意匠性の高い内装工事が中心の会社で生じた未経験者採用の壁
高い技術が求められる仕事を受けていることと、新人が経験を積める仕事があることは、別の話です。
ある内装工事会社では、施主から直接受ける、意匠性の高い工事が中心でした。その仕事の難しさが、未経験者採用に踏み出せない理由になっていました。人を増やしたくても、経験の浅い人に担当してもらえる工事がない。採用の入口ではなく、入社後に任せる仕事のところで止まっていたのです。
そこで進めたのが、大手内装会社への販路開拓でした。ただし、目的は大手との取引実績をつくることだけではありません。意匠性がそれほど高くなく、経験の浅い人でも携われる工事を確保し、未経験者を受け入れられる状態につなげる狙いがありました。
この事例から考えたいのは、求人の出し方よりも前にある、「どんな仕事を受ければ、人を採って育てられるか」という受注構成の見直しです。
新人に任せられる工事がないままでは採用対象を広げにくい構造
未経験者を採れない理由が仕事の難易度にあるなら、採用活動だけを変えても、その壁は残ります。
意匠性の高い内装工事を中心に受ける会社では、今ある仕事に対応できる人を採ろうとすると、経験者が候補になりやすくなります。一方で、未経験者まで対象を広げようとすると、入社後に何を任せるかが決まりません。
ここでは、二つの問いを分けると整理しやすくなります。
- 今ある工事を任せるために、どの程度の経験が必要か
- 経験の浅い人が携われる工事や担当範囲を、今の受注の中に用意できるか
前者だけを見れば、経験者採用が必要だという判断になります。後者も確認すると、受ける仕事を一部変えることで、未経験者を採用できる余地が見えてきます。
教育の仕組みは大切です。ただ、その前提となる仕事がなければ、育成を具体化しにくいものです。今回の会社で詰まっていたのも、受注する工事の難易度と、新人が経験を積む機会が合っていないことでした。
施主直接の高意匠工事と未経験者の入口をつなぐ仕事の不足
既存の仕事を増やすだけでは、未経験者の受け入れにつながらない場合があります。
この会社は、すでに内装工事を受けていました。足りなかったのは、仕事そのものというより、経験の浅い人でも携われる種類の仕事です。意匠性の高い工事が増えても、同じ難易度の仕事ばかりなら、新人に任せられる範囲は広がりません。
そこで、大手内装会社から受ける工事の中に、未経験者の受け入れにつながる仕事を求めました。既存の施主直接の仕事とは別に、経験の浅い人が携われる工事を確保する考え方です。
大事なのは、大手内装会社なら、どの工事でも育成に向いているわけではないことです。会社名や規模だけを見ても、実際に任される工事の難易度までは分かりません。
取引先の知名度ではなく、その取引先からどんな工事を受けられるかが、採用と営業をつなぐ判断軸になります。
新人が担当できる範囲から逆算する取引先と受注構成の見直し
最初に整理したいのは営業先の一覧ではなく、採用後に任せたい仕事です。 そのうえで、既存工事で対応できるのか、新しい取引先が必要なのかを判断します。
既存工事の難易度と新人が携われる範囲を確認する
まず、今受けている内装工事について、経験者の対応が必要な範囲と、経験の浅い人でも携われる範囲を整理します。工事全体を「難しい」でまとめず、どこまでなら任せられるかを言葉にすることが出発点です。
確認するのは、次の三点です。
- 現在の工事で、新人が担当できる範囲はあるか
- その範囲を任せるために、誰が教え、確認するか
- 今の受注の中で、経験を積める仕事を継続して用意できるか
担当できる範囲があり、受け入れ方も整理できるなら、まずは既存工事を軸に採用を考えられます。一方、任せられる範囲がほとんどないなら、募集対象を広げる前に、受ける工事を見直す必要があります。
不足している仕事を受けられる取引先に絞る
次に、既存工事では用意できない育成機会を、どの取引先から得られるかを考えます。
この事例では、意匠性を抑えた工事を確保するために、大手内装会社への開拓を進めました。同じ考え方を自社に当てはめる際も、「大手と付き合いたい」だけで終わらせず、経験の浅い人が携われる工事を発注しているか、自社が求める仕事を受けられるかまで確認することが重要です。
取引先候補と話す際には、主な工事内容や求められる施工品質を確かめ、自社で整理した新人の担当範囲と照らし合わせます。名前を知っている会社を広く当たるより、必要な工事を持つ会社に狙いを定めるほうが、開拓の目的も明確になります。
工事の確保と採用の進め方を合わせる
営業と採用は、必ずどちらかを先に終えるものではありません。今の仕事で受け入れられるなら採用を進め、任せる仕事がないなら取引先開拓を先行させる。判断の基準は、自社の受け入れ可能な範囲です。
また、開拓先と接点ができたこと、見積もりの機会を得たこと、実際に工事を受注したことは、それぞれ別の段階です。新人に任せる仕事として考える際には、受注できる工事内容や量を確認してから、採用の人数や時期と合わせていきます。
すべての仕事を難易度の低い工事に変える必要はありません。既存の高意匠工事を続けながら、経験の浅い人が携われる工事をどう組み合わせるか。その受注構成を考えることが、採用後の仕事を具体化する一歩になります。
まとめ
難しい工事ばかりで未経験者を採れないときは、求人の工夫に加えて、受注する仕事と育成機会の組み合わせを見直すことが有効です。
まず、既存工事の中で新人に任せられる範囲を確認します。それだけでは経験を積む機会が足りなければ、必要な工事を持つ取引先を選び、開拓を進めます。
目指すのは、大手との取引そのものではありません。採用後に任せられる仕事を確保し、人を受け入れられる受注構成に近づけることです。営業と採用を別々に考えず、入社後の仕事を共通の出発点にすると、次に動く方向が見えやすくなります。
新人に任せる仕事と取引先開拓を一緒に整理するために
「今の内装工事で未経験者を受け入れられるのか」「別の取引先を開拓するなら、どんな工事を狙うべきか」。そこがまだ整理できていない段階から、相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。今回のような課題では、現在の工事内容と採用したい人材像を確認し、任せる仕事の整理から取引先開拓の進め方まで、一緒に考えます。
無理にサービスの利用を勧めることはありません。「うちの場合は何から考えるとよいか」という整理先として、ご相談ください。