前提

県内で受注を積み上げ、県外にも対応を広げ始めた内装工事部門

地元の協力会社には仕事を受ける余力がある一方、県外の工事では外注と責任者の移動が負担になっている。そんな状況にある、内装工事部門からの相談です。

山形県を拠点とする、社員十名前後の会社です。内装工事部門は立ち上げから一年余りで、原状回復を中心に、管理会社や物件オーナーからの仕事を積み上げてきました。部門の年間売上は一千万円弱の規模で、最近は県外からの依頼も入り始めています。

部門責任者は、取引先の開拓から現場対応、見積もり、施工管理までを一貫して担っています。ただし、施工を頼める相手が足りないわけではありません。すでに付き合いのある職人や協力会社があり、「取引している職人や協力会社に、もっと案件を回してあげたい」という思いがあります。

目指す姿も、単に売上を増やすことだけではありません。

「各県に直接依頼できる協力会社がいて、『これができる、あれができる』という相談に、基本的にイエスと言える環境をつくりたい」

対応できる地域を増やし、各地の管理会社や施工会社とのつながりを持ちたい。その方向性は明確です。一方、足元では「できれば県内をもう少し盛り上げたい」という希望もありました。この二つをどう両立するかが、次の成長を考えるうえでの論点です。

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課題

県外案件を受けても、外注と移動の負担に見合うとは限らない状況

「対応できる地域が広がったこと」と「無理なく仕事を増やせること」は、分けて考える必要があります。県外案件を受けられるようになっても、施工の手配や現場管理にかかる負担まで軽くなるわけではないからです。

責任者は、県外対応についてこう話しています。

「県外は、若干割に合わない部分があります。協力会社への外注になるので。可能であれば県内をもう少し盛り上げられれば、僕の移動も減るんです」

ここでの悩みは、遠い現場だから受けたくない、ということではありません。エリアを広げたい気持ちはあるものの、実際に引き受けると外注の負担があり、責任者自身も移動する。その状態で件数だけを増やしてよいのか、という迷いです。

実際に、東北の拠点から関東の物件に対応し、現地の協力会社に任せるか、自社側で行くかを検討している案件もありました。つまり、「県外にも対応可能」と言えても、個々の現場を誰が施工し、どこまで任せられるかは、なお判断が必要な状態です。

協力会社がいることと、その地域の現場を任せられる体制があることは同じではありません。受注件数や対応可能な都道府県の数だけでは、この違いが見えにくくなります。

背景

地元での幅広い対応力と、各県で任せられる施工体制との違い

地元で持っている工種の広さを、そのまま県外にも当てはめられないことが、判断を難しくしています。この会社は県内であれば、内装だけでなく電気、漏水関係、設備点検なども相談できる協力体制を持っています。一方で、各県に直接依頼できる相手をそろえることは、これから実現したい姿として語られていました。

また、依頼される工事の内容も変わり始めています。当初の中心は原状回復でしたが、リフォームや施設の設備更新など、これまであまり手がけてこなかった工事も増えていました。

「工事の内容にもよりますよね。職人それぞれの質や、できる範囲のものかどうかも気になります」

この言葉から見えるのは、単純な人数の不足ではありません。施工する人がいても、その工種や規模を任せられるかは別に確認したい、という実務上の感覚です。県外であれば、そこに移動や管理の負担も重なります。

一方、地元で増やしたい仕事は、かなり具体的になっています。内装ではクロスを優先し、その次に大工工事、たとえば和室から洋室への改修を増やしたいという希望がありました。電気や漏水関係の工事にも関心があり、原状回復は適度に取引先を増やしながら、リフォームも受けたいと考えています。

ただし、近ければ何でもよいわけではありません。原状回復では単価が折り合わず、継続して仕事をしていない取引先もありました。

地元深耕とは、県内の案件を無条件に増やすことではなく、今ある協力体制を生かせて、条件も合う仕事を厚くすることです。この整理ができると、県外への拡大も「地元で取れないから遠くへ行く」以外の選択肢として考えやすくなります。

解決

地元で増やす工事と、現地体制を確認して受ける県外工事の切り分け

営業する地域と受注する条件を、同じ基準でそろえることが出発点です。地元か県外かの二択ではなく、「今の体制で優先して増やす仕事」と「施工体制を確認してから受ける仕事」に分けると、広げる順番が見えてきます。

地元では、増やしたい工種から営業先を絞る

地元で先に厚くしたいのは、すでに協力体制があり、責任者も増やしたいと考えている工事です。この会社であれば、クロスを中心とした内装、大工工事を伴う改修、電気や漏水関係などが、その候補になります。

「県内なら幅広くできます」という対応力は残しつつ、営業の入口では何を増やしたいかを具体化します。原状回復を増やすなら管理会社、改修や複数工種の相談を受けたいなら工務店など、求める工事と発注元を結び付けて考える進め方です。

ここで大切なのは、対応できる工種をすべて同じ優先順位にしないことです。幅広く受けられるからこそ、まずは仕事を回したい協力会社や職人と、増やしたい工事を対応させます。そのうえで、単価が折り合うかも確認します。

地元の営業先は、「近い会社」だけでなく、「増やしたい工事を、今の協力体制で受けられる会社」という条件で選びます。これなら、案件が増えた後の施工まで見据えた開拓になります。

県外では、直接依頼できる相手と任せられる工種を確認する

県外案件は、一律に控える必要はありません。ただし、受けられるかを判断する前に、その地域でどこまで施工を任せられるかを確認します。

確認する軸は、次の四つに整理できます。

  • 依頼先:現地に直接依頼できる協力会社があるか
  • 対応力:今回の工種と規模が、その会社や職人の対応範囲に入っているか
  • 品質:求める施工品質を任せられる相手か
  • 負担:外注に加え、責任者自身の移動や現場管理がどの程度必要か

この四つが確認できる案件と、現地の相手はいるものの任せられる範囲がはっきりしない案件では、受け方を分けます。特に、これまであまり扱ってこなかった設備更新や改修を遠方で受ける場合は、「協力会社がいるから大丈夫」で判断を終えず、工事内容に合った対応力を確かめることが先です。

外注そのものが問題なのではありません。地元でも協力会社を活用している以上、見るべきなのは外注の有無より、任せられる範囲と自社側に残る負担です。

外注費だけでなく、責任者の移動と管理も並べて比較する

県内と県外の案件を比べる際は、受注金額から外注費を差し引くだけでなく、責任者がどの程度動く必要があるかも並べて見ます。

この会社では、責任者が営業、見積もり、現場対応を一貫して担っています。そのため、県外の現場へ行く時間は、同じ人が地元の案件に使える時間とも関係します。外注先に施工を頼めても、責任者の移動が多く残るなら、その分も含めて「割に合うか」を考える必要があります。

受注金額の大きさだけでなく、「施工後に残る利益」と「責任者に残る移動・管理の負担」をセットで比べます。金額では魅力のあるリフォームでも、現地で任せられる相手がいるかによって、受けやすさは変わります。

営業対象の広さは、施工体制に合わせて決める

営業先を県内に絞るか、東北全域へ広げるかは、先に地域の広さだけで決めないほうが整理しやすくなります。まず県内で優先する工種を決め、県外は直接依頼できる協力会社と、その対応工種を確認した地域から検討します。

営業条件を絞って候補先が少なすぎる場合も、すぐに対象地域を広げるのではなく、工種や発注元の条件のうち、何を広げられるかを確かめます。県内で対応できる工種が広い会社なら、遠方へ進む前に地元の対象を見直す余地もあります。

「営業できる地域」ではなく、「受注後の施工と管理まで見通せる地域」を営業対象にすることが、地元深耕とエリア拡大をつなぐ基準です。

まとめ

地元を厚くすることと、県外へ広げることは両立できます。ただし、同じ受注基準で一括りにしないことが大切です。

地元では、クロスや大工工事、電気、漏水関係など、既存の協力体制を生かして増やしたい工事を具体化します。県外では、現地への直接依頼の可否、工種ごとの対応力、品質、責任者に残る移動・管理の負担を確認してから受け方を決めます。

最初に整理したいのは、対応可能な都道府県をいくつ増やすかではありません。「地元で優先して増やす工事は何か」「県外で安心して任せられる相手はどこにいるか」「自分がどこまで動く案件なら受けられるか」の三点です。

その基準がそろえば、広い範囲に対応したいという目標を持ちながら、足元では地元の受注を増やす、という順番も選びやすくなります。

地元の受注と県外対応の優先順位を整理したいときに

「うちならどの地域、どの工事から増やすべきか」という段階から、整理を始められます。対応できる工種が多いほど、営業先をどこに定めるかは迷いやすいものです。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路開拓でも、接点を増やすだけでなく、現在の協力体制や現場管理の負担を踏まえて、狙う地域と工事の優先順位を一緒に考えます。

地元深耕か県外拡大かを、まだ決めていなくても構いません。無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、今ある案件や協力会社の状況を整理するところからご相談ください。

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