応援工事が大半を占める、十数名規模の電気工事会社
応援工事で日々の売上をつくりながら、少しずつ請負へ移りたい。ところが、今の人員にも空きがある。 ある電気工事会社が向き合っていたのは、この二つを同時に進める難しさでした。
従業員は十数名。仕事の構成は応援工事が大半で、請負はまだ一部です。請負の現場には社長とサブの担当者が管理役として入り、作業員を合わせた数名のチームで対応していました。一方、複数の応援現場は、職長が取引先との連絡調整を担い、社長がほぼ関わらなくても回っています。
すでに請負で受けているのは、全体の工期が一〜二か月あり、その間に電気工事として実働数日、長くても一週間ほど入る案件です。大きな現場への意欲はあります。ただ、まずは現在と同程度の規模で経験を重ねたいという考えでした。
ここでいう請負への移行は、いきなり工場から直接、大型工事を受けることではありません。自社で対応できる工事を、完成まで責任を持つ仕事として少しずつ増やすことが出発点です。
空き稼働を埋めるだけでは、利益も請負への足掛かりも残りにくい状況
稼働を増やすことは必要ですが、応援工事だけで予定を埋めても、目指す会社の姿には近づきにくい状況でした。
応援工事の採算について、社長は「毎日フル稼働すれば多少は残ると思いますが、今はフル稼働できていないので、マイナスです」と話します。給与は、現場に入らない日にも発生します。社会保険料なども含めた人件費に加え、販管費まで考えると、十分に稼働できても利益の余地は大きくありません。
一方、空いている人員をすべて現場に入れればよいわけでもありません。社長は、欠員が出たときに対応できるよう、一定の余力を残したいと考えていました。問題は、その余力を超えて空きが生じていることです。稼働が半分程度にとどまるという説明もありました。
もう一つは、仕事の中身です。応援現場では職長による連絡調整はできても、自社で見積もりや工事全体の管理を担う機会は限られます。
「応援だけだと管理業務がありません。請負をすると、現場管理や見積もりの仕事もできます」
売上を維持するために応援を増やしたい。しかし、応援だけを続けると、請負を回す経験が蓄積しにくい。短期の稼働確保と、中長期の請負化を、どちらか一方に絞れないことが課題の中心にありました。
請負を増やすにも、社長の管理余力と外注費が影響する現状
請負への移行を難しくしていたのは、案件の不足だけでなく、自社で管理・施工できる範囲の限界でした。
応援現場を任せられる職長はいても、請負の現場管理は社長が中心です。サブの担当者がついているため、社長が一時的に現場を離れることはできます。ただ、新しい請負を受ける際には、既存現場との日程調整が欠かせません。
社員が十分に管理を担えるようになるまでは、数年単位で見ていました。それまで請負を待つのではなく、小さくても始めておきたい。その理由は、実際に請け負う仕事がなければ、管理を任せる経験もつくりにくいからです。
ただし、請負を増やせば、そのまま利益が増えるわけではありませんでした。
「どうしても外注さんに一人、二人入ってもらうことが多いんです。払っておしまいで、逆に赤字になることもあります」
自社の現場対応力を補うために外注を使うと、その費用が採算を左右します。請負の比率を上げた場合の話でも、社長は、外注が必要ならほとんど利益は残らないという見方でした。
つまり、応援か請負かという受注形態だけでは、利益は判断できません。自社で担える範囲と、外注が必要な範囲まで見る必要があります。
電気・制御につながる応援を選び、対応できる小規模請負を並行する進め方
応援で当面の稼働を支えながら、小規模な請負を並行して進める。そのうえで、稼働率・外注依存度・実際の採算を見て案件構成を調整する進め方が合っています。 応援をなくしてから請負へ進むのでも、空きが完全になくなるまで請負を待つのでもありません。
空き稼働は、欠員対応に残す分と埋めたい分に分ける
まず整理したいのは、空いている人員のうち、どこまでが必要な余力なのかです。
この会社では、欠員への備えとして一〜二割程度の余裕を持つ考えがありました。ただし、これはすべての会社に当てはまる基準ではありません。必要な余力は、同時に動く現場数や、職長・作業員の組み合わせによって変わります。
受注を考える際は、既存現場に必要な人員、欠員対応に残す人員、そのうえで新しい案件に回せる人員を分けて確認します。稼働率を一律に最大化するのではなく、現場を守る余力を残して、過剰な空きを減らすことが狙いです。
応援案件は、将来請け負いたい分野とのつながりで選ぶ
応援工事を選ぶ軸は、空いている日に入れるかどうかだけではありません。
社長は「将来、電気・制御の仕事を請け負っていくなら、そのような応援現場であれば意味がある」と話していました。目先の売上に加え、将来担いたい工事と内容が近いかどうかを重視していたのです。
自社が請け負いたい施工領域を先に定め、その分野につながる応援案件を優先します。ただし、応援に入るだけで、見積もりや完成責任を伴う管理経験まで得られるとは限りません。応援は稼働と関連分野の経験を支える役割、請負は自社で工事を担う経験をつくる役割として、並行させます。
小規模請負は、人数だけでなく管理できる日程から選ぶ
請負の入口としては、既存の応援先に、工事内容を確認したうえで一現場を任せてもらえるか相談する余地がありました。新しい相手だけを探すのではなく、現在の関係から請負の機会を探す考え方です。
最初に選ぶのは、現在対応できている数名・実働数日から一週間程度の案件が一つの目安になります。ただし、小さければ必ず対応しやすいわけではありません。得意分野かどうか、社長が管理できる日程かどうかで、受けやすさは変わります。
確認したいのは、次の三点です。
- 工事内容が、自社の得意分野と現在の施工力に合っているか
- 既存の請負現場と重なっても、社長とサブの担当者で管理できるか
- 必要な外注を入れた場合でも、採算が合うか
全体工期が一〜二か月でも、自社の実働は数日という案件があります。工期の長さだけでなく、実際に人を入れる日と管理が必要な時期を、既存現場と照らし合わせて判断します。
請負比率ではなく、外注費を含めた実際の採算で見直す
請負比率は移行の進み具合を示しますが、利益が残ったかどうかの答えにはなりません。
受注前には、外注が何人、どの程度必要かを織り込んで採算を見ます。施工後は、見込んでいた自社の稼働と外注費に対し、実際にはどうだったかを確認します。さらに、会社全体では、現場に入らなかった期間の人件費や販管費も含めて見る必要があります。
外注の利用自体を避ける必要はありません。自社だけでは対応しにくい工事を支える役割があります。ただ、外注を増やさないと回らない案件ばかりでは、請負が増えても利益は残りにくくなります。
稼働は埋まったか。外注への依存はどの程度だったか。費用を支払った後に利益は残ったか。この三つを合わせて、次に増やす案件を選んでいきます。
まとめ
応援工事から請負への移行は、応援をやめる判断ではなく、応援と請負の役割を組み替える取り組みです。
欠員対応に必要な余力は残し、過剰な空きは減らします。その際、将来請け負いたい電気・制御分野につながる応援案件を優先します。同時に、社長が管理でき、自社の施工力に合う小規模請負を重ねていきます。
そして、請負という形だけで採算を期待しないことも大切です。外注費まで含めた実際の利益を確認し、無理なく担える案件を増やす。今日の稼働を支える仕事と、次の請負につながる仕事を並行して持つことが、移行を前に進める一歩になります。
応援と請負の配分を、自社の体制から整理するために
「何件増やすか」の前に、「今の人員で、どんな工事なら担えて利益が残るか」を整理するところから相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。応援と請負の配分についても、稼働状況や管理できる範囲、外注の必要性を踏まえ、案件獲得の方向性と進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は応援を増やすべきか、請負を探すべきか」という段階でも構いません。無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、次の整理先としてお気軽にご相談ください。