少人数の社内体制と全国の協力会社で住宅の防蟻工事を展開
自社に職人を抱えず、営業と施工をつなぐ役割で事業を広げたい。そんな工事会社の成長には、受注先と協力会社の両方が欠かせません。
ある住宅の防蟻工事会社も、その形を選んでいました。社内は3名ほどの少人数体制です。社長が営業を担い、事務担当が経理や営業事務を支えます。施工は、全国十数社の協力会社に依頼しています。規模などは、特定を避けるため一部調整しています。
主な仕事は、木造戸建ての薬剤散布です。床下の湿気対策や基礎補修、断熱など、周辺の工事にもネットワークで対応しています。受注の大半は法人経由です。
社長が目指す役割は明確でした。
「自分が施工するより、営業で職人さんとつないでいく。その仕事を広げたいんです」
出発点には、以前から付き合いのある施工業者の存在があります。「仕事があったら一緒にやろう」という声を受け、その業者たちが力を発揮できる仕事を取ろうと会社を立ち上げました。
現在の年商は4,000万円前後の規模です。まずは月商550万円ほどを目指しています。ただし、売上を伸ばす話は、営業だけでは完結しませんでした。
今は施工に余力があっても目標の受注量では職人が不足
「今の案件を増やせるか」と「目標の受注量を施工できるか」は、分けて考えたい問題です。
現時点では、協力会社の施工力に余裕があります。社長の目先の希望も、まずは受注を増やすことでした。
「今の協力業者さんのキャパを、ある程度埋められるぐらいの案件が欲しいですね」
ところが、目標とする月商まで話を進めると、見えてくる景色が変わります。
「そこまでいったら、やっぱり職人が足りない。各エリアに、もう1社ずつぐらい入れたいんです」
この二つは、矛盾していません。現在の仕事量に対しては施工力が余っている。一方、目指す仕事量に対しては足りない。成長の途中だからこそ、両方が同時に起きています。
営業を止めて施工体制だけを増やしても、今いる協力会社の余力は埋まりません。反対に、受注だけを増やすと、その先で任せる先が不足します。
必要なのは、営業か協力会社開拓かの二者択一ではありません。既存の余力を生かす営業を進めながら、増えた仕事を担う協力会社も探すことです。
自社で職人を育てず営業と施工をつなぐ事業方針
施工力を増やす方法は、自社採用ではなく、任せられる協力会社との接点を増やす方針です。
社長には、自社で職人を採用し、一から育てる考えはありませんでした。自身の役割を営業と施工の橋渡しに置いているからです。
「やる気があって、育成能力のある会社さんとつながりたい。それが一番です」
ここで求めているのは、単に手が空いている施工業者ではありません。本業の防蟻工事ができること。多少の建築補修にも知見があること。そして、施工を担う人を育て、指導できることです。
受注の増やし方にも、その方針が表れています。社長が求めているのは、まず自分で内容を把握できる防蟻工事の件数です。候補には、複数地域で住宅を扱う事業者や、買取再販会社を挙げていました。比較的定型的な施工を、継続して依頼してもらえる先を探しています。
また、全国に協力会社がいても、どの地域でも同じ量を任せられるわけではありません。現在のネットワークを生かしやすい地域と、新たに施工先を探す必要がある地域があります。
新しいエリアについて、社長はこう話していました。
「仕事をもらうところと、施工を出すところ。両方を同時に進められるなら、どこでも行きたいです」
事業を広げられる範囲は、営業先の所在地だけでなく、その地域で施工を引き受ける相手がいるかで変わります。
既存エリアの受注開拓と不足エリアの協力会社開拓を並行
既存エリアでは施工余力に合う仕事を取り、新規エリアでは受注先と施工先をセットで探す。この二つを分けると、動く順番が整理しやすくなります。
既存エリアは「今ある施工力で増やせる仕事」から開拓
まず整理したいのは、協力会社の総数よりも、地域ごとに追加で任せられる仕事です。
今回の会社なら、主軸は木造住宅の防蟻工事です。その施工に余力のある地域では、住宅事業者や買取再販会社など、社長が候補に挙げている先への開拓を進める考え方が合います。
営業先を選ぶときも、会社の大きさだけで決める必要はありません。依頼される施工が今の協力会社で対応できるか。案件が発生する地域と、施工できる地域が重なるか。継続的な件数が見込めるか。この対応関係を見ていきます。
同時に、目標の受注量では不足する地域の協力会社開拓も進めます。「今は足りているから探さない」ではなく、現在の余力と、受注増に備えた不足を別々に捉える進め方です。
協力会社は規模で絞らず、任せたい役割で見る
候補は、個人事業主と組織的な施工会社の双方です。社長も、どちらかに限定するつもりはありませんでした。
「一人で全部できる方も、社員を抱えている会社も、両方欲しいですね」
会社の規模より先に、本業の施工能力、周辺補修への対応力、育成・指導能力を確認することが判断軸になります。
候補先との接点では、次の点を整理すると、求める相手との違いが見えやすくなります。
- 防蟻工事を、どの地域で引き受けられるか
- 基礎や床下など、周辺の補修にどこまで対応できるか
- 追加の案件を、どの程度引き受けられるか
- 施工を担う人への育成や指導を任せられるか
すべての相手に、同じ役割を求める必要はありません。一人で施工を完結できる相手も候補です。人を育てながら施工体制を広げられる会社も候補です。候補の規模を先に絞るより、必要な役割を確認するほうが、今回の事業方針に沿っています。
新規エリアは仕事と施工の両方がそろう見通しで判断
新しい地域では、受注先だけ、あるいは施工先だけを開拓しても、事業として動かせるとは限りません。
営業先が求める工事内容と地域を確認する。同じ地域で、その施工を担える協力会社を探す。両方の条件が合う見通しを確かめながら進めます。
候補リストも、受注先と協力会社を別々に並べるだけではなく、地域ごとに対応を見られる形にすると整理しやすくなります。どの地域は営業を先に進められるのか。どの地域は施工先探しも必要なのか。その違いを、開拓の優先順位につなげます。
社長一人で両方を探すことが難しければ、外部に候補のリスト化や接点づくりを任せる選択肢もあります。その場合も、依頼する範囲は「受注先を増やすこと」だけでなく、「その仕事を施工できる相手を探すこと」までそろえておくと、成長方針と実際の動きがつながります。
まとめ
今の協力会社に余力があることと、受注目標に対して施工力が足りないことは、同時に起こります。
だからこそ、受注が増えるまで協力会社探しを待つ必要はありません。現在の余力を生かす営業と、その先の不足に備える開拓を並行して進める考え方があります。
既存エリアでは、今の協力会社が対応できる工事を増やす。新規エリアでは、受注先と施工先をセットで確保する。協力会社は個人事業主か法人かだけで絞らず、施工、周辺補修、育成・指導という役割から見ていきます。
最初に整理したいのは、「何社増やすか」だけではありません。どの地域で、どんな仕事を増やし、誰に任せたいか。そこがそろうと、営業と施工体制を広げる順番も見えやすくなります。
受注先と協力会社を地域ごとに整理するところから
「今の協力会社で、どこまで受注を増やせるのか」「営業先と施工先のどちらから探せばよいのか」。まだ判断がつかない段階でも、現在の取引先と施工体制を並べるところから始められます。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を横断して整理し、実行まで支援しています。協力会社中心で事業を広げる場合も、受注先と施工先の候補、地域ごとの優先順位、接点づくりの進め方を一緒に考えます。
「うちの場合はどう考えるべきか」という段階でもご相談いただけます。無理にサービスをお勧めするのではなく、まずは今の施工力と目指す受注量を整理するところからお話しできます。