主要な協力会社2〜3社と一人親方を組み合わせて現場を回す設備工事会社の現在地
東海地方で工場や病院、老人ホームなどの衛生配管を手がける、ある設備工事会社があります。長年の取引先があり、仕事の相談は継続的に入ってきます。
一方、施工を支える協力会社は多くありません。
「メインどころは、ほとんど2〜3社です。あとは一人親方の人たちをうまく組み合わせながらやっています」
協力会社が足りないときは、一人親方や応援の職人に声をかけます。ただし、常に同じメンバーを確保できるわけではありません。一度は仕事を頼めても、「もともと付き合っているところに戻ります」と離れてしまうこともあります。
マッチングサービスも利用していますが、確認するのは「気がついたら少し見る」程度です。登録者の技術や道具の保有状況にはばらつきがあり、候補を見つけただけでは任せられるか判断できません。
安定して受注するには、固定の2〜3社だけに依存せず、案件ごとに組み合わせられる協力会社の候補群が必要です。
人手不足で依頼を断る一方、無理な受注による工程逼迫と事故は避けたいという悩み
この会社では、人手や施工体制が足りず、取引先から声をかけられても断る案件があります。ただ、経営者が求めているのは、売上を急拡大することではありません。
「高い目標を立てて、あれも間に合わない、これも人手が足りないとなるのが嫌なんです」
受注を増やせば、売上は伸びるかもしれません。しかし、人が足りないまま仕事を抱えれば、工程にしわ寄せが出ます。現場へ無理を求める状態も避けられません。
「足りない、足りないと言って無理をすると、事故につながります。あまりリスクは取りたくないです」
これは、成長意欲がないという話ではありません。受注量より施工能力が先行する状態をつくり、無理なく引き受けられる案件を増やしたいという、現場を知る経営者らしい判断です。
問題は、案件が来てから協力会社を探しても間に合わないことです。主要な協力会社が別現場に入っていれば、受注を断るか、厳しい工程で引き受けるかの二択になりやすくなります。
協力会社開拓の目的は、仕事を際限なく増やすことではなく、受注する・断るを落ち着いて判断できる余力を持つことです。
会社名や業種だけでは、工場・病院の衛生配管を任せられる相手か判断できない難しさ
協力会社候補を増やすだけなら、地域の設備工事会社や一人親方を一覧にする方法があります。実際に、愛知・岐阜・三重の周辺地域で広く探せば、法人と個人事業主を合わせて相当数の候補が見つかります。
ただし、一覧に「管工事」「設備工事」と書かれているだけでは不十分です。
「一般管工事業と書いてあっても、何をやっている会社なのか分からないですよね」
同じ設備工事会社でも、得意な現場は異なります。市の指定工事店として公共工事を中心に手がける会社もあれば、工場配管を得意とする会社もあります。病院や老人ホームでは、施工経験に加えて、大手サブコンの現場で求められる書類対応に慣れているかも確認したいところです。
相談者が「大体安心できる」と話したのは、次のような経験を持つ会社でした。
- 病院や老人ホームの衛生配管を施工した経験がある
- 工場など、既存の主要案件に近い現場を経験している
- 大手サブコンの現場へ入ったことがある
- 現場で必要な書類やルールに対応できる
- 少人数でも継続して稼働している
一人親方については、建設業許可や資格、業歴などが最初の確認材料になります。ただし、それだけで技術力や相性まで判断できるわけではありません。
過去に依頼した会社、現在取引している会社、合わなかった会社も混在します。そのため、候補リストをそのまま使うのではなく、既存の請求先や取引先の一覧と突き合わせる作業も欠かせません。
必要なのは会社数の多い名簿ではなく、自社の現場に合うかを判断できる情報が付いた候補リストです。
案件の種類と繁閑に応じて組み替えられる協力会社候補を平時から育てる進め方
協力会社体制を安定させるには、「今すぐ仕事を頼める1社」を探すだけでなく、条件の異なる候補と平時から接点を持つ進め方が合っています。
まず、自社が求める協力会社の条件を、業種名より一段具体的にします。この会社であれば、病院・老人ホーム・工場における衛生配管の経験が中心です。そのうえで、施工エリア、人数、保有資格、道具、書類対応、過去の取引先などを確認します。
候補を絞る際は、次の順番で整理すると進めやすくなります。
- 任せたい工事を明確にする
「管工事全般」ではなく、衛生配管、工場案件、病院改修など、実際に依頼する可能性がある工事まで具体化します。
- 移動可能な範囲を決める
県名だけで区切らず、拠点から車で無理なく動ける範囲を設定します。職人の移動負担を考えると、90分圏内などの基準も一つの目安になります。
- 既存・過去の取引先を除外する
請求書や取引先管理表と候補リストを照合し、すでに関係がある会社や、過去に合わなかった会社を整理します。
- 法人と一人親方を分けて候補化する
数人の班で任せられる会社と、既存班へ加わってもらう一人親方では、期待する役割が違います。案件に応じて組み替えられるよう、別々に管理します。
- 小さな工事から相性を確かめる
一覧だけで「使える・使えない」を決めるのは難しいものです。「結局、呼ばないと分からない」という言葉のとおり、最初は対応可能な小規模工事で、品質、安全、連絡、工程への対応を確認します。
接点を持った後は、会社名と電話番号だけでなく、会話や稼働の状況を残します。
- 対応できる工事と不得意な工事
- 対応可能なエリア
- 班の人数と稼働時期
- 病院、老人ホーム、工場などの施工経験
- 必要書類への対応状況
- 希望する単価や取引条件
- 過去に依頼した際の所感
- 次に連絡する時期
協力会社側へ、自社と組む利点を伝えることも大切です。既存取引先から一定量の仕事が見込める会社なら、「継続的に相談できる案件がある」ことは相手にとっても判断材料になります。
ただし、仕事量だけで定着が決まるとは限りません。既存の取引先へ戻る人もいます。だからこそ、特定の1社を囲い込むより、複数の会社と緩やかに関係を保つほうが現実的です。
「主力として班で任せる会社」「繁忙時に応援を頼める会社」「既存班に加わる一人親方」を分けて持つと、案件に応じて施工体制を組みやすくなります。
また、候補リストは一度作って終わりではありません。実際に話した反応や現場での評価を加え、条件を少しずつ修正します。広めに候補を出し、接点を持ちながら精度を上げる流れです。
これにより、案件が来るたびにゼロから探す状態を減らせます。受注判断にも余裕が生まれます。
まとめ
人手不足で案件を断っているからといって、すぐに受注量を増やすことが正解とは限りません。工程が詰まり、安全や品質に負担がかかる受注は避けたいところです。
一方、主要な協力会社が2〜3社に限られていると、その会社の稼働状況によって自社の受注可能量まで変わってしまいます。
協力会社開拓は、急拡大のためではなく、施工能力と受注判断を安定させるための備えです。
工事経験、施工エリア、人数、書類対応などで候補を整理し、小さな工事から相性を確認します。法人と一人親方の役割も分けます。そして、案件の種類や繁閑に合わせて組み替えられる関係を平時から増やしていきます。
「売上をどこまで伸ばすか」より先に、無理をせず、頼まれた仕事を落ち着いてこなせる体制をどうつくるかを考える。その順番が、結果として持続的な成長にもつながります。
自社に合う協力会社の条件から一緒に整理する
協力会社を増やしたくても、「どの会社へ声をかければよいか」「自社の場合は何を基準に絞るべきか」が曖昧なこともあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。協力会社開拓についても、候補条件の整理からリスト化、接点づくり、活動管理の仕組みづくりまで対応しています。
まだ依頼内容が固まっておらず、「何から整理すべきか分からない」という段階でも問題ありません。無理にサービスをおすすめすることはありませんので、自社の施工体制を見直すきっかけとして気軽にお声がけください。