単身者向け原状回復のスピードを強みに、少人数で取引先拡大を目指す会社
取引先を増やす際には、受注できるかだけでなく、限られた人員で無理なく進められる仕事かを見ておく必要があります。 首都圏で賃貸住宅の原状回復を手がける、ある工事会社も、売上を伸ばしたい一方で、対応できる仕事量に制約を感じていました。
主な取引先は地場の不動産会社や賃貸管理会社で、一部は保証会社からも依頼を受けています。単身者向けの原状回復をスピーディーに進められることと、丁寧な対応が自社の強みです。施工は協力会社への分離発注を基本とし、社長を中心に案件を動かしています。
今後も大人数の組織にするより、少人数で売上を積み上げたい考えです。そのため、新しい取引先に求めるのは発注量の多さだけではありません。自社の得意な工事があり、確認や調整を含めて進めやすい相手であることが、開拓先を考える前提になります。
大手への採算不安と、利益率が低くても進めやすい既存案件の評価
利益率だけで取引先を選ぼうとすると、実際に感じている仕事の進めやすさを判断に反映しきれません。 この会社は、不動産管理会社との取引を増やしたいものの、大手については価格面で採算が合いにくいのではないかと考え、地場の会社を優先していました。
ただし、大手への懸念は、具体的な依頼内容や条件を確認したうえでの判断ではなく、現時点でのイメージです。大手なら利益が残らないとも、地場なら採算が合うとも、この段階では決められません。
一方、既存の保証会社からの仕事には、利益率への不満がありながらも利点を感じていました。クロスの張り替えやクリーニングなど、復旧する対象が比較的明確で、オーナー負担となる部分への追加提案はあまり行わず、承認後は工事を進めやすいという特徴があります。入金の早さも評価していました。
ここで整理したいのは、低い利益率を受け入れるべきかどうかではありません。その仕事を続ける価値が、利益率以外のどこにあるのかを明らかにし、新しい開拓先にも同じ物差しを当てることです。
社長に余力が少ないほど重みを増す、提案と確認の手間
少人数の会社では、施工前の提案や確認にかかる手間も、受注できる仕事量を左右します。 この会社でも、社長自身が十分に手を回せていないと感じるなかで、売上拡大を目指していました。協力会社に施工を依頼する形でも、受けた案件を進めるための判断や調整までなくなるわけではありません。
既存の保証会社案件で評価されていたのは、単に工事が小さいことではなく、どこを元に戻すかが比較的はっきりしていることでした。対象範囲が明確であれば、オーナーへの提案を広げる必要が少なく、承認を得た後に次の対応へ移りやすくなります。
反対に、利益率の数字がよくても、工事範囲を決めるための提案や確認に多くの手間がかかるなら、同じ人員で対応できる件数は変わります。これは既存取引先の良し悪しを決めつける話ではなく、採算を考える際に、社長が使う時間も一緒に見るということです。
また、この会社の強みであるスピードは、自社だけで完結するものではありません。着工に必要な承認が得られて初めて、その強みを発揮できます。「早く施工できる会社」と「承認後に速やかに工事を進めたい発注者」の組み合わせに、自社との適合性が表れます。
工事範囲と着工までの進めやすさを基準にした開拓先の絞り込み
開拓先は、大手か地場かで先に分けるのではなく、自社の得意分野と案件の進み方が合うかで絞ると判断しやすくなります。 出発点になるのは、既存案件で感じている利点と不満の整理です。
既存案件の評価を、利益率と進めやすさに分ける
まずは、地場の不動産会社、管理会社、保証会社からの案件を、同じ項目で見比べます。売上や利益率に加え、次の点を整理すると、取引先ごとの違いを捉えやすくなります。
- 工事範囲の明確さ:クロス張り替えやクリーニングなど、依頼時点で対象がどこまで決まっているか
- 提案・確認の手間:復旧範囲の確認で進められるか、オーナー負担部分を含む提案が必要か
- 承認後の着工のしやすさ:承認を得れば工事を進められるか、その後にも確認が残るか
- 得意分野との一致:単身者向け原状回復のスピード対応を活かせるか
- 資金面での進めやすさ:入金までの期間を含め、資金繰りに合っているか
これらを一つの点数にまとめる必要はありません。大切なのは、利益率が低い案件について、何がその弱点を補っているのかを説明できることです。
同時に、進めやすさだけで採算を判断しないことも重要です。手間が少ないという利点を確認しつつ、最終的に残る利益額も併せて見ることで、受注を増やす意味を確かめられます。 利益率、利益額、進めるための手間は、分けて確認する項目です。
新しい候補先にも、既存案件と同じ確認項目を使う
新規の管理会社と話す際には、会社の規模よりも、実際に依頼される原状回復の内容を確認します。単身者向けの案件があるか、復旧範囲はどの段階で決まるか、どこまで提案を求められるか、承認後に着工へ進めるかが、今回の会社にとっての確認点です。
大手に対する価格面の懸念も、こうした内容と合わせて確かめます。提示される価格だけでなく、その価格で求められる工事範囲や確認対応まで見なければ、自社に合うかは判断できません。
条件が合わなければ見送る判断も自然です。ただ、会社規模のイメージだけで候補から外すより、合わない理由を具体的にできれば、次に探す相手も明確になります。
強みを活かせる相手から優先する
この会社の場合、開拓時に伝える軸は、単身者向け原状回復のスピードと丁寧な対応です。何でも対応できると広げるより、得意な工事内容を示し、その対応を必要とする管理会社かどうかを確かめるほうが、双方の認識をそろえやすくなります。
優先したいのは、自社の得意な工事があり、採算を確保でき、今の人数で提案・確認まで対応できる取引先です。 発注量が大きくても対応負担が合わない相手と、発注量だけでは目立たなくても得意分野が合う相手では、開拓の優先順位は変わります。
受注先を増やす目的を、仕事の総量ではなく「今の体制で利益を残せる仕事を増やすこと」に置くと、営業先の選び方も具体的になります。
まとめ
原状回復工事の取引先選びでは、利益率に加えて、工事範囲の明確さ、提案・確認の手間、承認後の着工のしやすさを見ることが大切です。 既存案件に感じている進めやすさは、新しい取引先を探すための判断材料になります。
まずは、今ある仕事について、利益が残る理由と進めやすい理由を分けて整理します。そのうえで、単身者向け原状回復のスピード対応という強みが活きる相手を探し、具体的な依頼内容と条件を確かめていく進め方が考えられます。
大手か地場かは、候補先の特徴の一つです。自社との適合性まで確認することで、限られた人員でも対応しやすい受注先を選びやすくなります。
自社に合う原状回復の取引先を整理するために
取引先を増やす前に、どの仕事なら利益と対応のしやすさを両立できるかを整理するところから始められます。 うちの場合は大手も候補に入るのか、既存取引先の何を基準に開拓先を選べばよいのか、という段階でも構いません。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。取引先開拓でも、現在の受注内容や対応体制を踏まえ、狙う相手の整理から実際のアプローチまで一緒に進めます。
無理に支援の利用をお勧めすることはありません。自社に合う受注先の考え方を整理したいときは、お問い合わせはこちらから状況をお聞かせください。