自社重機で解体から運搬まで担う、売上の約半分が主要取引先の会社
既存先の仕事を大切にしながら、もう一つ継続して受注できる先を育てたい。ところが、既存先からの発注が今後どれだけ増えるか読めず、新規開拓に振り向けられる施工余力を決めにくい状況です。
相談を寄せたのは、首都圏で解体工事を手がける年商2億円台半ばの会社です。自社で重機を持ち、解体から運搬まで一貫して対応しています。住宅会社から戸建ての解体を任されるほか、別の取引先からビル系の現場も受けています。
売上の約半分を占めるのが、主要取引先である住宅会社です。戸建ての解体は月に数棟ほどありますが、発注には波があり、以前は半年ほど仕事が落ち込んだ時期がありました。
その間は、同業の解体会社から仕事を受けて稼働をつないでいました。ただ、経営者が気にしていたのは、仕事の有無だけではありません。
「仲間から仕事を受けても、住宅会社から一次受けで受けるのと違って、ほとんど利益が残らないんです」
一方、主要取引先からは、今後の増注を見込んで施工体制を整えてほしいとも言われています。発注減への備えは必要でも、新規先の仕事を大きく引き受ける約束はしにくい。その両方を踏まえて、第二の受注先の育て方を考える必要があります。
同業者の仕事で稼働をつないでも解消しない、一社の発注に左右される利益
課題は、空いた日程を埋めることだけではなく、主要取引先の発注が減ったときにも利益を確保できる受注先が十分に育っていないことです。
同業者とのつながりで仕事を受けられることは、施工を止めずに済む大切な支えです。この会社も、そのつながりを生かして半年ほどの発注減を乗り切っていました。
ただ、経営者の言葉からは、「仕事がある状態」と「利益が残る状態」が同じではなかったことが分かります。主要取引先からの仕事が減り、その分を利益の薄い仕事で補うのであれば、現場を動かしていても収益面の苦しさは残ります。
ここで分けて考えたいのは、目の前の稼働確保と、継続的な受注基盤づくりです。前者は空きを補うための対応であり、後者は一社の発注量に業績を左右されにくくするための取り組みです。どちらも必要ですが、同じ役割ではありません。
第二の受注先に求めたいのは、単に仕事を出してくれることではなく、利益の残る条件で取引を続けられることです。
そのため、取引先の数だけを増やしても、今回の悩みが解消するとは限りません。売上が増えても利益がほとんど残らない受注が中心なら、施工余力を使っている割に経営の安定にはつながりにくいためです。
増注の予告と受注量の不透明さが重なる、新規開拓への迷い
新規開拓に踏み切りにくい背景には、主要取引先から仕事が増える見込みはあるものの、実際の発注量と時期までは分からない事情があります。
主要取引先では、付き合いのある部署の営業・工事体制が拡充される予定でした。それに伴い、経営者は「仕事がかなり増えるので、それに対応できる施工体制をつくってほしい」と伝えられています。
増注は歓迎したい話です。ただ、取引先の体制拡充と、自社への発注がいつ、どれだけ増えるかは別の話でもあります。
「本当にどれぐらい仕事が増えるかは、なってみないと分からない」
「手いっぱいになったときに、新しい取引先の仕事を受けきれるのか」
この迷いは、営業に消極的だからではありません。既存先への対応を守りながら、新しい約束も果たそうとすると、受け入れられる仕事量を簡単には決められないのです。
また、新規の接点づくりにも壁がありました。経営者自身が複数の住宅会社を回ったものの、「決まった業者がいる」と断られることが多かったといいます。
一方で、不動産会社との直接の接点はすでにあり、少数ながら施工した実績もありました。ただし、ほかの見積もりは「金額が合わなくて流れている」状態でした。これは、接点をつくるだけでなく、条件が合う案件を継続して受けられるかまで確かめる必要があることを示しています。
増注を待つだけでも、見積もり依頼を増やすだけでもなく、施工余力と採算が合う範囲で取引を育てることが、この会社に合う進め方です。
取引先別の採算と施工余力を見ながら、まず1〜2現場から育てる第二の受注先
最初から既存先と同じ規模の受注を目指すのではなく、取引先別の受注量・利益・施工負荷を整理し、受け入れられる少数の現場から取引を積み上げる方法が考えられます。
経営者自身も、新規先から受ける仕事については「最初は1棟、2棟という感じになると思う」と話していました。この感覚を出発点にすれば、既存先の増注に備えることと、新たな取引を始めることを両立させやすくなります。
まず、売上だけでなく利益と施工負荷を並べる
最初に確認したいのは、どの取引先の仕事が、どれだけの利益を残し、どれだけ施工能力を使っているかです。
整理する項目は、次の三つに絞れます。
- 受注量: 取引先ごとの現場数と、発注が多い時期・少ない時期
- 利益: 売上に対して残る利益と、同業者経由・直接受注による違い
- 施工負荷: それぞれの現場に必要な人員・重機と、施工期間
今回のように戸建てとビル系の現場がある場合、同じ「1現場」でも必要な施工余力は異なります。現場数だけで受け入れ可否を考えると、実際に必要な人員や重機とのずれが出やすいため、利益と負荷を一緒に見ることが大切です。
また、相談時の説明ではビル系の現場の採算がよいとされていた一方、経営者が話した住宅とマンションの利益率には大きな違いがありませんでした。こうした場合も、工事の種類だけで優先順位を決めず、実際の案件ごとに確認したいところです。
増注の見込みと、具体化している仕事を分ける
主要取引先からの増注予告は、今後を考えるうえで重要な情報です。ただし、増える量が分からない段階で、施工能力をすべてその見込みに充てるかどうかは分けて判断できます。
既存先との間で、今後どの程度の現場が、いつ頃から出てきそうかを確認しつつ、まだ分からない部分は分からないまま区別します。そのうえで、新規先に対して、いつ、どの規模の現場なら受けられるかを検討します。
新規受注の目標件数を先に決めるより、既存先への対応を守ったうえで受けられる範囲を確かめる順番が現実的です。
主要取引先からの発注が実際に増えれば、新規先の受注拡大は慎重に進める。反対に、増注が想定ほどでなければ、新規先への対応余力を広げる。このように、実際の発注動向に合わせて次の受注量を考えます。
接点のある先も含め、採算の合う少数の現場から始める
第二の受注先は、まったく取引のない会社だけとは限りません。この会社の場合、すでに直接見積もりを出し、施工もしたことのある不動産会社がありました。
こうした先については、依頼件数を増やす前に、なぜ金額が合わなかったのか、どの規模・内容の工事なら条件が合うのかを確認することが次の整理になります。件数が増えても価格が合わないのであれば、受注の柱には育ちにくいためです。
新しい先との取引では、少数の現場から仕事ぶりを見てもらい、次につなげる進め方も候補になります。相談では、管理会社の小さな工事を入口にする案が挙がっており、この会社には内装撤去や建物の一部解体の経験もありました。
ただし、小さな工事なら必ず適しているわけではありません。自社の施工経験に合い、利益が残り、既存先の仕事と無理なく両立できるかを、入口となる工事の判断軸にします。
初回の現場を終えたら、想定した利益が残ったか、施工負荷はどうだったか、次の依頼も受けられそうかを確認します。その結果と既存先の発注動向を合わせて、次の1〜2現場へ進むかを考える流れです。
まとめ
一社依存への備えは、既存先の仕事を減らすことではなく、別の取引先からも利益の残る仕事を継続して受けられる状態を育てることです。
半年ほどの発注減を同業者の仕事で補えたとしても、利益がほとんど残らなければ、稼働の確保だけでは悩みは解消しません。一方、既存先から増注が見込まれるなら、新規受注を急に大きくするのも難しいところです。
まずは取引先別に受注量・利益・施工負荷を並べ、増注の見込みと具体化している仕事を分けて確認します。そのうえで、すでに接点のある先も含め、条件の合う1〜2現場から取引を重ねていく進め方が考えられます。
第二の柱は、最初から太い必要はありません。少数の現場で採算と受け入れ余力を確かめながら、継続できる関係に育てていくことが大切です。
既存先との関係を守りながら、次の受注先を考えるために
「新しい受注先は必要だが、どれだけ受けられるか分からない」「見積もりの接点はあるものの、利益につながっていない」という段階でも、現状を整理するところから始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、営業だけでなく現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。第二の受注先づくりでも、販路の候補と施工余力を切り離さず、自社に合う進め方を一緒に考えます。
まずは、どのような仕事なら利益を残して受けられるのか、何から整理すればよいのかというご相談で構いません。 無理にサービスの利用をお勧めすることはありませんので、自社の場合を考える整理先として、お気軽にご相談ください。