20名強の作業員がいても、請負現場の管理は社長が中心の体制
作業員がそろっていることと、請負現場を増やせることは、別の話です。 現場を完成まで管理する役割が社長に集中していると、受注の上限は人数ではなく、社長が対応できる範囲で決まります。
ある20名強の専門工事会社では、工場設備に関わる電気工事を手がけています。仕事の大半は応援で、請負はまだ一部です。会社としては、人数を出すだけでなく、現場管理や見積もりまで担える体制へ進もうとしていました。
当時は、請負1現場と応援3現場が並行していました。応援先にはそれぞれ職長を置き、社長がほとんど関与しなくても回っています。一方、請負現場には社長とサブ責任者が管理役として入り、作業員2〜3名を加えたチームで対応していました。
「完全に任せられるようになるには、2〜3年はかかると思います」
育成の見通しはあります。ただ、それまで請負を増やさずに待つわけではありません。今のチームで対応できる仕事を受けながら、任せられる範囲を広げようとしている段階です。
新しい請負を受けられるかどうかが、社長の予定次第になる状態
受注を増やすうえでの制約は、作業員の空きよりも、社長が既存現場と新規現場を両方見られるかどうかにあります。
この会社でも、新しい請負の話があれば、まず既存現場のスケジュールとの調整が必要でした。社長とサブ責任者のチームを、そのまま次の現場へ動かせるか。既存現場への対応を途切れさせずに済むか。そこを確かめてから、受けるかどうかを判断します。
社長が見られる請負現場は、並行して2現場程度。協力会社の支援があれば3現場も考えられる、という感覚でした。これは一般的な適正現場数ではなく、この会社の現時点での見立てです。
遠方も一律に対象外ではありません。サブ責任者を置き、社長が複数地域を兼任する可能性も考えていました。ただし、工事内容と日程次第です。社員が出張できるかという事情もあります。
つまり、「人を何名出せるか」だけでは受注可否を決められません。社長がどの現場に、いつ対応する必要があるかまで見て、初めて受けられる仕事量が分かります。
応援現場の連絡調整だけでは、請負の完成管理を経験しにくい構造
応援現場を任せられる職長がいても、そのまま請負現場の管理を任せられるとは限りません。 担っている役割が違うためです。
この会社の応援現場では、職長が作業員と取引先の間に入り、連絡調整を担っていました。社長の言葉では、「お客さんとの間のコーディネーターみたいな感じ」です。少なくとも当該の応援業務では、自社が請負として完成責任を負う形ではありませんでした。
これに対して請負では、自社の担当範囲を工期内に完成させるための現場管理が必要です。見積もりなど、作業以外の仕事も生まれます。応援を続けるだけでは、そうした管理業務を社内で経験する機会が限られます。
「受けると、それに付帯して現場管理や見積もりの仕事もできます。それに向けて教育していけば、そういう人材をうちで育てられます」
請負を増やしたい理由は、受注量だけではありません。管理できる人を育て、会社として担える仕事の幅を広げたいという考えがありました。
もう一つ、見落とせないのが工期です。既存の請負は、実作業が数日、長くても1週間ほどでした。しかし、工事全体の期間は1〜2か月あります。
実作業が3日だからといって、管理も3日で終わるとは限りません。 作業に入る日だけを並べると余裕がありそうでも、工期が重なる現場を抱える以上、社長が対応すべき期間は別に見ておく必要があります。
社長とサブ責任者の同席育成を軸に、管理できる条件の現場を重ねる進め方
育成が終わってから受注を増やすのではなく、今の管理体制で受けられる現場を選び、その現場で任せる範囲を広げていく進め方が現実的です。 経験者採用も並行し、社内育成だけで管理体制を整えようとしないことがポイントです。
社長が短時間抜けられる状態を、次の育成の足場にする
この会社では、すでに社長とサブ責任者が同じ請負現場に入り、社長が少しずつ現場を抜けられるようになっていました。ゼロから仕組みをつくるのではなく、この体制を育成の軸にできます。
次に整理したいのは、サブ責任者の「任せられる範囲」です。社長の手伝いという大きなくくりのままでは、どこまで任せられるようになったかが見えにくくなります。
既存現場で実際に担っている連絡調整や管理の仕事をもとに、次の3つに分けて確認すると進めやすくなります。
- サブ責任者だけで対応できること
- 社長に確認すれば対応できること
- まだ社長が直接対応する必要があること
任せる単位は「現場を丸ごと」ではなく、今その現場で発生している仕事から考えます。 社長が抜けられる時間が増えたときも、何を任せられた結果なのかを確認すれば、次の現場での役割を決めやすくなります。
経験者採用でも、職長経験と施工管理経験を分けて見る
この会社は、経験者や職長クラスの採用にも力を入れていました。そのうえで、施工管理もできる人であれば任せたい、という方針です。
ここでも、作業をまとめた経験と、請負範囲を完成まで管理した経験は分けて確認したいところです。自社がこれから受けたい工事内容に近い経験があるか。社長の補佐から始める人なのか、現場管理を任せられる人なのか。期待する役割を合わせておけば、採用後の分担も考えやすくなります。
経験者が入るまで受注を止める必要はありません。一方で、採用できる見込みを、すでに確保できている管理能力として数えないことも大切です。 当面の受注は、今いる社長とサブ責任者、協力会社で対応できる範囲を基準にします。
現場の大小よりも、管理できる条件がそろっているかを見る
社長は、当面は数名で数日〜1週間ほど作業する現場を重ねたいと考えていました。ただし、「得意な分野なら、大きい現場もできるかもしれません」とも話しています。
小さい現場なら安心、大きい現場なら難しい、とは一律に決められません。受注前には、次の条件を一緒に確認します。
- 工事内容: 自社の得意分野か。技術面で外部の支援が必要か
- 工期中の管理: 実作業日数だけでなく、完成まで対応できる体制があるか
- 並行現場数: 既存現場と新規現場を、社長とサブ責任者で無理なく見られるか
- 移動範囲: 社長の兼任が可能か。社員の出張日程も調整できるか
- 協力会社の支援: 自社で足りない対応を補えるか。依頼範囲と費用を見込めるか
協力会社の支援は、実績を積むための選択肢です。ただ、この会社では対応力を補うために外注が必要になることも多くありました。支援があれば受けられるとしても、何を依頼する必要があるかは受注前に確かめたいところです。
まずは既存の請負現場を基準に、新しい案件で変わる条件を比べます。工事内容、工期の重なり、移動、支援体制を確認し、対応できる条件がそろった現場から重ねていきます。受注件数を先に増やすのではなく、管理できる範囲を確かめながら実績を増やすことが、次の現場を任せる準備にもつながります。
まとめ
社長しか施工管理できない会社が請負を増やすには、受注と育成を切り離さず、同じ現場の中で進めることが大切です。
応援現場の職長が担う連絡調整と、請負現場を完成まで管理する役割には違いがあります。その差を、社長とサブ責任者が一緒に現場へ入る体制の中で少しずつ埋めていきます。経験者採用も、その取り組みを補う選択肢です。
受注の判断では、作業員の人数や実作業日数だけでなく、得意分野、工期中の管理、並行現場数、移動、協力会社の支援まで確認します。育成の完成を待つのでも、社長がすべて抱えて増やすのでもありません。今の体制で担える現場を選ぶことが、請負を増やすための着実な一歩になります。
請負を増やす前に、任せられる範囲と受注条件の整理
「どんな現場なら受けられるか」と「誰に何を任せられるか」を一緒に整理すると、次の一手が見えやすくなります。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。請負拡大に向けた管理体制や、育成と経験者採用の組み合わせも、会社の現在地から一緒に考えます。
「うちの場合、あと何現場なら増やせるのか」「サブ責任者に何から任せればよいか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありません。まずは、今の体制と目指す姿を整理する場としてお使いください。