大手との接点も既存の得意先もある電気設備工事会社の取引先選び
取引先との接点があることと、その取引を増やしたいと思えることは別です。
兵庫県にある中小の電気設備工事会社には、すでに複数の得意先がありました。発注者から見ると、二次・三次の立場で施工に入っています。大手の設備工事会社とのつながりも持っていました。
「得意先のルートは、我々も持っています」
新しい相手に出会えず、困っているわけではありません。協力し合おうという声も、日常的に届いています。
一方で、民間の仕事だけでは安定しにくいという認識もありました。そこで、受注先の組み合わせを見直している段階です。
その会社が大手との取引について口にしたのは、意外にも慎重な言葉でした。
「つながりは持っていますけど、そんなに魅力は感じないですね」
知名度のある相手なら、取引を広げたいはず。そう考えるだけでは、この悩みは捉えきれません。
大手の仕事量だけでは測れない厳格なルールへの対応負担
仕事が見込めても、対応の負担に見合う利点が見えなければ、開拓先としての優先度は上がりません。
この会社が気にしていたのは、大手と取引する際のルールでした。
「付き合いするのは大変ですよ。いろいろ厳格なルールがあって、なかなか大変なところがいっぱいあります」
大手企業には仕事量がある。販売先も幅広い。そうした情報だけでは、取引を増やす判断にはつながっていませんでした。
「我々中小企業として、そんなにメリットがあるかというと、疑問ですね」
ただし、どのルールが、どれほどの負担になっているかまでは明らかになっていません。ここを曖昧にしたままでは、大手全体を避ける判断にも、仕事量を期待して開拓する判断にも、根拠が足りなくなります。
整理したいのは、相手の規模そのものではありません。自社の体制で何に対応でき、何が負担になり、その負担を引き受けるだけの利点があるかです。
「会える相手」と「続けて付き合いたい相手」の違い
紹介や人脈で接点をつくれても、取引を続けられるかどうかは別に確かめる必要があります。
この会社には、すでに大手とのつながりがありました。そのため、新たな紹介先の知名度よりも、付き合った先で何が得られるのかが重要でした。
候補企業の販売先や売上・利益の推移を見れば、仕事量を考える材料になります。販売先にどのような発注者がいるか。売上がどう動いているか。利益も伴っているか。そこから、継続的な仕事につながりそうかという仮説は立てられます。
ただ、その情報から、自社に依頼される仕事や対応要件までは分かりません。
相手企業の売上が伸びていても、自社が受けられる工事が増えるとは限りません。相手が利益を出していても、自社にとって負担に見合う取引になるとは限りません。
この会社が求めていた受注の安定も、単に大きな相手とつながることでは実現しません。相手に仕事があることと、自社が無理なく継続して受けられることを、分けて見る必要があります。
販売先と業績で候補を絞り、実際の対応要件で適合性を確認する進め方
候補企業の情報で仕事量の仮説を立て、面談で対応要件を確認する。この二段階で考えると、取引先を選びやすくなります。
最初から大手か中小かで分けるより、自社に合う条件を先に整理する進め方です。
まず、厳しいと感じるルールの中身を整理する
出発点は、すでに経験している取引の振り返りです。「大手は大変」で止めず、どの対応が負担だったのかを言葉にします。
確認したいのは、次の三点です。
- 厳しいと感じたルールや対応は何か
- 現在の体制で対応できる範囲はどこまでか
- その負担に対して、どのような利点があれば取引を続けたいか
ルールがあること自体と、自社では対応が難しいことは別です。対応できる条件が見えれば、新しい候補先にも同じ軸で確認できます。
次に、販売先と売上・利益の推移を重ねて見る
候補企業については、確認できる企業情報から、販売先と業績の動きを見ます。
販売先は、相手がどこから仕事を得ているかを知る手がかりです。売上・利益の推移は、その仕事が事業としてどう動いているかを考える材料になります。
企業情報は、受注を保証するものではなく、会って確かめる候補を絞るための材料です。
知名度だけで候補を並べるのではなく、自社の施工領域につながる仕事がありそうかを見ます。そのうえで、継続的な依頼が期待できそうな理由を整理します。
最後に、期待する仕事と求められる対応を照らし合わせる
面談では、仕事量の見通しだけでなく、実際に付き合う際のルールも確かめます。事前に整理した負担の内容をもとに、相手の要件を確認する流れです。
自社に依頼される可能性のある工事は何か。継続的な依頼の見通しはあるか。その仕事を受けるには、どのような対応が必要か。現在の体制で担えるか。
ここまでそろって、初めて比較しやすくなります。
仕事量が期待できても、対応できるか分からないなら、判断を保留して追加確認をします。負担が大きく、見合う利点も見えないなら、開拓の優先度を下げる選択もあります。
反対に、ルールの内容が明確で、自社でも対応でき、継続的な仕事の見通しがあるなら、有力な候補になります。大手という理由だけで、一律に外す必要もありません。
まとめ
大手との取引が得かどうかは、知名度や相手の仕事量ではなく、自社が対応する負担と得られる利点の組み合わせで変わります。
今回の電気設備工事会社には、得意先も大手との接点もありました。それでも、厳格なルールへの対応を考えると、取引を広げる魅力を感じにくい状態でした。
次の一手は、紹介先を増やすことだけではありません。まず、既存の取引で何を負担に感じているかを整理します。そのうえで、候補企業の販売先と売上・利益の推移から仕事量の仮説を立てます。最後に、実際の対応要件を確認します。
「大手だから付き合いたい」でも、「大手だから難しい」でもなく、自社が続けられる条件を基準に、取引先を選ぶことが大切です。
自社に合う取引先の条件を整理するために
「つながりはあるけれど、取引を増やすべきか迷う」「ルールへの対応まで考えると、何を基準に選べばよいか分からない」。そんな段階から、整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。取引先開拓でも、候補企業を挙げるだけでなく、現場や社内の対応体制と照らし合わせながら、狙う相手や確認すべき条件を一緒に考えます。
開拓ありきではなく、自社に合う取引条件を整理するところから相談できます。無理な営業はいたしませんので、「うちの場合はどう考えるべきか」という段階でも、お気軽にお声がけください。