少人数で店舗・倉庫・マンションを施工し、複数の大手と取引する塗装会社
大手との取引実績があることと、先々の工事量を安定して見通せることは、別の問題です。 首都圏で施工するある塗装会社でも、既存の取引を続けながら、新しい発注元をどう増やすかが課題になっていました。
千葉県を拠点とするこの会社は、社長を含めて6名ほど、年商は7,000万円台の規模です。一般住宅の外壁・屋根塗装を中心としていた時期から、現在はマンション、倉庫、ビル、自動車販売店などの法人向け工事へ軸足を移しています。
取引先には、大手建設会社、店舗工事を発注する看板会社、自社物件を保有・管理する地場の不動産会社、住宅リフォームを扱う会社などがあります。建設会社から一次請けで受ける工事もあり、新築と改修の両方に対応しています。
ただ、複数の取引先があっても、各社から来る工事量は年によって変わります。施工実績が不足しているわけでも、法人との取引が初めてなわけでもありません。すでにある実績を、次の取引先との接点に変える方法が定まっていないことが、相談の出発点でした。
取引先を増やしたくても、狙う相手と接点のつくり方が不明確
必要なのは、単に大手の取引先をもう1社増やすことではなく、自社が伸ばしたい工事を発注する相手を見つけることです。 この会社が増やしたいと考えていたのは、自動車販売店などの店舗塗装と、倉庫・マンション関係の工事でした。
一方で、営業については「どう接点をつくり、関係を築けばよいか」が分からない状態でした。既存の大手建設会社との取引にも、縁をきっかけに始まり、その後も続いているものがあります。これまでの関係が良好であっても、その始まり方を別の会社でそのまま再現できるとは限りません。
また、受注の波があるため、営業活動に大きく費用をかける判断にも慎重さがありました。工事量を増やしたいからこそ営業は必要ですが、先々の受注が読めない中では、まとまった支出を決めにくい事情もあります。
この段階で先に決めたいのは、電話を何件かけるかではありません。どの施工実績を使い、どの発注元に、何を伝えるのかを整理することが、営業方法を選ぶ前提になります。
幅広い施工対応力の中に埋もれていた、店舗の難しい色と仕上げへの強み
「幅広く塗れる」という強みは、発注元が必要とする工事に結びつけて初めて、開拓先を選ぶ手がかりになります。 この会社も、当初は特定の物件を得意とするより、さまざまな塗装に対応できることを強みとして捉えていました。
ところが施工内容をたどると、自動車販売店で求められる難しい色や仕上げへの対応力が見えてきました。これは、店舗塗装の実績を伝えるうえで具体性のある強みです。
ここで大切なのは、その店舗工事を誰から受けているかです。実際の発注元は自動車販売店ではなく、全国展開する看板会社でした。その会社が店舗の看板に関わる工事を受け、その中に塗装が含まれる形です。給油所の塗装にも、同じ経路で受けている工事がありました。
つまり、施工対象が店舗だからといって、営業先も店舗運営会社とは限りません。物件の種類と、塗装工事を発注する会社の業種を分けて見ると、既存実績を活かせる候補が具体化します。
収益面でも、会社の規模だけでは判断できません。この会社では、倉庫工事が利益を残しやすい案件として挙がりました。一方、大手建設会社の工事も、見積もりを適切に行える場合には利益を確保できており、相見積もりの有無が条件を左右していました。
「大手は利益が薄い」「店舗なら条件がよい」と一括りにせず、実際の発注経路と見積もり条件まで見る必要があります。
既存取引から候補を絞り、狙う企業に応じて紹介と電話を使い分ける進め方
開拓は、既存取引の整理、候補リストの適合性確認、接触方法の選択という順番で進めると、判断しやすくなります。 この会社でも、すぐに営業活動を広げるのではなく、まず候補企業を抽出し、社長と合う・合わないを確認する方向が示されました。受注が増えたという結果ではなく、開拓に向けた準備段階の取り組みです。
既存取引を、発注元・物件・商流・収益性で整理する
最初に行いたいのは、現在の取引先を会社名だけで並べず、工事を受けている構造まで整理することです。
- 発注元の業種:建設会社、看板会社、不動産の保有・管理会社など、誰が塗装を発注しているか
- 物件種別:店舗、倉庫、マンション、住宅など、どの工事につながっているか
- 商流:建設会社から一次請けで受けるのか、店舗工事を扱う会社を経由するのか
- 収益性と見積もり条件:利益を残しやすい工事は何か、相見積もりの有無で条件がどう変わるか
この整理によって、「今の取引を維持する先」と「似た会社を新たに探したい先」を分けられます。この会社の場合は、既存の住宅工事などを維持しつつ、店舗塗装と倉庫・マンション工事を伸ばす方向でした。
売上上位の取引先をそのまま開拓先のモデルにするのではなく、今後増やしたい工事と利益の残しやすさを重ねて選ぶことがポイントです。
店舗塗装は看板会社、倉庫・マンションは施工実績に近い元請けから候補化する
候補探しでは、すでに成立している取引構造を手がかりにします。
店舗塗装であれば、看板会社という業種名だけで広く拾うのではなく、看板に関わる店舗工事の中で塗装も発注している会社かどうかを確認します。難しい色や仕上げに対応してきた実績と、相手の扱う工事が結びつくかが判断軸です。
倉庫・マンション関係では、既存の施工実績に近い工事を扱う建設会社や元請けが候補になります。ただし、「マンションに関係する会社」というだけで、建設会社と物件の保有・管理会社を同じ扱いにはできません。どの立場から工事を発注する会社なのかまで確かめます。
候補リストは企業名の一覧ではなく、「なぜ自社に合うと考えたか」を確認するための材料にします。 社長が見て、合う会社と違う会社を分け、その理由をすり合わせることで、次に探す企業の条件も明確になります。
特定の大手を狙う場合と、候補を広く探す場合で接触方法を変える
狙いたい大手企業が具体的に決まっているなら、その企業や業界での経験を持つ人の知見・接点を活用する方法があります。工事部や積算部など、工事の発注に関わる相手との面談機会をつくり、同席してもらう進め方です。
この場合は、経歴の大きさだけでなく、狙う企業の関係部署との接点があり、自社の施工内容を踏まえて話をつなげられるかを確認したいところです。紹介は接点づくりの方法であり、それだけで受注が決まるわけではありません。
一方、店舗塗装を発注する会社など、条件に合う企業を広く探したい場合には、候補リストをもとに電話や問い合わせで接触する方法が選択肢になります。特定企業への接点が必要なのか、まず複数の候補と話す機会が必要なのかで、手段を選びます。
両方を一度に始める必要はありません。営業に割ける時間や費用も踏まえ、候補の適合性を確認してから実行範囲を決める進め方が現実的です。
接触件数だけでなく、面談内容から候補条件を見直す
活動を始めた後も、電話の件数や面談数だけでは、狙う先が合っているかは分かりません。面談で、自社が増やしたい店舗・倉庫・マンション工事につながる相手だったかを確認し、候補条件を見直します。
その際は、施工内容だけでなく、見積もり条件や現場に入るための要件も確認します。この会社でも、大手の工事では資格や建設キャリアアップシステムへの登録など、対応すべき条件があると認識していました。開拓先を選ぶ段階で受けられる条件まで確かめておけば、接点ができてからの判断も進めやすくなります。
接触して終わりではなく、面談で分かったことを次の候補選定に戻すことが、開拓の精度を上げる進め方です。
まとめ
大手と取引があっても受注に波がある場合、次の元請けは「大きい会社かどうか」より、「伸ばしたい工事を、合う条件で発注する会社かどうか」で選びたいところです。
既存取引を業種・物件種別・商流・収益性で分けると、幅広い施工対応力の中から、営業で伝えるべき強みが見えてきます。難しい色や仕上げに対応してきた店舗塗装なら、その工事を発注する看板会社が候補になり、倉庫・マンションの実績は、近い工事を扱う元請けを探す手がかりになります。
そのうえで、特定の大手には業界経験者による接点づくり、候補を広く探す場合には電話・問い合わせというように、目的に合わせて方法を選びます。
取引先を増やしても、天候などによる工事の波までなくせるわけではありません。それでも、受注の選択肢を増やす準備はできます。最初の一手は、営業量を増やすことではなく、既存実績から候補企業を挙げ、合う理由・合わない理由を確かめることです。
自社の施工実績から、次の元請け候補を整理したい方へ
「どこに営業するか」が決まっていない段階でも、今の取引と施工実績の整理から始められます。 店舗塗装を発注する会社を探したいのか、倉庫・マンション工事を扱う元請けとの接点が欲しいのかによって、候補も進め方も変わります。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路開拓についても、既存取引の整理から候補企業の選定、業界経験者との接点づくり、営業活動の実行まで、自社に合う進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は、どの実績をもとに探すべきか」「費用や時間を考えると、何から始められるか」という段階でもご相談いただけます。無理に営業や支援の開始を勧めることはありませんので、次の整理先としてご活用ください。