前提

熟練職人の自社施工を軸に、受注回復を目指す少人数の専門工事会社

目指しているのは、売上規模の拡大そのものではなく、一件ずつ利益を残し、社員に還元できる会社です。

岐阜県にある、5名ほどの専門工事会社。建物を残すための持ち上げや基礎まわりの改修などを手がけています。熟練職人を中心に、経験を積んでいる若手も在籍する体制です。

取引の土台は、先代から付き合いのある地場の工務店です。ただ、その取引先でも大工の高齢化や廃業が進み、従来の工事が減ってきました。そこで、得意工事を必要としてくれる新たな取引先を増やそうとしています。

一方、経営者は売上や人数を大きくすることだけを望んでいるわけではありません。

「社員が責任を持って一件一件やれて、頑張った分が見返りに反映されるようにしたい」

受注を戻すことと、仕事の利益を守ること。この二つを一緒に進めるのが、同社の現在地です。

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課題

受注件数だけを追うと、一件ずつ利益を残す働き方とのずれ

受注を増やす判断には、「施工できるか」だけでなく、「どの体制なら利益を残して施工できるか」が必要です。

同社の経営者は、売上高ばかりを見ると「ただ物件をこなしているだけになってしまう。それはしたくない」と話します。仕事を受け、現場を終える。それだけで忙しさが増えても、社員への還元につながらなければ、目指す会社の姿とは離れてしまいます。

ここで整理したいのが、通常時と繁忙時の施工体制です。同社では、普段から工事を外注に回しているわけではありません。熟練職人が一緒に現場へ入り、一件ずつ施工する形を、経営者は最も利益率の高い進め方と捉えています。

その一方で、工程が重なれば、職長を分散させて協力会社の応援を受ける選択肢もあります。

どちらも「受けられる仕事」ではあります。ただし、自社の職人だけで進める場合と、応援を組む場合では、施工の組み方も利益の残り方も変わります。受注可能な件数を、そのまま目標件数にしないことが大切です。

背景

現場で判断できる職人の対応力と、工程の重なりを補う応援

同社の施工力を支えているのは、人数の多さではなく、自ら手を動かし、その場で対応を考えられる職人の存在です。

強みとして挙がったのは、一つの工法に限らない対応力でした。図面で見ていた状態と、実際に確認した状態が違う。予算に限りが出てきた。そうしたときに、工事の進め方や変更案を提案できるといいます。

もちろん、変更は職人の判断だけで完結するものではありません。発注者との確認が前提です。設計や強度に関する確認が必要な場合には、経験だけでは説明しきれない難しさも感じています。

それでも、熟練職人がそれぞれ動けることは、自社施工の大きな土台です。経営者が「管理者ではなく、昔ながらの親方」と表現したのも、指示だけを出す立場ではないからです。自ら施工しながら、必要に応じて周囲へ指示を出せます。

協力会社への依頼も、その延長にあります。

「一つの現場が終わりそうだけれど、もう一つを始めなければいけない。そういうときに、ちょっと手伝ってもらう」

応援は常時外注化のためではなく、現場が重なる期間を補うための選択肢です。 この違いを押さえないと、同じ少人数の会社でも、実態とは異なる受注計画になってしまいます。

解決

得意工事・職人の対応力・工程の重複から選ぶ施工体制

まず自社施工で利益を残せる仕事を軸に置き、工程が重なる場合に、職長の分散と応援を検討する順番が合っています。

同社の考え方を、受注判断に使える形にすると、次の三点に整理できます。

  • 自社が昔から手がけ、利益を残しやすい得意工事か
  • その現場に必要な判断と施工を担える職人を配置できるか
  • 既存現場とどの工程が重なり、どの範囲に応援が必要か

この三点をそろえてから、一件ずつチームで施工するのか、職長を分けて進めるのかを考えます。

通常時は、チームで一件ずつ進める強みを活かす

同社では、昔から手がけてきた建物の持ち上げなどが、利益面でも望ましい工事として挙がりました。まずは、こうした得意工事を軸に受注を考えることです。

熟練職人が一緒に入り、それぞれの動きを理解して施工できるなら、その組み方を基本に置きます。複数現場へ分散できる能力があっても、常に分散させる必要はありません。

「現場を分けられること」と「分けたほうがよいこと」は別です。 一件ずつ進めるほうが利益を残せるなら、それも十分に前向きな受注方針です。

重複時は、職長を置けるかと応援の範囲を確認する

現場が重なる場合は、単純な人数ではなく、それぞれの現場で施工と判断を担える人がいるかを見ます。若手を含め、全員を同じ対応力として数えないことも大切です。

そのうえで、重複する期間と作業を確認します。一つの現場の終盤と、次の現場の着手が重なるだけなのか。職長を分け、応援を受ける必要があるのか。必要な応援を含めても、利益を残せる見通しがあるのか。この順で考えると、受注件数だけでは見えない判断ができます。

また、現場対応力のある職人でも、設計上の確認まで単独で担えるとは限りません。職長を配置できることと、必要な確認を進められることは、分けて考えたいところです。

営業と増員は、利益を守れる施工体制に合わせる

営業も増員も、この施工方針と並行して進めます。同社も、営業に力を入れながら、採用を切り離さずに考えていました。

ここでの判断軸は、単に「仕事が増えたから人を増やす」ではありません。得意工事の受注が増えたとき、現在のチームと重複時の応援で対応できるのか。それとも、中核となる職人を少し増やす必要があるのか、という見方です。

営業で増やす仕事と、社内で厚くする施工力をそろえることが、品質と利益を守る体制づくりにつながります。

まとめ

少人数の専門工事会社にとって、受注拡大の基準は、件数や売上だけではなく、一件ごとの利益と責任ある施工を両立できるかです。

通常は熟練職人がチームで施工する。工程が重なったときには、職長を分散させ、必要な範囲で応援を受ける。この使い分けは、常時外注を前提に仕事を増やす運営とは異なります。

まずは、自社の得意工事、職人ごとの対応力、工程の重複をそろえて見ることです。そのうえで営業と増員の進め方を考えれば、「ただ現場をこなす」のではなく、社員への還元につながる受注を目指せます。

自社施工の強みを活かす受注体制の整理

「あと何件受けるか」の前に、「どんな仕事を、どの体制で受けたいか」から整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。受注と施工体制についても、得意工事や職人の対応力を踏まえ、営業・増員・協力会社の活用を一緒に考えます。

「うちの場合は、今の人数でどこまで受けるのがよいか」「何から整理すればよいかわからない」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、自社に合う進め方を考える場としてお声がけください。

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