前提

取引先開拓を進める一方、受注後の施工を社員と協力会社で支える専門工事会社の現在地

建設会社が売上を伸ばすには、取引先を増やすだけでは足りません。受注した工事を、品質と納期を守りながら竣工まで運べる体制が必要です。

ある専門工事会社でも、取引先開拓の方法を考えるなかで、次の課題が見えてきました。

「仕事がたくさん来ても、捌けなければ意味がないんですよね」

営業先の選択肢には、大手企業を狙う「一本釣り」もあれば、中小企業へ広くアプローチする方法もあります。どちらが正しいという話ではありません。会社が目指す姿や、得意な工事領域によって変わります。

ただし、共通して押さえておきたい点があります。販売先を増やす計画と、施工を担う社員・協力会社を増やす計画は、ひとつの成長計画として扱う必要があります。

受注の入口と、施工の出口。その両方がつながって、初めて売上になります。

課題

営業活動だけが先行すると、案件が増えても売上拡大までつながらない構造

取引先開拓では、ターゲティング、リスト作成、アポイント獲得、商談、追客までを一連の流れとして進めます。しかし、営業活動がうまくいくほど、次に「誰が施工するのか」という問題が大きくなります。

営業の成果は受注件数ではなく、施工して竣工できる案件数まで見て判断することが大切です。

たとえば、相性のよい取引先候補が見つかったとしても、その会社から求められる工事領域に対応できなければ、継続的な取引にはつながりにくくなります。営業現場では、次のような判断が必要になります。

「この会社と付き合うには、やはり採用が必要だな」

「この工事領域に対応できる協力会社が増えれば、取引先からもっと重宝されそうだ」

つまり、取引先開拓で見えてくるのは、案件の有無だけではありません。どの施工能力が足りないのかを知るための一次情報も、営業現場に集まっています。

それにもかかわらず、販売先開拓は営業担当、採用は採用担当、協力会社探しは現場担当というように分かれていると、判断が別々になりがちです。営業は案件を増やしたのに、現場は受けられない。現場は協力会社を探しているのに、どの工事領域を強化すべきか決まっていない。こうしたずれが起きます。

背景

大手一本釣りか中小企業への展開かで、必要な工事領域と施工能力が変わる事情

営業強化と施工体制がずれやすい背景には、取引先の増やし方によって、求められる供給能力も変わるという建設業特有の事情があります。

大手企業との取引を狙う場合は、その一社から求められる工事領域や対応力を深く確認する必要があります。一方、中小企業へ広くアプローチする場合は、複数の案件を継続して受けられる体制が重要になります。

実際、すべての会社が大手との取引だけを望んでいるわけではありません。中小・零細企業との取引を積み重ねるほうが、自社に合っていると考える経営者もいます。

「必ずしも、みんなが大手と付き合いたいわけではないんです」

この違いを見ずに、営業先の数だけを増やすと、受注したい案件と施工できる案件がかみ合わなくなります。

施工能力を増やす手段は、大きく分ければ二つです。

  • 自社で社員を採用し、施工体制を厚くする
  • 外注先となる協力会社を増やし、対応できる案件を広げる

ここで重要なのは、どちらか一方を常に正解としないことです。目標とする取引先、案件数、工事領域を先に定め、その実現に必要な施工能力から採用と協力会社開拓の優先順位を決めます。

販売先の開拓で使っているターゲティングやリストアップの考え方は、協力会社の開拓にも活用できます。販売先へ営業するのではなく、自社が強化したい工事領域に対応できる会社を定め、接点をつくっていく形です。

取引先開拓と協力会社開拓は、目的こそ違います。しかし、対象を定め、候補を探し、接点を持ち、関係をつくる流れには共通点があります。

解決

目標案件から必要な施工能力を逆算し、販売先・採用・協力会社を同時に動かす進め方

最初に整理したいのは、「何件受注したいか」だけではありません。どの取引先から、どの工事領域の案件を、どの程度受けたいかまで具体化することが出発点です。

進め方は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

1.目指す取引先と工事領域を決める

大手企業との取引を増やしたいのか、中小企業との取引を積み上げたいのかを確認します。そのうえで、相手からどのような工事を任されたいのかを定めます。

ここが曖昧なままでは、必要な人材も協力会社も決まりません。営業先のリストを作る前に、次の点をそろえておくと動きやすくなります。

  • 付き合いたい取引先の属性
  • 受注を増やしたい工事領域
  • 目標とする案件数
  • 現在の社員・協力会社で対応できる範囲
  • 受注拡大に向けて不足している施工能力

営業戦略と施工体制の共通言語は、「どの工事を、どれだけ施工できるようにするか」です。

2.自社採用と協力会社開拓の優先順位を決める

次に、不足する施工能力を社員採用で補うのか、協力会社の開拓で補うのかを考えます。

判断の中心になるのは、目標とする工事領域と必要な時期です。自社採用を進めても、必要な時期までに体制が整うとは限りません。一方、協力会社を増やす場合も、候補を見つければすぐに安定した施工体制になるとは限りません。

そのため、二者択一で考えるよりも、中長期では自社採用を進めながら、受注機会に対応するための協力会社開拓も並行するという組み立てが現実的な場合があります。

採用では、採用戦略、求人票、面接方法まで一連で整えます。協力会社開拓では、必要な工事領域から対象を定め、販売先開拓と同じように候補のリストアップとアプローチを進めます。

3.販売先開拓と施工体制の進捗を同じ場で確認する

販売先開拓だけを見ていると、商談数や受注見込みが中心になります。そこへ施工体制の情報を加えます。

たとえば営業活動を通じて、ある工事領域への需要が強いと分かった場合、その情報をもとに採用や協力会社開拓の優先順位を見直します。反対に、特定領域の施工体制が整ってきたなら、その強みを生かせる取引先へ営業対象を広げられます。

「営業してから施工体制を考える」のではなく、営業で得た情報を使って施工体制を変え、整った施工体制を使って次の営業先を決める循環が必要です。

4.商談の一次情報から営業と供給体制を修正する

最初から完璧な計画を作るのは難しいものです。実際にリストを作り、アポイントを取り、商談へ進み、追客するなかで、取引先が重視する工事領域や条件が見えてきます。

「このリストは商談が前に進む」「この取引先群では反応が弱い」と分かれば、ターゲットを見直します。同じように、「この工事領域を求められることが多い」と分かれば、採用や協力会社開拓へ反映します。

営業現場の一次情報をもとに、販売先の狙い方と施工体制の両方でPDCAを回すことが、受注拡大を売上へつなげます。

まとめ

建設会社の営業強化は、取引先を増やす活動だけでは完結しません。案件を受注し、現場で施工し、竣工まで運べる体制があって初めて成長につながります。

押さえておきたい要点は次のとおりです。

  • 販売先開拓と施工体制の整備を、ひとつの成長計画として扱う
  • 目標とする取引先・案件数・工事領域から必要な施工能力を逆算する
  • 不足する施工能力に応じて、自社採用と協力会社開拓の優先順位を決める
  • 営業現場で得た一次情報を、採用と協力会社開拓へ反映する
  • 施工体制が整った領域を、次の販売先開拓へつなげる

「取引先を増やしたい」と「現場を回せるようにしたい」は、別々の課題に見えます。しかし、実際には同じ成長計画の表と裏です。営業と施工体制を同時に整理することで、自社に合った無理のない受注拡大が見えやすくなります。

営業強化と施工体制を一緒に整理したい方へ

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大だけでなく、採用、人材定着、協力会社開拓、組織づくりまで横断して整理し、実行を支援しています。

「営業先を増やす前に、施工体制をどこまで整えるべきか」「自社採用と協力会社開拓のどちらを優先すべきか」といった、まだ方針が固まっていない段階でも構いません。

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