新規の受注先を増やしても、対応できる工種・地域・規模が同じなら成長余地は広がらない
建設会社の販路拡大では、見込み客のリストをつくり、営業先を増やすことが最初の一歩になります。ただし、リストアップされた企業へのアプローチだけでは、成長が頭打ちになることがあります。
たとえば、自社が現在対応できる工種や施工規模が変わらないままでは、新しい取引先が見つかっても、受注できる案件は従来と大きく変わりません。内装仕上げの一部は請けられても、内装工事一式には対応できない。特定エリアの小規模案件は施工できても、広域案件や大型案件には人手が足りない。この状態では、営業先が増えても断る案件が増えるだけになりかねません。
ある専門工事会社でも、取引先候補を抽出すると、条件に合いそうな企業が数百社単位で見えてきました。しかし、重要なのはリストの件数ではありませんでした。
「良さそうな営業先が300社あるなら、数か月で一通り連絡できる」と考えるだけでは、その後の成長につながりにくいからです。
販路拡大で見るべきなのは営業先の数ではなく、その営業先から受けたい案件に対応できる施工体制があるかどうかです。
取引先だけを開拓すると、受けられる案件の幅が変わらないまま営業リストを消化することになる
新規顧客の開拓が短期施策で終わりやすい理由は、「誰に営業するか」と「何を受けられる会社になるか」が分かれているためです。
企業データベースやホームページを使えば、売上規模、伸長率、取引先、施工実績、元請け・下請けの位置などを確認できます。マンション、店舗、工場といった案件種別や、どの程度の規模の工事実績があるかも、営業先を絞る材料になります。
一方で、企業情報だけを見て「この会社は条件に合う」と判断しても、自社の施工体制が伴わなければ受注にはつながりません。仮に受注できても、対応できる案件が従来と同じであれば、売上や利益の構造は大きく変わりにくいでしょう。
特に、次のような方向を目指す場合は、取引先開拓だけでは足りません。
- 一部分の工事から一括受注へ広げたい
- より上流に近い立場で受注したい
- 今より大きな規模の案件を受けたい
- 対応できる地域や工種を広げたい
- 単価や利益率を見直せる取引先を増やしたい
取引先開拓は受注の入口を増やす活動であり、協力会社開拓は受けられる案件の幅を増やす活動です。どちらか一方では、会社の成長余地を十分に広げられません。
一括受注や上流案件に必要な機能を、採用だけでそろえるのは難しい
受注の幅を広げる方法として、まず採用を思い浮かべる会社は多いと思います。しかし、新たに対応したい工種ごとに経験者を採用し、地域や繁閑に合わせて必要人数をそろえることは、現実には簡単ではありません。
だからこそ、狙う案件に合わせて協力会社との組み合わせを変え、不足する施工機能を補う視点が必要になります。
たとえば、内装工事一式を受けたい場合、自社が特定の仕上げ工事しか担えないのであれば、別工種を担える協力会社との連携が欠かせません。高級な個店の施工を狙うのか、チェーン店舗の施工を狙うのかによっても、求められる実績や施工体制は変わります。
ここで注意したいのは、「店舗工事の実績がある」「内装工事の許可がある」といった大きなくくりだけで判断しないことです。内装一式を探しているのに、内装仕上げの一工種だけを担う会社が候補に混ざることがあります。個店の高級店舗を狙っているのに、チェーン店舗を中心とする会社だけを見ていても、狙いとのずれが生じます。
企業情報による抽出は有効ですが、最後はホームページの施工実績や案件名まで確認しなければ、実際の適合度は判断しにくいものです。
先に「どの案件を取りたいか」を具体化しなければ、必要な協力会社も、営業すべき取引先も決まりません。
狙う案件から必要な施工機能を逆算し、取引先と協力会社の開拓を往復させる
進め方の起点は、営業先のリストではなく、将来受けたい案件です。受注したい工事から必要な機能を逆算すると、取引先開拓と協力会社開拓の役割を整理しやすくなります。
1.狙う案件を「工種・物件・規模・地域」で定める
最初に、「取引先を増やしたい」という表現を、案件の条件まで具体化します。
- どの工種を受けたいのか
- 一部工事か、一括工事か
- マンション、店舗、工場など、どの物件を狙うのか
- どの程度の工事規模を想定するのか
- どの地域まで対応したいのか
- 元請け、一次、二次など、どの位置で入りたいのか
ここが曖昧なままでは、企業規模や売上だけを基準に営業先を選ぶことになります。同じ店舗工事でも、個店とチェーン店舗では発注構造や求められる施工体制が異なるため、案件像はできるだけ具体的に置く必要があります。
「どの会社と取引したいか」より先に、「どの案件を、どの立場で受けたいか」を決めます。
2.現在の施工体制との差分を確認する
次に、その案件を受けるために必要な機能と、自社が現在持っている機能を照らし合わせます。
確認したいのは、単純な人数だけではありません。対応できる工種、地域、工事規模、過去実績を並べ、何が不足しているために受注できないのかを特定します。
たとえば、一括受注に必要な複数工種のうち、自社で担えるのが一部だけなら、残りが協力会社開拓の対象です。地域対応が不足しているなら、同じ工種でも別エリアの施工会社が必要になります。
この差分が見えれば、採用すべき機能と、外部連携で補う機能も分けて考えられます。
自社に足りないものをすべて採用で埋めるのではなく、継続的に内製したい機能と、協力会社との連携で補う機能を分けることが現実的です。
3.協力会社の候補を確保してから、受注先への営業を具体化する
順序としては、狙う案件を決めた後、必要な施工体制を確認し、不足する協力会社の候補を持ったうえで取引先への営業を具体化します。受注後に慌てて施工会社を探す形では、提案できる案件の範囲も限られます。
ただし、完全に施工体制を整えてから営業を始める必要はありません。取引先へのヒアリングを進めることで、実際に求められている工種や規模が分かり、必要な協力会社の条件が変わることもあるからです。
そのため、実務では次のように往復させます。
- 狙う案件を仮決めする
- 必要な協力会社を抽出する
- 取引先候補へアプローチする
- 得られた案件情報をもとに施工体制を見直す
- 不足する協力会社を追加で開拓する
- 対応できる案件の幅が広がったら、取引先候補を広げる
取引先開拓と協力会社開拓は、一度ずつ実施して終える施策ではなく、案件情報をもとに行き来させる営業機能です。
4.候補企業は件数ではなく、根拠を付けて優先順位を決める
見込み先が数百社あっても、同じ優先度で連絡する必要はありません。企業データベースで一定の条件をかけた後、ホームページなどで施工実績や案件名を確認し、優先順位を付けます。
取引先候補であれば、次のような視点が判断材料になります。
- 狙う物件や工事の実績があるか
- 自社が希望する立場で参入できそうか
- 工事規模が自社の目標と合っているか
- 継続受注や利益率の改善につながる可能性があるか
- 企業の売上や事業が伸びているか
重要なのは、点数だけを独り歩きさせないことです。「条件に合ったから有望」とするのではなく、なぜ有望なのかを施工実績や案件情報と結び付けて説明できる状態にします。
協力会社についても同様に、必要な工種、地域、対応規模、実績との一致を確認します。
リストの価値は件数ではなく、狙う案件との一致を説明できる根拠にあります。
5.リスト消化ではなく、中長期のPDCAとして管理する
営業先への連絡件数だけを追うと、「300社に連絡したら終了」という短期施策になりやすくなります。しかし、本来確認したいのは、その活動によって受けられる工事の幅が広がったかどうかです。
定期的に確認したいのは、次のような変化です。
- 狙っていた取引先との接点が増えたか
- どの案件条件で反応が得られたか
- 受注できなかった理由は販路か施工体制か
- 必要な協力会社との接点が増えたか
- 新たに提案できる工種、地域、規模が広がったか
この振り返りをもとに、取引先候補と協力会社候補の条件を更新します。最初から100点のリストをつくるより、一定の精度で動き始め、得られた情報を次の抽出や提案に反映する方が、営業機能として定着しやすくなります。
成果を見る単位を「何社に連絡したか」から「どの案件を受けられる会社になったか」へ変えることが、中長期の成長につながります。
まとめ
新規顧客を増やすことは重要ですが、営業先を増やすだけでは、対応できる工種・地域・規模は変わりません。一括受注や上流案件を目指すなら、取引先開拓と同時に、必要な施工機能を補う協力会社の開拓が必要です。
進め方の起点は、営業リストではなく狙う案件です。受けたい案件を具体化し、現在の施工体制との差分を確認したうえで、必要な協力会社と取引先を開拓します。その後も案件情報に合わせて両方の条件を見直し、往復しながらPDCAを回します。
取引先開拓と協力会社開拓を両輪で進めることで、営業先の数だけでなく、会社として受けられる仕事の幅を広げられます。
受けたい案件と必要な施工体制を一度整理してみませんか
「営業先は増やしたいが、どの企業を狙うべきか決めきれない」「一括受注に進みたいものの、どの協力会社が必要か分からない」という段階では、営業リストをつくる前に案件像と施工体制を整理することが有効です。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の販路拡大から協力会社開拓、採用、組織、原価管理、デジタル活用までを横断して整理し、実行まで支援しています。「うちの場合は何から考えるべきか」という段階でも問題ありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。