自社職人を中心に、売上の倍増を目指す8名ほどの専門工事会社
仕事を増やす意欲はあっても、その仕事を無理なく回せるかは別の問題です。 集合住宅の左官工事を手がける、8名ほどの専門工事会社でも、この二つの間で営業の進め方を考えていました。
売上は年間9,000万円ほどです。ゼネコンや一次請けの専門工事会社から仕事を受けています。施工は自社職人が中心です。外注に広く任せる形ではなく、案件に応じて足りない分を応援に来てもらっています。
目指しているのは、3年ほどで売上を現在の倍程度に伸ばすことです。ただ、大きな現場を次々に受けたいわけではありません。
「そんなにいっぱいではなくて、うちの規模感に合った元請けが欲しいんです」
ここでいう規模感は、単価よりも現場の大きさです。超大型の集合住宅ではなく、自社で対応しやすい現場を増やしたい。その希望がありました。
新規営業を進めると、既存案件や過去の見積案件との重なりが気になる状態
営業に踏み出せない理由は、営業のやり方がわからないからではなく、受注後の負担が読みにくいからでした。
社長は、行きたい相手が見つかれば、購買担当に電話をして約束を取ることもできると話しています。メールでの働きかけもしています。新規開拓そのものに、手段がないわけではありません。
それでも、積極的に動くことにはためらいがありました。
「今ここで営業して、忙しくなったらしんどいな、という話です。結局、自分の首を絞めてしまうんです」
今動いている現場があります。さらに、以前に見積もりを出した案件が、後から動き出す可能性もあります。
「前に見積もりしていたあれ、お願いできませんかと言われたときに、できないとなるのはちょっと嫌なんです」
新しい仕事は欲しい。以前から声をかけてもらっている仕事も受けたい。ただ、同じ時期に重なれば、社長自身の負担が増えます。
必要なのは、営業量を増やすことだけではありません。既存案件と受注見込みを踏まえて、いつ、どの程度なら新しい仕事を受けられるかを整理することです。
職人の人数と、社長が任せられる施工能力とのずれ
施工の余力は、職人が何人いるかだけでは捉えきれません。 この会社の状況をよく表していたのが、次の言葉です。
「職人は足りているんですけど、まだ技術が足りていない感じですかね」
人数がいても、任せられる作業の範囲は同じではありません。技能が十分でなければ、人数が増えた分だけ、社長の手が空くとは限りません。
一方で、増員だけで解決したいわけでもありませんでした。
「あまり増えすぎても、管理するのが大変なので。任せられる外注先があるといいんですけど」
欲しいのは、単なる人数の上積みではありません。自社で任せられる職人と、必要なときに施工を頼める外注先です。
近い将来に向けた動きもあります。経験者の採用は決まっています。別の入社候補者もいます。また、独立予定の知り合いの職人に、仕事を頼める可能性もありました。
ただし、採用が決まった人と、入社するかもしれない人は違います。仕事を頼めそうな知り合いと、依頼する範囲や時期を確認できた外注先も違います。
「これから増えそうな人数」と「実際に任せられる施工能力」を分けて考えることが、営業を進める判断につながります。
案件の時期と任せられる作業をそろえ、施工余力に合わせた新規開拓
先に受けられる仕事の範囲を整理し、その範囲に合わせて営業を進める考え方が合いそうです。 育成も、協力会社の確保も、新規開拓も、一度に大きく進める必要はありません。
既存案件と見積案件を、同じ時間軸で確認する
まず確認したいのは、現在の現場だけでなく、過去に見積もりを出した案件の動く時期です。
この会社では、「以前の見積案件が急に決まるかもしれない」という点が、営業を控える理由になっていました。そのため、次の情報を並べてみることが出発点になります。
- 現在受けている案件の施工時期
- 見積提出済みの案件が動きそうな時期と、現時点の見込み
- その時期に、自社職人と外注先へ任せられる範囲
時期がわからない案件は、わからないまま分けておきます。確定した仕事と、動く可能性がある仕事を混ぜないためです。
受注見込みをすべて確定案件として扱うのでも、決まるまで考えないのでもなく、重なる可能性を確認することが大切です。 そのうえで、新規案件を入れやすい時期を考えます。
人を増やす前に、自社と外注先へ任せられる範囲を確認する
次は、人数ではなく、任せられる作業を見ます。
自社職人については、今任せられる作業と、まだ社長の手が必要な作業を分けます。育成で広げたいのは、後者のうち、今後増やしたい現場に必要な部分です。
外注先についても、「応援に来られるか」だけではなく、どこまで施工を依頼できるかを確認します。独立予定の知り合いがいるなら、頼めそうという見込みから、実際に依頼できる範囲の確認へ進める余地があります。
判断軸は、その人や外注先に任せることで、社長が対応しなければならない仕事がどれだけ減るかです。
技能面で任せきれない部分が多ければ、まず育成を進めます。案件が重なる時期を自社だけで支えにくければ、外注先の確保を先に進めます。任せられる範囲が広がった段階で、新規受注を増やしていく順序です。
売上目標から、必要な取引量を逆算する
新規開拓では、取引先を何社も増やすこと自体を目標にしないほうが、施工体制と合わせやすくなります。
この会社では、目標に届くための追加取引量について、既存の主力取引先と同程度なら「あと1社強」という感覚がありました。もう1社分を大きく上乗せする案には、多すぎるという反応でした。
この違いは大切です。必要なのは、名刺を交換する会社の数ではなく、継続して受ける仕事の量だからです。
まず、今の取引先からどれくらいの売上が見込めるかを確認します。そのうえで、目標との差を、新しい取引先からどの程度積み上げたいか考えます。
必要な取引量が見えれば、やみくもに開拓先を増やすのではなく、自社の施工余力に合う相手へ絞って動けます。
小さな取引から始め、任せられる体制とともに増やす
新規開拓と、いきなり大きな受注を引き受けることは、分けて考えられます。
最初は小口の仕事から始める。その仕事を通じて、自社の職人も含めて無理なく対応できるか、継続して付き合える相手かを確かめる。そこから少しずつ取引量を増やす進め方です。
ただし、小口なら既存案件と重ならないわけではありません。最初の仕事でも、施工時期と任せ先の確認は必要です。
経験者が入り、任せられる作業が広がる。外注先に頼める範囲が確認できる。その変化に合わせて、受ける仕事を段階的に増やします。
外部に営業を任せる場合も同じです。先に、狙う現場の規模と受けられる時期をそろえておきます。自社で接点をつくれるなら、その方法から始める選択もあります。営業を外部に任せるかどうかより先に、増えた仕事を受けられる状態かを確かめたいところです。
まとめ
「仕事を増やしたいのに、営業すると忙しくなるのが気になる」という悩みは、営業と施工体制を一緒に考えるための手がかりです。
まずは、既存案件と過去の見積案件が動く時期を並べます。次に、自社職人へ任せられる作業と、外注先へ依頼できる範囲を確認します。そこから、育成や協力会社の確保を先に進めるのか、新規開拓へ動けるのかを考えます。
売上目標から必要な取引量を逆算すれば、開拓する相手も絞りやすくなります。小さく取引を始め、任せられる施工能力に合わせて増やしていく。仕事を増やすことと、社長の負担を増やしすぎないことを、同じ計画の中で扱う進め方です。
営業を増やす前に、自社が受けられる仕事の整理から
「うちの場合は、営業と施工体制のどちらから整えるべきか」という段階でも、相談できます。 今ある案件、受注の見込み、職人の技能、頼める外注先を並べるところからで構いません。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路拡大でも、案件獲得だけを切り離さず、施工体制と合わせて進め方を考えます。
無理に営業支援の利用をおすすめすることはありません。まずは自社で進めることと、外部の力を借りることの整理先として、お気軽にご相談ください。