前提

地元で培った内装施工力を県外の受注につなげたい専門工事会社

地元で施工実績を積んでいても、県外に仕事を頼める相手がいなければ、拠点開設には踏み切りにくいものです。 鹿児島県を拠点に軽量鉄骨下地などの内装工事を手がける、ある専門工事会社も、次の成長に向けてこの入口を探していました。

本業の内装工事を伸ばしたい一方、経営者は地元市場だけで売上を積み上げることに限界を感じています。首都圏や九州の都市部を候補に、数年かけて県外で施工実績と受注基盤をつくる構想がありました。

ただし、最初から現地に事務所を構え、新規の仕事を直接取りにいく考えではありません。探していたのは、地域での信用や受注力はあるものの、職人の高齢化などで施工を十分に回せなくなっている企業です。その企業の協力会社として入り、自社の管理担当者や職人を交えて工事を進め、関係を育てたいという意向でした。

現地に出せる体制としては、本体から数名を動かし、応援の職人も組み合わせる想定です。ただし、初めからその全員を投入するのではなく、工事の規模や相手の要望に合わせて、管理担当者から入る形も考えていました。県外進出の構想はありますが、受注も拠点も確立した段階ではありません。

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課題

県外の仕事が見えないままでは事務所も人員も決めにくい状況

県外進出で先に整理したいのは、事務所の場所よりも、誰のどの工事を継続して担えるかです。 この会社も、現地で人員を整えたい意向はあるものの、その前提となる仕事と取引先が定まっていませんでした。

仕事がなければ、必要な職人の人数も、管理担当者の配置も決めにくくなります。一方で、施工体制を説明できなければ、相手も発注を判断できません。そこで必要になるのは、すべてを先に揃えることではなく、最初に請け負える範囲を示し、実際の需要とすり合わせることです。

この会社が求めていたのも、単に県外の企業を紹介してもらうことではありません。内装工事を受注できる力があり、自社の施工力を必要とし、既存取引との競合も起こりにくい相手との接点でした。

知名度のある会社や売上規模の大きな会社を並べるだけでは、その条件は満たせません。進出先に企業が何社あるかと、自社が入れる工事があるかは、分けて考える必要があります。

背景

受注力のある現地企業と施工力のある自社をつなぐ発想

この進出構想の中心は、現地企業の信用・営業基盤と、自社の施工力を組み合わせることです。 県外で一から発注者との関係をつくるのではなく、すでに仕事を取れる企業の不足を補う入り方を考えていました。

ただし、内装工事会社であれば、どこでも相性がよいわけではありません。候補として挙がっていた建物用途は、商業施設やマンションなどです。同じ内装でも、どの建物の、どの工種を担うかによって、自社の経験を活かせる範囲は変わります。

また、経営者が気にしていたのは施工現場だけではありませんでした。大手の現場では、安全関係の書類や現場ごとの施工要領書などへの対応が求められます。相手企業に事務・管理の体制があるか、自社は何を準備する必要があるかも、参入のしやすさを左右する条件です。

既存取引や業界内の関係にも配慮がありました。提携したことで得意先の取り合いになったり、従来の関係に支障が出たりする相手は避けたいという考えです。候補企業の売上や従業員数だけでなく、取引先や関係先を見る必要があるのは、このためです。

なお、売上が下がっている会社を、施工体制が不足している候補として探す考えもありました。ただ、売上減少は候補を探す手がかりにはなっても、人手不足や施工需要の証明にはなりません。 仕事を受けられない理由が施工力にあるのか、そもそも案件が少ないのかで、提携の意味は変わります。

解決

協力会社として受注を確かめてから拠点を整える段階的な県外進出

最初の工事で施工範囲と役割分担を確かめ、継続受注の見通しに応じて体制を広げる順序が、この構想に合っています。 具体的には、次のように整理できます。

1.進出地域を決め切る前に、最初に提供できる施工力を明確にします。

営業の入口で伝えたいのは、県外進出への意欲だけでなく、相手が発注を検討できる情報です。これまでの施工実績、対応できる工種、動かせる管理担当者と職人、対応可能な工期や規模を整理します。

この会社の場合は、長く手がけてきた内装工事が入口です。総合的に何でも対応すると広げるよりも、まず確実に担える工事を示したほうが、相手の不足と照合しやすくなります。最初から大きな案件を狙うのではなく、現在の体制で無理なく完了できる範囲を起点にします。

2.提携候補は、工種・建物用途・企業規模・取引関係で絞ります。

候補一覧には、少なくとも次の情報を揃えます。

  • 自社の対応工種を発注する可能性があるか
  • 商業施設やマンションなど、希望する建物用途を扱っているか
  • 自社が担いたい工事と、相手の企業規模が合っているか
  • 既存の取引先や関係先と競合しないか
  • 自社の管理・施工体制で補える不足がありそうか

売上が十数億円から数十億円程度の企業を候補にする考えはあっても、売上規模だけで適性は決まりません。まず工種と建物用途が合うことを確かめ、取引関係を確認し、そのうえで規模を調整するほうが、候補を残す理由も明確になります。

地域や売上規模、取引関係の条件をすべて厳しくすると、候補は少なくなります。数が足りない場合は無条件に対象を広げるのではなく、施工内容との適合を守りながら、どの条件を広げられるかを見直します。

3.売上の増減ではなく、実際に任せたい工事を確認します。

候補企業への連絡では、協力会社を募集しているかどうかに加え、何の工事で、どの役割が不足しているかを確認します。職人だけを必要としているのか、管理担当者も含めて任せたいのかによって、提案する体制は異なります。

売上が下がっていても、任せられる案件がなければ受注にはつながりません。反対に、売上が伸びている会社でも、受注に施工体制が追いつかず、協力先を必要としている可能性があります。企業情報で仮説を立て、相手への確認で判断するという使い分けが大切です。

4.初回の工事では、施工と管理の分担を具体化します。

管理担当者から入るのか、職人を含む施工体制で入るのかは、相手の不足に合わせて決めます。その際、安全関係の書類、施工要領書、施工図などを、どちらがどこまで担うかも確認しておきます。

相手に管理体制があるからといって、自社側の対応が不要になるわけではありません。反対に、現地のやり方をすべて自社で揃えてからでなければ入れないとも限りません。必要な業務を分け、自社が対応できる範囲と、相手の体制を活用する範囲をすり合わせることが、最初の工事を組み立てる土台になります。

5.拠点と人員は、初回受注ではなく、その先の仕事を見て整えます。

一件の工事を請け負えたことと、現地に拠点を置けることは別です。施工後も同様の案件を任せてもらえるか、どの程度の頻度で仕事があるか、それに対して管理担当者や施工体制をどう配置するかを確認します。

この会社が目指していたのは、請負で実績をつくり、ある程度の売上が立ってから事務所を整え、現地で協力する職人や自社の体制を広げる流れです。進出時期の目標は持ちつつも、次の段階に進む判断は、実際の受注と継続性に置くことが重要です。

まとめ

県外進出の第一歩は、事務所を構えることではなく、自社の施工力を必要とする現地企業を見つけることです。 地元で培った実績があっても、進出先では、対応できる工種や人数、管理範囲を具体的に伝える必要があります。

提携先は、知名度や売上の増減だけで判断せず、建物用途、発注する工事、既存取引との競合、実際の施工需要を確かめます。そのうえで、協力会社として工事を担い、管理・施工の分担と継続受注の可能性を確認してから、拠点と人員を整えていきます。

県外で何を始めるかを大きく考える前に、最初の一社に何を提供できるかを整理すると、進出先や必要な体制も具体化しやすくなります。

県外で最初に組む相手と担う工事の整理

県外進出の検討は、候補企業を探す前の段階から始められます。 自社の施工力をどう伝えるか、どの工種・建物用途を入口にするか、相手に求める受注力や管理体制は何かを整理するだけでも、開拓先の選び方は変わります。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場や組織、人員体制も含めて横断的に整理し、実行まで支援しています。県外での案件獲得や提携先開拓についても、候補条件の整理から、受注後を見据えた体制づくりまで、一緒に検討できます。

うちの場合はどの地域から考えるべきか、そもそも何から整理すればよいかという段階でもご相談いただけます。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、次の一手を整理する場としてご活用ください。

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