前提

全国の公共工事に月20件前後入札する会社の協力会社探し

全国の公共工事に継続して入札する会社にとって、協力会社探しは、入札前の見積もりを支える日常業務です。 ある建設会社では、月20件前後の入札に向けて、少人数の在宅スタッフが案件の調査と施工会社への連絡を進めていました。

もともとは、住宅向けの電気設備工事を中心に手がけていた会社です。補助制度の開始時期や条件、積雪期の施工制約によって仕事量に波が出るため、収益を支えるもう一つの柱として公共工事に取り組み始めました。

対象地域は全国です。工種も電気だけに絞らず、土木や除草作業などまで広く調べながら、対応できる案件を探しています。自社が管理を担い、施工は協力会社に依頼する方針のため、案件に合う施工会社との接点が欠かせません。

現在は、1案件につき十数社から20社ほどにアプローチしています。目指しているのは、その都度検索し直す状態から、蓄積した候補の中で依頼先を探せる状態への移行です。

「最終的には、そのリストだけでほぼ対応できるのが理想です。今は、そこをためていっている段階です」

この言葉に、協力会社リストを育てる目的が表れています。企業名を集めることではなく、次の案件で頼れる相手を増やしていく取り組みです。

課題

最低1社の見積もりは取れても比較できる複数社がそろわない状況

課題は、見積もりをまったく取れないことではなく、1社の見積もりを確保した先で、比較できる2社、3社につなげることです。 すでに新規の施工会社へ連絡する体制があり、案件ごとに最低1社からは見積もりが取れるようになっていました。

経営者も、開拓の進み方そのものを悪いとは捉えていません。ただ、次の段階に進む必要性を感じています。

「1社だけの見積もりでは、やはり比較ができません。1社取れたから満足するのではなく、2社、3社取ろうというところです」

ここで大切なのは、連絡先の件数と、見積もりを依頼できる会社数を分けて考えることです。全国に多数の会社を登録しても、ある地域の、ある工種の案件で候補を絞ったときに、実際に声をかけられる会社が少なければ、見積もりは増えません。

この会社でも、リストは一度作れば完成するものではないと考えていました。

「3社、4社の見積もりを取っていくことを考えると、業者リストは、入れ替えも含めて常に増やしていかないといけない」

つまり、目指すのは大きな名簿ではありません。対象案件に合う候補を選び、複数社に見積もりを依頼できる状態を、案件が変わっても使える形で残すことです。

背景

施工実績がある会社ほど対象案件で入札競合にもなり得る難しさ

公共工事の協力会社探しでは、「施工できる会社」と「その案件で施工を依頼する候補になる会社」は、必ずしも一致しません。 対応地域や工種が合い、公共工事の実績があっても、対象案件に自ら入札する可能性があるためです。

この会社では、候補企業の過去の落札実績を、すでに調査していました。どの発注機関の、どのような案件を落札しているかを見たうえで、連絡先を選んでいます。

「お願いしようと思っている案件で、その会社も入札参加資格を持っていれば、逆に案件を教えてあげることになるんです」

そのため、公共工事の実績が豊富という理由だけで、優先候補にはしていません。ある発注機関の入札には参加していても、別の発注機関については参加資格を持っていない、といった違いまで確認し、声をかける判断につなげていました。

もちろん、参加資格を持っているだけで、その案件に入札するとは限りません。ただ、過去の落札実績は施工経験を知る情報であると同時に、直接の競合になり得るかを考える手がかりでもあります。

もう一つの背景は、案件ごとの新規連絡にかかる負担です。在宅スタッフは、調べた会社へ初めての電話を1日に何十件もかけています。経営者も、その負担を認識していました。

「突然『初めまして』で電話をするわけですから、大変なところはあります」

すでに行動量は確保されています。ここからは、電話の本数を増やすだけでなく、一度調べた情報と連絡した結果を、次の候補選びに使えるようにすることが重要になります。

解決

案件との適合性と対応履歴を重ねて育てる協力会社リスト

協力会社リストは、企業の基本情報、案件との適合性、実際の対応履歴を重ねて育てるのが有効です。 すでに調査と連絡ができている会社であれば、新しい仕組みを大きく足すより、今の調査結果を次回も使える形にそろえるところから始められます。

対応地域と工種を軸に、案件ごとの候補を絞る

全国の会社を一つの一覧に並べるだけでは、案件が出るたびに選び直す負担が残ります。まずは、候補企業について、次の情報を同じ項目で整理します。

  • 対応できる地域と工種
  • 施工を担う人数や体制
  • 過去の公共工事の施工・落札実績
  • 入札参加資格が確認できる発注機関
  • 対象案件で直接の入札競合になり得るか

ここでは、公開情報で分かることと、連絡して確認できたことを区別しておきます。たとえば、施工実績から対応できそうだと判断した会社と、実際に対応可能だと回答した会社は、同じ確度ではありません。

対象案件が出たら、地域、工種、施工体制が合う候補を絞り、そのうえで入札競合の可能性を確認します。全国の登録社数だけでなく、「今回の条件で何社に声をかけられるか」を見ることが、複数見積もりにつながる判断軸です。

会社全体の順位ではなく、案件に応じた声かけの順番を決める

経営者は、リストの中に「先に声をかけたい会社」を持つ必要性を感じていました。この優先順位は、会社を一律に評価する順位ではなく、案件との組み合わせで考えると使いやすくなります。

対応地域と工種が合い、施工体制も確認でき、過去に見積もりへ対応してくれた会社は、先に声をかける候補です。一方、実績は合っていても、対応体制が未確認の会社には、その確認が必要です。対象案件で直接入札する可能性がある会社については、案件情報を伝える前に、その点を確認する判断が先になります。

この順番を持てれば、毎回すべての会社へ同じように連絡するのではなく、確認済みの候補から依頼し、不足する地域や工種で新規開拓を続ける進め方に移れます。

連絡結果を残し、次に依頼できる条件を増やす

企業情報だけでは、実際に見積もりを依頼できるかまでは分かりません。そこで、連絡のたびに、対応の結果をリストへ戻していきます。

記録したいのは、連絡日、対象案件の地域と工種、対応可否、見積もりの依頼・受領状況、対応できなかった理由、次回依頼できる条件です。いずれも、新たな調査のための項目というより、日々の連絡で得た情報を残すための項目です。

「断られた会社」とだけ残すのではなく、「どの条件では対応できなかったか」を残すことで、次に声をかける余地を判断できます。 理由が確認できなかった場合も、推測で埋めず、未確認としておくほうが候補選びに使えます。

同じ会社に複数の担当者が関わる場合も、過去の連絡結果が見えれば、前のやり取りを踏まえて依頼できます。一度の電話を、その案件だけで終わらせないための蓄積です。

1社で止まった案件から、候補の追加・入れ替えを進める

リストの見直しは、実際に複数見積もりが集まらなかった案件を起点にすると、優先順位がつけやすくなります。

まず、地域・工種が合う候補自体が少なかったのか、候補はいたものの施工体制が合わなかったのか、直接の入札競合になり得る会社が多かったのか、連絡はできても見積もり受領まで進まなかったのかを、履歴から確認します。

候補が少ない地域・工種なら、その条件で会社を追加します。対応情報が変わっていれば更新し、依頼先として合わないことが確認できた会社は優先順位を見直します。総件数を増やすことより、見積もりが1社で止まりやすい条件を補うことが先です。

この会社では、担当者が案件の選定から内容確認、施工会社への連絡、その後の対応まで一通り経験する方針を取っていました。案件を理解することで、どの会社に何を確認すべきかを考えられるようにするためです。

リスト運用も、この方針に合わせて進められます。担当者が案件を通じて得た理解を、企業情報や対応履歴に戻していく形です。外部の力を使う場合も、電話業務を丸ごと切り離すことを前提にせず、不足する候補の調査や情報の補完など、社内に残したい役割と分けて考えると整理しやすくなります。

まとめ

公共工事で複数社の見積もりを集めるには、全国の企業名を増やすだけでなく、案件に合う候補を選べるリストへ育てることが大切です。 対応地域・工種・施工体制・落札実績に加え、対象案件で直接の入札競合になり得るかまで確認することで、声をかける順番が見えてきます。

そのうえで、連絡結果と見積もり対応履歴を残し、1社で止まった案件の条件を振り返ります。不足している地域や工種を補い、候補の追加・入れ替えを続ければ、案件ごとの新規開拓を、次にも使える蓄積に変えていけます。

すでに最低1社の見積もりを取れているなら、その取り組みは土台になります。次の一手は、今ある候補と履歴を見直し、2社目、3社目につながらない条件を具体的にすることです。

全国の協力会社リストを、自社で使い続けられる形にするために

協力会社開拓を見直す際は、今の体制を生かしながら、候補情報のどこを補えばよいかを整理するところから始められます。 「リストはあるが案件ごとに探し直している」「1社は取れるが、その先が増えない」という段階でも、考えるべきことは具体化できます。

ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。協力会社開拓についても、候補の選定条件や対応履歴の残し方、社内と外部の役割分担を、自社の進め方に合わせて一緒に整理します。

「うちの場合は、何から整理すればよいか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、現在のリストや開拓体制について、お気軽にお聞かせください。

お問い合わせはこちら