10名ほどの左官会社が求める、自社の現場規模に合う元請け
求めていたのは、元請けの数を増やすことではなく、自社の規模に合う相手と継続して仕事をすることでした。
相談を寄せたのは、集合住宅の施工を中心とする10名ほどの左官会社です。自社の職人で施工し、足りないときは応援を頼む体制です。ゼネコンとの直接取引に加え、一次請けの左官会社からも仕事を受けています。
「いっぱい欲しいわけではないんです。規模感に合った元請けが欲しいんです」
ここでいう規模感は、単価よりも現場の大きさです。超高層や大規模な集合住宅ではなく、目安として12階建て程度まで、80戸未満ほど。あくまで案件によりますが、自社で対応する現場のイメージはありました。
今の取引先の中には、数年にわたって仕事が続いている相手もいます。一方、新たに直接取引を始めた元請けについては、継続を見直そうとしていました。
同じ「元請けとの直接取引」でも、続けたい相手と、そうではない相手がいる。その違いをどう見極めるかが、開拓を進めるうえでの悩みでした。
新規の元請けとつながっても、会社に利益が残らない取引
新しい取引の入口はできても、見積もりや現場での対応が合わなければ、続けたい仕事にはなりません。
継続を迷っている元請けでは、提出した見積もりから大きく減額されて受注したといいます。
「新規だから仕方ないと思って入ったんです。でも、会社には何も残らない。やっただけですね」
初めての相手なので、まず実績をつくろうと考える。その判断自体は理解できます。ただ、入口で譲った分を、その後の取引で取り戻せるとは限りません。
さらに現場では、他業種の職人から、支払いや追加工事の扱いを懸念する声も聞きました。ただし、これは周囲から聞いた話です。自社で確認した見積もりの減額や利益の状況とは、分けて捉える必要があります。
相談者が知りたかったのは、単に仕事を出してくれる会社の名前ではありません。
「本当に合うかどうかは、職人もそうですし、僕自身もそうですし。やってみないと分からないんです」
経営側だけでなく、現場で働く職人にとっても無理なく付き合えるか。そこまで分からないと、積極的に開拓する先を決めにくい状況でした。
既存の元請けでは当たり前だった、支払いと追加工事への対応
相性のよい元請けを考える手がかりは、すでに続いている取引の中にありました。
相談者が継続したいと話す元請けには、具体的な理由があります。
「支払いがいい。追加もちゃんとくれるんです」
注文書や請書を交わし、追加工事にも対応してもらえる。そうした取引を続けてきたからこそ、新しい相手にも同じような信頼性を求めていました。
「肌感が合う」という言葉も出ていました。これは単に、担当者と話が合うということだけではなさそうです。見積もりをどう扱うか。追加工事の話を受け止めてもらえるか。現場で一緒に働き続けられるか。日々の対応が積み重なった感覚と捉えられます。
一方、こうした点は、ホームページや取引前の説明だけでは確かめきれません。相談者は、現場で聞く声の価値を強く感じていました。
「他の業者さんが文句を言っていても、ずっとやっていることもある。そういう生きた情報なんです」
不満の言葉があるから、すぐに取引できない相手とは限りません。何に困っているのか。それでもなぜ続けているのか。そこまで聞いて初めて、自社との相性を考える材料になります。
現場規模で候補を絞り、小口案件で元請けの実際の対応を確かめる進め方
公開情報で候補を絞り、職人の実体験で確認点をつかみ、初回の小口案件で判断する。この順番なら、入口づくりと相性の見極めを分けて進められます。
最初から「信頼できる元請け」を完全に見抜こうとすると、動きにくくなります。取引前に分かることと、実際に仕事をして分かることを分けるのが出発点です。
自社が対応できる現場規模とエリアから候補を絞る
まず整理したいのは、相手の知名度より、自社が受けられる仕事との一致です。
この会社であれば、超高層ではない集合住宅が一つの目安になります。そこに、自社が回れる施工エリアと、既存案件を抱えながら対応できる範囲を重ねます。その条件に合う会社を候補にし、優先順位をつけて接点をつくります。
相談者自身、電話やメールで営業することはできると話していました。ただ、今動いて仕事が増えすぎることにも慎重でした。
「今ここで営業して、忙しくなったらしんどい。結局、自分の首を絞めてしまうんです」
候補を調べることと、受注を増やすことは、同時に進めなくても構いません。 まず接点を持つ先を絞り、初回案件を受ける時期は、既存の仕事との重なりを見て考えられます。
他業種の職人には、評判より実際の経験を聞く
現場で一緒になる他業種の職人の声は、営業時の説明では見えない点を知る手がかりになります。ただ、「支払いが悪いらしい」「追加が厳しいらしい」という言葉だけでは、判断材料としてまだ粗いままです。
確認したいのは、本人が経験した話なのか、どの現場の話なのか、具体的に何があったのかです。取引を続けているなら、その理由も聞きたいところです。
整理する際は、次の三つを混ぜないようにします。
- 自社が実際に経験したこと
- 他業種の職人が、自身の経験として話したこと
- 人づてに聞いた、まだ確認できていないこと
噂は確認するきっかけにし、確認できた事実と同じ重さでは扱わないことが大切です。 気になる声があれば、取引前の説明や初回案件で確かめる点に変えていきます。
初回は小口から始め、継続したい条件と照らし合わせる
初回案件では、入口の印象だけでなく、実際の対応を見ます。確認する軸は、既存のよい取引から取り出せます。
この会社なら、見積もりの扱い、注文書・請書のやり取り、支払い、追加工事への対応、職人を含めた現場でのやりやすさです。追加工事が発生しなかった場合、その点はまだ未確認として残します。
小口から始めるのは、安く請けるためではありません。自社で対応できる範囲の仕事を通じて、説明と実際の対応にずれがないかを確かめるためです。
工事を終えたら、会社に利益が残ったか、職人も続けられそうか、未確認の点は何かを振り返ります。条件が合えば少しずつ取引を広げます。合わない点が残るなら、次の案件を急いで増やさず、継続するかを考えます。
まとめ
元請け開拓の目標は、取引先の社数ではなく、利益を残しながら続けられる相手を見つけることです。
そのためには、まず既存のよい取引を言葉にすることが役立ちます。支払い、追加工事、現場規模、職人の働きやすさ。自社が大事にしたい点が見えると、候補の絞り方も変わります。
公開情報だけで相性を決めず、現場の声だけで結論も出さない。小口案件で実際の対応を確かめ、信頼を重ねながら広げていく。数を追わない開拓も、会社の成長に向けた一つの進め方です。
自社に合う元請けの条件を整理したいときに
「どこへ営業するか」の前に、「どんな相手なら続けたいか」を整理する段階から相談できます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場の状況や採用・組織、原価、デジタル活用まで横断して捉え、実行まで支援しています。元請け開拓でも、自社に合う現場規模やエリア、重視する取引条件を整理し、候補の選定から接点づくりまで一緒に考えます。
外部の支援だけで、相手の現場対応をすべて保証できるわけではありません。開拓の入口づくりと、実際の施工で確かめる部分を分け、自社に合う進め方を整理します。
「うちの場合は何を基準にすればよいか」という段階でも大丈夫です。無理に営業支援の利用を勧めることはありませんので、今の状況をお聞かせください。