約7年での交代を見据えた、建設業未経験の後継者への引き継ぎ
後継者を一人前の現場担当者に育てることと、経営を引き継げる状態にすることは、分けて考える必要があります。 ある建設会社では、約7年を目安に経営交代を考えていました。最初の2年前後で仕事の関係をある程度覚え、その後の数年で交代につなげる構想です。
後継者は30代半ば。銀行を訪問し、企業への支援につなげる仕事などを経験してきました。一方、建設業には関わっていませんでした。
現経営者は、後継者に現場を一つ任せて育てる方法を考えていません。その理由は明確です。
「現場を持ってやっていたら、それだけで3年、4年かかってしまう。本人には時間があるけど、こっちには時間がない」
これは、現場を知らなくてもよいという話ではありません。限られた承継期間の中で、どこまで現場を学び、どの役割を担うのかを絞る必要がある、という相談です。
現場を一人で任せられるまで待てない後継者育成
承継の準備を「まずは現場で一人前になってから」とすると、経営を学ぶ時間が後ろにずれてしまいます。 この会社でも、現場担当者としての独り立ちを目指せば、承継までの期間の相当部分を使う見込みでした。
一方で、経営側の仕事だけを覚え、社内で過ごすだけでも十分ではありません。どんな仕事をしている会社なのか。社員がどのように動いているのか。現場を回ったときに何を見ればよいのか。そうした理解は、これから社員と話し、会社を引き継ぐうえで欠かせません。
必要なのは、現場経験の有無を二択で捉えないことです。現場を一人で担当するところまでは求めなくても、現場を見て、社員の説明を聞き、仕事を理解する機会はつくれます。
「現場を任せるための育成」ではなく、「経営を引き継ぐための現場理解」に目標を置き直すことが、時間の制約に合った進め方になります。
ベテランの差配と人間関係で成り立つ現場への理解
この会社で引き継ぐ必要があったのは、仕事内容だけでなく、ベテランと社員の関係で支えられている現場の動き方でした。 現経営者は、少人数でも仕事が回っている理由を、残っているベテランの差配のよさにあると捉えていました。
ただし、そのやり方を若い人にそのまま任せても、同じようにはできないとも話しています。長年の社員との付き合いがあってこそ成立している部分があるためです。
後継者についても、仕事への意欲はあるものの、何をすればよいかが十分に見えていない様子が語られていました。現経営者は、自分で仕事を見つけて動いてほしいと考えています。しかし、業界未経験であれば、動き出すための足場も必要です。
加えて、過去の承継がうまく進まなかった経験もあり、社内外が次の引き継ぎをどう見るかを気にかけていました。
だからこそ、肩書きを先に渡すだけではなく、社員と接する機会を重ねることに意味があります。現場に出ることは、仕事を覚える時間であると同時に、後継者自身を社員に知ってもらう時間でもあります。
承継期限から役割を絞り、パトロール同行から自らの現場訪問へ
承継期限から学ぶ範囲を決め、現場パトロールで見るべき点を覚えた後、自ら現場を回る流れが軸になります。 一つの現場を担当し続けなくても、業務理解と社員との関係づくりは並行して進められます。
交代時期を起点に、現場で担う役割をそろえる
最初に、現経営者と後継者の間で「現場を持つところまでは求めない」という方針を共有します。そのうえで、最初の数年で何を理解してほしいのかをすり合わせます。
この会社の構想なら、まず仕事の関係を覚える期間があり、その後に経営交代へ向かう期間があります。前半の到達点を、単に「現場に慣れる」としてしまわないことが大切です。
整理する軸は、次の3つです。
- 自分で現場を担当するために必要な経験なのか
- 経営を引き継ぐうえで理解しておく必要がある内容なのか
- 社員との関係を築くために、自分が動くべきことなのか
学ぶ内容を選ぶ基準は、現場経験をどれだけ積んだかではなく、交代までに担う役割につながるかどうかです。 現場担当者としての独り立ちを目標にしない分、現場理解まで省かないようにします。
パトロール同行で「どう見るか」を覚える
後継者は、すでに現場パトロールに参加していました。現経営者が期待していたのは、同行を続けること自体ではありません。
「どうやってパトロールして、どこを見るかを覚えたら、自分で現場に行けばいい。そこで社員と話しながら、顔を覚えてもらう」
この順序なら、未経験者に最初から一人で現場を理解するよう求めずに済みます。まずは同行し、担当者が何を見ているのか、何を確認しているのかを学びます。
見るべき点をまだつかめていないなら、同行を通じた理解を優先します。見方が分かってきたら、自ら現場を訪ねる段階へ進みます。同行の回数だけで区切るのではなく、現場で何を見ればよいかを理解できたかが、次へ進む判断軸です。
自ら現場を回り、社員と言葉を交わす
自分で現場を訪ねる段階では、業務理解と関係づくりを切り離さないことが大切です。社員と話す中で仕事を知り、顔を覚えてもらう。その積み重ねが、引き継ぎの土台になります。
最初から現場を知り尽くしたように振る舞う必要はありません。社員の話を聞き、「いつもありがとうございます」と言葉を交わすことも、現場に出る意味の一つです。
社内にこもっていると、本人にそのつもりがなくても、現場との距離があるように受け取られることがあります。現場を任せない方針と、現場に足を運ばないことは別です。 経営側を担うからこそ、自分から社員と接する機会をつくっていきます。
まとめ
建設業未経験の後継者への承継では、現場担当者として一人前になることを、経営交代の前提にしない整理が必要です。 現経営者が退く時期から逆算し、後継者が担う役割と、そこに必要な現場理解をそろえます。
その入口になるのが、現場パトロールへの同行です。見るべき点を覚え、その後は自ら現場を回る。社員と話し、仕事を知り、自分の顔も覚えてもらいます。
「仕事を覚えてから信頼をつくる」のではなく、現場理解と信頼形成を同時に進めることが、限られた承継期間を活かす道筋です。 まずは、後継者に現場で何ができるようになってほしいのかを、現経営者と本人で確認するところから始められます。
後継者に任せる役割と、現場で学ぶ範囲の整理
「いつ交代するか」は決まっていても、「それまでに何を任せるか」が曖昧な段階から整理できます。 自社の場合は現場をどこまで経験してもらうべきか、パトロール同行をどう引き継ぎにつなげるか。現経営者と後継者だけでは、すり合わせにくいこともあります。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援する会社です。事業承継でも、現場の実情を踏まえながら、後継者の役割や準備の進め方を一緒に考えます。
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