社長と主力社員が複数現場を回し、翌年度の仕事も見え始めた専門工事会社
仕事の引き合いも協力会社とのつながりもある一方で、現場を任せられる人材が受注拡大の制約になっている会社の相談です。
兵庫県を拠点とする、創業から数年の小規模な専門工事会社です。公共施設の設備工事を中心に、機器の据え付けや付帯工事を手がけています。社長と主力社員は、施工管理だけでなく現場作業、書類作成、図面作成にも対応しています。
規模の異なる複数現場を、工程を調整しながら回している状況です。主力社員には単独で現場を任せられる実力があり、社長がいなくても担当現場は動きます。配管、電気、足場などの協力会社も確保できています。
既存顧客からは翌年度の仕事についても声がかかり、年度をまたぐ工事もあります。ただ、その先まで継続的な仕事量が見えているわけではありません。増員後の固定費を考えると、引き合いが増えたからといって、すぐに人を増やす判断もしにくいところです。
そこへ、以前から見積もりを出していた大型案件について、着工時期の連絡が入りました。売上・利益ともに期待できる仕事ですが、既存現場と工程が重なります。相談の中心は、仕事を取れるかどうかではなく、無理のない体制でどう受けるかにありました。
協力会社を増やすだけでは埋まらない施工管理の不足
不足しているのは、単なる作業人数ではなく、もう一つの現場を任せられる施工管理の力です。
この会社では、社長も主力社員も、作業と管理の両方を担っています。ただ、現在の仕事の比重は施工管理寄りであり、次に採用する人についても、職人としての技能以上に、現場を管理できることを優先しています。
協力会社に専門工事をお願いできても、それだけで自社の管理担当者が不要になるわけではありません。どの工事を誰に依頼し、自社がどこまで管理するのかは別に考える必要があります。作業を担う人数と、現場を任せられる人数を一緒に数えると、受注できる余力を見誤りやすくなります。
また、新たな大型案件は、個々の工事が特別に難しいというより、ボリュームの大きさが問題になっていました。社長の見立てでは、入社したばかりの人にすぐ任せるのは難しく、自分か主力社員が担当する必要があります。
つまり、経験者を一人採用できたとしても、その人を大型現場にそのまま配置できるとは限りません。採用人数を増やすことと、受けられる現場を増やすことの間には、配置を組み直す段階があります。
見積もりから着工までの時間差と、自社施工を前提にした採算
受注を迷う背景には、着工時期が後から具体化することと、外注に置き換えると採算が変わることがあります。
建設工事では、見積もりを提出してから実際の着工まで、数か月から半年ほど空くことがあります。この会社の大型案件も、以前から話はあったものの、いつ動くかが定まらないまま、後になって具体的な時期が示されました。
現在の複数現場は、工程のタイミングが合うことで回せています。空いている時間に別の現場へ向かえる状態ですが、それは、新しい現場をいつでも追加できる余力とは異なります。既存現場を回せている実績だけでは、同じ時期に大型案件を受けられるかまでは判断できません。
もう一つは、自社でも手を動かしてきた施工体制です。この会社には協力会社との関係がありますが、外注を多用せず、自社施工によって採算を確保している仕事もあります。同じ受注額でも、外注費が増えれば残る利益は変わります。
一方で、採用すれば固定費が増えます。過去には仕事の少ない月もあり、社長は月ごとに収支を試算していました。採用に慎重なのは、人材への投資を避けたいからではなく、仕事量の波も含めて会社を維持したいからです。
直近の大型案件を受けるための体制と、その案件が終わった後も維持できる体制を、分けて考える必要があります。
工程と受注範囲を調整し、配置と採算から採用の順序を決める進め方
直近は今いる人で対応できる条件を探り、中長期は継続受注と教育の余力に合わせて採用を進める、という二段階で整理できます。
大型案件への対応を、採用が間に合うかどうかだけに委ねる必要はありません。この相談では、工程の調整、一部だけを受ける交渉、新規人材を含めた配置の変更、専門工事の外注が検討の対象になります。
まずは工程の重複と、任せられる現場を整理する
最初に確認したいのは、現場の件数ではなく、誰の管理がどの時期に必要になるかです。既存現場と大型案件の工程を重ね、社長と主力社員の担当が重なる期間を整理します。
その際、見積提出中の案件と、着工時期が具体化した案件は区別しておきます。見込み案件をすべて確定した仕事として扱うと増員判断が先行し、逆に着工の連絡を待ってから考えると配置の選択肢が狭くなります。どの案件の時期が決まると、どの担当者が足りなくなるのかを押さえることが大切です。
この会社では、工程が少しずれれば対応できる可能性がありました。まずは取引先と調整できる余地を確認し、それでも重なる部分について、受注範囲や配置を検討する順序が自然です。
全量受注か辞退かではなく、対応できる範囲を交渉する
既存顧客を大切にすることと、依頼された工事をすべて引き受けることは、必ずしも同じではありません。
社長は、大型案件のボリュームを踏まえ、一部だけ担当する交渉も考えていました。自社にも顧客にも無理のない受注にしたいという意向です。
直近の選択肢は、次のように比較できます。
- 工程調整:着工時期や担当工程を調整することで、社長か主力社員が対応できるかを確認します。
- 一部受注:全体を受けるのではなく、自社で管理できる範囲に絞る交渉が可能かを確認します。
- 配置の変更:新たな人材に既存現場を任せ、社長か主力社員を大型現場へ移せるかを検討します。
- 専門工事の外注:専門性のある工事を協力会社に依頼した場合、どの負担が減り、どれだけ利益が残るかを確認します。
比較の基準は、受注額の大きさだけではありません。管理を担う人が確保できるか、既存現場への対応を維持できるか、外注後も採算が合うかをそろえて見ることが重要です。
新しい人を大型現場に当てはめず、既存現場を含めて配置を考える
新規採用者が大型現場を直接担当できなくても、採用によって対応可能になる場合があります。既存現場のうち、その人に任せられる仕事があれば、実力の分かっている社長や主力社員を大型案件へ移せるためです。
ただし、施工管理の経験があるというだけで、既存現場をすぐ任せられると決めるのは早計です。これまで対応してきた工事、管理できる範囲、書類や図面への対応などを、自社の現場に照らして確認する必要があります。
採用要件は「社長や主力社員と同じことが全部できる人」ではなく、「どの既存現場を任せられれば、会社全体の配置が組めるか」から考えると具体化します。
経験者採用と育成型採用は、教育に割ける人員から順序を決める
中長期の増員は、直近の大型案件だけで決めず、継続受注の見通しと合わせて判断します。既存顧客から翌年度も声がかかっていることは増員を考える材料ですが、それがどの程度具体的な仕事なのか、時期と規模を確認することが先です。
そのうえで、増員後の固定費、外注した場合の採算、教育に割ける人員を比べます。経験者採用は管理を任せられる範囲を広げる選択肢ですが、入社直後からすべてを任せる前提にはしないことが必要です。
育成型採用については、この会社でも将来の選択肢として考えていました。ただし、社長一人だけが教育者になる体制では難しく、教えられる人が複数いることを条件にしています。
そのため、現在のように管理担当者が限られている段階では、まず既存現場を任せられる経験者の確保を優先し、教育を分担できる状態になってから育成型採用を広げる順序が考えられます。若手を育てたいという方針と、今すぐ一現場を任せたいという必要性は、採用計画の中で分けて扱うことが大切です。
まとめ
仕事はあるのに受け切れないときは、作業人数の不足なのか、現場を任せられる管理能力の不足なのかを分けることが出発点です。
協力会社がいても、社長と主力社員の管理が必要な期間が重なれば、受注には限界があります。直近の案件は、工程調整、一部受注、配置変更、専門工事の外注を比較し、管理できる体制と採算が両立する条件を探ります。
採用は、その先の受注を支えるために進めるものです。継続する仕事量と増員後の固定費を確認し、まず任せられる現場を増やすのか、教育を担える人を増やすのかを決めていきます。
すべてを受けることよりも、顧客との関係を保ちながら、責任を持って対応できる範囲を広げることが、無理のない受注拡大につながります。
現場を任せる体制と、次に採る人の役割の整理
「誰を採るか」を決める前に、今の現場をどう分担できれば次の仕事を受けられるのか、一緒に整理することから始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。人材の確保だけを切り離さず、受注見通しや外注時の採算、教育体制も踏まえて、次の一手を考えます。
「うちの場合は経験者採用が先なのか」「大型案件を受ける条件を何から整理すべきか」といった段階でもご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、自社の体制を整理する場としてご活用ください。