月商300万円前後を社長一人の営業で支える専門工事会社
売上の偏りを小さくするには、取引先の数ではなく、継続して受注できる柱を増やす視点が必要です。
ある住宅関連の専門工事会社では、月商300万円前後のうち、約8割を2社との取引が占めていました。粗利率はおおむね4割で、新規営業は社長一人が担っています。営業担当者の採用は、固定費の面から慎重に考えている状況です。
目指していたのは、1社に売上が大きく偏らず、3〜4本の受注の柱を持つことでした。協力会社のネットワークにはまだ稼働の余地があり、まずは現在の体制で対応できる案件を増やしたいという意向もありました。
ただし、どの地域でも同じように施工できるわけではありません。協力会社に依頼しやすい地域と、対応しにくい地域があるため、案件が増えればそのまま売上につながるとは限らない状態です。
この会社に必要だったのは、営業先を幅広く増やすことよりも、今の施工体制で受けられ、継続案件と粗利が見込める取引先を選ぶことでした。
取引先が増えても継続案件がなければ残る売上の偏り
新しい取引先を1社獲得することと、新しい受注の柱を1本つくることは別です。
この会社でも、1社から出てくる案件数は取引先によって大きく異なっていました。住宅を多く扱う会社であれば案件数が見込める一方、すべての取引先から同じ頻度で発注されるわけではありません。既存の取引には、週1件程度のペースで案件が出る例もありました。
そのため、新規取引先を数社増やしても、単発の工事だけで終われば、売上の中心は従来の2社のままです。反対に、案件数が多くても、価格競争によって粗利が残りにくければ、期待したほど経営への貢献は得られません。
社長が気にしていたのも、最初の受注だけではなく、その取引を維持できるかどうかでした。価格によって発注先が変わりやすい業態では、受注した件数だけを見ても、販路分散が進んだとは判断しにくいからです。
整理したいのは、取引先ごとの「月に何件程度を継続して任せてもらえそうか」と「その案件からどれだけ粗利が残るか」です。取引社数は入口の指標であり、販路分散の実態は継続案件数と粗利に表れます。
社長の営業経験と地域ごとの施工対応力に左右される開拓先
開拓先の良し悪しは、会社の知名度や売上規模だけでは決まりません。事業内容、拠点展開、施工できる地域、取引に入る余地を重ねて見る必要があります。
この会社で候補になったのは、建売住宅や中古住宅の買取再販を手がけ、複数地域に拠点を持つ会社でした。社長自身も同様の企業を開拓しており、本社だけでなく、いくつかの営業所へ足を運んでいました。
背景には、地域に根づいた会社には新たに入りにくい一方、複数地域で事業を展開する会社には接点を探れる、という社長の営業経験がありました。単純に「小さい会社なら入りやすい」「大きい会社なら案件が多い」と分けられるものではなかったのです。
一方で、候補企業の中には、すでに接触している会社や、以前の勤務先との関係を確認すべき会社もありました。新しく作った営業先一覧が、そのまま連絡してよい一覧になるわけではありません。
さらに、営業を強めても、対応しにくい地域の案件ばかり増えれば受注につながりません。初めての依頼だからと無理に引き受けると、その後も安定して対応することが難しくなります。
営業先の選定は、発注の可能性だけでなく、既存の関係と施工対応力まで含めて行う作業です。
継続粗利と拠点ごとの参入余地で絞る新規開拓先
「受注の柱になる条件」を先に決め、その条件に合う企業と拠点へ接触し、得られた情報で優先順位を更新していく進め方が適しています。 社長一人で営業する場合ほど、連絡先を増やす前の整理が効いてきます。
1.取引先ごとに見込める継続案件数と粗利を整理する
まず、既存取引をもとに、1社が受注の柱になるために必要な案件数を考えます。基本となる見方は、次のとおりです。
1社から見込める月間粗利=1件あたりの売上×粗利率×月間の継続案件数
この会社でも、平均的な施工面積、単価、粗利率、1社から出る案件数を確認していました。大切なのは、すべての開拓先に同じ案件数を当てはめないことです。発注量には差があるため、候補先の事業内容や、接触して確認できた案件の状況に応じて見込みを置き直します。
新規の1社が増えると売上全体の偏りがどの程度変わるか、粗利がどれだけ積み上がるかまで見れば、単発受注を追う営業と、継続取引を育てる営業を区別しやすくなります。
2.事業内容・拠点展開・対応エリア・参入余地で候補を絞る
候補先を選ぶ際は、次の4点を重ねて確認します。
- 事業内容:自社の工事が発生する建売住宅や中古住宅の買取再販などを手がけているか
- 拠点展開:複数の支店・営業所があり、接点や継続案件を探れるか
- 施工対応エリア:現在の協力会社の体制で、安定して対応できる地域に案件があるか
- 参入余地:新しい施工会社として、見積もりや試しの1件から入る余地があるか
企業の売上規模は、発注量や入口の見つけやすさを考える材料の一つです。ただし、規模だけで優先順位を決めず、自社が入れる可能性と受けられる案件の重なりを見ます。
特に、施工対応エリアは「何とか行ける地域」ではなく、「継続して任せてもらっても対応できる地域」を基準にすることが重要です。
3.連絡前に、既存取引や進行中の話との重複を除く
新規開拓では、連絡する先だけでなく、連絡しない先も先に決めておきます。
この会社では、現在稼働している取引先に関係する先、以前の勤務先との関係から配慮が必要な先、すでに話が進んでいる先を確認していました。
ただし、既存取引先の先にいる企業を一律に除外する考え方ではありませんでした。実際に稼働している関係なのか、自社ですでに開拓を進めているのかを確認し、対象に含めるか判断していました。
社長以外が営業を担う場合も、この判断を共有しておけば、重複した連絡や関係先との行き違いを避けやすくなります。
4.本社だけでなく、発注担当者がいる支店・営業所を探る
企業名だけで開拓先を管理せず、施工対応エリア内の拠点まで分けて考えます。
複数拠点を持つ企業であれば、本社への連絡だけでなく、支店・営業所から発注担当者につながる接点を探る方法があります。今回候補となった企業群でも、会社単位では数十社でも、拠点単位では数百か所の接触先がありました。
その際に伝えるのは、自社の施工内容、実績、対応できるエリアです。最初からまとまった発注を求めるより、見積もりや試しの1件につながる入口を探します。
最初の施工で仕上がりや対応への信頼が得られれば、2件目、3件目や、対応可能な別拠点へ広がる余地があります。ただし、拠点数が多いこと自体を発注の保証とはせず、実際の担当者と案件の有無を確かめることが前提です。
5.接触結果を残し、次に動く先を見直す
営業の結果は、面談につながったかどうかだけでなく、案件の有無、他社への発注状況、新規参入の余地が分かったかまで残します。
案件はあるものの他社に発注している先と、そもそも対象工事が発生していない先では、その後の対応が変わります。また、発注担当者につながっていない状態と、新しい施工会社を必要としていないと確認できた状態も分けておきたいところです。
こうした情報が蓄積されると、参入余地のある拠点を優先し、見込みの薄い先への接触を減らせます。さらに、実際に受注できた先について継続案件数と粗利を確かめれば、当初の見込みも修正できます。
営業先一覧は、作って終わりではありません。接触結果を使って更新することで、社長の限られた営業時間を、次の受注の柱になりそうな先へ振り向けられます。
まとめ
販路分散の目的は、取引先を増やすことではなく、継続案件と粗利を生む受注の柱を複数持つことです。
そのためには、既存取引の案件数と粗利を整理したうえで、事業内容、拠点展開、施工対応エリア、参入余地から開拓先を絞ります。既存の関係や進行中の話との重複を除き、本社だけでなく支店・営業所の発注担当者への接点を探すことも有効です。
接触後は、案件の有無や他社への発注状況を記録し、優先順位を見直します。今の体制で継続対応できる先から取引を育てることが、無理なく売上の偏りを小さくする進め方です。
次の受注の柱に向けた開拓先の整理
新規開拓を進めたいものの、どの会社や拠点から連絡すべきか、自社の施工体制でどこまで受けられるかは、整理しにくいところです。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路拡大についても、現在の取引構成や施工対応エリアを踏まえ、開拓先の選定から接点づくりまで一緒に考えます。
「うちの場合、次の受注の柱をどこに求めるべきか」という段階からご相談いただけます。 無理にサービスの利用をお勧めすることはありませんので、次の営業先を整理するきっかけとしてご活用ください。