前提

社員が十数名に増えても、仕事の約9割が常用の応援という現在地

職人の人数が増えることと、自社で請負工事を回せることは、別の段階にある課題です。 千葉県を含む関東圏と九州で活動する、社員17名ほどの電気工事会社でも、この違いが請負を増やすうえでの壁になっていました。

社員の大半は現場に出る職人で、事務担当は1名です。仕事の約9割は、複数の取引先から依頼される常用の応援でした。学校、病院、データセンターなど、住宅以外の幅広い現場に入っています。

一方、自社で請け負う工事は全体の約1割です。主に工場の生産設備に関わる電気工事で、制御盤や分電盤に関わる配線、設備の撤去・新設に伴う工事、制御盤内の改造などを手がけています。工期は数日から1週間ほどが中心です。

目指しているのは、応援を続けるだけでなく、自社で工事を任される割合を少しずつ増やすことです。ただし、社長が先に挙げたのは売上目標ではありませんでした。「売上の金額というより、まずは余裕ができる体制に整えないといけない」という考えでした。

請負を増やしたい気持ちはあるものの、今の社員構成でどこまで引き受けられるか。この見極めが、次の一手を考える出発点になります。

課題

請負を増やす際の制約は、職人数よりも現場を任せられる人の不在

この会社で先に整える必要があるのは、受注量ではなく、社長以外にも現場を任せられる体制です。 社員には経験1〜2年の若手が多く、職長として現場を任せられる人はまだいません。施工管理を担っているのも、社長だけでした。

社長自身が九州の現場に常駐し、打ち合わせや現場対応を行う一方、関東の社員は主に応援工事に入っています。請負案件が増えても、打ち合わせや管理対応をそのまま社長が引き受けるのであれば、対応できる現場数には限りがあります。

ここで分けて考えたいのが、「作業に入れる人数」と「工事を任せられる人数」です。現場に職人を配置できても、誰がその現場をまとめ、誰が管理を担うのかが決まらなければ、自社で請け負う体制にはなりません。

職長として現場をまとめる役割と、施工管理を担う役割も、同じものとして扱わないほうが整理しやすくなります。候補者にどちらを、どこまで任せられるかを分けて確認することで、社長に残る対応も明確になります。

請負を増やせない理由を単に「仕事が取れない」と捉えると、取引先の開拓が先に進みます。しかし、この会社では、仕事を増やす前に、その仕事を誰が回すのかを決めることが優先課題でした。

背景

若手の増員が先行し、社長の工場経験を社員へ移す途中の体制

応援中心の働き方は、請負への意欲が弱いからではなく、若手の経験と管理体制に合わせた現在の選択です。 社長も、体制が整っていないために応援の現場を続けざるを得ないと捉えていました。

採用を通じて社員は増えましたが、その多くは経験1〜2年です。人数として施工の土台ができても、現場を任せられる人が育つまでには、さらに経験を積む必要があります。そこで社長は、これ以上の増員よりも、今いる社員の教育に力を入れたいと考えていました。数年かけて、現場を任せられる人を複数名育てる構想です。

もう一つの背景は、請負工事で活かせる経験が、まだ社長個人に偏っていることです。工場の生産設備や電気制御に関わる工事を優先したい理由も、単に市場として魅力があるからではなく、社長自身が最も経験を持ち、仕事の勝手を知っている領域だからでした。

ただし、同じ生産工場でも、設備や依頼される工事内容は異なります。社長自身も、工場によって仕事内容がかなり違うと話しています。「工場の電気工事ができる」という大きなくくりだけでは、社員に任せられる範囲までは判断できません。

社長が経験してきた工事と、社員だけでも対応できる工事の間にある差を埋めることが、請負拡大の準備になります。 応援をすぐに減らすのではなく、現在の仕事を続けながら、その差を少しずつ縮めていく考え方が現状に合っています。

解決

既存社員の育成を先に置き、管理できる範囲で請負を増やす進め方

取り組む順番は、既存社員の育成と職長候補の確保を軸に、対応できる請負案件を選ぶことです。 請負の割合だけを先に目標化するのではなく、人に任せられる範囲が広がった分だけ、受ける工事を広げていきます。

まずは、現在手がけている請負工事をもとに、自社の対応範囲を整理します。この会社であれば、工場の配線、設備の撤去・新設に伴う工事、制御盤内の改造などが確認の起点になります。ただし、社長ができることを、そのまま会社全体のできることにはしないのがポイントです。

案件を引き受ける際には、次の四つをセットで確認すると、受注と体制を結びつけやすくなります。

  • 工事内容: 自社に経験があり、担当する社員も対応できる内容か
  • 規模: 現在の社員構成で施工でき、社長だけに対応が集中しない範囲か
  • 工期: 数日から1週間ほどの既存案件と比べて、無理なく対応できる期間か
  • 担当者: 現場をまとめる人と施工管理を担う人を、それぞれ決められるか

四つのうち、作業する人数だけがそろっていても、管理担当者が決まらなければ、今すぐ広げられる案件とはいえません。反対に、社長が管理を担いながら候補者に現場を任せられる案件であれば、請負の実績と育成をつなぐ機会として検討できます。

次に、職長候補の育成は「いずれ一つの現場を任せる」という目標だけでなく、現在の請負工事でどこまで任せられるかに落とし込みます。候補者ごとに、対応できる工事内容、現場をまとめられる範囲、社長の判断が必要な部分を整理し、その範囲に合う経験を積んでもらいます。

ここで大切なのは、任せる範囲を広げることと、社長の管理が不要になることを同時に進めようとしないことです。最初は社長の対応が残っていても、社員が担える範囲を確認できれば、次に何を教え、どの経験を積んでもらうかが具体的になります。

また、案件を選ぶ際には、社長が対応しやすい地域かどうかも判断材料になります。関東と九州の両方に社員がいても、管理を担える人が社長だけであれば、両地域の請負を同時に広げられるとは限りません。社長が動きやすい場所で実績をつくり、その現場を社員へ任せていく考え方は、地域を広げる際にも役立ちます。

取引の形についても、工場からの直接受注だけに絞る必要はありません。直接受注を将来の理想としつつ、工場の工事を受けている会社から、自社で対応できる範囲を任せてもらう進め方もあります。発注元との距離よりも、工事内容と管理体制が自社に合っているかを優先することが、段階的な請負拡大につながります。

応援は当面の仕事として続けながら、対応可能な請負を積み重ねます。その都度、社員に任せられる範囲と社長に残る対応を確認し、次の案件の判断に反映する。この進め方なら、受注だけが先行することを避けながら、体制を育てていけます。

まとめ

応援中心から請負中心へ近づくための第一歩は、仕事を増やすことではなく、今いる社員に任せられる現場を増やすことです。 若手が多く、施工管理を社長だけが担っている会社では、増員や受注拡大よりも、既存社員の育成と職長候補の確保を先に考える意味があります。

そのうえで、工事内容・規模・工期・管理担当者を確認し、自社で回せる範囲の請負を選びます。社長の得意な工事から始めても、その経験が社員へ移っているかは別に確かめる必要があります。

応援を一度にやめる必要はありません。応援を続けながら育成を進め、任せられる範囲に合わせて請負を増やすことが、現状から無理なく進めるための道筋です。

請負を増やす前に、自社で任せられる範囲の整理

「請負を増やしたいが、今の社員構成でどこまで受けられるかわからない」という段階では、取引先探しだけでなく、施工体制と育成の順番を一緒に整理することが役立ちます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して捉え、取り組む順番の整理から実行まで支援しています。請負拡大に向けても、まずは現在の工事内容、社員の経験、社長に集中している役割を確認するところからお話を伺います。

「うちの場合は、育成と案件開拓のどちらから考えるべきか」という整理前の段階でもご相談いただけます。 ご状況に合わない支援を無理におすすめすることはありませんので、次の一手を考える場として、お気軽にご相談ください。

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