は何から整理すればよいか」という段階でも構いません。無理に導入や契約をお勧めすることはありませんので、今の業務に合う進め方を考える整理先としてご活用ください。

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