前提

解体・足場を中心に、協力会社とともに受注を増やせる建設会社

複数工種に対応でき、施工の受け皿もある。次に整理したいのは、どの工事を入口に、どの取引先へ営業するかです。

山梨県にある、社員7名ほどの建設会社の相談です。社長は足場の職人出身。独立後に対応する工種を広げ、現在は解体・足場・塗装・土木を手がけています。

売上の構成は、解体がおよそ半分。足場が3割ほどで、残りを塗装と土木が占めます。自社の職人に加え、継続して入る一人親方や協力会社もいます。全体では25名ほどが動く体制です。

年間売上は3億円前後まで伸びる見込みで、さらに事業を大きくしたい考えがあります。案件が増えた場合の対応についても、社長の返答は「全然問題ないです」でした。

ただ、伸ばしたい工種を尋ねると、答えは少し違います。

「どこを伸ばしたいというのは、特に。全体的にという感じです」

受注の余地はある。工事にも幅広く対応できる。その一方で、新規開拓の優先順位は、まだ決まっていない状況でした。

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課題

「来れば何でも受けたい」を、営業先を選べる方針にする難しさ

受けられる工事の幅広さと、営業で最初に伝える内容は、分けて考えると整理しやすくなります。

社長の言葉は率直です。

「優先順位は特にないですけど、来れば何でもという感じです」

取引先の規模にも、強いこだわりはありません。大手でも地場の中小企業でも、仕事につながればよい。工種ごとの利益率についても、社長の感覚では大きな差はないとのことでした。

この状態では、営業先の候補は広がります。ただ、候補が広いほど、「まずどこへ、何を伝えるか」は決めにくくなります。

解体会社へ解体を提案するのか。足場を必要とする会社へ声をかけるのか。塗装の取引先を増やすのか。同じ新規開拓でも、選ぶ入口によって相手も説明内容も変わります。

ここで必要なのは、対応工種を減らすことではありません。受注の窓口は広く保ちながら、最初に営業する工種と取引先を絞ることです。

背景

足場の動きやすさと、解体の受注規模・対応エリアの違い

「営業しやすい工種」と「売上を伸ばす軸になる工種」が、必ずしも同じではないことが背景にありました。

この会社は、建設業向けのマッチングサービスで足場の案件を探していました。理由は、足場の売上比率を高めたいからではありません。

「動きやすいから、足場を出しています」

一方、解体を掲載していない理由には、対応エリアと許認可上の条件がありました。社長は、産業廃棄物に関する許可を県内で取得していることを挙げ、解体は基本的に県内で受ける方針だと説明しています。県外は、下請けとして出張する場合などを含めて個別の相談です。県内でも、距離によって対応しにくい地域があります。

解体の施工対象にも範囲があります。戸建てに加え、工場やアパートには対応できる一方、マンションは内部解体までという説明でした。

さらに、工種によって増やしたい顧客も異なります。塗装については、新たな法人取引先を探すより、個人客からの受注を増やしたい意向でした。法人向けの新規開拓として、全工種を同列に扱う状況ではなかったのです。

話を整理するなかで、解体には別の位置づけが見えてきました。

「解体は金額が大きいので、そこを伸ばしていくのが近道なのかな」

足場には動きやすさがあり、解体には受注規模の大きさがあります。どちらを入口にするかは、施工体制と営業できる地域まで合わせて考えたいところです。

解決

県内の解体を入口に、足場にも広がる取引先を選ぶ進め方

この会社では、まず解体を軸に候補企業を整理し、足場への展開余地も見ながら営業先を絞る方向が合っています。

解体は、すでに売上の中心です。施工実績があり、社長も受注規模を伸ばす軸として捉えています。加えて、新たな案件を受ける余力もあると話しています。まずここに絞ることで、営業方針を判断しやすくなります。

ただし、「解体を増やす」と決めるだけでは、営業先リストには落とし込めません。次の順番で具体化すると、動き出しやすくなります。

まず、工種ごとの条件をそろえます。確認するのは、次の4点です。

  • 受注規模:現在の売上構成と、増やしたい案件の大きさ
  • 施工体制:自社職人・一人親方・協力会社で対応できる範囲
  • 対応エリア:通常対応する地域と、個別相談になる地域
  • 許認可などの条件:保有する許可や、案件ごとに確認が必要な事項

この会社なら、解体は県内を基本とし、戸建て・工場・アパートなど、実際に対応できる対象を明確にします。マンションも一括りにせず、内部解体までと伝えます。許認可については、県外だから一律に不可と決めつけず、保有許可と実際に担う業務を確認する整理が必要です。

次に、既存の主要取引先を手がかりにします。

解体は複数社から受注しており、そのなかに継続して現場を任せてもらう取引先があります。まずは、その会社に近い規模や工事内容の企業を候補に挙げます。すでに受注できている相手を基準にするため、施工のイメージを合わせやすくなります。

そのうえで見たいのが、現場数の多さと、解体以外の工事にもつながる余地です。

社長が取引したい企業を挙げた理由も、現場数でした。

「現場数も多いので。解体を月に2件しか受けられなかったとしても、足場では結構受けられるんです」

解体の発注だけを待つのではなく、足場だけでも接点を持てる会社がよい。解体を入口にしつつ、他工種でも関係を続けられる相手が理想です。会社の知名度や大きさだけではなく、自社が入れる工事の幅で見る考え方です。

候補リストには、会社名だけでなく、対応地域、主な工事、現場数を判断する材料、足場などへの展開余地を添えます。すでに取引している企業は、新規候補から除きます。そのリストを社長が見て、「こういう会社なら受けたい」と具体的に確かめるところまで進めます。

最後に、伝える強みを相手側の利点に言い換えます。

「一番は、元請けさんからすれば楽なんです」

これが、社長自身の捉えている強みでした。解体と足場を別々の会社へ頼まなくてもよい。職人同士のやり取りを自社側で進め、元請けへ報告できる。複数工種への対応は、単に工事メニューが多いという話ではありません。

「解体と足場をまとめて相談でき、発注先や職人間の調整負担を減らせる」と伝えることで、元請けが依頼する理由になります。

人員面の融通が利く点も、合わせて伝えられます。ただし、全員をいつでも一斉に投入できるという説明ではなく、実際に調整できる施工体制の範囲で示すことが大切です。

営業先は、現場数と工種の広がりで選ぶ。訴求は、まとめて任せられる範囲と調整負担の軽減にそろえる。この2つをつなぐと、複数工種への対応力を新規開拓に生かしやすくなります。

まとめ

複数工種に対応できる会社ほど、「できること全部」ではなく、「最初に相談してもらう工事」を決めると営業を進めやすくなります。

この会社の場合は、売上の中心であり、受注規模も見込める解体が入口です。対応エリアと施工範囲をそろえたうえで、既存の主要取引先に似た企業を探します。さらに、現場数が多く、足場などでも関係を広げられるかを見て絞り込みます。

伝えるのは、「何でもできます」だけではありません。解体と足場をまとめて相談できること。その分、元請けの発注や職人間調整を減らせることです。

まずは、既存の主要取引先を基準に候補企業を並べてみる。その一歩からでも、新規開拓の優先順位は具体的になっていきます。

自社の施工体制に合う営業先を整理するために

「どの工種を伸ばすか決めきれていない」という段階でも、今の受注内容と施工体制から整理できます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路開拓では、営業の入口にする工種の検討から、候補企業のリスト化、相手に伝える強みの整理、実際のアプローチまで一緒に進めます。

「うちなら解体と足場のどちらから動くべきか」「今の取引先に似た会社をどう探すか」。そうした整理からでもご相談いただけます。無理にサービスの利用をお勧めすることはありません。自社に合う次の一手を考える場として、お気軽にお声がけください。

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