前提

県内全域を担ってきた10名強の住宅系工事会社で、元請けからの受注量が落ち始めた状況

東海地方にある従業員10名強の住宅系工事会社では、創業期から長く特定の元請けを支えてきました。最盛期には、年間100棟を超える引き渡しに関わった時期もあります。

ところが、新築市場や元請け側の施工体制が変わり、以前ほど仕事が均等に入らなくなりました。

「月10件を想定して人を配置しても、実際に来るのは8件くらいです。しかも、少ない案件ほど遠いエリアに寄ってしまいます」

県内中央部に会社があるため、東にも西にも動けます。ただし、動けることと利益が出ることは別です。移動距離が伸びれば、車両費や燃料費、移動時間が増えます。小口案件が点在すると、一日の施工量も安定しません。

遠方の別荘地などでは、その後のメンテナンスまで追い切れないこともあります。仕事量が減っているのに、対応エリアだけは広い。そんな状態です。

受注減少の問題は、単純な件数不足ではありません。遠方案件や小口案件が増え、同じ売上でも利益と稼働率が下がっていることが本質です。

課題

長年の元請けとの関係を守りながら、採算の合う第二の受注ルートをつくる難しさ

新しい取引先を増やせば解決するほど、話は単純ではありません。

この会社には、長年積み上げてきた元請けとの関係があります。施工マニュアルや品質基準も細かく、その元請けの仕事に合わせて人と技術を育ててきました。

「道具は使えても、別の会社の現場にそのまま出せるとは限りません。逆も同じです」

特定元請けへの対応力が高いことは、明確な強みです。一方で、施工方法が専門化するほど、他社案件へ切り替える際の教育負担が増えます。

さらに、他の住宅会社と取引する場合は、既存元請けとの競合関係にも配慮が必要です。新築とリフォームを同じ担当者が受け持つと、繁忙期が重なり、既存案件の対応が遅れる可能性もあります。

「他の会社とも付き合うなら、窓口も担当も分けないと難しいですよね」

実際に複数の住宅会社と取引している会社では、顧客ごとに担当を固定し、社内を縦に分けています。「一つの会社の中に二つの会社がある」ような運営です。

取引先の分散で重要なのは、受注先の数を増やすことではなく、既存取引を損なわずに回せる受注構造をつくることです。

背景

元請けの供給力低下と単価差、広域配置の非効率が同時に進んでいる構造

仕事量が落ちた背景には、個社の営業不足だけでは片づけられない変化があります。

元請け側も、新築住宅の販売環境や施工供給力の変化に直面しています。以前なら、指定工事会社が他社と付き合う話を出しにくい空気がありました。今では、元請け側からも「他の住宅会社やリフォーム、管理会社との取引を含めて、フラットに考えてほしい」という話が出るようになっています。

それだけ、従来の仕事量を将来も維持できるとは限らない状況です。

一方、受注単価への不満も残っています。

「単価を100円、200円見直しても、一般の建築工事との格差が大きすぎます」

材料費や燃料費が上がるなか、細かな発注を積み上げる方式では、実際に購入する材料単位とのずれも生まれます。表面上は単価が上がっていても、会社に残る利益が増えていないことがあります。

そこへ広域対応が重なります。県内を複数エリアに分けて人を置いても、各エリアへ均等に案件が来なければ、手が空く班が出ます。反対側で急な案件が入ると、長距離移動で埋めることになります。

「元請けからの受注減」「単価と実費のずれ」「広域移動による非効率」が重なり、一社依存の採算が崩れ始めています。

この状態で件数だけを追うと、遠方の小口案件をさらに抱えかねません。まず必要なのは、営業件数を増やすことではなく、どの仕事なら利益と稼働を両立できるかを見分けることです。

解決

エリア別・工種別の採算を見える化し、既存取引と両立できる営業先から試す進め方

取引先開拓は、営業リストを作る前の整理で方向が決まります。最初に確認したいのは、直近6か月から1年程度の案件実績です。

少なくとも、案件ごとに次の情報を並べます。

  • 施工エリアと片道の移動時間
  • 新築、改修、メンテナンスなどの工事区分
  • 受注金額と材料費
  • 必要人数と施工日数
  • 移動を含む総稼働時間
  • 手直しや再訪問の回数
  • 元請け別の粗利額と粗利率

細かな原価計算が難しければ、最初から完璧にする必要はありません。「近距離・中距離・遠距離」「一日で完了・複数日・再訪あり」といった区分でも、傾向は見えてきます。

新規営業の出発点は、売上の大きい案件ではなく、自社の人員と商圏で粗利が残る案件を把握することです。

次に、新しい取引先候補を同じ基準で比較します。

取引先候補

確認したい点

他の住宅会社

既存元請けとの競合、施工基準の違い、年間発注量

ゼネコン

現場規模、安全書類への対応、支払い条件、必要資格

不動産管理会社

小口修繕の件数、対応エリア、緊急対応の頻度

リフォーム会社

工期の短さ、居住中工事への対応、既存担当との両立

公共工事

入札参加の準備、工事実績、技術者配置、受注の波

候補は多いほどよいわけではありません。判断軸は、次の三つに絞ると比較しやすくなります。

  1. 現在の施工技術と人員で無理なく始められるか
  2. 移動時間を含めても採算が残るか
  3. 既存元請けとの関係や現場対応に影響しないか

たとえば、遠方の新築を増やすより、会社から近い管理会社の修繕案件を受けた方が、空いている班を動かしやすい場合があります。反対に、小口案件の段取りや居住者対応が不得意なら、一定規模のゼネコン案件や別の住宅会社の方が合うかもしれません。

公共工事も選択肢ですが、「民間案件が減ったから」という理由だけで始めると、入札準備や技術者配置が負担になります。既存の実績や社内体制と照らして判断する必要があります。

営業を始める際は、一度に複数市場へ広げず、優先順位の高い領域に絞ります。

進め方は、次のような流れが現実的です。

  1. 商圏と工種を決める
  2. 対象企業の営業リストを作る
  3. 電話や紹介で施工担当者との接点をつくる
  4. 面談化した会社だけ経営者や工事責任者が訪問する
  5. 小規模な案件で施工基準と採算を確認する
  6. 継続受注できると判断してから担当者を固定する

実際に行われている方法の一つが、営業リストへの一斉連絡です。電話で面談を設定し、話が具体化した会社だけ社長が同行します。いきなり経営者が何十社も回るより、現場と経営への負担を抑えられます。

住宅会社やゼネコンなど、入口をつくりにくい相手には、その企業や業界で勤務経験のある人を通じて接点をつくる方法もあります。ただし、紹介があれば取引できるわけではありません。最後に見られるのは、施工実績、対応エリア、品質管理、供給できる人数です。

複数元請けとの取引が始まった後は、窓口と担当を曖昧にしないことも欠かせません。

  • 元請けごとに営業・工事の責任者を決める
  • 工程表と職人配置を分けて管理する
  • 図面、施工基準、写真の保存先を分ける
  • 繁忙期が重なった場合の受注上限を決める
  • 既存元請けを優先する条件を社内で共有する

新規取引は、最初から大きく受注するより、小さく試して採算と運用を確認し、回せると分かってから広げる方が安全です。

まとめ

特定元請けからの受注が減ったとき、すぐに別の大口元請けを探したくなります。しかし、先に見たいのは自社の足元です。

遠方の現場がどれだけ利益を圧迫しているのか。どの工種なら既存の人員で回せるのか。空いている班をどのエリアで動かしたいのか。ここが分かると、営業先の優先順位も変わります。

他の住宅会社、ゼネコン、管理会社、リフォーム会社、公共工事には、それぞれ異なるメリットと負担があります。自社の施工力、商圏、既存取引への影響を基準に選ぶことが大切です。

一社依存から抜けるとは、元請けを入れ替えることではありません。採算の合う取引先を少しずつ増やし、自社で仕事量を調整できる状態をつくることです。

自社に合う取引先と営業の進め方を整理したい方へ

「住宅会社と管理会社のどちらを優先すべきか」「既存元請けに配慮しながら、どこまで営業してよいか」「営業リストは作れても、社内に動かす人がいない」といった段階でも、整理できることがあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、現場体制、原価管理、人材、組織、デジタル活用まで横断して整理し、営業先の選定や接点づくりを含む実行まで支援しています。

まだ方針が固まっていなくても問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、自社の場合に何から整理すべきかを確認する場としてご活用ください。

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