既存の改修工事で利益は出ていても、新しい現場を任せる社員は育成途中
仕事が足りないわけではなく、新しい仕事を任せられる社員が育つのを待ちたい。 ある設備工事会社が、新規開拓に踏み切れない理由はここにありました。
主な取引先から受ける改修工事では、しっかり利益が出ています。取引先を広げたい気持ちはあるものの、目の前の仕事で手いっぱいです。社長自身も動いており、すぐに新しい取り組みへ時間を割ける状況ではありませんでした。
候補に挙がっていたのは、LED化の改修工事や、その先のセキュリティ関連工事です。工事によって対応のしやすさは異なり、すべてを同じタイミングで始める考えではありません。
「体制がうまく整うか、整わないかというところもあります」
この言葉の意味を確かめると、必要なのは人数がそろうことではありませんでした。集まった社員が、一人前になることです。ここを出発点にすると、新規開拓の進め方も変わってきます。
社員が育つまで待ちたい一方で、育つためには担当できる現場が必要
育成が終わってから現場を増やす、という順番だけでは、社員が経験を積む機会も広がりにくくなります。 新しい仕事を受けるには戦力が必要です。一方、その戦力を育てるには実際の現場経験が欠かせません。
相談の中では、一人で対応する想定の現場に二人で入り、先輩の横で仕事を見る方法が挙がりました。その先には、自分で現場を担当する段階があります。
同行を続けている間は、先輩と本人が一つの現場に入ります。社員数が増えても、それだけで別の現場を受けられるわけではありません。かといって、経験が十分でないまま一人で任せることも避けたいところです。
整理したいのは、「育ったか、まだ育っていないか」の二択ではありません。どの工事なら単独で担当でき、どの工事なら先輩と二人で入る必要があるかです。この違いが見えると、育成の次の段階と、受けられる案件の範囲を一緒に考えられます。
「現状困っていない」ことと「一人前の基準」が受注時期を決めにくくする事情
既存の仕事が安定しているからこそ、新規開拓を急ぐ理由より、無理なく受けられる条件を明らかにすることが先でした。
社長からは、「現状困っていないというところが一番なんです」という言葉もありました。取引先を広げる意義は理解していても、今すぐ仕事を増やす必要は感じていません。現在の忙しさを考えれば、開始時期を決めきれないのも自然です。
もう一つの背景は、「体制が整う」という言葉に、育成の到達点が含まれていたことです。人数の確保であれば、在籍人数で確認できます。しかし、一人前かどうかは、担当する工事によって変わります。
LED化の改修工事なら比較的対応しやすいという見立てがある一方、別の工事は体制を整えてから取り組みたいという意向がありました。つまり、この会社にも、すでに工事ごとの対応範囲の違いがありました。
また、新しい取引先では、担当者への挨拶や登録準備が必要になる場合があります。受注したい日に動き始めても、すぐ現場につながるとは限りません。ただし、登録などにかかる期間は取引先によって異なり、確認が必要です。
社員が担当できるようになる時期と、取引先側の準備が整う時期は、別々に見ておく必要があります。 両方を「体制が整ってから」の一言でまとめると、何を待っているのかが見えにくくなります。
同行から単独担当への段階に合わせ、開拓準備と受注を分ける進め方
社員の育成と新規開拓は並行して考え、実際に受ける現場は習熟度と指導できる余力に合わせて選ぶ。 この進め方なら、育成が終わるまで何もしないか、先に仕事を増やすかの二択にせずに済みます。
まず、「一人前」を工事ごとの担当範囲に置き換えます。
社員ごとに、今の状態を次の三段階で整理するところから始めます。
- 先輩に同行し、横で仕事を見ながら経験を積む段階
- 二人で現場に入り、先輩と一緒に対応する段階
- 対応できる難易度の現場を、単独で担当する段階
大切なのは、段階を急いで上げることではありません。「この工事はまだ二人で入る」「こちらの工事なら単独で任せられる」と、案件と結びつけることです。会社全体で一律に戦力化を待つより、次に任せる範囲を決めやすくなります。
次に、社員が経験を積めるかと、先輩が指導に入れるかをセットで見ます。
育成につながりそうな案件でも、既存工事で先輩の手が埋まっていれば、二人で入ることは難しくなります。案件の難易度だけでなく、誰が一緒に対応できるかまで含めて、受けられるかを判断します。
相談にあったLED化の改修工事も、「対応しやすそうだから増やす」で止めず、今の社員にどこまで任せられるかを確かめたいところです。単独担当につなげやすいのか、まずは二人で経験を積む必要があるのか。その見立てによって、受け方は変わります。
指導する余力がなければ、受注を待つ判断もあります。逆に、対応できる工事が見えてきたなら、全員が一人前になるまで待つ必要はありません。
新規開拓は、取引の準備と実際の受注を分けて進めます。
新しい取引先への挨拶、担当者との接点づくり、登録に必要な会社資料の準備は、現場を引き受けることとは別です。社長が動ける時期を見ながら、受注前に必要な準備だけを進める選択肢があります。
その際は、自社が今対応できる工事と、社員の育成後に対応したい工事を分けて伝えます。取引先側に必要な手続きと期間も確認します。登録が済んだことと、仕事が発生することは同じではないため、準備だけで現場確保が完了したとは考えないことも大切です。
進める順番は、社員の担当範囲を整理する、指導できる余力を見る、その条件に合う案件の開拓準備を進める、受注時点でもう一度体制を確かめる、です。育成状況に合わせて現場を増やせば、新しい仕事を経験の場として活かしやすくなります。
まとめ
待つべきなのは、社員全員が一人前になる日ではなく、その案件を無理なく担当できる条件がそろう時点です。
今回の会社では、既存工事で利益が出ており、新しい仕事を急いで受ける必要はありませんでした。一方で、社員を一人前にするには、先輩との同行や二人での対応から、単独担当へ進む経験が必要です。
まずは、社員ごとに担当できる工事を整理します。そのうえで、先輩が指導に入れる余力と照らし合わせます。新規開拓の準備は受注と分け、現場を引き受ける判断は、その時点の習熟度に合わせます。
育成と現場確保を別々に考えるのではなく、次に任せたい仕事を間に置いてつなぐ。それが、今の仕事を大切にしながら、新しい現場へ進むための整理になります。
社員に任せられる工事から、次の現場を考えるために
「何人いるか」ではなく、「誰に、どの工事を任せられるか」から整理すると、育成と新規開拓の進め方が見えてきます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。育成と案件獲得についても、社員の習熟度や指導できる体制を踏まえ、開拓先や動き始める時期を一緒に考えます。
「うちの場合は、どの仕事から任せればよいか」「開拓準備だけ進めてもよいか」という段階でもご相談いただけます。無理に支援の利用をお勧めすることはありませんので、次の一手を整理する場としてお声がけください。