前提

一つの発注元から十分な仕事と利益を得ている電気工事会社

一社依存を考えるときは、まず「今の取引で困っているか」と「その取引がなくなったらどうなるか」を分けることが出発点です。

ある電気工事会社では、既存の発注元から十分な仕事を受け、利益もしっかり確保できていました。社長自身も動いており、足元は手いっぱいです。すぐに新しい仕事を増やしたい状況ではありませんでした。

一方で、一社に依存している状態は気になっています。既存事業を維持しながら、もう一本の発注元をつくる構想もありました。

「一社依存は確かに何とかしたい。でも、現状困っていないんですよ」

この言葉が、会社の現在地をよく表しています。新規開拓に後ろ向きなのではありません。今の仕事が順調だからこそ、新しい取引に時間や費用をかける意味を、まだ実感しにくいのです。

課題

第二の発注元をつくる意義があっても、今動く理由が定まらない状態

課題は新規開拓への意欲不足ではなく、既存取引の安定を上回る「今動く理由」が整理できていないことです。

社長は、新しい発注元につながる話を前向きに受け止めていました。それでも、開始時期を決めるところまでは進みませんでした。

気になっていたのは、施工体制が整うか、実際に仕事が生まれるか、そして開拓にかける費用です。ただ、費用が下がれば決められる、という話でもありませんでした。

「いい話だとは思うけど、ピンとこない」

この感覚を、単なる価格の問題として扱うと判断がずれます。現状の仕事で利益が出ており、施工余力も少ない。そこで発注元だけ増えても、会社にとって何がよくなるのかが見えにくいからです。

また、社長には「登録はしました。では、実際に仕事が生まれるのか」という疑問もありました。新しい相手とつながることと、継続して仕事を受けられる発注元ができることは別です。 第二の柱を目指すなら、紹介や登録の先まで見て判断する必要があります。

背景

既存取引の安心感と、社員が一人前になるまでの施工余力

既存取引が安定しているという見立てと、社員が育つまで新しい仕事を受けにくい事情が、開拓の優先度を下げていました。

社長によると、既存の発注元の周辺では、施工業者が増えるというより減っている状況でした。そのため、今の仕事がすぐに途切れるとは感じていません。足元の取引を大切にする判断には、具体的な根拠がありました。

ただし、これは社長が見ている現在の状況です。将来も同じ仕事量が続くことまで確認できているわけではありません。既存取引の安定性と、依存度の高さは分けて捉えたいところです。

もう一つの背景が、社内体制です。「体制が整う」とは、単に人数が集まることではありませんでした。社長が考えていたのは、集まった社員が一人前になることです。

人数が増える時期と、会社として受けられる工事量が増える時期には、ずれがあります。 今の忙しさだけで開拓を止めると、社員が育った後の仕事を考える機会が遅れます。反対に、育成の途中で受注を増やしすぎれば、社長や既存の施工体制に負担が寄ります。

候補となる工事にも違いがありました。LED化の改修工事は、現在の技術で対応しやすいという見立てです。一方、セキュリティ工事や個人向けの工事は、体制を整えてから検討したい領域でした。新規開拓をひとまとめにせず、工事ごとに参入時期を分ける余地があります。

解決

既存事業を守りながら、LED改修から第二の発注元を探す進め方

一社依存への対応は、すぐに取引先を増やすか、何もしないかの二択ではありません。受注を増やす時期と、開拓の準備を始める時期を分けて考えられます。

この会社の事情に沿えば、既存事業を維持しつつ、現在の技術で対応しやすいLED改修工事から接点を探す進め方が考えられます。体制が必要な工事は、その後の段階に置きます。

既存取引の安定性と、失った場合の影響を分ける

まず、今の発注元との取引を二つの面から整理します。

  • 今の仕事が続くと考える根拠は何か
  • 仮にその仕事が減った場合、売上・利益・社員の仕事量にどの程度影響するか

施工業者が減っていることは、既存取引の見通しを考える材料です。ただ、それだけで一社依存の影響が小さくなるわけではありません。

取引が続く見込みが高くても、失った場合の影響が大きければ、第二の発注元を探す準備には意味があります。 逆に、足元の施工余力がなく、既存取引の見通しも立っているなら、急いで受注を増やすより、候補先や登録に必要な情報を整理する段階にとどめる判断もできます。

「体制が整う」を、受けられる工事で捉える

次に、人数だけではなく、何の工事なら受けられるかを確認します。

この会社では、LED改修は対応しやすい一方、セキュリティ工事や個人向けの工事は体制づくりが先でした。この区分を、そのまま開拓の順番に活かします。

現在の技術で対応できる工事と、社員が一人前になってから受けたい工事を分ける。さらに、新しい工事を受けても既存の仕事を維持できるかを確認する。これで、開拓先の候補と開始時期を絞りやすくなります。

開拓の優先度は、「仕事が欲しいか」だけでなく、「今受けられるか」「育成後に受けたいか」で決めると具体化します。

LED改修の担当者との接点から、案件の可能性を確かめる

実際の進め方としては、設備工事会社などの窓口につながり、LED改修を担当する部署へ紹介を受ける流れが提案されていました。並行して、協力会社としての登録準備を進める考え方です。

ここで大切なのは、最初の挨拶を成果の終点にしないことです。担当者との接点ができた後に、対応できる施工領域や社内体制を伝え、見積もり参加につながる可能性を確かめていきます。登録に必要な会社資料も、その説明に合わせて整えます。

外部の支援を使う場合も、紹介だけなのか、担当部署への確認、資料作成、継続的なフォローまで含むのかを見ておくと判断しやすくなります。

紹介、登録、見積もり参加、受注は、それぞれ別の段階です。どこまで進んだかを分けて確認することが、開拓を続けるかどうかの判断材料になります。

体制が必要な工事は、登録期間も確認して段階的に検討する

セキュリティ工事や個人向けの工事は、人が育つ時期と、取引開始までの準備期間を合わせて考えます。

相談では、登録に時間がかかるという説明に対し、「本当に業者が足りないのか」という疑問も出ていました。ただ、登録期間だけでは、案件の多さや施工業者の不足度合いまでは判断できません。対象の会社や工事によって、手続きも異なります。

登録に必要な期間はどの程度か。ほかの施工会社は紹介後にどこまで進んだのか。こうした情報を確かめたうえで、自社が受けられる時期から逆算します。

「年明けなら必ず始める」と先に決めるより、社員の成長と既存工事の状況を見て、動けるタイミングを選ぶほうが自然です。

まとめ

今の仕事に困っていないなら、一社依存の解消を急ぐ必要があるとは限りません。ただし、既存取引の安定性と、失った場合の影響は別々に整理しておきたいところです。

そのうえで、現在の施工余力と、社員が一人前になった後の受注余力を見ます。今受けられる工事があるなら、LED改修など、既存の技術を活かせる領域から第二の発注元を探す。体制が必要な工事は、育成と登録準備を踏まえて次の段階に置きます。

目指すのは、取引先の数を増やすこと自体ではありません。既存の仕事と利益を守りながら、これからの施工体制に合う発注元を育てることです。 その順番が見えれば、新規開拓に今どこまで時間をかけるかも決めやすくなります。

第二の発注元づくりを、自社の施工余力から整理するために

「うちの場合、今から開拓すべきか」という段階でも、既存取引と施工体制を並べて整理するところから始められます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。第二の発注元づくりでも、販路だけを切り離さず、現在対応できる工事や人員育成の見通しと合わせて、開拓の順番を考えます。

何から整理すべきかわからない場合や、既存事業を維持しながらできることを考えたい場合も、ご相談いただけます。無理に新規開拓やサービスの利用を勧めることはありません。自社に合う次の一手を整理する場として、お気軽にご相談ください。

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