民間の得意先を持ちながら公共工事への参入を準備する電気設備工事会社
民間の取引先がないのではなく、既存の取引を続けながら公共工事を加えたい。 兵庫県に拠点を置く、ある中小の電気設備工事会社から寄せられた相談です。
同社には、すでに民間の得意先があります。発注者から見ると、二次・三次の立場で施工に入っています。取引先を開拓する独自のルートもあり、単に紹介先を増やしてほしいという状況ではありませんでした。
「得意先は持っています。行政関連の入札に進んでいく段取りをしています」
公共工事に向けて動き始めたのは、相談時点のおよそ1年前です。ただし、まだ入札を経て施工するところまでは進んでいません。
「そこまでは、まだ行っていないです。準備段階ですよ」
目指しているのは、民間工事からの全面的な転換ではありません。今ある民間の仕事に、行政の仕事をどう組み合わせるか。 そこが出発点です。
得意先があっても読み切れない民間工事の受注
取引先を持っていることと、今後の受注を安定して見通せることは別です。 同社が公共工事を検討する理由は、短い言葉に表れていました。
「民間は安定しないです。だから、民間と行政を組み合わせて考えていきたいんです」
ここで捉えたいのは、「民間の取引先をもっと増やせばよい」という話だけではないことです。同社は、民間企業の新規開拓を広げるより、公共工事への準備を優先していました。
一方で、公共工事はまだ受注に至っていません。経営者には受注の見込みがあっても、それが現在の仕事量を支える段階とは分けて考える必要があります。
「見込みがあるから動いているんです。見込みのないものには動きませんよ」
この言葉からは、狙いを持って準備していることが伝わります。ただ、具体的な案件や施工体制の内訳までは確認されていません。
公共工事への期待と、実際に受注できる見通しを分けて整理すること。 それが、既存の民間工事との組み合わせを考える土台になります。
仕事量だけでは判断できない大手取引先との付き合い
受注先を選ぶ際には、仕事の量だけでなく、自社の体制で付き合い続けられるかも重要です。 同社には、大手の電気工事会社とのつながりもありました。それでも、大手との取引拡大には慎重でした。
「付き合いをするのは大変ですよ。いろいろ厳格なルールがあって」
「我々のような中小企業に、そんなにメリットがあるかというと、疑問ですね」
これは、大手との取引そのものを否定する話ではありません。同社にとっては、相手の規模や保有案件の多さだけでは、開拓する理由にならなかったということです。
受注量が増えても、求められる対応が自社の体制に合わなければ、取引を続ける負担も増えます。同社の発言には、その実感がありました。
この視点は、公共工事への参入経路を選ぶ際にも活かせます。行政から直接受注するのか。行政案件を受注している会社の協力会社として入るのか。どちらも「公共工事に関わる道」ですが、取引する相手や自社の立場は異なります。
公共か民間かという区分に加え、誰から、どの立場で、どこまでの仕事を受けるかを見ることが大切です。
元請け入札と協力会社としての施工を分けて考える参入経路
公共工事への入り方は、元請けとして入札を目指す道と、行政案件を持つ会社の協力会社として施工に入る道に分けると整理しやすくなります。 二つを必ず同時に進めるのではなく、自社の準備状況と受注見込みに照らして選びます。
元請けを目指すなら、準備と受注見込みを具体的に照合
同社は、行政関連の入札に向けて独自に準備を進めていました。すでに狙いがある会社なら、新しい開拓先をむやみに増やすより、その見込みと施工体制を照らし合わせることが先になります。
整理したいのは、次の点です。
- 狙っている行政案件は、自社の施工領域に合っているか
- 受注を見込む時期と、既存の民間工事の予定は両立するか
- 受注できた場合に、自社の施工体制で対応できるか
- 準備中の案件と、すでに受注した仕事を分けて見ているか
「見込みがある」という経営者の判断を、狙う案件、時期、施工体制に落としてみます。そうすると、今の準備を進めるのか、別の経路も検討するのかを判断しやすくなります。
入札を目指すこと自体ではなく、民間工事と両立して施工できる受注につなげることが目的です。
協力会社として入るなら、行政案件を持つ相手との適合を確認
もう一つの選択肢は、自治体などから工事を受注している会社の協力会社として施工に入ることです。相談の中でも、公共工事に関わり、施工実績を積む経路として提案されました。
ただし、同社がこの提案を採用したわけではありません。独自に開拓できるという考えがあり、外部の支援を求める段階ではありませんでした。
この経路を検討する場合は、まず候補企業の取引先や施工領域を確認します。行政案件を扱っているか。その中に、自社が対応できる工事があるか。さらに、求められるルールや対応が、自社の体制に合うかを見ていきます。
行政案件を持っている会社なら、どこでもよいわけではありません。 同社が大手取引の負担を気にしていたように、案件量と付き合いやすさの両方を確認したいところです。
また、協力会社として施工に入ることと、自社が元請けとして入札する準備は、分けて整理します。協力会社での受注を、元請け入札の見込みと一緒に数えないことも大切です。
民間工事を残したまま、二つの経路の役割を判断
元請け入札に具体的な見込みがあり、施工体制も合うなら、その準備を優先する考え方があります。一方、行政案件を持つ会社との接点があり、対応できる施工があるなら、協力会社として関わる道も検討できます。
大切なのは、公共工事を増やすために、既存の民間工事との両立を崩さないことです。民間の受注見込み、公共工事の準備状況、対応できる施工量を並べて、次に進める経路を決めます。 公共工事なら必ず安定する、と置かずに考えることが、無理のない分散につながります。
まとめ
民間工事の不安定さへの対応は、得意先の数を増やすだけではありません。 今ある取引を活かしながら、公共工事という異なる受注先を組み合わせる考え方もあります。
その際は、元請けとして入札を目指す道と、行政案件を持つ会社の協力会社として施工する道を分けます。判断の軸は、自社の施工領域、受注見込み、既存工事との両立、取引に伴う負担です。
すでに独自の開拓ルートがあるなら、それを活かして構いません。まずは「どの仕事を、いつ、どの体制で受けるか」を整理することが、民間と公共の組み合わせを具体化する一歩になります。
民間工事と公共工事の組み合わせを整理する相談先
「うちの場合は、元請け入札を優先するべきか」「行政案件を持つ会社との接点から考えるべきか」。方向性を決める前に、整理したいこともあると思います。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。受注先の開拓でも、紹介先を増やすことだけでなく、既存の民間取引や施工体制を踏まえ、狙う先と進め方を一緒に考えます。
何から整理すべきかわからない段階でも、ご相談いただけます。 無理に支援の利用をお勧めすることはありません。自社に合う受注先の組み合わせを考える場として、お気軽にお声がけください。