山口県を拠点に商業施設の内装・什器施工を担う会社の営業エリア
山口県を拠点とする、商業施設の内装工事や什器の製作・施工を手がける会社では、県外企業への営業をどこまで広げるかが検討されていました。
関西の企業にも魅力的な取引先候補はあります。しかし、先方の所在地が大阪で、案件も大阪だけとなると、現在の施工体制では簡単に受けられません。
「家具だけを取り付けに行くなら対応できるかもしれない。でも、大阪まで行って工事全体を受けるのは、経費的に厳しいと思うんです」
一方、県外企業であっても、地元に営業所や仮事務所があり、地元の案件を持っている会社なら話は変わります。実際に付き合いやすいと感じていたのも、本社所在地ではなく、地元との接点を持つ企業でした。
営業エリアを決めるときは、取引先の所在地と実際に施工する地域を分けて考える必要があります。
3、4日の施工は受けられても1か月の大阪工事では採算が合わない境界
遠方案件の難しさは、距離そのものよりも、工期が延びるほど人工と交通・宿泊費が積み上がることにあります。
「3日、4日行ってやってきて、という仕事ならいいんです。でも、1か月間ずっと大阪の仕事をするのは、今の時点では難しいですね」
近県の単発工事なら、朝早く出て施工し、夜に戻る選択肢があります。大阪まで離れると同じ動きは難しく、基本的に宿泊が必要です。現場に出す人数が増えれば、宿泊費も人数分かかります。その間、地元で動ける職人も減ります。
遠方案件を受けるかどうかは、売上額だけでは判断できません。少なくとも、次の項目を案件ごとに確認する必要があります。
- 工期は何日か、何週間か
- 何人を現場に出す必要があるか
- 移動時間を含めた拘束日数はどの程度か
- 高速代や燃料費などの交通費はいくらか
- 宿泊が必要か、必要なら何泊か
- 現地で依頼できる協力会社があるか
- 単発で終わるのか、継続受注を見込めるのか
短期の納品・取付工事と、長期滞在を伴う工事を同じ「県外案件」として扱わないことが重要です。 同じ大阪の案件でも、3日間の什器取付と、1か月の内装工事では採算構造がまったく異なります。
営業先の本社所在地を基準にすると地元で受注できる県外企業を見落とす構造
営業先を都道府県で絞るだけでは、受注可能性を正しく判断できません。
県外に本社がある企業でも、地元に営業所や仮事務所を置き、商業施設の工事を継続的に受注している場合があります。反対に、近隣企業であっても、実際の施工地域が遠方中心なら、自社には合わない可能性があります。
相談の中でも、関西企業との取引を一律に難しいと考えていたわけではありませんでした。
「県外の会社でも、こちらで現場があるなら問題ないです。たまに地元の物件があって、決まった下請けがいない会社なら一番いいですね」
ここから見えるのは、営業先を探す際に確認すべきなのは本社住所だけではない、ということです。見るべき情報は次の3点です。
- どの地域に拠点を持っているか
- 過去にどの地域で施工しているか
- その地域に固定の協力会社がいるか
とくに有力なのは、地元で施工実績があるものの、地域内の施工体制がまだ固まっていない県外企業です。発注側にとっても、地元で機動的に動ける施工会社とつながる意味があります。
また、遠方施工でも、継続的に案件が発生するなら判断は変わります。現地協力会社との関係をつくり、毎回すべての人員を送り込まずに済む体制を整えられる可能性があるためです。
「県外企業だから対象外」ではなく、「自社が対応できる地域に案件を持つか」で営業先を選ぶことが、現実的な絞り込みになります。
工期と人工を基準に対応条件を決め施工実績から営業先を絞る進め方
最初に行いたいのは、営業エリアを地図上の半径だけで決めることではありません。どの条件なら受けられるかを案件単位で言語化することです。
1.受注可能な案件を工期別に分ける
まず、自社の過去案件を参考に、対応条件を次のように分けます。
- 地元案件:通常どおり検討する
- 近県の日帰り案件:人工と移動時間を含めて検討する
- 県外の短期案件:納品や取付など、数日で完了する案件を中心に検討する
- 県外の長期案件:宿泊費、現地協力会社、継続性などの追加条件を満たす場合に検討する
この会社の場合、「3日、4日なら対応の余地がある」「1か月の遠方工事は現状では難しい」という境界が見えていました。まずはこの感覚を社内共通の基準に変えることが大切です。
2.遠方経費を人工と分けずに見積もる
遠方案件では、現場の作業時間だけでなく、移動を含む拘束全体を人工として捉えます。
採算を見る際は、受注額から材料費や外注費を引くだけでは足りません。現場人数と拘束日数から算出する人工に、交通費と宿泊費を加えたうえで、利益が残るかを確認します。
遠方経費を見積書に反映できない案件は、売上が立っても利益と地元の施工余力を失いやすくなります。 発注者が交通・宿泊費を別途負担するのか、請負金額に含めるのかも、受注前にそろえておきたい条件です。
3.長期工事は現地協力会社と継続性で判断する
長期の遠方案件を検討する場合は、自社の職人を全期間送り込む前提だけで考えないことも重要です。
現地で任せられる協力会社があれば、自社は施工管理や要所の作業に集中できます。ただし、単発案件のためだけに新しい協力体制をつくると、調整負担が大きくなります。
そのため、次の条件を合わせて確認します。
- 同じ地域で次の案件が見込めるか
- 発注企業との継続取引につながるか
- 現地協力会社に任せられる施工範囲があるか
- 自社が担うべき品質管理や納まりを維持できるか
長期の遠方案件は、1件の利益だけでなく、その地域で施工体制をつくる意味があるかまで見て判断します。
4.営業リストは所在地ではなく施工実績からつくる
営業先の抽出条件も、単に「県内企業」「関西企業」とするだけでは不十分です。優先したいのは、次のいずれかに当てはまる企業です。
- 自社の地元に支店や営業所、仮事務所がある
- 自社の地元で商業施設などの施工実績がある
- 地元案件を持つ一方、固定の施工会社が少ない
- 短期の納品・取付案件を発注している
- 継続的に同じ地域で案件を持つ可能性がある
企業サイトの施工実績、拠点一覧、案件情報などを確認すれば、県外企業でも地元案件を持っているかをある程度把握できます。
最初から遠方の長期工事を狙う必要はありません。地元案件や短期の納品・取付から関係をつくり、発注内容と採算を確認しながら対応範囲を広げる進め方が現実的です。
営業エリアは「行ける場所」ではなく、「利益を残しながら継続して対応できる条件」で決めるものです。
まとめ
遠方案件を受けるかどうかは、県境や移動距離だけでは決められません。工期、人工、交通・宿泊費、現地協力会社、継続受注の可能性を並べると、自社に合う案件の輪郭が見えてきます。
今回のケースでは、短期の什器納品や取付には対応余地がある一方、宿泊を伴う1か月規模の工事は採算面で難しいという境界がありました。ただし、県外企業でも地元に案件や拠点を持っていれば、有力な営業先になります。
整理の要点は次の3つです。
- 短期施工と長期工事を分けて受注条件を決める
- 人工に交通・宿泊費を加えて案件ごとの採算を見る
- 営業先の所在地ではなく、施工地域・拠点・実績で絞り込む
営業エリアを無理に広げるのではなく、受けられる条件を明確にしたうえで、条件に合う発注企業を探す。この順番なら、地元の施工体制を守りながら販路を広げやすくなります。
自社に合う営業エリアと案件条件を整理したい方へ
「どこまでを日帰り圏にするか」「短期なら何日まで受けるか」「県外企業をどう探せばよいか」は、職人数や工事内容、現在の取引構造によって変わります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、施工体制や採算性まで含めて整理し、営業先の選定から実行まで支援しています。営業エリアを広げるべきか迷っている段階や、何から整理すべきかわからない段階でも問題ありません。
ものづくりに集中できる建設業界を目指し、無理に営業を進めることはありません。自社の場合にどのような基準が合うのか、落ち着いて整理したい方はご相談ください。