前提

住宅向けの太陽光・蓄電池工事を主力に、全国の公共案件へ取り組む専門工事会社

公共工事を検討する出発点は、既存事業を大きく伸ばすことではなく、補助金と冬季の影響で生じる売上の波を補うことでした。

新潟県を拠点とする、ある電気設備の専門工事会社は、戸建て住宅向けの太陽光発電設備や蓄電池の施工を主力にしています。ただ、工事の動き方は自社の営業努力だけでは決まりません。補助金の開始時期や制度上の条件に左右されるうえ、冬は施工したくても季節の制約で進められないことがあります。

経営者は、その事情をこう話していました。

「売上高に波がどうしてもできる。仕事が少ない時期でも、安定した収益を確保するために、もう一つの柱として公共事業をやろうと思いました」

同社はすでに、全国を対象に月20件前後の入札へ取り組んでいます。数名の在宅事務スタッフが案件を探し、内容を確認し、施工を担える協力会社へ連絡する体制です。案件によっては20社ほどに声をかけ、見積もりの取得を進めています。

目指しているのは、自社の職人を全国へ送り出す形ではありません。施工は各地の協力会社と組み、自社は元請けとして管理を担う形です。公共工事への取り組みは動き始めていますが、それが既存事業の閑散期を補う第二の柱になるかどうかは、これから確かめていく段階にあります。

課題

入札件数を増やすだけでは、閑散期を補う収益の柱にならないこと

第二の柱になるかを判断するには、受注額だけでなく、既存事業が落ち込む時期を補えるか、施工・管理まで無理なく担えるかを見る必要があります。

住宅向けの工事が少ない時期に、別の仕事があることは心強いものです。ただし、公共工事を受注できても、その工期が既存事業の繁忙期と重なれば、売上の波をならす効果は限られます。冬季の施工制約を避けたいのであれば、公共案件側にも同じ制約がないかを確認する必要があります。

また、全国対応では、案件が見つかることと、現地で工事を進められることは別です。同社では協力会社から最低1社の見積もりを得られる段階まで進んでいますが、経営者はそこで十分とは考えていません。

「1社取れたから満足するのではなく、2社、3社取ろうというところです」

見積もりが1社だけでは、価格や対応条件を比較しにくくなります。一方、複数の見積もりがそろっても、自社側の現場管理人員が確保できなければ、受注を増やせるとは限りません。同社も、遠方の公共施設で工事期間中に訪問・滞在できる人員を必要としており、現状では経営者自身が動かざるを得ない場面があります。

つまり、課題は単純な案件不足ではありません。案件を選ぶ力、協力会社から見積もりを集める力、受注後に適法かつ確実に管理する力を、同じ歩幅で整えることです。

背景

市場分析と協力会社開拓を同時に進め、公共工事の勝ち筋を探していること

同社が幅広い案件を調べているのは、何でも受注するためではなく、競争環境と施工体制を見ながら狙う分野を絞るためです。

現在は市場分析も兼ねて、電気設備に限らず、土木や除草作業なども含めて案件を確認しています。ただし、入札者が多い案件へ一律に参加する考えではありません。

「入札者数がやたらと多い案件は、やってもしょうがない。どちらかというとニッチなところを探したい」

この言葉には、案件数を増やすだけでは収益につながりにくいという判断があります。ただ、入札者が少なければ有利とも限りません。対応できる業者が少ないために競争が限られているなら、協力会社探しや管理体制の確保も難しくなる可能性があります。競争の少なさと、自社が対応できることは分けて確認したいところです。

協力会社の開拓でも、同社は会社名と電話番号を集めるだけではなく、過去の落札実績や、どの発注機関の入札参加資格を持っているかを調べています。声をかける相手が施工の協力先になり得るのか、同じ案件への入札者になり得るのかも、関係づくりの前に見ています。

将来は全国で数百社規模の協力会社リストを持ちたい考えですが、重視しているのは、先に相談できる会社を見極め、リストを入れ替えながら育てることです。

事務担当の役割にも、同じ考え方が表れています。担当者は案件を選び、内容を精査し、声をかける業者を考え、見積もりを取り、落札後の提出書類や入金までを経験しています。

「一通り経験しないと、説明されても答えられないところからのスタートでした。今は成長してきています」

公共工事が初めての担当者にとって、電話だけ、書類だけに切り分けると、案件全体の理解が進みにくいという判断です。これは分業の良し悪しではなく、参入初期に何を担当者へ身につけてもらうかという体制づくりの話です。

解決

閑散期との重なり、案件の競争環境、全国での管理体制をそろえて判断する進め方

公共工事への参入は、案件探索を市場分析として進めながら、既存事業を補える案件と、それを施工・管理できる体制がそろう範囲を見極める進め方が基本です。

同社のようにすでに入札を始めている場合も、これから検討する場合も、「どれだけ取れるか」の前に「何を補うために取るか」を揃えると、案件選びの基準が明確になります。

既存事業の閑散期と、公共案件の工期を照らし合わせる

最初に整理したいのは、太陽光・蓄電池工事が少なくなる時期と、その理由です。補助金の開始待ちで工事が動かないのか、冬季の施工制約があるのかで、補完に向く案件の条件は変わります。

そのうえで、調べている公共案件の工期や施工地域を照らし合わせます。既存事業の仕事が少ない時期に進められるのか、同じ季節の制約を受けないか、自社の管理対応が繁忙期と重ならないかを確認します。

「公共工事だから安定する」ではなく、「自社の売上が落ち込む時期を、この案件で補えるか」が判断の軸です。 全国へ対象を広げることも、案件数を増やすためだけでなく、この補完関係を確かめるために考えたいところです。

入札者数だけでなく、協力会社の見積もりが集まるかを見る

市場分析として案件を調べる際は、入札者が多い案件と、比較的競争が限られる案件を分けて見ます。その際、入札者数だけを理由に狙う分野を決めず、施工を担える会社から見積もりが得られるかまで確認します。

同社が次の段階として目指している複数社の見積もり取得は、この判断に役立ちます。価格だけでなく、施工範囲や対応条件を比較できるためです。

見ておきたい項目は、次のように整理できます。

  • 既存事業の閑散期を補える工期・地域か
  • 入札者が多いのか、比較的限られているのか
  • 案件に対応できる協力会社と接点を持てるか
  • 複数社の見積もりを比較できるか
  • 自社側で必要な現場管理を担えるか

これらを案件ごとに照らし合わせれば、幅広く調べた結果を、次に狙う案件の選定へつなげられます。ニッチな案件を探すこと自体を目的にせず、自社が受注から完了まで対応できる分野を見つけることが大切です。

全国の協力会社リストを、相談できる相手の集まりにする

協力会社網は、登録社数よりも、対象地域と施工内容に合う相手へ相談できることが重要です。同社が調べている施工実績、許可業種、人数体制、公共案件の落札実績などを、候補選定の材料にできます。

そこへ、実際に連絡した結果や見積もりへの対応状況を重ね、先に声をかけたい会社を見極めていきます。会社情報を調べられることと、その会社が今回の工事へ対応できることは別なので、情報収集だけで関係づくりが完了するわけではありません。

全国対応を支えるのは、大きな名簿ではなく、地域・施工内容に応じて相談できる協力会社との関係です。 最初から全国一律に整えるのではなく、検討している案件と対応可能な会社が重なる範囲を確かめながら広げると、受注判断にも使いやすくなります。

事務対応と現場管理を分けて、受注できる範囲を確かめる

同社では、在宅の事務担当が案件探索から提出書類まで一通り経験することで、公共案件への理解を深めています。この方針を活かすなら、担当者が全体を理解できる範囲で案件を進め、現場管理まで事務側だけで担えると考えないことが大切です。

一方、現場側には、工事期間中に訪問・滞在できる人員が必要になります。有資格者の確保はもちろん、遠方への出張に対応できるかも、全国展開の条件です。

経営者自身の資格で対応できるという認識があっても、実際の受注判断では、案件ごとに入札参加資格、建設業許可、技術者の配置・専任等の要件を確認する必要があります。協力会社へ施工を依頼する場合も、自社が負う施工管理上の責任や一括下請負の禁止を踏まえ、適法に担える役割分担になっているかを確かめます。

協力会社が見つかることと、元請けとして適法に管理できることは別の条件です。 経営者が現地対応を担う範囲、別の管理人員が必要になる範囲を整理し、その体制に合う案件から進めることが、第二の柱を育てる土台になります。

まとめ

公共工事は、補助金や冬季に左右される住宅向け工事を補う選択肢ですが、収益の安定は受注だけで決まるものではありません。

今回の会社では、全国の案件を調べ、協力会社の見積もりを集め、事務担当が案件全体を経験する取り組みが進んでいます。次に見るべきなのは、その活動が既存事業の閑散期を補う案件へつながっているか、受注後の現場管理まで体制がそろっているかです。

まずは、既存工事が少なくなる時期と理由を整理し、公共案件の工期・地域を照らし合わせます。そのうえで、競争環境、複数社の見積もり、協力会社との関係、自社の管理人員を確認していけば、公共工事を第二の柱として育てられる範囲が見えてきます。

公共工事を第二の柱にするための、自社の条件整理

「うちの閑散期を補えるのか」「協力会社開拓と管理人員の確保、どちらから進めるべきか」という段階から、整理を始められます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。公共工事への事業分散でも、案件獲得だけを切り離さず、協力会社網、事務対応、施工管理体制を合わせて、先に整えるところを考えます。

すでに自社で進められている取り組みを、一から変える必要はありません。自社で続ける部分と、外部の支援が役立つ部分を分けるところから相談できます。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、何から整理すべきか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。

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