前提

主要元請からの発注が半減し、家族中心の管理体制で次の売上の柱を探す小規模建設会社

栃木県でリフォームや原状回復、新築工事を手がける、家族経営に近い小規模な建設会社があります。社員を増やして施工班を抱えるのではなく、代表と家族が営業・積算・現場管理を担い、工事は協力会社へ依頼する体制です。

これまでは、特定の大手元請から受ける原状回復工事が売上の軸でした。しかし、その発注量が以前の半分ほどまで減少。代わりになる安定した取引先をつくるため、地場の不動産会社や管理会社との接点を増やそうとしていました。

ただし、仕事であれば何でもよいわけではありません。

「数十万円の工事を毎月何件かいただけるならありがたい。でも、1万円、2万円の清掃や原状回復を何十件もいただいても、管理が追いつかないんです」

この言葉に、取引先開拓の条件がよく表れています。

必要なのは発注件数の多い会社ではなく、自社の施工管理体制で利益を残せる工事を継続発注する会社です。

課題

不動産会社を広く開拓しても、価格競争と少額見積もりだけが増える状態

地場の不動産会社や管理会社は、原状回復やリフォームの発注元として分かりやすい営業先です。しかし、業種だけでリストを作ると、自社に合わない企業も大量に含まれます。

この会社でも、事務所から一定圏内にある不動産管理会社、仲介会社、賃貸会社などを約60社抽出したところ、多くがすでに名前を知っている会社でした。名刺交換をした会社、過去に工事を受けた会社、現在も一部の工種を受注している会社も含まれていました。

それでも、売上の柱には育っていませんでした。理由は主に三つです。

  • より安い施工業者を常に探しており、価格競争になりやすい
  • 1万〜2万円程度の工事でも相見積もりを求められる
  • 見積もりを何度提出しても、まとまった発注につながらない

管理戸数が多く、地域で有名な不動産会社であっても、必ずしも有望な営業先とは限りません。自社で建設部門を持ち、指定単価で施工する個人事業者へ直接発注している会社もあります。こうした会社に営業しても、単価や発注構造の面で折り合いにくくなります。

「管理物件が多い」「会社規模が大きい」という情報だけでは、利益の残る取引先かどうかは判断できません。

少額案件が増えるほど、現地確認、見積もり、協力会社の手配、工程調整、完了確認、請求といった管理業務も増えます。売上が積み上がっているように見えても、代表や現場管理者の時間まで含めると、十分な利益が残らないことがあります。

背景

業種と売上規模だけで営業先を選び、自社に合う発注構造を見ていないこと

取引先開拓が難しくなる背景には、営業先の探し方が「不動産会社かどうか」で止まっていることがあります。

この会社が求めていたのは、不動産会社全般ではありませんでした。理想に近いのは、次のような発注をする会社です。

  • 数十万円規模の工事を毎月複数件発注する
  • 年に数回、数百万円規模の改修工事を発注する
  • 見積もり金額だけでなく、積算や現場管理まで含めて任せる
  • 自社には営業力がある一方、建築実務を担う体制が不足している

実際、既存取引先のなかにも、見積もり依頼は多いものの、年に数件はまとまった工事につながる会社がありました。新規開拓では、こうした既存取引先を起点に「何が似ている会社なら相性がよいか」を考える必要があります。

また、この会社には、原状回復とは別の強みもありました。積算、現場管理、協力会社の手配まで一括して担えるため、建築部門を持たない不動産会社から工事全体を請け負えることです。

地域には、中古住宅の再販、戸建て賃貸、建売、自社ブランド住宅などを始めたいものの、積算担当者や経験のある現場監督を社内に置けない不動産会社もあります。そうした企業に対しては、細かな原状回復の受注競争に入るのではなく、建築実務をまとめて任せてもらう提案ができます。

開拓先を変える前に、「自社が利益を残しやすい発注のされ方」を定義することが先です。

解決

商圏・単価・発注頻度・見積もり負担・支払い条件で営業先を絞り込む方法

営業先は、業種ではなく取引条件との相性で絞り込みます。小規模な建設会社であれば、少なくとも次の六つの軸で判断すると整理しやすくなります。

  1. 商圏

県内全域ではなく、現地調査や現場管理に無理なく通える市町村まで絞ります。直線距離だけでなく、移動時間や協力会社の対応範囲も確認します。

  1. 工事単価

受けたい最低単価と理想単価を決めます。小口工事も受ける場合は、単独で利益が出るか、まとまった発注の入口になるかを分けて考えます。

  1. 発注頻度

単発の大型工事だけでは売上が安定しません。一方で、小口案件が多すぎても管理負担が増えます。「数十万円を毎月複数件」「数百万円を年に数回」など、望ましい組み合わせを定めます。

  1. 見積もり負担

見積もり件数だけでなく、受注率や見積もり作成時間を見ます。少額工事で毎回相見積もりになる会社は、優先順位を下げる判断も必要です。

  1. 支払い条件

締め日、入金日、立替負担、追加工事の精算方法を確認します。売上が増えても、協力会社への支払いが先行し続ければ、資金繰りを圧迫します。

  1. 施工体制との相性

自社施工を求めるのか、協力会社を使った一括管理を認めるのかを確認します。代表や家族が管理し、施工は協力会社へ流す体制なら、現場数よりも管理密度が重要になります。

候補企業は「受注できそうか」ではなく、「受注後も無理なく利益を残せるか」で評価します。

そのうえで、営業リストは次の順番で整えます。

  • 現在取引がある会社
  • 過去に取引があった会社
  • 名刺交換や面識だけがある会社
  • 自社を知らない新規候補
  • 競合や関係上、連絡しない会社
  • 自社施工部門があり、価格面で合わない会社

地域密着の営業では、接点の重複や競合への誤接触が信用に影響します。リストを作ったら、代表や現場担当者が必ず確認し、「連絡してよい会社」と「営業対象外の会社」を先に分けておくことが大切です。

次に、提案内容を一つに絞りすぎないこともポイントです。この会社の場合、提案は大きく二つに分けられます。

  • 原状回復やリフォームを、一定単価・一定頻度で受ける提案
  • 積算、現場管理、協力会社の手配を含め、建築工事全体を請け負う提案

前者は既存の施工実績を生かしやすく、比較的早く取引を始められます。後者は商談に時間がかかる可能性がある一方、価格だけで比較されにくく、中規模以上の継続取引につながる余地があります。

「何でもできます」ではなく、「御社は営業に集中し、建築実務は当社がまとめて担います」と役割を明確にする方が伝わりやすくなります。

接触後は、電話件数だけを追わず、企業ごとに次の情報を残します。

  • 現在の発注先と困っていること
  • よく発生する工事の内容と金額帯
  • 月間・年間の発注頻度
  • 見積もりを判断する基準
  • 支払い条件
  • 次に連絡する時期と理由

一度断られた会社へ無条件に何度も電話するのではなく、改修計画や新規事業の時期に合わせてフォローします。地場での営業は、短期的な架電数以上に会社の評判が残ります。誰が、どの会社名で、何を提案するのかも事前に揃えておく必要があります。

まとめ

特定の元請への依存から脱却しようとして、不動産会社や管理会社を広く回っても、少額工事と相見積もりばかりが増えることがあります。これは営業量の不足というより、開拓先を選ぶ条件が粗い状態です。

取引先開拓では、商圏、工事単価、発注頻度、見積もり負担、支払い条件、施工体制との相性を先に定めることが重要です。

その条件を基に、既存取引先、過去の接点、競合、営業対象外企業を整理します。さらに、自社と相性のよい既存顧客を起点として、似た発注構造を持つ企業を探します。

狙い目になりやすいのは、単に管理戸数が多い会社ではありません。営業や物件取得には強い一方で、積算・現場管理・施工手配を担う建築体制が不足している会社です。

小規模な会社ほど、営業先の数を増やすことより、「どの発注構造なら継続して利益を残せるか」を明確にすることが、元請依存から抜ける近道になります。

自社に合う取引先像と営業リストを整理したい方へ

「地場の不動産会社には一通り接点がある」「営業先は見つかるが、利益につながる会社を選べない」という場合は、既存取引の棚卸しから始めると整理しやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、取引先候補の選定、営業リストの作成、提案内容の設計、接触後のフォローまで実行を支援しています。

「うちの場合は、どのような会社を狙うべきか」「何から整理すればよいか分からない」という段階でも構いません。無理に営業を進めることはありませんので、現在の取引構造や受けたい工事の条件から一緒に整理できます。

お問い合わせはこちら