売上約3億円のうち半分を一社が占める、千葉県北西部の解体工事会社
千葉県北西部に拠点を置く、十数名規模の解体工事会社があります。主力は戸建て住宅の建て替えに伴う解体工事です。自社で重機を保有し、解体から運搬まで対応しています。
売上は約3億円。そのうち、およそ半分が特定の大手ハウスメーカーからの受注です。
ところが数年前、主要取引先の発注件数が大きく減りました。
「一時期は、本当に仕事がないくらいまでドーンと減りました。最近になって少し戻ってきた感じです」
自社の施工品質に問題があったわけではありません。人手不足で受注を断ったことが主因でもありません。元請け側の現場数が減り、その影響がそのまま自社の売上に表れたという状況でした。
過去には3億5,000万円前後あった売上も、直近では3億円を下回っています。今後は売上を以前の水準へ戻し、さらに伸ばしたい意向があります。
そのために必要なのは、単に仕事量を増やすことではありません。特定の元請けに左右されにくい受注構造へ変えることです。
戸建て案件を増やすか、単価と利益率の高いビル案件へ広げるかという選択
取引先を分散しようとすると、次にぶつかるのが「どの仕事を増やすのか」という問題です。
この会社には、大きく二つの選択肢がありました。
一つは、現在の主力である戸建て解体を、別のハウスメーカーからも受注することです。既存の施工体制や経験を活かしやすく、継続的な案件につながる可能性があります。
もう一つは、マンションやビルなど、規模の大きな解体工事を増やすことです。現在も年間3〜4件ほど受注しており、1件当たり1,000万〜2,000万円程度になる案件があります。戸建てより件数は少ないものの、売上と利益をまとまって確保できます。
経営者の希望は明確でした。
「やっぱり、一件の単価が大きいところに行きたいですよね」
一方で、大きければ何でもよいわけではありません。
「5,000万円を超えるような工事を一社で賄うのは難しい。協力会社を使うとしても、そのあたりが受けやすさの上限になります」
つまり、狙うべきなのは最大規模の案件ではなく、自社が無理なく管理でき、利益を残せる規模の案件です。
戸建ては1件当たりの売上が小さいため、売上を積み上げるには相当数の案件が必要です。ビル案件は1件当たりの売上と利益が大きい反面、年間を通じて何件発注されるかが読みにくくなります。
取引先分散では、元請けの社数だけを増やしても十分ではありません。案件単価、年間件数、利益額、受注可能な上限を組み合わせて考える必要があります。
「決まった業者がいる」と断られ、狙う発注者と接点の作り方が曖昧なままの営業
この会社も、過去に別のハウスメーカーを開拓しようと動いたことがありました。社外で営業を担う人と経営者が一緒に訪問したものの、思うような成果にはつながりませんでした。
「そもそも『うちは決まった業者がいるから』と門前払いです。つながりがない状態で電話しても、タイミングが合わないと話を聞いてもらえません」
大手の発注者には、すでに既存の協力会社がいます。施工に問題がなければ、積極的に入れ替える理由もありません。そのため、会社名を並べて順番に電話するだけでは、営業活動の負担が大きくなります。
また、狙う相手の条件も十分には整理されていませんでした。
この会社の対応エリアは、東京都23区を中心に、千葉県中部、川崎・横浜方面までです。東京西部は協力会社との連携で対応できます。施工面では丁寧な仕事に加え、大手との取引で求められる書類を期日までに提出できることが評価されています。
「大手は書類関係が多いです。『この書類はいつまで』というものを、滞りなくきっちり出すことは心がけています」
これは大手元請けを開拓するうえで重要な実績です。ただし、経営者自身は「大手と仕事をするなら、それくらいは必要」と捉えていました。
自社にとって当たり前の対応でも、新しい発注者から見れば取引開始の不安を減らす材料になります。営業では、この施工実績や管理対応を、相手が判断できる形に整える必要があります。
利益額・年間件数・受注上限・施工実績・対応エリアから狙う元請けを絞る進め方
取引先の分散は、闇雲に新規営業を始めるのではなく、自社の受注条件を先に決めるところから進めます。
まず、既存案件を取引先別、工事種別に分けて整理します。
- 1件当たりの平均受注額
- 粗利率だけでなく、1件当たりに残る粗利額
- 年間の案件数と発注時期のばらつき
- 自社施工と協力会社施工の割合
- 現場管理や書類対応にかかる負担
- 自社が受けやすい工事金額の上限
- 現場までの移動時間を含む対応エリア
特に注意したいのが、利益率だけで判断しないことです。
経営者の言葉にもあったように、100万円の案件で利益率10%の場合と、2,000万円の案件で利益率10%の場合では、残る利益額が違います。一方、大型案件は拘束される人員や期間、協力会社の確保も変わります。
見るべきなのは利益率の高さだけではなく、工期と必要人員を踏まえて最終的にいくら残るかです。
そのうえで、開拓先を二つに分けます。
既存分野を横展開する元請け
一つ目は、戸建て解体を継続的に発注する別のハウスメーカーです。
既存の施工実績をそのまま示しやすく、大手向けの書類対応にも慣れています。ただし、1件当たりの受注額が小さい場合、必要な売上をつくるには一定の案件数が必要です。
そのため、「取引できそうか」だけではなく、次の点まで確認します。
- 対応エリア内で年間何棟を施工しているか
- 解体工事を支店単位と本部単位のどちらで発注しているか
- 新しい協力会社を必要とする地域があるか
- 既存業者だけでは対応しにくい繁忙期があるか
戸建て案件を狙う場合は、一社から大量に受注するのではなく、複数社から一定件数ずつ受ける形が分散につながります。
単価と利益額を高める元請け
二つ目は、マンションや中規模ビルの解体案件を持つ発注者です。
この会社には、すでに1,000万〜2,000万円規模の施工実績があります。まずはその実績に近く、自社の受注上限を超えない案件を狙います。
大規模案件へ一気に広げるより、現在の実績から無理なく説明できる範囲を選ぶ方が、発注者にとっても検討しやすくなります。
対象物件についても、オフィスや商業施設といった建物用途を細かく絞る前に、以下の条件を優先します。
- 工事金額が自社の受注可能範囲に収まるか
- 既存実績と近い構造・規模か
- 自社と協力会社で施工体制を組めるか
- 対応エリア内で継続的な発注が見込めるか
- 戸建て案件より粗利額を確保できるか
「大きなビル案件」ではなく、「自社の実績で受注でき、利益を残して完工できる中規模案件」と定義することが重要です。
狙う発注者を決めた後は、接点の作り方も変えます。
過去の営業で門前払いが多かったのであれば、電話や飛び込みの件数を増やすだけでは再現性がありません。既存の取引先、営業協力者、協力会社などのつながりを洗い出し、紹介可能な先を優先します。
紹介を依頼する際には、「どこか仕事を出してくれる会社を紹介してほしい」では広すぎます。
「東京都内で、1,000万〜3,000万円程度の解体案件を扱う会社」「戸建て解体の協力会社を追加したいハウスメーカー」のように、受けたい案件の条件を具体化して伝える方が、紹介先を思い出してもらいやすくなります。
あわせて、施工事例、対応エリア、受注可能な工事規模、保有重機、運搬体制、書類対応を1枚にまとめます。新しい発注者が「既存業者以外にも声をかけたい」と考えたタイミングで、判断材料をすぐに渡せる状態をつくっておきます。
まとめ
特定の元請けへの依存は、一社との取引が大きいこと自体よりも、その会社の発注減を別の受注で補えないことが問題です。
今回のような会社であれば、方向性は次の二つです。
- 戸建て解体の実績を活かし、別のハウスメーカーから一定件数ずつ受注する
- 既存実績に近い中規模のビル案件を増やし、1件当たりの売上と利益額を高める
どちらか一方に決める必要はありません。戸建て案件で一定の仕事量を確保しながら、中規模案件で利益額を積み上げる組み合わせも考えられます。
その判断に必要なのは、営業先の会社名を増やすことではありません。利益額、年間案件数、受注上限、施工実績、対応エリアを整理し、自社が受けたい仕事を言葉にすることです。
受注条件が定まれば、狙う発注者も、紹介を頼む相手も、最初に伝える内容も見えやすくなります。
自社に合う元請けと案件条件を整理したいときは
「依存を減らしたいが、どの元請けを狙うべきかわからない」「戸建てを増やすべきか、規模の大きな案件へ広げるべきか迷っている」という段階では、まず現在の取引先別売上と受注条件を並べるところから始められます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の取引先開拓をはじめ、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して課題を整理し、実行まで支援しています。
まだ狙う会社や営業方法が決まっていなくても、「自社の場合は何から整理すればよいか」という段階からご相談いただけます。無理にサービスを勧めることはありませんので、今後の受注構造を考えるための整理先としてお声がけください。