材料販売から店舗内装へ領域を広げ、大手の直下で一次請けを目指す岡山県の内装工事会社
岡山県を拠点とする、店舗内装や造作家具、建具工事などを手がける会社があります。これまでは、内装会社や施工会社から相談を受け、材料を販売する取引が中心でした。近年は家具工事や内装工事まで依頼される機会が増え、次の成長に向けて大手企業との直接取引を検討しています。
目指しているのは、施主からすべてを直接請け負う立場ではありません。商業施設や百貨店、専門店などの内装を元請けする企業の直下に入り、地域の施工を一次請けとして担当する形です。
一方で、会社の規模が大きければ、どこでも営業先になるわけではありません。候補企業を見ながら、社内からは次のような声が上がりました。
「店舗の内装なら対応できそうですが、ビル一棟や大型施設の内装を全部となると、うちでは規模が大きすぎます」
「たくさん紹介されても、仕事が来たときに人員が足りず、できないのが怖いんです」
目指すべき相手は、単に規模の大きい会社ではなく、自社が対応できる案件を継続的に外注し、元請けの直下に入れる会社です。
売上規模と知名度だけで選ぶと、受けられない大型案件や利益を出しにくい工事が増える問題
営業先候補を売上高や知名度で並べると、魅力的な企業が数多く見つかります。実際に、岡山県と関西圏の類似企業を広く抽出すると、候補は約300社にのぼりました。
ただし、その一覧には店舗内装を中心とする会社だけでなく、マンション一棟、ビル全体、大型商業施設、公共施設などの内装を一括で請け負う会社も含まれています。発注量が多くても、一案件の規模が自社の施工体制を超えていれば、見積もりや打ち合わせに時間をかけても受注につながりません。
また、同じ店舗内装でも、必要な技術や採算は異なります。たとえば百貨店内の化粧品売場では、曲面の造作、ガラス、扉などが組み合わされ、高い仕上げ精度を求められる案件があります。相談企業からも、「コーナーに曲面が多く、グレードが高いので、難しさから敬遠する下請けもいる」という話がありました。
難易度の高い案件が悪いわけではありません。高級ブランドの店舗では、二次請けでも一定の利益を確保できている実績があり、商流を一段上げて一次請けになれれば、さらに収益性を高められる可能性があります。重要なのは、難易度と利益率が釣り合い、自社の技術が価格競争以外の強みになるかです。
さらに、地域内の有力企業は、既存取引先との関係が重なりやすくなります。「候補企業の下には、すでに自社のお客様が二社入っている」「別の会社は、得意先との関係から直接入りにくい」といったケースもありました。
営業先を売上高だけで選ぶと、案件規模、必要品質、採算、既存取引との競合を見落とします。候補数の多さより、受注後まで想定した相性の確認が必要です。
「大手なら仕事がある」という期待と、自社の商流・施工能力を守りたい思いのずれ
大手企業との取引を増やしたい背景には、工事量を安定させたいという意図があります。一社との取引だけに依存せず、店舗内装を継続的に発注する企業との接点を増やせれば、受注の波を抑えやすくなります。
ただ、相談企業が求めていたのは、どのような工事でも大量に受けることではありませんでした。既存の得意分野を生かし、元請け企業と直接つながり、店舗単位の工事を一次請けとして受けられる状態です。
候補に挙がった大手企業についても、「店舗内装の小規模案件なら対応できるが、施設全体の内装は難しい」という判断がありました。これは弱気な見方ではなく、受注後の責任まで考えた現実的な線引きです。
発注側の外注方針も大きく影響します。設計から施工まで自社や固定の協力会社で完結している企業へ営業しても、新規参入の余地は限られます。一方、自社で職人を多く抱えず、地域ごと、施工分野ごとに協力会社を求めている企業であれば、規模が大きくても接点をつくれる可能性があります。
商流上の位置も確認が必要です。同じ内装工事会社でも、施主と直接契約する元請け、元請けから地域工事を受ける一次請け、さらに専門工事を担当する二次請けでは、役割と利益の残り方が異なります。
相談企業の希望は明確でした。
「高級ブランドの店舗を元請けしている会社から、うちが一次請けで受けられる形がいい」
一方、既存取引先の上位企業に直接営業すると、現在の取引関係と競合することがあります。取引を一段上げたいからといって、既存顧客の発注元へそのまま営業すればよいわけではありません。同じ施工分野と商流を持ちながら、既存取引とぶつからない企業を探す必要があります。
営業先選定の本質は、「大手かどうか」ではなく、「自社が望む商流で、対応可能な工事を、利益が残る条件で発注する会社かどうか」です。
施工分野・案件規模・商流・外注方針を先に定め、営業候補を段階的に絞る進め方
最初に行いたいのは、企業名を集めることではなく、自社に合う発注条件を言葉にすることです。候補企業を比較する際は、次の8項目で整理すると判断しやすくなります。
- 施工分野
店舗、百貨店、商業施設、オフィス、住宅、公共施設など、どの分野の案件が中心かを確認します。「内装工事業」という分類だけでは、実際の仕事は判断できません。
- 一案件あたりの規模
施設全体を一括発注するのか、店舗や区画ごとに分けて発注するのかを見ます。大手企業でも、小規模区画を地域の協力会社へ任せているなら対象になり得ます。
- 商流上の位置
施主、元請け、一次請け、二次請けのどこにいる会社かを整理します。自社が元請け直下の一次請けを目指すなら、営業先は施主ではなく、店舗内装を元請けする企業が中心です。
- 協力会社への外注方針
自社施工が中心なのか、協力会社を活用しているのかを確認します。協力会社を使っていても、固定先だけで回している場合と、新しい地域業者を探している場合では参入可能性が異なります。
- 施工地域
移動費、現場管理、職人の手配を考え、無理なく対応できる地域を定めます。東京本社の有力企業であっても、関西に営業所があり、西日本の案件を地域発注しているなら候補になります。
- 必要品質と得意技術の一致
曲面造作、家具、建具、ガラスを含む高精度施工など、求められる品質を確認します。難しい案件でも、自社の経験が生き、発注側が対応業者を探しているなら差別化につながります。
- 利益率の見込み
案件単価の大きさだけでなく、材料費、外注費、移動費、現場管理工数を含めて利益が残るかを見ます。高級ブランド案件のように品質要求は高くても価格へ反映されやすい仕事と、競争入札で価格が下がりやすい仕事は分けて考えます。
- 既存取引との競合
候補企業の下に既存顧客が入っていないか、直接営業によって現在の関係を損なわないかを確認します。取引経路が重なる場合は、別地域や別ブランド、別部門で接点をつくれるかまで見ておくと安全です。
この8項目を先に決めれば、「有名だから営業する」という選び方から、「受注後に利益を出せるから営業する」という選び方へ変えられます。
実務では、候補企業を一度に細かく調べる必要はありません。まず、施工分野・地域・商流で大きく絞ります。次に、案件規模と外注方針を確認し、最後に必要品質、利益率、既存取引との競合を精査します。
今回のように約300社の候補がある場合も、最初からすべてに連絡するのではなく、次の順番で絞り込むのが現実的です。
- 店舗・商業施設の内装を中心とする企業に限定する
- 自社の対応地域に本社または営業拠点がある企業を残す
- 元請けとして協力会社へ施工を外注している企業を優先する
- 一案件の規模が自社の施工体制に合う企業を選ぶ
- 高品質な造作や家具工事が利益につながる企業を上位に置く
- 既存顧客との競合が強い企業を除外する
そのうえで、優先順位を3段階に分けます。
- 優先A:すぐに営業する企業
施工分野、案件規模、地域、商流、外注方針が合い、既存取引とも競合しにくい企業です。
- 優先B:条件を確認してから営業する企業
相性はよいものの、協力会社の募集状況や小規模案件の有無が分からない企業です。最初の接触では、案件獲得を急ぐより、発注体制の確認を目的にします。
- 優先C:将来の候補として管理する企業
取引できれば魅力は大きいものの、現時点では案件規模や品質要求が施工体制を上回る企業です。実績や体制が整った段階で改めて接触します。
営業時には、「内装工事全般に対応できます」と広く伝えるより、自社がどの案件で役立てるかを具体的に伝えます。たとえば、商業施設内の店舗区画、造作家具・建具を含む工事、西日本エリアの現場対応など、発注側が協力会社を探す場面を想定して整理します。
営業先は多いほどよいのではありません。自社のキャパシティに合う企業へ絞り、まず数社との取引を丁寧につくることが、大手開拓を継続させる近道です。
まとめ
大手との取引を増やすとき、売上高や知名度は候補を探す入口にはなりますが、最終的な判断基準にはなりません。
確認したいのは、施工分野、案件規模、商流上の位置、外注方針、地域、必要品質、利益率、既存取引との競合です。これらを見ずに営業先を増やすと、受けられない大型案件や、利益を出しにくい案件への対応が増えてしまいます。
狙うべきは「最も大きな会社」ではなく、「自社が一次請けとして入りやすく、得意な工事で継続的に利益を残せる会社」です。
候補を広く集めた後、受注後の施工まで想像しながら優先順位をつける。その順番で進めれば、大手開拓と自社の施工体制を無理なく両立しやすくなります。
自社に合う元請け候補を整理するところから
営業先を絞ろうとしても、外から分かる売上高や施工実績だけでは、発注の仕方や協力会社の使い方まで判断できないことがあります。「うちの場合はどの層を狙うべきか」「既存顧客と競合しない営業先をどう探すか」という段階から整理しても問題ありません。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大を、施工体制や商流、利益の残り方まで含めて整理し、営業先の選定から実行まで支援しています。無理に営業を進めることはありませんので、まずは自社に合う取引先像を整理する場としてご活用ください。