住宅の取引先開拓を進めながら、アパートや木造店舗への展開を考える建設会社
住宅以外の工事を増やすときは、取りたい工事の種類と、その施工会社を選ぶ相手をセットで整理することが出発点です。
栃木県のある建設会社では、住宅分野の取引先開拓を進めながら、その先の受注領域としてアパートや木造のテナント、クリニックなどを考えていました。まず住宅の仕事で接点を増やし、いずれは住宅以外の建築にも広げていきたいという構想です。
「いいなと思っているのは、やっぱりアパート系。あとは木造のテナントとか」
身近には、店舗工事を継続して受注している元請会社もありました。コンビニエンスストアを中心に仕事をしてきた会社が、別の小売店や飲食店も手がけている様子を見て、「ああいう工事には、どうやって入っていくのだろう」と感じていたのです。
一方で、営業したい相手が明確になっているわけではありません。店舗を運営する企業に直接連絡すればよいのか、設計事務所とつながるべきなのか、それとも間にいる事業者の紹介が必要なのか。取りたい工事は見えていても、入口が見えにくい状態でした。
住宅で培った取引関係を別の領域へ広げようとするとき、この「工事の名前は分かるけれど、誰に話せばよいか分からない」という壁は、一度立ち止まって整理したいポイントです。
施主とつながっても、施工会社の選定に入れるとは限らない難しさ
工事を依頼したい人との接点と、施工会社の選定に参加できる接点は、必ずしも同じではありません。
この会社には、クリニックの院長が所有するマンションの改修を手がけた経験がありました。その仕事をきっかけに、院長からクリニックの改装についても声がかかったといいます。
「うちの店舗も、ちょっとやってもらおうかな、という話になったんです」
すでに施主との関係があり、仕事ぶりも知ってもらっている。入口としてはよい条件に見えます。しかし、話を進めると、院長からは設計事務所を通したいという意向が示されました。
「設計事務所を通したいと言われて、その事務所と話をしたんです」
その設計事務所には、自ら付き合いのある施工先を使いたい意向があったといいます。施主から声をかけてもらっても、それだけで施工の話が進むわけではなかったのです。
ここで確認したいのは、人間関係の強さだけではありません。誰が工事の相談を受け、誰が施工候補を挙げ、誰が見積もりを取り、誰が選定に関わるのかという流れです。
店舗工事を受注している他社についても、外から見えるのは施工実績までです。設計事務所からの依頼なのか、元請会社との取引なのか、人脈による紹介なのかは、実績だけでは分かりません。他社が受注している事実と、その受注経路についての推測は、分けて考える必要があります。
設計事務所の発注方式や大手企業の権限分担によって変わる営業窓口
同じ店舗・クリニックの工事でも、発注の仕方と社内の権限分担によって、話をする相手が変わります。
この会社が進めていた設計事務所への接触でも、その違いが見えていました。建築一式での発注を行う事務所がある一方、分離発注をしていて、いま求めているのは大工という事務所もありました。
どちらも設計事務所ですが、建築一式を受けたい会社にとって、同じ営業先とはいえません。相手が求める施工範囲と、自社が受けたい工事の範囲が合っているかを確認して、初めて具体的な話になります。
大手企業の場合には、社長に会うことが最短経路とも限りません。工事部や積算部などに実務上の権限が委ねられ、施工会社とのやり取りや見積もりの検討を担当している場合があるためです。役職の高さだけを目指すより、実際に工事を動かしている部署と、その中で選定に関わる人を確かめるほうが、話の進め方を組み立てやすくなります。
クリニックについては、設計事務所に加え、開業支援に関わる事業者やディーラーなどが工事の相談につながる接点ではないか、という見方も出ていました。ただし、特定の会社がその経路で受注していると確認できたわけではありません。営業先の候補にはなっても、そのまま成功経路として扱うことはできません。
つまり、営業先を「店舗を出す会社」「クリニックの院長」「設計事務所」と業種や肩書きだけで並べると、肝心の違いが埋もれてしまいます。営業先の分類には、業種だけでなく「工事の発注・選定にどのように関わる相手か」という情報が必要です。
対応したい工事から発注経路をたどり、実務の選定窓口に合わせる営業の進め方
営業先を増やす前に、自社が受けたい工事、相手の発注方式、選定に関わる窓口をそろえ、その窓口に届く接触方法を選びます。
アパート・木造店舗・クリニックを、一つの営業先リストにまとめない
最初に分けたいのは、受注したい工事の種類と範囲です。この会社が挙げていたアパート、木造のテナント、クリニック改装は、いずれも住宅以外への展開ですが、同じ入口から発注されるとは限りません。
建築一式を受けたいのか、元請会社から施工の一部を受けたいのかによっても、相手に確認する内容は変わります。そこで、営業先の候補を次のように整理します。
- 設計事務所:対象の工事を扱っているかに加え、建築一式か分離発注か、施工候補をどのように選ぶかを確認します。
- 元請会社:自社が対応したい店舗などの工事を扱っているか、施工会社との取引をどの部署が担当するかを確認します。
- 店舗を展開する企業:直接施工会社を選ぶのか、設計事務所や元請会社を通すのかを確認します。
- 開業支援に関わる事業者やディーラー:工事の相談や施工会社の紹介に関わっているかを、まず確かめます。
これは「この相手なら受注できる」という一覧ではありません。自社が受けたい工事に対して、どこに発注につながる接点がありそうかを確認するための整理です。
会社紹介だけで終わらず、施工会社の決め方を聞く
初回の接触で得たいのは、面談の約束だけではありません。相手が施工会社をどう決めているかが分かれば、その後の営業先や提案の方向を絞れます。
確認する内容は、次の点が中心になります。
- 建築一式で依頼しているのか、工種ごとに分けているのか
- 決まった施工会社に依頼しているのか、案件ごとに探すのか
- 複数社から見積もりを取ることがあるのか
- 施工候補を挙げる人と、見積もりを検討する部署・担当者は誰か
事前にホームページで施工実績を見て、外部の施工会社名や、案件ごとに施工会社を探す旨の記載があれば、確認の手がかりになります。ただし、過去に外部へ依頼していたからといって、現在も新しい取引先を探しているとは限りません。公開情報を入口に、実際の運用を聞く進め方が適しています。
院長から声がかかったクリニックのように、施主との接点が先にできた場合にも、「設計事務所を通すのか」「施工候補は誰が挙げるのか」を早い段階で確認すると、その後に誰と話すべきかが明確になります。
直接営業と人脈を介した接触は、届けたい窓口で使い分ける
接触方法は、相手企業の知名度ではなく、必要な窓口へ届くかどうかで選びます。
小規模な設計事務所では、電話に出た代表者や担当者から発注方式を確認できる場合があります。この会社への支援でも、直接の電話で、建築一式の発注を行う事務所との接点ができていました。ただし、これは発注方式を確認できた段階であり、受注の実績とは別です。
一方、狙う元請会社や店舗展開企業が明確でも、担当部署が分からない、連絡しても実務の窓口まで話が届かない場合には、その企業や業界を知る人の知見・人脈を使う方法が候補になります。
その際も、紹介してもらう相手を「できるだけ上の人」とするのではなく、工事部・積算部など、施工会社の選定に関わる窓口へつながるかを確認します。紹介の価値は、肩書きの高さよりも、自社が受けたい工事について具体的に話せる相手へ届くことにあります。
接触結果を残し、次に話す相手を絞る
営業先の情報には、会社名や連絡先だけでなく、発注方式、対応した部署・役職、選定窓口、相手の反応を残します。資料送付を求められた場合は送付先を確認し、「時期が合えば話せそう」という反応と、「求める施工範囲が合わない」という反応を分けておきます。
この会社の経営者も、件数そのものより、話ができる相手との接点を求めていました。
「できるだけ話ができる、その質のほうが欲しいんです」
この場合の質は、単に感じよく応対してもらえたかではありません。自社の対応範囲と相手の発注内容が合い、次に誰へ何を伝えればよいかが分かったかどうかです。そこまで残しておくと、電話、資料送付、訪問、人脈を介した紹介を、相手ごとに選びやすくなります。
まとめ
住宅以外の工事を増やす営業では、「誰が建てたいか」に加えて、「誰が施工会社を選ぶのか」を押さえることが大切です。
施主との関係があっても設計事務所が選定に関わる場合があり、大手企業では社長ではなく工事部や積算部が実務を担う場合もあります。同じ設計事務所でも、建築一式と分離発注では求める施工先が異なります。
まずはアパート、木造店舗、クリニックなど、自社が広げたい工事と受注範囲を分けてみます。そのうえで、発注方式と選定窓口を確かめ、直接連絡して届く相手には直接営業を、窓口への到達が難しい相手には人脈を介した接触を検討する。その順番が、営業の力をかける先を見つける手がかりになります。
店舗・クリニック工事の営業先を、自社の対応範囲から整理したい方へ
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ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援する会社です。販路拡大では、自社が対応できる工事と今後広げたい領域を起点に、営業先の候補や発注経路、直接営業と顧問の知見・人脈を活用する方法を一緒に考えます。
「住宅以外にも広げたいけれど、誰に話せばよいか分からない」「設計事務所と元請会社のどちらから当たるべきか整理したい」という段階でも構いません。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、自社の場合の次の一手を考える場として、お気軽にご相談ください。