施工体制は整っていても、施主からの直接依頼はまだ少ない建設会社
業者から仕事をもらう力と、施主から自社名で選ばれる力は、別のものです。 内装工事を軸に建築部門を立ち上げた、ある建設会社にも、その違いが表れていました。
内装には20名弱の施工人員がいて、設計から施工まで一式で対応できる体制も整っています。業者経由の依頼は多く、現場はすでに忙しい状態です。一方、施主から直接依頼される新築工事は、年間で数棟にとどまっていました。
「業者からの依頼はいっぱいある。欲しいのは、家やマンションを建てたい人からの直接の依頼です」
目指しているのは、単純に仕事の量を増やすことではありません。住宅やアパート、マンションを建てたい施主から、自社を指名してもらうことです。その手段として、ホームページの活用とともに、集客力を持つ会社のM&Aも検討していました。
ただし、買いたい会社の具体像までは定まっていません。「自分の会社にメリットがあれば買いたい」という段階です。ここから先は、売りに出ている会社を探す前に、何を得るための買収なのかを揃える必要があります。
「メリットがある会社」だけでは、直接受注につながる買収先を絞れない状態
買収先の条件は、会社の大きさよりも「どんな施主との接点を得たいか」から決めることが出発点です。 売上や人数が増えても、業者経由の受注が増えるだけなら、今回の目的とはずれてしまいます。
この会社が求めているのは、施工を依頼してくれる業者ではありません。住宅を建てたい個人や、投資目的でアパート・マンションを建てたい施主です。優先したい建物の種類も、対応したい施工地域もあります。
つまり、「集客できる会社」という条件だけでも、まだ広すぎます。問い合わせがあるとしても、その内容が自社の増やしたい工事と合っているかを見なければなりません。リフォームの相談と、賃貸住宅の新築相談では、得られる受注基盤が違うからです。
また、自社には専任の営業担当がいません。受注は知り合いからの紹介などが中心で、社内には現場出身者が多い状態でした。不足しているのは施工人員ではなく、施主に知ってもらい、相談を受け、直接受注につなげる側の機能です。 買収で補いたい範囲も、ここに合わせて整理することになります。
施工実績を重ねても、施主に残るのは受注元の会社名という構造
業者経由の現場を増やすだけでは、自社名での問い合わせが増えるとは限りません。 実際に工事を担っていても、施主には受注元の会社の実績として認識されやすいためです。
相談者は、すでに多くの現場を経験していました。それでも、施主の目線では「依頼したのは受注元の会社」という形になり、自社の名前は表に出にくいと感じていました。
「今の仕事も必要です。でも、自分たちの名前を大きくしていきたい」
この言葉に、買収を考える理由があります。欲しいのは工事量だけでなく、施主と直接つながる入口です。施工を担う側から、自社名で相談を受ける側へ、受注の構成を変えたいのです。
ただ、自社で集客する余地がないと確認できているわけでもありません。ホームページは建築部門を立ち上げる前に作ったもので、閲覧状況や問い合わせへの効果は把握できていませんでした。SNSとの連動はあるものの、投稿後に誰がどれほど見ているかも分からない状態です。
自社のWeb集客がまだ十分に検証されていない以上、M&Aが最適かどうかも、現時点では決めきれません。 買収先探しと並んで、今ある入口の状態を確かめることが比較の前提になります。
欲しい施主と不足機能を先に定め、集客企業との補完関係を確認する進め方
まず「誰から、何の工事を、どの地域で直接受けたいか」を言葉にし、その実現に足りない機能を買収条件へ置き換えます。 候補企業の紹介を受けてから目的を考えるのではなく、目的に合う候補を見分けられる状態を先につくる進め方です。
施主の具体像から、買収先に求める条件を絞る
この会社の場合、一般の施主からの新築相談、とくにアパート・マンションの建築相談を増やしたいという方向が見えていました。まずは、次の項目を一枚にまとめるところから始められます。
- 増やしたい顧客は、住宅を建てる個人か、賃貸住宅を建てる施主か
- 優先したい工事は、住宅・アパート・マンションのどれか
- 施工したい地域はどこまでか
- 直接受注を年間でどの程度に増やしたいか
- 足りないのは認知・問い合わせの獲得か、営業対応か、その両方か
これは新しい事業計画を一から作る作業ではありません。すでに持っている希望を、候補企業と照らし合わせられる条件に整える作業です。
人数や規模の希望がまだなくても、ここが決まれば、「施主からの相談は多いが、工事内容が違う会社」と「自社が受けたい新築相談を持つ会社」を分けて考えられます。
問い合わせはあるが施工しきれない会社との相性を見る
対話の中で候補像として挙がったのは、一般の施主から一定の問い合わせがある一方、自社では施工しきれない会社でした。これは買収が決まった事例ではなく、自社との補完関係を考えるための具体像です。
相手に施主との接点があり、自社に設計・施工の体制がある。その組み合わせなら、足りない部分を互いに補える可能性があります。
見るべきなのは「問い合わせが多いか」だけでなく、「その問い合わせを、自社が受けたい工事として引き受けられるか」です。 顧客、工事内容、施工地域を順に照らし合わせます。専任営業がいない自社に対し、相手が集客だけでなく、施主への営業対応まで担っているかも確認したい点です。
また、自社には施工体制があるものの、既存の現場も忙しい状態です。施工力があることと、すぐに追加工事を受けられることは同じではありません。直接受注を増やす目標に合わせて、どの工事をどの程度受けるのかも併せて整理します。
自社のWeb強化と、同じ目的で比較する
M&Aとの比較対象は、「ホームページを作るかどうか」ではなく、自社で施主との接点を育てる方法です。
まず既存サイトの閲覧状況と問い合わせ内容を確認します。そのうえで、一般の施主に向けたページがあるか、住宅や賃貸住宅を建てたい人に対応内容が伝わるかを見直します。既存サイトへのページ追加で対応できるのか、別のサイトが必要なのかも、制作会社に確認できます。
自社の発信を整えることで、欲しい施主に届く余地があるのか。それとも、その施主との接点と営業機能をすでに持つ会社を迎える方が、目的に合うのか。この順で比べれば、手段だけの選択になりません。
Web強化もM&Aも、判断の基準は「自社が望む施主から、直接相談を受ける基盤になるか」です。 買える会社があるから買うのではなく、欲しい受注基盤を持つ会社かどうかを見極めます。
まとめ
施工力のある会社が直接受注を増やすためのM&Aでは、施工量の上積みより、施主との接点を獲得できるかが中心になります。 「自社にメリットがあれば」という考えを、欲しい顧客と不足機能に分けることが第一歩です。
施主からの問い合わせはあるが施工しきれない会社は、候補像の一つになります。ただし、顧客層、工事内容、施工地域、営業対応が自社の目標と合っていることが前提です。
同時に、今のホームページが誰に届き、どんな相談を生んでいるかも確認します。自社で育てられる部分と、買収で補いたい部分が分かれば、候補企業を見る基準もはっきりします。会社を大きくする話から、自社名で選ばれる基盤をつくる話へ。その整理が、次の一手につながります。
直接受注を増やすために、買収で補いたい機能の整理
「集客できる会社を買いたいが、条件までは決まっていない」「自社のWebを見直す方がよいのか、まだ判断できない」。その段階から整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して捉え、実行まで支援しています。直接受注の拡大についても、現在の施工体制と目指す顧客を確認し、M&Aで補う機能と自社で強化する機能を一緒に整理します。
買収を決める前の、目的や条件を言葉にする段階でもご相談いただけます。 無理にサービスの利用をお勧めすることはありませんので、うちの場合は何から考えるべきか、というところからお聞かせください。