兵庫県で造成工事と道路関連工事を手がけ、仕事量は確保できている会社の現在地
兵庫県を中心に、戸建て住宅の造成工事と、フェンス・舗装・安全設備などの道路関連工事を手がける会社があります。正社員は6名ほどで、協力会社を含めると常時9名ほどが現場で動く体制です。年商は3億円弱まで伸びています。
受注経路は一つではありません。住宅会社から直接請ける造成工事、間に別会社が入るゼネコン関連工事、事故で損傷したガードレールなどの補修工事、地域の土木会社から依頼される小口工事があります。
一見すると取引先は分散していますが、売上の4割前後を特定の住宅会社が占めています。その会社からは案件が継続的に入り、仕事量には困っていません。
一方で、経営者が増やしたいのは単純な受注件数ではありませんでした。
「案件はどんどん来ます。仕事を増やすより、利益率を上げたいんです。お客さんが増えれば、金額の合う仕事を選べると思っています」
目標は、売上高に対して最終利益を1割前後残せる状態です。ここで必要なのは、仕事を埋めるための営業ではなく、条件を比較して案件を選ぶための取引先開拓です。
仕事量が足りている会社の取引先開拓は、受注件数を増やす活動ではなく、利益率の高い案件を選べる状態をつくる活動です。
取引先が増えても、低採算案件と相見積もりだけでは選択肢にならない問題
取引先は、多ければ多いほどよいとは限りません。見積依頼が増えても、価格が合わない案件や受注可能性の低い相見積もりばかりでは、見積作成の負担だけが増えてしまいます。
この会社でも、「見積もりの当て馬だけで使われるお客さんはいらない」という明確な考えがありました。必要なのは名刺交換先や見積依頼元の数ではなく、実際に発注があり、採算を見ながら受注を判断できる取引先です。
また、売上の大きい取引先が一社あること自体が、直ちに問題というわけではありません。継続的に案件が入り、現場の進め方にも慣れている取引先は、経営を支える重要な存在です。
ただし、その一社から来る案件で施工体制が埋まると、条件が厳しくても受けざるを得ない場面が生まれます。比較できる案件がなければ、仕事量は足りていても利益率を改善しにくくなります。
見るべきなのは取引先数ではなく、「受注したい案件を比較して選べるだけの有効な発注元があるか」です。
直請けの利益と、間に会社が入ることで減る手間の間にある迷い
利益率を考えると、発注者に近い立場で直接取引するほうが有利に見えます。実際、この会社も住宅会社とは直接取引している一方、大手ゼネコン関連のフェンス工事や金物工事では、間に一社入る取引構造がありました。
会社が間に入れば、その分だけ採算は変わります。ただし、経営者は間に会社が入る取引について、「楽な面もある」と話していました。大手企業との直接取引では、営業上の付き合いや各種調整が増える可能性があるためです。
つまり、直請けにすれば必ず経営が楽になるわけではありません。単価が上がっても、打ち合わせ、書類、写真、工程調整などの管理負担が増えれば、現場を回せる件数が減ることもあります。現在は小口案件が多く、作業員が写真管理などを兼ねられていますが、1件あたりの請負金額が大きくなれば、専任に近い管理者も必要になります。
営業経路にも課題があります。これまで残っている取引先は、知人からの紹介や現場で知り合った相手が中心でした。電話営業を試したこともありましたが、取引にはつながりませんでした。大手企業を狙う場合、会社の代表番号へ広く電話するだけでは、工事を発注する部署や担当者まで届きにくいからです。
さらに、「大手だからよい」とも限りません。造成工事、フェンス工事、金物工事では、必要な人員、材料の割合、管理の手間、案件単価が異なります。自社の施工体制と合わない案件を増やすと、売上は伸びても利益が残らない可能性があります。
直請けか下請けかは上下関係で決めるのではなく、利益と管理負担を合わせて判断する必要があります。
直請け、単価、継続性、管理負担、施工体制の5項目で狙う取引先を決める進め方
取引先開拓を始める前に、まず「どこにつながれるか」ではなく、「どのような案件を増やしたいか」を整理します。この会社の場合、狙いは仕事量の確保ではなく、条件のよい案件を選べる状態をつくることです。
そのため、開拓候補は次の5項目で比較すると判断しやすくなります。
判断項目 | 確認したいこと |
|---|---|
直請けの可否 | 発注者と直接契約できるか。間に会社が入る場合、その役割に見合う採算が残るか |
案件単価と利益 | 売上規模だけでなく、材料費、外注費、移動費を差し引いて利益が残るか |
継続性 | 単発案件なのか、月次・年度を通じて一定の発注が期待できるか |
管理負担 | 見積、打ち合わせ、写真、書類、工程調整にどれだけ時間がかかるか |
施工体制との相性 | 自社の社員と協力会社で無理なく施工できる工種・地域・件数か |
取引先候補は会社の知名度ではなく、直請けの可否、案件単価、継続性、管理負担、施工体制との相性で選びます。
特に注意したいのが、案件単価と利益を混同しないことです。フェンス工事や金物工事は材料の割合が大きいため、売上を伸ばしやすい面があります。一方で、材料費が増えれば、売上高だけを見ても利益率は判断できません。
候補先を選ぶ際は、過去の案件を工種や発注元ごとに並べ、少なくとも次の数字を確認します。
- 受注金額
- 材料費と外注費
- 現場に入った人数と日数
- 見積、打ち合わせ、写真管理などにかかった時間
- 継続的な発注の有無
細かな原価を完全に出せなくても、既存案件を並べるだけで、「売上は大きいが手間も大きい案件」と「単価は中程度でも繰り返し受けやすい案件」の違いが見えてきます。
売上の大きさだけでなく、案件に使った人員・日数・管理時間まで含めて採算を比べることが、利益率改善の出発点です。
開拓先を決めた後は、企業リストを広く集めるより、発注部署と担当者まで絞って接点をつくります。大手ゼネコン、デベロッパー、住宅会社、サブコンでは、同じ規模の企業でも発注する工事や管理条件が異なります。
そのため、「大手と取引したい」で止めず、たとえば「一定の地域でフェンス・金物工事を継続発注している会社」「造成工事を直接発注し、現場管理の負担が現在の体制に収まる会社」というところまで条件を具体化します。そのうえで、紹介、人脈、現場での接点、個別の電話など、相手に届きやすい方法を選びます。
見積依頼が来た段階でも、すぐ全件に対応する必要はありません。実際の発注可能性、今後の継続性、価格以外の選定基準を確認し、受注につながる可能性が低い相見積もりは見極めます。
営業の成果は見積依頼数ではなく、採算の合う案件を継続発注する取引先が何社増えたかで捉えるのが実務的です。
なお、新しい取引先から大型案件を受ける場合は、現在の施工体制でどこまで対応できるかも先に確認します。社員と協力会社で常時動ける人数が限られるなか、案件だけを増やすと、既存の高採算案件を断ることになりかねません。
まずは候補先を少数に絞り、見積条件、管理負担、実際の利益を確認しながら取引を広げるほうが、選べる状態に近づきやすくなります。
まとめ
仕事量が足りている建設会社にとって、取引先開拓の目的は受注量を増やすことではありません。既存顧客への売上集中を和らげ、採算の合う案件を選べる状態をつくることです。
そのためには、開拓先を会社規模や知名度だけで決めず、直請けの可否、案件単価、継続性、管理負担、自社の施工体制という5つの軸で比較する必要があります。
間に会社が入る取引も、採算だけでなく営業や管理の負担を減らしているなら、十分に意味があります。反対に、直請けでも管理負担が大きく、現在の体制で回せないなら、必ずしも優先すべき取引とは限りません。
利益率を上げる取引先開拓とは、高単価の会社を探すことではなく、自社にとって利益の残る条件を定め、その条件に合う発注元を増やすことです。
利益の残る取引先をどこから探すか整理したい方へ
取引先開拓では、「どの会社を狙うか」を決める前に、自社にとって利益の残る工種、単価、取引構造、管理負担を整理する必要があります。仕事量が足りている会社ほど、この順番が重要です。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の案件獲得や元請け開拓について、既存取引の整理から狙う企業・部署の選定、接点づくり、実行まで支援しています。
「うちの場合は直請けを増やすべきか」「どの取引先なら施工体制と利益が合うのか」といった段階でも問題ありません。無理に営業を進めることはありませんので、次の整理先として気軽にお声がけください。