数名の現場運営をベテランの差配が支える建設会社の若返り
少人数で現場を回せている会社ほど、採用では人数だけでなく、ベテランの役割をどう引き継ぐかが大切になります。
東海地方のある建設会社では、数名の担当者が現場運営を支えています。残っているベテランの差配がよく、周囲からも、その人数でよく対応できると見られているそうです。
一方で、教える側は定年が近い世代です。今の体制が機能しているうちに、次の人材を迎えたい。経営者には、そんな考えがありました。
「すぐには、やっぱり仕事のできる人が欲しい。でも、順番に若返っていかないと」
高校への訪問も検討しています。ただ、若い人を採れば、それで世代交代が進むとは考えていません。直近で必要な戦力と、これから育てる人材。その両方をどう迎えるかが、相談の中心でした。
高卒者の定着と未経験者への指導を見通せない受け入れ体制
若手採用へのためらいは、応募が来るかどうかだけでなく、入社後に育てられるか、働き続けてもらえるかにありました。
高卒採用について、経営者はこう話しています。
「親よりも上の年代ばかりで、同世代がいない。来ても定着するかなと思う」
同年代の仲間がいない職場へ、高校を卒業したばかりの人を迎える。その年齢差を気にしていました。複数人を一緒に採る案も出ましたが、仲間同士で退職の判断が重なる可能性も気になっています。人数をそろえれば安心、とは言い切れません。
未経験の中途採用にも、同じように受け入れ側の懸念があります。若い人なら長く働き、技術を身につけてもらえる余地はあります。ただし、教えるのは定年が近いベテランです。
「未経験の人に、上手に教えられるんだろうか」
現場を任せられる力と、初めて仕事に触れる人へ教える力は、分けて考える必要があります。採りたい人の条件だけでなく、誰が、どこまで、時間をかけて教えられるかが決まらないと、採用方針も絞りにくいのです。
少人数運営の強みを生むベテランの経験と人間関係
引き継ぐ対象は施工の技術だけではなく、現場を動かす差配や、長年の人間関係にも及んでいました。
この会社では、ベテランが残り、その働きによって効率のよい現場運営ができています。経営者も、その力を評価しています。
ただし、同じやり方を次の世代にそのまま求めることには慎重です。
「やれと言っても、多分やれない。職員との付き合い方とか、そういうものがあってできるわけだから」
経験を積んだ人の差配には、相手を知っているから通じる部分があります。仕事の手順を覚えることと、周囲との関係を築くことは、同じ速さでは進みません。
そのため、経験者であっても、入社直後から既存のベテランと同じ少人数運営を担えるとは限りません。未経験者なら、技術を学ぶ時間も必要です。
現在の生産性をそのまま入社時の基準にせず、すぐに任せる仕事と、時間をかけて引き継ぐ役割を分けることが、若返りの出発点になります。
経験者の確保を先行しながら進める若手採用の受け入れ準備
直近の戦力確保と、若手を育てる準備は、優先順位を分けて並行して進めるのが現実的です。
この会社で考えられていたのは、まず一人で仕事を担える経験者を迎え、その先で若手を下につけられる体制をつくる順番でした。高校との接点づくりを止めるのではありません。すぐに現場を支える採用と、将来に向けた採用準備を区別する考え方です。
採用対象は、必要な戦力・指導者・育成時間から決める
最初に整理したいのは、次の三つです。
- 直近の戦力: 今、採用する人に一人で任せたい仕事はどこまでか
- 指導を担う人材: 現在のベテランが教えられる範囲と、次の指導層に任せたい範囲は何か
- 育成に使える時間: ベテランが教えられる期間と、現場を回しながら指導に充てられる時間はどの程度か
一人で仕事を担う人がすぐに必要で、未経験者を教える余力が限られるなら、経験者の中途採用を先に進める理由があります。一方、教える人と時間を確保できるなら、若手・未経験者も採用対象として考えやすくなります。
年齢を下げることだけを目標にせず、現場を支えながら次の世代につなげられるかで判断することが大切です。
経験者採用では、次の指導層になれるかも確認する
この会社では、一人で仕事ができ、将来は若手をつけられる経験者を迎えたいという意向がありました。
経験者採用の目的を「目の前の欠員を埋めること」と「次の指導層を確保すること」の二つに分けると、求める人物像が明確になります。
採用時には、本人がどこまで仕事を担えるかに加え、人に教えた経験や、若手育成を担う意向も確認したいところです。仕事ができるという理由だけで、入社後すぐに教育まで任せる前提にはしないことです。
経験者の採用は簡単ではありません。そのため、確保できるまで若手採用の準備をすべて止めるのではなく、受け入れ側で進められることを並行して整えます。
高校との接点づくりと、入社後の準備を分けて進める
高校採用は、まず近隣の学校を訪問し、就職担当の先生に会社を知ってもらうところから始められます。会社案内の準備も、その一つです。
ただし、学校への訪問を始めることと、入社後に育てられる状態にすることは別です。先生に会社を知ってもらう活動と、社内の指導体制づくりを、両方進める必要があります。
同世代がいないという事情も含め、誰が教えるのか、どの仕事から覚えてもらうのかを整理します。若手を何人採るかは、その受け入れ可能な範囲と合わせて考えたいところです。
ベテランから引き継ぐ業務を分け、動画マニュアルも活用する
受け入れ準備では、ベテランの仕事を一括りにせず、手順として伝えられる部分と、人との関わりの中で身につける部分に分けます。
手順を共有できる業務には、動画マニュアルも選択肢になります。この会社への支援の方向性としても、新しく入る人の受け入れに向けた動画マニュアルの整備が挙がっていました。
一方、差配や人間関係まで動画だけで引き継ぐことはできません。動画で伝えられることは共有し、人と関わりながら覚えることには時間を見込む。その切り分けが、ベテラン任せにしない育成につながります。
まとめ
ベテラン中心の建設会社の若返りは、若い人を採ることだけでなく、次の指導層と受け入れ体制をつくる取り組みです。
直近の現場を支える人が必要なら、経験者の中途採用を優先する。その際は、将来の指導役になれるかも確認します。並行して、高校との接点づくりや、引き継ぐ業務の整理を進めます。
少人数で現場を回してきたベテランの力は、会社の大切な強みです。その完成形を若手にすぐ求めるのではなく、何を先に渡し、何に時間をかけるかを決める。そこから、無理のない採用と技術継承の順番が見えてきます。
自社に合う若返りの順番を整理するために
「経験者を先に採るべきか」「今の体制で若手を育てられるか」が決まっていない段階から、整理を始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。若返りに向けても、採用する人の条件だけでなく、現場の役割分担や指導体制、動画マニュアルなどの受け入れ準備まで、一緒に考えます。
うちの場合は何から進めるべきか。その段階でもご相談いただけます。無理にサービスの利用をおすすめすることはありませんので、現状を整理する機会として、お気軽にお声がけください。