前提

売上が大きく伸びる一方で、低採算の電気工事を減らし始めた少人数の会社

売上を増やす段階から、利益が残る工事と取引先を選び直す段階へ移っている会社の相談です。 京都府に拠点を置く、従業員7名ほどの電気工事会社で、マンションや工場、商業施設などの電気設備工事を手がけています。

幅広い建物に対応し、売上はある年度に前年の2倍を超える水準まで伸びました。ただ、その伸びをどう受け止めているかを聞くと、社長から返ってきたのは、次の言葉でした。

「正直、利益率の低い仕事で、売上だけが上がってしまっている感じなんです」

すでに採算の合わない仕事を減らし始めており、目指しているのは単純な受注拡大ではありません。今ある仕事を見直しながら、きちんと利益が残る取引先を増やしたい、という状況です。

一方で、現在の人数で新しい仕事をさらに引き受けることにも難しさがあります。そのため、受注額だけではなく、限られた施工体制でどこまで対応できるかも含めて、次の仕事を選ぶ必要があります。

課題

売上の大きな工事が、利益の大きな工事になっていない状況

見直したいのは売上の総額だけではなく、工事ごとに何が残り、そのためにどれだけ人と時間を使っているかです。 この会社では、売上に一定の割合を占める仕事であっても、利益が残らないために縮小を進めていました。

受注額が大きくても、材料費や施工にかかる費用が膨らめば、会社に残る利益は小さくなります。さらに、少人数の会社では、その工事に人を充てている間に、別の仕事をどれだけ受けられるかという制約もあります。

社長が新しい取引先に求めていたのは、「利益率がよくて、大きい会社」でした。継続して仕事を任せてもらえる相手を探したいという方向性はありますが、具体的にどの会社を開拓するかまでは、まだ絞れていません。

ここで取引先の規模だけを基準にすると、売上は伸びても利益が残らない状態を繰り返す可能性があります。先に「自社にとって採算の合う工事の条件」を整理し、その条件に合う仕事を発注する相手を探す順番が大切です。

背景

材料費の高騰と工事の手離れが、受注の見直しにつながった経緯

受注を選び直す背景には、材料費の負担と、工事を終えるまでにかかる時間の違いがありました。 社長は、現在手がける工事の採算について、こう話しています。

「材料が高すぎて、合わないんですよ」

マンションなどの電気工事を幅広く受けられることと、その工事で十分な利益を残せることは別です。この会社では、材料費の高さが、従来の仕事を続けるかどうかを考える直接の理由になっていました。ただし、工事別の原価や利益額まで確認できているわけではないため、建物の種類だけで採算を決めつけることはできません。

その一方で、社長が当面の注力先として挙げたのが、LED照明の交換工事です。

「LEDの交換などは利益が出るので、そういう仕事に力を入れていきたい」

この言葉には、工事単体の利益だけでなく、短い工期で完了し、次の仕事へ移りやすいという事情も重なっています。加えて、「それに特化した下請けもいる」と、専門の協力会社を活用できることも確認できました。

LED交換工事が候補になったのは、この会社にとって手離れがよく、活用できる協力会社もあるからです。 LEDなら一律に高収益という話ではなく、工事の内容と自社の施工体制が合っている点に、選択の理由があります。

解決

工事別の採算と施工負担をそろえて、続ける仕事と開拓先を絞る進め方

まず工事単位で採算を確かめ、次に取引先単位で傾向を見ていくと、何を残し、何を減らすかを判断しやすくなります。 社長の「この仕事は合わない」「こちらは回しやすい」という実感を出発点にしながら、その理由を材料費、投入人工、工期と手離れに分けて整理する進め方です。

工事ごとに、材料費と人の投入量を並べる

最初に整理したいのは、受注額に対して、施工のためにどれだけ費用がかかったかです。すべての工事を一度に細かく調べるより、縮小を考えている工事と、増やしたいLED交換工事を比べるところから始めると、判断に直結します。

工事ごとに、次の項目を同じ形式で並べます。

  • 受注額と実際にかかった材料費
  • 自社で投入した人工と、その人件費
  • 協力会社へ依頼した場合の外注費
  • 着工から完了までの工期と、実際に人を投入した日数
  • 工事を終えて次の仕事へ移りやすかったかという手離れ

ここでは、自社の社員が施工した分も費用として捉えることが重要です。材料費と外注費だけを差し引いて利益があるように見えても、自社の投入人工が多ければ、採算の見え方は変わります。

また、工期と投入人工は分けて見ます。完了までの期間が長いことと、実際に多くの人工を使ったことは同じではありません。利益額・利益率に加えて、その利益を得るために使った人工と時間を比べることが、少人数の施工体制に合う仕事を選ぶ判断軸になります。

取引先全体ではなく、発注される工事の中身を見る

取引先別に見る際も、売上の順位だけで判断せず、どのような工事を受け、どの程度の利益が残ったかを確かめます。同じ取引先でも、工事の内容によって材料費や投入人工が異なるためです。

整理した結果は、「今の条件で継続する仕事」「条件が合う場合に受ける仕事」「縮小する仕事」に分けると、次の受注判断に使いやすくなります。

材料費の負担が大きいのか、人の投入が多いのか、完了までの期間が自社の体制に合わないのか。理由を分けておけば、単に「この取引先は合わない」とするのではなく、どの工事を、どの条件なら続けられるかまで考えられます。

取引先を残すか切るかの二択ではなく、その相手から受ける工事の範囲を見直すことも選択肢です。 すでに進めている低採算工事の縮小も、この整理と結びつけることで、判断の根拠が明確になります。

LED交換工事は、協力会社を使った後の採算まで確かめる

LED交換工事については、社長自身が利益と手離れのよさを感じており、専門の協力会社もいるため、注力候補として具体性があります。ただし、増やす前に確認したいのは、自社施工の場合と協力会社に依頼する場合の、それぞれの採算です。

材料費や外注費を含めてどの程度の利益が残るか、自社から何人工を出す必要があるか、想定する工期で完了できるかを整理します。そのうえで、現在の施工体制で対応できる仕事量と照らし合わせます。

短工期で回しやすくても、受ける量が対応できる範囲を超えてしまえば、そのよさを生かしにくくなります。工事件数を増やすことより、利益を残せる条件で、無理なく繰り返し施工できることを優先します。

開拓先は、会社の大きさより工事の適合性で絞る

新しい取引先の候補が出てきたら、知名度や規模だけでなく、発注される工事の内容、採算、必要な施工体制を確認します。

この会社であれば、LED交換工事を増やしたいという方針と、専門の協力会社を活用できる強みを踏まえて、設備工事を発注する会社などの中から、条件の合う相手を絞る考え方です。大手との取引も選択肢ですが、それ自体を目的にはしません。

「どの会社とつながれるか」の前に、「どの工事なら利益を残して対応できるか」を言葉にしておくことで、開拓先との適合性を確かめやすくなります。

まとめ

電気工事の売上が増えても利益が残らないときは、受注をさらに増やす前に、工事別・取引先別の採算と施工負担を整理することが出発点です。 材料費、投入人工、工期と手離れを並べることで、売上の大きさだけでは見えなかった違いが分かります。

この会社では、材料費の負担が重い仕事を減らし、短工期で回しやすく、専門の協力会社も活用できるLED交換工事へ力を入れようとしていました。大切なのは、工事の名称だけで有利・不利を決めず、自社の費用と施工体制で確かめることです。

まずは、減らしたい工事と増やしたい工事を同じ項目で比べ、その違いを言葉にするところから始められます。残したい仕事の条件が明確になると、次に開拓する取引先も選びやすくなります。

利益が残る工事と取引先の条件を整理するために

「うちの場合、どの仕事を残すべきか」という段階から、受注の見直しを相談できます。 売上は増えているものの手残りが伴わないときや、新しい取引先を探す前に注力分野を整理したいときは、現在の工事と施工体制を一緒に確認することが次の一歩になります。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。受注の見直しでは、工事ごとの採算と対応できる施工体制を踏まえ、注力する工事や取引先開拓の進め方を整理します。

何から確認すればよいかが決まっていなくても構いません。無理にサービスの利用を勧めることはありませんので、自社に合う受注の形を考える整理先としてご相談ください。

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